「ふぅー、たくさんあるなぁ…」
博麗神社境内。私は、箒を持ってせっせと落ち葉を掃いていた。
「この前の酷い嵐の後に匹敵する量ね。最近は風も強くなって、冷え込んで来たわね」
霊夢さんが口を開く。霊夢さんも同様に手に箒を握っている。
「霊夢さんは休んでていいですよ。居候の身として、これくらいはやっておきますから」
現在、私は博麗神社に居候している。恥ずかしながら仕事らしい仕事はしていない。霊夢さんにおんぶにだっこで養われている身だ。さすがにいたたまれないので、このように家事は積極的にやるようになった。しかし、その家事も霊夢さんの方が得意だ。この前晩御飯を作ろうとしたが、私の余りのぎこちなさに業を煮やした霊夢さんが台所に飛び込んでいき、最終的には霊夢さんによるお料理教室となっていた。
「最初はそう思ったけど、かさねにまかせっきりだといつ終わるか分からないから。あなた、丁寧すぎるのよ」
「うぐっ」
確かに、私の家事はなんでも全体的に遅い。丁寧と言えば聞こえはよいが、要は効率が悪いということだろう。
「いや、悪いことでもないんだけどね。神社の埃とか汚れとかは私がやるよりも全然綺麗になったし」
「どうしても気になっちゃうんです。小さい汚れとか、洗い残しとか。なんというか、きっちりしてないと駄目な性分なんですねぇ、私」
「そう。私は大体でいいと思うんだけどね」
一緒に暮らしてみてわかったことだが、霊夢さんは意外とちゃらんぽらんなところがある。最初会った時は、すごいしっかりした人だと思っていたけれど。でも、そういう人間らしい部分がしっかりあると分かってなんだかほっとするような気分だった。博麗の巫女。人間の里の住人や魔理沙さんからの話を聞く限り、霊夢さんは幻想郷で非常に大きな役割を持つ人間である。そんな霊夢さんが権力を振りかざしたり、近寄りがたい雰囲気を持っているわけではなく、飾らない人柄なのは居候の身としては本当によかったと思っている。
「おーい!」
そんなことを思いながら掃き掃除を続けていると、空の上から叫び声が聞こえた。
「ぷ、ぷぷ…いや、霊夢…」
魔理沙さんだ。何やら笑いをこらえながら、霊夢さんに向かって何かを言おうとしている。
「何よ、気味の悪い」
「いや、とうとうお前にも春が来たんだなって。魔理沙さんも嬉しいぜ。よよよと感動の涙がちょちょぎれそう」
「はぁ?」
「若い燕を見つけてなぁ。ホラ、見てみろよこれ。うふふふふ、ふふふ」
魔理沙さんがこらえきれず、声を漏らしながら、霊夢さんに何かを投げつける。
霊夢さんがそれをキャッチする。どうやら、新聞のようだ。落下してくる間に、「文々。新聞」と書いてあるのが見えた。
「はぁあああああああああ!?」
いきなり、霊夢さんが叫び声をあげる。
「ど、どうしたんですかいきなり」
「かさね!あなたも見てみなさい!」
どれどれ、と私も霊夢さんが持っている新聞を覗き込む。
「…ええええええええええ!?」
思わず、私も叫び声を上げてしまった。その原因ははっきりしている。新聞の見出しだ。新聞にはでかでかと、「博麗の巫女、熱愛発覚!?」と書かれている。
「――本誌記者の独自取材により、博麗の巫女である博麗霊夢氏に同居人がいることが判明した。同居人は美少年と言って差しつかえない男性で、霊夢氏と親しげに人間の里を歩いているのを何人かに目撃されている。本誌記者も二人が仲良く会話している姿を写真に捉えており…!」
霊夢さんがわなわなとつかんでいる新聞を震わせながら記事を読み上げる。
「結婚式には呼んでくれよな!」
魔理沙さんがにっこりと霊夢さんに呼びかける。
「…あのバカ天狗!何を考えてるの!?」
霊夢さんが顔を真っ赤にしながら手に持っていた新聞をくしゃりとして叫んだ。
「ま、明らかにかさねのことだな。そんな男物の着物を身に着けているから勘違いされたんだろ。背も高いし、遠目から見たら分からん分からん」
魔理沙さんがやれやれという感じで手を振る。
「こうなったら、あいつをとっちめてやる。かさね、あなたもついてきなさい!あなたにも責任があるんだから!」
「は、はぁ」
「さあ、行くわよ!妖怪の山へ!」
そう言って霊夢さんはあっという間に飛び去ってしまった。
「わ、待ってくださいよ!」
「がんばれよー」
背中に魔理沙さんの気が抜けたエールを受けながら、慌てて私もついていった。
博麗神社境内。私は、箒を持ってせっせと落ち葉を掃いていた。
「この前の酷い嵐の後に匹敵する量ね。最近は風も強くなって、冷え込んで来たわね」
霊夢さんが口を開く。霊夢さんも同様に手に箒を握っている。
「霊夢さんは休んでていいですよ。居候の身として、これくらいはやっておきますから」
現在、私は博麗神社に居候している。恥ずかしながら仕事らしい仕事はしていない。霊夢さんにおんぶにだっこで養われている身だ。さすがにいたたまれないので、このように家事は積極的にやるようになった。しかし、その家事も霊夢さんの方が得意だ。この前晩御飯を作ろうとしたが、私の余りのぎこちなさに業を煮やした霊夢さんが台所に飛び込んでいき、最終的には霊夢さんによるお料理教室となっていた。
「最初はそう思ったけど、かさねにまかせっきりだといつ終わるか分からないから。あなた、丁寧すぎるのよ」
「うぐっ」
確かに、私の家事はなんでも全体的に遅い。丁寧と言えば聞こえはよいが、要は効率が悪いということだろう。
「いや、悪いことでもないんだけどね。神社の埃とか汚れとかは私がやるよりも全然綺麗になったし」
「どうしても気になっちゃうんです。小さい汚れとか、洗い残しとか。なんというか、きっちりしてないと駄目な性分なんですねぇ、私」
「そう。私は大体でいいと思うんだけどね」
一緒に暮らしてみてわかったことだが、霊夢さんは意外とちゃらんぽらんなところがある。最初会った時は、すごいしっかりした人だと思っていたけれど。でも、そういう人間らしい部分がしっかりあると分かってなんだかほっとするような気分だった。博麗の巫女。人間の里の住人や魔理沙さんからの話を聞く限り、霊夢さんは幻想郷で非常に大きな役割を持つ人間である。そんな霊夢さんが権力を振りかざしたり、近寄りがたい雰囲気を持っているわけではなく、飾らない人柄なのは居候の身としては本当によかったと思っている。
「おーい!」
そんなことを思いながら掃き掃除を続けていると、空の上から叫び声が聞こえた。
「ぷ、ぷぷ…いや、霊夢…」
魔理沙さんだ。何やら笑いをこらえながら、霊夢さんに向かって何かを言おうとしている。
「何よ、気味の悪い」
「いや、とうとうお前にも春が来たんだなって。魔理沙さんも嬉しいぜ。よよよと感動の涙がちょちょぎれそう」
「はぁ?」
「若い燕を見つけてなぁ。ホラ、見てみろよこれ。うふふふふ、ふふふ」
魔理沙さんがこらえきれず、声を漏らしながら、霊夢さんに何かを投げつける。
霊夢さんがそれをキャッチする。どうやら、新聞のようだ。落下してくる間に、「文々。新聞」と書いてあるのが見えた。
「はぁあああああああああ!?」
いきなり、霊夢さんが叫び声をあげる。
「ど、どうしたんですかいきなり」
「かさね!あなたも見てみなさい!」
どれどれ、と私も霊夢さんが持っている新聞を覗き込む。
「…ええええええええええ!?」
思わず、私も叫び声を上げてしまった。その原因ははっきりしている。新聞の見出しだ。新聞にはでかでかと、「博麗の巫女、熱愛発覚!?」と書かれている。
「――本誌記者の独自取材により、博麗の巫女である博麗霊夢氏に同居人がいることが判明した。同居人は美少年と言って差しつかえない男性で、霊夢氏と親しげに人間の里を歩いているのを何人かに目撃されている。本誌記者も二人が仲良く会話している姿を写真に捉えており…!」
霊夢さんがわなわなとつかんでいる新聞を震わせながら記事を読み上げる。
「結婚式には呼んでくれよな!」
魔理沙さんがにっこりと霊夢さんに呼びかける。
「…あのバカ天狗!何を考えてるの!?」
霊夢さんが顔を真っ赤にしながら手に持っていた新聞をくしゃりとして叫んだ。
「ま、明らかにかさねのことだな。そんな男物の着物を身に着けているから勘違いされたんだろ。背も高いし、遠目から見たら分からん分からん」
魔理沙さんがやれやれという感じで手を振る。
「こうなったら、あいつをとっちめてやる。かさね、あなたもついてきなさい!あなたにも責任があるんだから!」
「は、はぁ」
「さあ、行くわよ!妖怪の山へ!」
そう言って霊夢さんはあっという間に飛び去ってしまった。
「わ、待ってくださいよ!」
「がんばれよー」
背中に魔理沙さんの気が抜けたエールを受けながら、慌てて私もついていった。