Coolier - 新生・東方創想話

緋焔のアルタエゴ_第一章

2024/08/23 18:12:35
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チクタク。
チクタク。
チクタク。

チクタク。
チクタク。
チクタク。

チクタク。
チクタク。
チクタク。

時計の音。時計の音。
それは暗がりに鳴り響く。
まだか、まだかと急き立てるように。

そこは、世界の端だった。
例え、世界が巨大な亀の上に座して居なくとも。
例え、異端審問に掛けられた高名な碩学の言葉が正しくとも。

端にして、中心。
アルファでありながら、オメガでもある。
矛盾を容易く飲み下すいと高き者を、ヒトは何と呼ぶか。

チク・タク。混沌より這い出る者。
チク・タク。崇め奉るべき古きもの。
その畏れを喰らい、仮面の男は高らかに笑うのだ。

【仮面の男】……チク・タク、チク・タク。

【仮面の男】さて、そろそろ時間だよ。

【仮面の男】断罪の時だ。

【仮面の男】時計兎は疾く駆ける。
赤の女王の逆鱗に触れぬよう。
いまはその配役も、面白い。

玉座に腰掛ける男が、静かに笑って言う。
無機質な笑いだった。空虚な笑いだった。
およそ人知の届かぬ領域から、見下ろして。

彼は鎮座する。人の理解を超えた機関の中心に。
彼は睥睨する。人ならざる者の集う地下世界を。
罪業と欲望を司る仮面が、彼の周囲を旋回する。

【仮面の男】耳ある者は聞け。目ある者は見よ。
何物にもなれない世界よ、
せめて私の遊具となれ。

【仮面の男】我が法廷に検察はない。
弁護人はない。被告はない。
聴衆はない。喝采はない。

【仮面の男】よろしい、十全だ。
なればこそ、ここに、裁判の開廷を、
宣言しようじゃないか。

仮面の男が静かに言葉を紡ぐ。
ここは彼の領域だ。ここは彼の玩具箱だ。
彼が語り掛ければ、世界の理が首を垂れる。

彼こそが正当なる地下世界の理だ。
ただ1人の例外を除いて、
誰もそのことを知ることはなくとも。

【仮面の男】我が祝福の寵児よ。
己が“強欲”のまま、不殺生戒の禁を犯す者。
時計仕掛けの閻魔の名において、裁きを下そう。

【仮面の男】すべて。

【仮面の男】そう、すべて。

【仮面の男】あらゆるものに、意味がないのなら。

【仮面の男】例えば。

【仮面の男】燃えてしまえば、何の意味も、ない。

【仮面の男】判決は――

チクタク。
チクタク。
チクタク。

チクタク。
チクタク。
チクタク。

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