何かが額にくっついた感覚で妖忌は目を覚ました。
「桜…」
顔を上げればあの日以来、絶えてみることのなかった大樹が妖忌を見下ろしていた。
「あ~やっと来たのね。ふ~ん、あなたが妖忌ね~」
桜色の髪をした少女が声をかける。主の姫によく似たその姿に妖忌は唖然とした。
「私は幽々子。ここの主。あなたは庭師。庭師の妖忌」
声もよく似ている。ここに来る前に映姫と交わした会話が思い出される。それが正しいとすれば目の前にいる少女はやはり…
「早速だけどおなかがすいたからお米を炊いてくれるかしら?分量は…」
「分量は5合から6合、柔らかめの白米がお好きでしたな」
「あら、よく知っていること」
「庭師ですからな」
幽々子に背を向け台所へ向かう。なぜか場所は知っていた。後ろから
「お帰りなさい」
そう聞こえた気がした。
end