Coolier - 新生・東方創想話

緋焔のアルタエゴ 第三章_下

2025/08/06 00:28:26
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ーー見るな。
誰も私を見るな。

視線が私を抉る。
罪深き私の心を削り取る。

恐ろしい。私は恐ろしくて堪らないのです。
秘めたる欲を見透かされるのが。
ふとした瞬間に、私の罪を垣間見られるのが。

ヒトは眼を偽ることはできない。
耳は塞げばいい。口も閉じればいい。
けれど眼を見れば、本心は判ってしまう。

後ろめたい時に下を向くのも、
嘘を吐く時に目が泳ぐのも、
残酷なまでに雄弁に全てを語るのです。

怖い。私は眼が怖い。
気を遣われていることが判ってしまって。
咎められていることを悟ってしまって。

同時に私は、誰かを見ることも恐ろしい。
知らず、私の本心も出てやしないかと。
私の浅ましい性根が漏れてないかと。

だから私は、こうするしかなかったのです。
幾つにも幾つにもこの身を分けて、
彼我の視線を綯交ぜにするしか。

だって、血に溶けた私が無数に増えれば、
二つしかなくて苦しんでいた眼が、無数に。
どうでも良くなるほど希釈すれば、ほら。

ほら、もう誰も私を見れない。
もう私も、誰も見なくていい。

もう自分を隠す必要はない。
もう何も欺かなくてもいい。

だから、見るな。
もう、私を見るな。
あるいは弥勒菩薩が救済に来るまでーー

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