Coolier - 新生・東方創想話

寓話と神話

2026/07/05 18:26:49
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終章「後日譚」


 八雲の家には、テレビがある。

 その夜の報せも、短いものだった。

 ——提供再開。こんどは、檻なしで。世界じゅうへ。安全のための仕組みを、あたらしくして。

 あのあと、楽園には、何も起こらなかった。賢者の脅した災いは、来なかった。……今のところ、来ていない。楽園というものは、何事もなかったという顔が、昔から得意なのだ。

 アナウンサーの声が、むずかしい横文字をいくつか読み上げて、それから、画面が切り替わった。

 イメージ画像、というのだそうだ。報せの中身とは、直接はかかわりのない、borrowed——借りものの、写真。

 緑の葉のうえに、青いモルフォ蝶が、翅をひらいてとまっていた。

 あの会社の、青い蝶。世界じゅうの画面で、今夜、何億回も表示されている、ただの一枚。

 私は扇を、ひらきかけて——とめた。

 青い翅の、まんなかへんに。

 細い、一筋の、傷があった。

 写真は、数秒で切り替わった。天気予報がはじまった。あしたの外の世界は、よく晴れるらしい。

 私は、テレビを消さなかった。

(終章・了/後編「神話」・了)
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