Coolier - 新生・東方創想話

To my friend

2016/10/26 09:37:10
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「終わったわ。妖夢」
 二人は縁側に腰を下ろす。ぎこちない沈黙が二人を支配する。
「卵。わけてもらえませんか」
「えっ?」
「だから、あなたが買った50個の卵のうちの何個かを分けてもらえませんか」
 あまりに唐突でぶっきらぼうな言い方に少女は驚く。やはり誤解がある。
「あの、妖夢」
「どっちなんですか。分けてくれるんですか。くれないんですか」
取り付く島もない。
「10個で足りるかしら」
「十分です。ありがとうございました」
そういって半霊娘は風呂敷を広げる。野菜やら肉やらたくさんの食材が広がる
「お礼にこの中から少しづつ差し上げます。どうぞ、二人で食べてください」
なにやら言葉にとげを感じる。だが、ありがたいことには変わりない。肉を気持ち多めに取り、卵を10個持ってきて娘に手渡した。
「あの、妖夢。私は別に霊夢と」
「ええ、大丈夫です。誰にも言いませんからどうぞごゆっくり」
どうにも修復不可能な溝を感じていた。なんとも気まずい静寂が二人を包み、押しつぶすかのようである。
「買い物くらい自分で行った方がいいですよ。鮮度とか、人形じゃわからないんじゃないですか」
話題をそらす努力がありありと感じられた。
「そう・・・ね、次からは自分で行くことにするわ」
相手が乗ってきたことを感じさらに続ける。娘としても少女と溝を作ったまま別れるのは気が進まないのだ。
「いや、でも里の人間はびっくりしてましたよ。前代未聞だって」
「ホントは、こんなことに使うつもりはなかったのだけど・・・霊夢が離してくれなくて」
 娘は全身の血が逆流するのを感じた。少女は事実を述べただけであるが、娘にはその事実など知る由もない。切り捨ててやろう。そう決意した娘は間合いを詰める。ただならぬ殺気を感じ少女は後ずさった。
ちらりと魔女の顔が娘の脳裏に浮かんだ。そう。ここで殺せば何もかも失ってしまう。こんな女のために、私は失う必要などないのだ。魔女に教えてあげようか、あなたの恋する人形遣いはとんだ売女であったと。いやいや、教える必要なんてない、あの女はすぐにぼろを出す。彼女が気づかないはずがない。その日を楽しみに待とう。
「それでは失礼します」
 嘲りとも、寂しさともとれる笑顔を浮かべ半霊娘は石段を下りて行った。仄暗い野心を見に秘めながら。 今日の幻想郷は雲一つない暑い日である。
 

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