Coolier - 新生・東方創想話

〽胸に付けてる マークは梶紋

2020/12/05 15:29:45
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★サモン タケミナカタ


「ああ‥‥フェンリルナイトが、ビオランテ・カザミに取り込まれてしまった!フェンリル、起きて!戦って!」

 司会のおねーさんの焦った声が響くなか、ステージにそびえたつ幽香。その胸元に、絡み合う蔦に四肢を埋め込まれるように取り込まれたままの咲夜、もといフェンリルナイト。かすかに身じろぎする様子が見えるが、とても弱っていて逃げ出せそうにない。このまま悪者が勝ってしまうのか。子供たちの中には泣き出すものもいた。すすり泣きが目立って聞こえ始めた、まさにその時であった。

「やあやあ!なかなか楽しそうなこと、してるじゃない。よかったら私も混ぜてもらえないかしら!」
「!?」

 天空から声が響く。見上げる怪植物は、会場の子供たちは、赤い光が空から降ってくるのを見た。赤い光はまっすぐ落下し、会場のど真ん中に突き刺さる!

「わあっ!」

 司会役のはたてが巻き起こる暴風から何とか身をよじってかわす。土埃が渦を巻いて吹き飛んでゆく。そのあとには、小さなクレーターの真ん中に立つ人影。いつもの赤い神様装束ではなく、赤いジャケットに紺色のジーンズ姿の神奈子が、サングラスをかけて立っていた。ワープしたときに装束も変えたようだ。幽香が、ようやくの真打登場に、笑みを浮かべながら悪役としての挨拶をかます。

「‥‥誰、あなた」
「通りすがりの神様だよ」

 会場がおお、とざわめく。対戦相手だけはチラシや掲示で周知されているので、この幽香と戦うのは神奈子であると皆が知っている。わからなかったのは、神奈子たちがどのように戦うのか、いや、どんな演技をするのかであり、咲夜に続いてヒーロー然とした登場の仕方に、これからどんな展開になるのか、あの神様がどんなショーをしてくれるのか、妖怪たちは期待を込めて見守った。
 そんな会場のざわめきが落ち着き気味になるまで少し待った幽香が、厳つく変貌した怪植物の姿でイライラと話しかけた。ほんのり楽しそうに口角をあげながら。

「神様?神様が一体何の用?折角いいところなのに。私の邪魔、しないでくれる?」
「いやね。狼の苦しそうな声や、子供たちが泣いてる声が聞こえたもんだからね。ほっとけないからさ」
「あ、そう。悪いけど、そのまま放っておいてちょうだい!」

 怪植物が、ぶっといこん棒のような腕を振り上げ、神奈子に振り下ろす。神奈子はよけもせず、その腕に叩き潰された!地響きとともに神奈子が立っていたあたりがはじけ飛ぶ!

「!?」
「乱暴者め」

 土煙が収まるよりも早く、怪植物が呻くと振り落とした腕が弾かれるように跳ね上がった。その眼前に人影が。怪植物の大質量の腕を弾き返して空中に浮かぶのは、腕組みをして、赤紫のオーラをまとった神奈子。ニヤリと笑って、サングラスを外し、投げ捨てる。そしてジャケットの胸ポケットから何かを取り出した。

「さあ、喧嘩の時間だ。行くぞ、ビオランテ!」
 
 取り出したのは、普段神奈子が胸元にぶら下げている鏡。それを空中に浮かんだまま、右手で空に向かってかざす。

「サモン!タケミナカタ!」

 台詞は早苗のスペカを拝借。宣言とともに、鏡がまばゆい光を放ち始める。光の塊と化した鏡を、神奈子は自身の胸に当てがう。その瞬間、鏡から光があふれ、神奈子の体を包み込んだ。まばゆい光の繭と化した人型が、ぐんぐんと大きくなってゆく。強烈な眩しさに、怪植物も会場の妖怪たちも、腕で顔を覆った。

「ヤアッ!」
「ぐあっ!」

 光も収まらぬ中、突然怪植物がうめき声を上げる。何が起こったのか必死に目を開いた観客が見たのは、人の形をした赤い光が、怪植物の胸に腕を突き刺している光景だった。

「ふんっ」

 ぶちぶちっ!と派手な音を立てて、蔦を引き裂きながら光の腕が抜かれる。同時に、光の強さが少しずつ弱くなっていく。そして光が収まったあとにそこにいたのは、怪植物と同じ大きさの、赤い巨人!手は五本指、凶悪な鋭い爪の生えた足は大きなウロコでブーツのように滑らかに覆われ、全身が真っ赤。その体には胸部に女性的な膨らみが見えるが、硬く引き締まった体のせいで余計な揺れがないため、柔らかさは感じられず、中性的な印象を与えている。その表皮はまるで龍のようなウロコに覆われ、肘には鋭い爪が伸び、頭部から背中にかけて背骨に沿って小さな突起がずらりと続き、背骨は臀部から飛び出して、しなやかですらりと鋭いシルエットの尻尾がのびていた。頭部も、髪が後方になびいたまま硬質化したように流れる形のウロコで鎧兜のように覆われている。顔の皮膚は白く変色し、バイザーをかけたかのように左右一つつながりの半透明の鱗が両眼を覆っている。その下から目が見えているが、まるで爬虫類のように瞳は大きく縦に割れ、頭部と眼球の大きさのバランスはあまり変わっていないのに、目玉が大きさを増した印象を与えていて。バイザー状の鱗がなければ、黄色い目の宇宙人のように見えたかもしれない。血が透けて見えるような赤い体表。胸の真ん中で白くで光り輝く、鏡が変質した水晶状の鱗から、光があふれ出すように幾筋もの銀色のラインが四肢に絡み合い、マーブル模様を描いていた。赤と銀の、シャープなシルエットの竜人。まるでウルトラマンとゴジラの合いの子のような姿。それが神奈子の選んだ変身姿だった。
相変わらずの蛇女姿のままでパチパチ手をたたいて喜ぶ早苗。諏訪子は感心した様子で巨人と化した神奈子を見上げていた。

「ウルトラマン!神奈子様がウルトラマンですよ!尻尾付きだけど!すっごーい!」
「派手に変身したねぇ‥‥四つ足のカナ蛇か。あいつの一族らしいね。いい感じに吹っ切れたね」
「一族ですか?」
「神奈子の実家の大国主さんとこのお使いは龍蛇だろ。ウチも白蛇だし」
「ほへー。しっかし、ああいうふうに頭とか肘とかトゲトゲしてると、ネクストとかネクサスっぽいデザインですねぇ」
「早苗の言うことはよくわからん」

 諏訪子が隣を見ると、美鈴もおー、と口を丸くして神奈子を見上げていた。遠くの観覧席では天狗のお歴々も、神様のはっちゃけ姿に同じように驚いている様子だ。会場のどよめきをしばし受けた赤い巨人は、手に持った怪植物から引き抜いたモノを、しゃがみこんで、地面にそっと置く。あの、咲夜に助けられた白狼少女の前に。

「彼女を、頼むよ」
「!」

 優し気な声とともにそこに置かれたのは、蔦にからめとられていた銀狼だった。巨人が怪植物から引き抜いたのである。呻く銀狼に、「フェンリルさま!」と少女が駆け寄っていく。周りの子供たちも一緒に駆け寄り、会場スタッフと一緒に舞台の外へと咲夜を運んでいく。巨人はその様子を見届けると、胸に傷を負ってうめく怪植物に向かい、両手を構え、対峙する。植物怪獣と化した幽香。神奈子に抉り取られた胸の中央部分は、再び蔦が伸びて修復されていった。

「あなた、なかなか面白い変身するじゃない。その姿、喧嘩はお得意?」
「あまり、こういう格好はしたことがないけどね。喧嘩とは、相性いいと思うよ。お前もまた、すごい姿になったもんだな」
「ふん。こういうあられもない姿なんて、頼まれてもしたくないけど。今日はあなたとケンカできるって聞いたからノッたのよ。悪役だって聞いたから、早苗ちゃんのアドバイスももらってなるべく怖くしたんだけど。どうかしら」

 言って幽香は、ボコボコと蠢く、マッシブな化け物の体を、両腕を広げて見せる。これが彼女の本性なのか、それともこのショーのために取った仮の姿なのか神奈子には分からなかったが、この舞台にはとても似合っていた。赤い尻尾をゆらりと振り、巨人が微笑む。

「十分禍々しくて醜いわ。気兼ねなく退治できそうだ」
「それはよかった。でも退治できるかどうかはあなた次第よ。せいぜい私以上に醜い姿にされないよう頑張んなさいな。‥‥じゃあ、楽しみましょうか」
「おうよ」

 素のようでもあり、演技のようでもある会話に赤い巨人と怪植物が笑いあい、体から強烈な殺気を吹き出す。会場が静まり返った。

「神力に焼かれて骸を晒せ!枯れそびれた向日葵!」
「お前の血を飲み干して抜け殻にしてやるわ、トカゲ女!」

 口上を叫ぶや否や、2体はいきなり拳でお互いの顔面を殴りあった!打撃音がまるで衝撃波のように観客の腹を打ってしびれさせる。拳を受けても両者はよろめきもしない。しかしこらえる両者の足元に衝撃が通り抜け、舞台に派手な亀裂が走った。衝撃から少し遅れてゆさゆさと会場全体が揺れ、天狗や河童たちが思わずしりもちをついた。怪植物と巨人が、拳をお互いの顔に当てたまま不敵に笑いあう。

「‥‥いくわよぉ」
「山を崩すなよ」
「それはあなた次第ね!」

 怪植物がゴリラのような腕を振り回し、巨人に拳を叩き込む。赤い巨人は鱗の鎧をまとった腕でその拳を弾き、受け流す。一撃一撃に込められた衝撃はすさまじく、まともに当たっていないのにも関わらず、巨人が踏みしめる舞台には拳を受け止めるたびに土煙があがる。舞台の端まで下がってしまった巨人だったが、拳の勢いが一瞬緩んだとみるや、大きく踏み込み、鋭い爪のついた肘で凶悪なエルボークローを食らわせる。

「っつああ!」
「があっ!」

 肘を打ち込んだまま体を捻る。突き刺さった肘の棘に胸を深く切り裂かれた怪植物が、悲鳴を轟かせながら後ろに倒れ込んだ。衝撃で舞台が煎餅のように割れ飛び、観客が盛大に土埃にまみれる。しかし子供たちは怖がること無く目を輝かせて、赤い竜人に歓声を送っていた。



*****************



 2体の巨人の闘いが白熱化して行く中、会場の隅にある控え室代わりの天幕で、会場の子供たちと同じように目を輝かせていた蛇女と美鈴のところに、椛と射命丸がどやどやと駆け込んできた。

「早苗さん、まずいっす」
「椛さん、なにか‥‥あれ、咲夜さん?」

 彼女らは白狼の女の子と一緒に、フェンリルに変身したままの咲夜を担架で運び込んできた。ぐったりとして目をつむったままで胸の上には蝙蝠が止まっている。白狼天狗の少女は蛇女が目の前に現れて一瞬ぎょっとした様子だったが、椛や射命丸が話し始める前に慌てた様子で口を開いた。

「フェンリルさ‥‥メイド長さんが目を覚まさないんです!さっき神奈子様に助けてもらってからずっとぐったりした様子で、演技でもなさそうで‥‥!」
「え」
「どれ、ちょっと」

 天幕内にしかれた茣蓙に咲夜を寝かすと、美鈴が毛皮をまとったままの腕を持ち上げ脈をとる。首筋や頭にも手を触れ、すぐに「ふうん」とつぶやいた。

「何か、急に魔力か体力を吸われたか、ショック受けたみたいですね。さっきの幽香さんかな。命に別状は無いです。たぶん、しばらく休んでいれば目を覚ますでしょうけど」

 ほっとした様子の女の子。しかし射命丸は「あちゃあ」とつぶやいて頭をかいた。

「幽香さん、あれ演出じゃなくてマジで魔力吸い取ってたのね‥‥ああ、じゃあメイド長はリタイアね。会場保護、人手を増やさなきゃ。戻るわ」
「私も行きます」

 咲夜の時間停止能力が使えないとなると、会場の観客を守るための戦力が大幅ダウンとなる。射命丸と椛は急いで会場のほうに戻っていった。天幕に残された面子は茣蓙の上に横たわる咲夜を囲む。胸元のレミ蝙蝠が背筋を伸ばしてのぞき込む面子を見上げる。

「また噛もうかしら」
「お嬢様。それはやめといたほうがいいです。演技中何度も魔力をあげてましたよね。大きな力を受け取るのにも体力というか気力いりますから、無理やり流しちゃまた目を回しちゃいますし、受け取る効率も悪いんで魔力も無駄になります。それにもし使い魔の魔力が切れたらお嬢様ここにいられませんよ」
「魔力切れなんか起こさないわよ」

 美鈴に諭され、不満げに鼻を鳴らしたレミ蝙蝠。その間にも激闘が続いているのか、天幕にも派手な破砕音と断続的に地揺れが伝わってくる。早苗が顎に手を当てる。

「点滴でもします?」
「あるんですかこの山に」
「ないですよねぇ‥‥あっても妖怪用でしょうし」
「私の気なら与えられそうですけど‥‥」
「なら、それで」
「でもね、今の咲夜さん、素肌がみえないでしょう。なるべく肌同士を密着させないと、気を流した時スパークしちゃうんですよね」
「電気か何かですか美鈴さんの気は」

 言って早苗が咲夜を見下ろす。フェンリルナイトに変身したままの彼女の前身は緻密な体毛に覆われていて、素肌は顔の中心部だけだ。
 美鈴がぼそっとつぶやく。
 
「じゃあ、毛刈りですね」
「‥‥美鈴、やめて」
「あ、咲夜さん気が付きましたね」
 
 不穏なセリフに獣人メイド長が目を覚ます。起き上がろうとするがまだふらつくようで、身じろぎする彼女に早苗が寝ててくださいと上半身を押さえた。

「ここは?」
「関係者の控え室ですよ。咲夜さんお疲れさまでした」

 ぼう、と上をしばし見上げて、咲夜は状況を理解し、小さく「ああ」とつぶやく。そして早苗を見ると、再び起きようとした。

「寝ててください」
「でも、ま、まだショーは続いてるんでしょ。幽香が戦ってるんなら、はやく、戻らなきゃ」
「咲夜さんはもう休んでてください。観客保護には射命丸さん達が出張ってますし、私もこのあと会場のほうに出ます」
「‥‥その格好で?」

 いまだに白髪の悪役蛇女姿である早苗を見て、咲夜が尋ねる。咲夜もヒーロー姿のままなので、悪役に介抱されるヒーローと、天幕の中はかなりシュールな光景である。

「普段よりパワーあって丈夫ですから。子供から見れば変かもしれませんが、まあ、致し方ありません。大丈夫です。改心したとかいえば」
「いえ、私も、出ますわ。ヒーローが倒れっぱなしじゃ、みんなつまらないと思うし」
「無理ですって」
「あう」

 いうことを聞かずに起きようとする咲夜だったが、体力は戻っておらず早苗が軽く押さえただけでぱたりと横になってしまう。時間制御の魔法まで使えないわけではないが、時間を止めた世界でせっせと動き回らなければならない以上、歩くのも覚束ない体では時間を止めても結局意味ないのである。自分で納得しつつも、むーと不満げに頬を膨らませる銀狼の表情を見て、美鈴が腕を組む。

「‥‥まあ、気の補充に手がないわけではないですが」
「よし。毛刈りですね」
「早苗ぇ‥‥」

 咲夜が変身したままのごつい獣の手でよわよわと蛇女の腕に縋りつく。四角い毛刈り跡のあるヒーローなんて何の冗談だろうか。気弱な大型犬のようになってきた彼女のほうを向いて、美鈴はすまし顔でいえいえ、と顔の前で指を振った。

「毛は刈らなくていいです。要は毛が生えてないところから気を入れればいいので」
「そんなとこ、どこに‥‥」
「ここに」

 そのまま人差し指を伸ばし、咲夜の唇をふさぐ。一瞬の間の後、その意味を理解した獣咲夜が全身の毛を逆立てた。ろくに動かない体で、あたふたと慌てだす。

「め、めめめ、めーりん。私は大丈夫だから、ちょっと休んでれば‥‥」
「魔力も気力も切れたら、変身解けますよ」
「っ!」

 美鈴の一言に咲夜が絶句する。今の彼女はタイトな着ぐるみを纏っているような格好であるが、地毛である。要するに、厳密には裸。消耗していて時間停止の魔法も思うように使えない今、もし変身が解けてしまったら――――
 蛇女早苗が、ふむ、とつぶやくと、ずるりと身をひるがえしてフェンリルに手を差し伸べ掬い起す。

「えっ」

そして戸惑う獣咲夜をそのまま後ろから羽交い絞めにした。両足もまとめてきっちり蛇の足が巻き付き、寝かせた十字磔のようにしてしまう。慌てて後ろを振り向く咲夜に、早苗はべろっ、と蛇の舌を出してニヤリと笑った。

「フェンリルナイト。いさぎよく観念するのじゃ。おとなしく改造手術を受けよ」
「ちょっ、早苗、なにを、あんた何言ってるの」
「はい、これから施術しますので皆さん天幕の外に」
「手術!?ち、ちょっと美鈴、待って」
「施術です。せじゅつ」
「あまり違わないんじゃないの?!」
「はいはいお嬢ちゃん、外いこうねぇ」
「み、みなさん!?」

 面白そうに皆の様子を傍観していた諏訪子が、白狼天狗の女の子の肩に手を置いて、外へと連れ出す。彼女も事情を理解しているようで、耳を伏せ、顔を真っ赤にしながらそそくさと歩いて行った。レミ蝙蝠まで、女の子の頭に止まって一緒に出ていってしまう。

「お嬢様!」
「子供たちを守るためよ!がんばって!フェンリルナイト!」
「ひぃん?」

レッドちゃんのノリのまま、ウインクして去ってしまうレミ蝙蝠。皆が出て行ったあと、ばさりと出入口の仕切り布が下ろされる。後にした天幕の中から、焦ったフェンリルの声が響く。

「あ、ちょっと、みんな、待って」
「すぐ終わりますから」
「私は顔をそむけてますので」
「や、ちょっと、早苗、はなして、あ、美鈴っ、まって」
「いつもしてるでしょうに、恥ずかしがらなくても」
「まあ!」
「なっ!あなた何言って、早苗ちがうのっ、ちょっ、めーりんまって、まってまっふむううううう!」
「うはは。容赦ないねぇ」
「お姉さま‥‥」
「ありゃりゃ」

 女の子は幕の向こうの咲夜に、ギュっ、と合わせた両手を握って祈るように立っていた。諏訪子がやれやれと頬をかく。そしてこの場は早苗と美鈴にまかせ、自分も観客を守るべく、射命丸達の後を追っていった。一人残された女の子は、レミ蝙蝠と一緒にあられもない声が響くテントの外でフェンリルの回復を祈っていた。



 

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