『――泣かなくたっていいんだよ』
『――もう、怖いやつはいないじゃないか』
『――死んだ。もう死んでる。これでいいのさ』
『――だから、もう大丈夫さ』
『――怖い思いも、痛い思いも、しなくていい』
『――泣く必要なんてない。お前さんは強くなった』
『――それは世界を変える力だ。お前さんだけの力だ』
『――もう、居場所がないって?』
『――なら、作ろう。作ればいい。自分で、切り開けば』
『――やり方がわからない?』
『――なら、あたいが一緒にやってあげる。一緒にね』
『――うん、一緒なら怖くないだろ?』
『――金が必要だ。うんと金が必要だね』
『――この街で怖い思いをしないためには、金が――』
『――ん?』
『――どうして、って、そりゃ』
『――アンタが気に入ったからだよ』
『――アンタとなら、あたいも夢が見れると思ったのさ』
『――夢。そうさ、夢さ。バカみたいだろ』
『――自由になる夢。何もかもから、解き放たれて』
『――あたいは、ほら、猫だからさ。自由でいたいんだ』
『――アンタの黒い翼で、どこまでも飛んでくみたいにさ』
『――ところで』
『――アンタ、名前、なんていうんだい?』