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東方流重縁~forgotten wanderer~ 第六話 あいでんてぃてぃ・くらいしす!

2025/04/19 10:11:17
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 縁日当日。
「焼きそばいかがですかー?」
「金魚すくいだよー!」
「にいちゃん、射的やってかないかい?」
「件の占い師とは私のことさ!よく当たる占いだよー。」
「すごい賑わいですね…」
 境内は河童や人間たちの屋台が立ち並んでおり、人でごった返している。よし、これなら早苗さんの姿もきっと元に戻るはず。
「でも、考えましたねかさねさん。パンフレットに私の情報を書いて配るなんて」
 早苗さんに対する認知を改めさせるために、私が考えたのは縁日のパンフレットに早苗さんの細かいプロフィールを書くことだった。風祝の紹介ついでに、当代の風祝はどんな人間なのかというていで早苗さんのことを書いている。最後の方の演説や、今日の参拝客に多く配った。
「後は、私が流鏑馬を成功させるだけ…」
 まだ早苗さんの姿が現れる気配はない。現人神・東風谷早苗に捧げる流鏑馬ということで、参拝客の心をまとめ、信仰心を盛り上げなければならない。それに、失敗したら早苗さん・神奈子さん・諏訪子さんの顔に泥を塗ることになる。失敗は許されない。
「だ、大丈夫ですかかさねさん。結局、今日までに完全成功は一度もなかったんでしょう?」
「それを言わないでくださいよぅ…」
 神奈子さんと諏訪子さんが整えてくれた馬場で練習を繰り返したが、3枚の的に全て的中したことは一度も無い。馬上ではうまく弓が放てない。せめて、もう少し馬の体高が低く、揺れが少なければ…。
「頑張ってくださいね!私の姿がかかっているんですから!」
 数刻後。賑わいの中で。とうとう流鏑馬を披露する時間がやってきた。
 綾藺笠をかぶり、直垂を身に纏い、射籠手・行縢と着けて、馬に乗る。馬を促してゆっくりとスタート地点まで移動する。歓声が上がる。馬場の周りには多くの観客。大丈夫、大丈夫。私の一矢で早苗さんを救うのだ。
「はっ!」
 馬を疾駆させる。急いで矢をつがえ、弓を引き絞る。まずは一射目。目を見開いて、矢から手を離す。おおという歓声。よし、次だ。揺れる馬上で、必死に矢をつがえる。二射目。再びの歓声。次が最後!失敗は出来ない!…まずい、うまく矢が手につかなかった。準備が一瞬遅れる。それでも。思いだせ。弾幕ごっこで、敵の弾幕の間を縫いながら、針の穴を通すように弾幕を撃ちこむことを。弓を引き絞る。早苗さんが再び元の姿を取り戻すならば、この矢、当たれ。――カコン!大歓声。よし、最後も的中した!その瞬間、ぴかっと辺りが不思議な光に包まれた。思わず目を瞑る。再び目を開ける。驚いた馬の態勢を立て直しながら、振り返ると、早苗さんが、初めて会った時の姿で、空に浮かんでいた。
「かさねさん!ありがとうございます!――皆さん、久しぶりですね!当代の風祝、東風谷早苗です!今日は私のためにこんなに集まってくれてありがとうございます!縁日、楽しんでいってくださいねー!」
 …ああ、よかった。

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