発端
茜色が緩やかに世界を沈ませていく空。
遠くに童歌を楽しげに響かす子供達の声が聞こえる。
夏の気配が空気の中に微かに混じっていく時期。若草のにおいと、梅雨明けの滲むような水のにおい。夜は冬の頃の長き支配を忘れたかのようにだんだんとたじろいでいき、やがてやってくるのであろう祭り囃子や縁日の楽しげな音を思い出させてくれる。
――夕闇前の烏が地を這う者達を嘲笑うように空を泳ぎゆく。
その下には、たしかに彼等の嗤う忙しいひとの生活が、あった。
だが、烏は、見付けていた。
そんな町のうらぶれた片隅。
人気も無いそこで展開している、とある一組の生き死にを。
「ま、待ってくれ」
「駄目よ、待たない」
「なんでだ、おれはただ、人に化けて酒を飲んでいただけだ」
「“元の人足を喰って”が抜けているわよ――尚更悪いじゃない。世俗に溶け込もうだなんて。人の世にあってはならないことだわ」
「待ってくれ、頼む、待って――」
命乞いする喉と額とに針が突き刺さる。
それで、町の人足……だった筈の男は絶命した。化ケが解け、そこには一匹の狢が横たわる。
針を放った巫女が鼻息一つ、転がった遺骸をしゃがみ、一回だけ手合わせ黙祷を捧げたら、風呂敷を取りだし誰の目にも触れないよう包みこむ。
「……すっかり遅くなってしまったわ。帰っておゆはんつくる暇はあるかしら」
黒髪を靡かせながら立ち上がる。
もう随分遅くなった。これだから化ける類は嫌いだ。見付けるのが面相臭くって。
いっそ何処かで食べていってしまいたいと思いつつも、手にぶら下げたものがねとりと甘ったるく、生臭い匂いを発しかねないと考え、帰途の道を歩きだす。
まだかろうじて、童歌は微かに聞こえてきていた。
……随分と、陽が早くなってきた。
巫女の少女はそろそろと近付いてくる夏の熱気を思い出して顔に顰を作りながらも颯爽と歩く。風呂敷の中身をぶらさげ、目指すのは依頼主、立ち飲み屋の親父の元だ。
……夕闇迫る前の、忙しない街中を歩く。
赤い巫女服朱の袴。その姿は嫌が応にも目立つ。
あちらこちらから感じる視線を、巫女は緩やかに受け止め歩み行く。
その羨望、憧憬、畏怖……或いは、恐怖の感情を、けして受け止めることなく、涼やかに流し歩き続ける。
巫女とは、そういう存在なのだ。
「ああ、やっぱり……そうだったのか」
「退治はしたからもう出ない……です。それじゃ――」
「待ってくれ、巫女様。これ、少ないが、礼に」
「ありがとう」
立ち飲み屋の親父から依頼「最近妙な客が常連になっている」を済ませ、巫女は手渡された袋の中の金子の音を懐に感じこっそりとほくそ笑む。
やっぱりおゆはんをどっかですませたいくらいだ。
だが……我慢しよう。
するべきことがある。
田夫さん達が町へ向かって歩み行くその逆方向へと巫女は歩く。
すれ違うとき、殆どの老人衆は丁寧に挨拶してきてくれるが、対照的に、殆どの若者が避けるように会釈だけをする……それでいい。若い時分から得体の知れないものと仲良くしようだなんて思わない方が、いいのだ。
遠くに聞こえた筈の童の笑い声が聞こえなくなっていく。
おうちに帰れたのだろうか、自分の耳にはもう拾えないほど遠くになったろうか。
家に帰ったら、泥に汚れた着物を母に叱られるのだろうか。
温かな夕飯が家族の笑顔と一緒に待っていてくれるのだろうか。
沸かしてくれた風呂に、炭で顔を黒くした父を嗤いながら、一緒に入っているだろうか。
やがてその日の油が尽きて、母の布団に潜って眠るのだろうか。
……人々が安寧を享受しているのであればそれで良い。
巫女とは、そういう存在なのだ。
……棚田を抜け、奥の雑木林に続く道に入る。
世界は茜色を燃やし尽くし、紫の帳を被り始めていた。林に入ればいよいよ闇は色濃くなり、巫女の朱すらが赤墨に染め上げられてしまっている。獣道とも林道とも言い難い雑草が避けてできあがっている程度の道を巫女はたったひとり、気の早すぎる秋虫の声を聞きながら歩き続けた。
「……そろそろいいか」
風呂敷に一度目を落とし、それから林道を外れた草叢の中へと分け入る。
たちまちに巫女服が引っ掛かったり引っ張られたりと大変だが、んしょんしょと、苦労しながら奥へ奥へと進んでいった。
やがて、まず人は踏み入れないだろう、近くからせせらぎの聞こえる沢があるだろう付近で足を停める。
そこで膝付き風呂敷を地面にそっと置き、解き拡げる。
……血濡れの狢の骸。それにもう一度頭を下げ一礼。
そして、地面を素手で掘り返していく。
……秋虫の声がせせらぎに混じって優しい夜の唄を奏でていた。
泥まみれになってしまった巫女の嫋やかな指先が、やがて穴を掘り返し終え、狢をそっと持ち上げ、そして、穴へと横たわらせる。
そうしてから、ゆっくりゆっくり、土をかけ直していった。
「かけまくもかしこきいざなぎのおほかみみそぎはらへたまひしときにもろもろのまがごとつみけがれあらむをばはらへたまひきよめたまへとしめせとまをすことをきこしめせとかしこみかしこみもまをすかしこみかしこみもまをす……」
巫女の哀しげな旋律が、秋虫とせせらぎ、夜の唄に混じり溶けていく。
穴が埋まり、拝と礼。
巫女はその全てを終えて後、再び黒髪を翻して立ち上がった。
「……帰ろう」
元の獣道へと戻っていく。
巫女は、一度も振り向かなかった。
……
博麗神社――。
ながいながい階段を昇ってある小さな神社。
そこが少女の勤め先であり、家であり、行動拠点である。
物心ついた頃からずうっとここだけ。
少女は街と、街から離れた少しの場所と、この神社だけが自分の世界と思っていた。
それで問題はなかったし、これからも問題はないだろうとも。
社務所兼、自宅となっている人気のない居間。まずは行燈に油を注いで、火をかける。
「おなかすいたわ」
それから続く土間へと降りて、食事の準備を考える。
もう色々と面倒臭いのでとっておいた冷や飯をあっためた味噌汁でかっこむだけと決め、土間の竈に火を付ける。
味噌と、適当にぶち込める出汁になりそうな何かないものかと探していると、外から「――さま、巫女様!」と、声が聞こえてきた。
「……っ」
土間の裏から外に出て、走って境内へと向かう。
そこに、笠を被り光源を持った里人が四名。息せき切って其処に立っていた。
「どうしました?」
「大変(てぇへん)ですじゃ、里に、里に……血が……血のような、空が……」
「爺様落ち着け、巫女様、此処からもじきに見えるようになります。空に血のような紅い霧が覆って、空を隠しちまったんでさ。里の方で、目の良いモンは大騒ぎです」
「――」
目を凝らして遥か遠くを見る。
――紅い、確かに微かに紅く染まりつつあるのが解る。
あれが里の方は濃くなっているのか方向は、どちらだろう? 細かいことを考えている暇はない。あれは――あれは、そう、“異変”と教わったものだ。
「――なんとかします」
おお、と里人達が喜びの声を上げる。
「皆さんは里に戻って私が解決するから大丈夫、と、広めてください。すぐにも出発するので、里には寄れそうにありませんから」
「わかりやした、どうか、どうか巫女様、お願いします……」
力強く頷き、巫女は「準備があるから」と皆に気をつけて帰るように指示をした。
――巫女に伝えればなにもかも解決する。
老人はその言い伝えを信じて若い衆と共に此処にやって来たのだろう。巫女への伝言を達成したら、力が抜けたようにして帰っていった。
鳥居を潜り、階段を降りていく人影が小さくなるまで見送り、そして、居間へと風切るように躍り込む。そして――そこで、部屋の柱に背を預け、大きく息を吐き出した。
「なに……あれ……?」
ひとりごち、呟く。
空を覆う紅い霧……?
あんな、大規模な出来事が異変だというのか。
あんな事態……自分は精々街の狸退治が精一杯だというのに。
――落ち着け。自分は、博麗の巫女だ。
こんな事態を想定しての修業だったではないか。
今なら空だって飛べる。
昼間に斃したように、妖怪だって難なく凌げる。
――私が失敗するはずがない。
「よし、行こう」
少女は今一度巫女服を脱ぎ、更に札、針、そして陰陽玉と装備を床に手早く拡げて確認し、ひとつひとつ、確認しながら己の身へと装備していく。
心臓が高鳴っていた。
歯の根が合わなくなっていた。
息が微かに荒くなっていた。
だが、それらは全て恐怖によるものではない。
遂にこのときが来たのだ、という、緊張と、高揚感から来るものだった。
解決せねばならない。
里人のために。そして――
自分が博麗の巫女、博麗霊夢たるために。
装備の全てを整えた。
彼女に最早抜かりはない。
「よし、征こう」
ふらつく足取りと共に空へとふわり飛び上がる。
まだ慣れない飛行だが、紅霧を目指す内に段々と動きが洗練されていく。
霊夢は憶えが良い。それも、天才的に。
神道の修練も、飛行も、祝詞も、武器の扱いも、格闘術も、すべて難なく掌中に収めた。
あとは、攻略するだけだ。
紅い巫女が、紅い霧に向け、鬼灯みたいに紅い夜へ向かって宙を駆けていく――。
茜色が緩やかに世界を沈ませていく空。
遠くに童歌を楽しげに響かす子供達の声が聞こえる。
夏の気配が空気の中に微かに混じっていく時期。若草のにおいと、梅雨明けの滲むような水のにおい。夜は冬の頃の長き支配を忘れたかのようにだんだんとたじろいでいき、やがてやってくるのであろう祭り囃子や縁日の楽しげな音を思い出させてくれる。
――夕闇前の烏が地を這う者達を嘲笑うように空を泳ぎゆく。
その下には、たしかに彼等の嗤う忙しいひとの生活が、あった。
だが、烏は、見付けていた。
そんな町のうらぶれた片隅。
人気も無いそこで展開している、とある一組の生き死にを。
「ま、待ってくれ」
「駄目よ、待たない」
「なんでだ、おれはただ、人に化けて酒を飲んでいただけだ」
「“元の人足を喰って”が抜けているわよ――尚更悪いじゃない。世俗に溶け込もうだなんて。人の世にあってはならないことだわ」
「待ってくれ、頼む、待って――」
命乞いする喉と額とに針が突き刺さる。
それで、町の人足……だった筈の男は絶命した。化ケが解け、そこには一匹の狢が横たわる。
針を放った巫女が鼻息一つ、転がった遺骸をしゃがみ、一回だけ手合わせ黙祷を捧げたら、風呂敷を取りだし誰の目にも触れないよう包みこむ。
「……すっかり遅くなってしまったわ。帰っておゆはんつくる暇はあるかしら」
黒髪を靡かせながら立ち上がる。
もう随分遅くなった。これだから化ける類は嫌いだ。見付けるのが面相臭くって。
いっそ何処かで食べていってしまいたいと思いつつも、手にぶら下げたものがねとりと甘ったるく、生臭い匂いを発しかねないと考え、帰途の道を歩きだす。
まだかろうじて、童歌は微かに聞こえてきていた。
……随分と、陽が早くなってきた。
巫女の少女はそろそろと近付いてくる夏の熱気を思い出して顔に顰を作りながらも颯爽と歩く。風呂敷の中身をぶらさげ、目指すのは依頼主、立ち飲み屋の親父の元だ。
……夕闇迫る前の、忙しない街中を歩く。
赤い巫女服朱の袴。その姿は嫌が応にも目立つ。
あちらこちらから感じる視線を、巫女は緩やかに受け止め歩み行く。
その羨望、憧憬、畏怖……或いは、恐怖の感情を、けして受け止めることなく、涼やかに流し歩き続ける。
巫女とは、そういう存在なのだ。
「ああ、やっぱり……そうだったのか」
「退治はしたからもう出ない……です。それじゃ――」
「待ってくれ、巫女様。これ、少ないが、礼に」
「ありがとう」
立ち飲み屋の親父から依頼「最近妙な客が常連になっている」を済ませ、巫女は手渡された袋の中の金子の音を懐に感じこっそりとほくそ笑む。
やっぱりおゆはんをどっかですませたいくらいだ。
だが……我慢しよう。
するべきことがある。
田夫さん達が町へ向かって歩み行くその逆方向へと巫女は歩く。
すれ違うとき、殆どの老人衆は丁寧に挨拶してきてくれるが、対照的に、殆どの若者が避けるように会釈だけをする……それでいい。若い時分から得体の知れないものと仲良くしようだなんて思わない方が、いいのだ。
遠くに聞こえた筈の童の笑い声が聞こえなくなっていく。
おうちに帰れたのだろうか、自分の耳にはもう拾えないほど遠くになったろうか。
家に帰ったら、泥に汚れた着物を母に叱られるのだろうか。
温かな夕飯が家族の笑顔と一緒に待っていてくれるのだろうか。
沸かしてくれた風呂に、炭で顔を黒くした父を嗤いながら、一緒に入っているだろうか。
やがてその日の油が尽きて、母の布団に潜って眠るのだろうか。
……人々が安寧を享受しているのであればそれで良い。
巫女とは、そういう存在なのだ。
……棚田を抜け、奥の雑木林に続く道に入る。
世界は茜色を燃やし尽くし、紫の帳を被り始めていた。林に入ればいよいよ闇は色濃くなり、巫女の朱すらが赤墨に染め上げられてしまっている。獣道とも林道とも言い難い雑草が避けてできあがっている程度の道を巫女はたったひとり、気の早すぎる秋虫の声を聞きながら歩き続けた。
「……そろそろいいか」
風呂敷に一度目を落とし、それから林道を外れた草叢の中へと分け入る。
たちまちに巫女服が引っ掛かったり引っ張られたりと大変だが、んしょんしょと、苦労しながら奥へ奥へと進んでいった。
やがて、まず人は踏み入れないだろう、近くからせせらぎの聞こえる沢があるだろう付近で足を停める。
そこで膝付き風呂敷を地面にそっと置き、解き拡げる。
……血濡れの狢の骸。それにもう一度頭を下げ一礼。
そして、地面を素手で掘り返していく。
……秋虫の声がせせらぎに混じって優しい夜の唄を奏でていた。
泥まみれになってしまった巫女の嫋やかな指先が、やがて穴を掘り返し終え、狢をそっと持ち上げ、そして、穴へと横たわらせる。
そうしてから、ゆっくりゆっくり、土をかけ直していった。
「かけまくもかしこきいざなぎのおほかみみそぎはらへたまひしときにもろもろのまがごとつみけがれあらむをばはらへたまひきよめたまへとしめせとまをすことをきこしめせとかしこみかしこみもまをすかしこみかしこみもまをす……」
巫女の哀しげな旋律が、秋虫とせせらぎ、夜の唄に混じり溶けていく。
穴が埋まり、拝と礼。
巫女はその全てを終えて後、再び黒髪を翻して立ち上がった。
「……帰ろう」
元の獣道へと戻っていく。
巫女は、一度も振り向かなかった。
……
博麗神社――。
ながいながい階段を昇ってある小さな神社。
そこが少女の勤め先であり、家であり、行動拠点である。
物心ついた頃からずうっとここだけ。
少女は街と、街から離れた少しの場所と、この神社だけが自分の世界と思っていた。
それで問題はなかったし、これからも問題はないだろうとも。
社務所兼、自宅となっている人気のない居間。まずは行燈に油を注いで、火をかける。
「おなかすいたわ」
それから続く土間へと降りて、食事の準備を考える。
もう色々と面倒臭いのでとっておいた冷や飯をあっためた味噌汁でかっこむだけと決め、土間の竈に火を付ける。
味噌と、適当にぶち込める出汁になりそうな何かないものかと探していると、外から「――さま、巫女様!」と、声が聞こえてきた。
「……っ」
土間の裏から外に出て、走って境内へと向かう。
そこに、笠を被り光源を持った里人が四名。息せき切って其処に立っていた。
「どうしました?」
「大変(てぇへん)ですじゃ、里に、里に……血が……血のような、空が……」
「爺様落ち着け、巫女様、此処からもじきに見えるようになります。空に血のような紅い霧が覆って、空を隠しちまったんでさ。里の方で、目の良いモンは大騒ぎです」
「――」
目を凝らして遥か遠くを見る。
――紅い、確かに微かに紅く染まりつつあるのが解る。
あれが里の方は濃くなっているのか方向は、どちらだろう? 細かいことを考えている暇はない。あれは――あれは、そう、“異変”と教わったものだ。
「――なんとかします」
おお、と里人達が喜びの声を上げる。
「皆さんは里に戻って私が解決するから大丈夫、と、広めてください。すぐにも出発するので、里には寄れそうにありませんから」
「わかりやした、どうか、どうか巫女様、お願いします……」
力強く頷き、巫女は「準備があるから」と皆に気をつけて帰るように指示をした。
――巫女に伝えればなにもかも解決する。
老人はその言い伝えを信じて若い衆と共に此処にやって来たのだろう。巫女への伝言を達成したら、力が抜けたようにして帰っていった。
鳥居を潜り、階段を降りていく人影が小さくなるまで見送り、そして、居間へと風切るように躍り込む。そして――そこで、部屋の柱に背を預け、大きく息を吐き出した。
「なに……あれ……?」
ひとりごち、呟く。
空を覆う紅い霧……?
あんな、大規模な出来事が異変だというのか。
あんな事態……自分は精々街の狸退治が精一杯だというのに。
――落ち着け。自分は、博麗の巫女だ。
こんな事態を想定しての修業だったではないか。
今なら空だって飛べる。
昼間に斃したように、妖怪だって難なく凌げる。
――私が失敗するはずがない。
「よし、行こう」
少女は今一度巫女服を脱ぎ、更に札、針、そして陰陽玉と装備を床に手早く拡げて確認し、ひとつひとつ、確認しながら己の身へと装備していく。
心臓が高鳴っていた。
歯の根が合わなくなっていた。
息が微かに荒くなっていた。
だが、それらは全て恐怖によるものではない。
遂にこのときが来たのだ、という、緊張と、高揚感から来るものだった。
解決せねばならない。
里人のために。そして――
自分が博麗の巫女、博麗霊夢たるために。
装備の全てを整えた。
彼女に最早抜かりはない。
「よし、征こう」
ふらつく足取りと共に空へとふわり飛び上がる。
まだ慣れない飛行だが、紅霧を目指す内に段々と動きが洗練されていく。
霊夢は憶えが良い。それも、天才的に。
神道の修練も、飛行も、祝詞も、武器の扱いも、格闘術も、すべて難なく掌中に収めた。
あとは、攻略するだけだ。
紅い巫女が、紅い霧に向け、鬼灯みたいに紅い夜へ向かって宙を駆けていく――。