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東方流重縁~forgotten wanderer~ 第六話 あいでんてぃてぃ・くらいしす!

2025/04/19 10:11:17
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 それから私は、若い男の元に通い、写真を買い続けた。すると、写真のほかに早苗さんのイラストやフィギュアなんかも商品として男が見せてきた。普通のものもあるにはあるが、やはりいかがわしいものが目を引く。こうなると最初に男と誤解されたのは好都合だった。いかがわしい早苗さんグッズにのめりこんでいく少年ということを信じ込ませることができた。ちなみに買ったグッズは全て早苗さんに没収され、廃棄された。ただ、神奈子さんや諏訪子さんに見せずに捨てるだけ早苗さんも優しい。早苗さん曰く、もし二人がこれを知ったら冗談抜きで死人が出るということだ。
「よお、にいちゃん。また買いに来たのかい?この前のはよかったろ」
 そして、今日も私は男の元を訪れて、早苗さんグッズを買いに来ていた。
「は、はい。とても…」
「何が「良かった」ですか!」
 演技ですから。早苗さん。
「さて、にいちゃんならそろそろいいかな。もっと特別なものが手に入るところに案内してやるよ」
「本当ですか!?もっとすごいのが手に入るんですか!?」
「おいおい、そんながっつくなって。ついてきな」
 よし、ようやっと尻尾をつかんだぞ。私(と早苗さん)は男についていった。男が私たちを案内したのは、里の外れにある廃屋だった。私たちが家の中に入ると、比較的広い部屋に、椅子が並べられており、他の里の人間が何人か座っている。そして、その椅子の真正面に、テーブルをはさんで三人の男が並んでいる。そして、テーブルの脇には、小さい演説台が置 いてある。
「しばらく待ってな」
 男に言われた通り椅子に座って待っていると、やがて椅子が全て埋まった。すると、演説台の前に上等な着物を着た男性が現れた。
「紳士の皆さん、大変お待たせしました。これから、東風谷早苗氏の特別グッズのオークションを開催いたします」
湧き上がる会場。なるほど、ここにいる人間は私と同じ、「お得意様」か。
「本日は、先生方にも来てもらっています。当代一の写真家・造形師・絵師でございます」
グッズの出どころはこの人達か。ますます好都合だ。
「本日のグッズはこちら!早苗氏が沢で遊んでいるのを捉えた激レア水着写真!それを立体化した1/8スケールフィギュア!そして早苗氏との一夏の想い出を描きだした24頁の漫画本!」
「…うぇっ」
 早苗さんがうめき声をあげる。自分が浅ましい欲望の対象にされているのは気分が良いものではないだろう。
「それではまず写真から…」
「その必要はありません!」
 私は立ちあがって、刀を上に抜き払った。もう我慢する必要は無いだろう。早苗さんの為にも、この欲望の宴を終わらせなくては。
「な、なんだにいちゃん!?」
「なんじゃ、水を差しおって!」
「つまみだせー!」
 ざわつくオークション会場。構うものか。
「守矢神社の者です!本人に隠れて早苗さんを浅ましい欲望のはけ口にするとは言語道断!ただちにグッズの販売中止とこれまでに作成したグッズの破棄を要求します!さもないと…」
 天井に向かって刀から弾幕を放つ。天井に穴が開き、一筋の光が差し込む。驚く参加者たち。
「こ、こいつ博麗神社の居候じゃないか!天狗倒し事件を解決したっていう…誰だ、こんな奴を呼んだのは!」
 私を誘った若い男の顔が青くなっていく。今更気づいてももう遅い。
「ふ、ふん!どうせハッタリだ!本当に攻撃する度胸なんかありゃしない!それに俺たちを攻撃したら、博麗の巫女様が黙っちゃいねぇ!お前の住む所がなくなるぜ!」
 参加者の一人が喚く。まあ、その通りなのだけど。本当に攻撃したら霊夢さんにあんたやっぱり妖怪ねーと言われて退治されてしまう。
「…ありがとうございます、かさねさん。ここからは私が何とかします」
「早苗さん?」
「やれやれ、皆さん随分と好き勝手やってくれましたねぇ…」
 早苗さんが姿を消したまま、テレパシーではなく会場の参加者たちに語りかける。
「こ、この声は…早苗さん!?」
 早苗さん本人の声を聞いてパニックになる参加者たち。
「よくもまあ、私の知らないところでこんなものを作ってくれましたね。かさねさんの言う通り、言語道断ですよ。…ただまあ、私は許しましょう。心が広いですからね」
「さ、早苗さん!?」
 安堵に包まれる会場。
「だけど、諏訪子様が許すかな!?――祟りは怖いですよ」
 一転して恐怖に包まれる会場。そして、一瞬の静寂の後。
「「「も、申し訳ありませんでしたー!!!」」」
 蜘蛛の子を散らすように参加者たちが逃げていった。
「私のグッズは後でかさねさんのところに持ってくるように!」
 逃げる参加者に呼びかける早苗さん。後にはぽつんと私と早苗さんだけが残された。モザイク状の早苗さんがぬっと姿を現す。
「おっ、服が戻ってきました。よかったです、あんな変態たちの前で全裸で立っていたなんてばれたらえらいことでしたから」
「それでも、モザイクは消えませんね。あ、でも心なしかモザイクの濃さが和らいだような…」
「そうですねぇ。まだ何か私に対する信仰が揺らぐ何かがあるのでしょうか?」
 一歩前進したとは思うが、また一から情報を集め直さなくては。さすがに今日は疲れたので、また明日から頑張ろう。

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