壱
彼女は言葉を発することはできないが、周囲の音は聞こえるらしい。私たちは彼女に作戦について伝え、協力を依頼すると、何匹かの蝿を石碑の上に「ワカッタ」という形で並ばせた。彼女は了承してくれたらしい。
私は残りの作業を仲間たちに任せ、地下室を出た。そして、周囲が見える程度の高さまで飛んだ。辺りを見回すと、いくつかの点滅する黄緑色の光の点が一つの方向へ向かって動いているのが見えた。小さな光が向かう方向には、もっと大きな光の塊が、他の光の点と同じように輝いているのが見えた。
「最初にあいつの話に乗ったときは暇つぶしのつもりだったんだけどな。まさか、こんなに大事になるとはね」
と私は言った。誰に言ったわけでもない。強いて言えば、自分に言い聞かせたといったところだ。そして、
「許してくれよ、リグル」
と私はつぶやいて、光の集まるところに急いで向かった。