Coolier - 新生・東方創想話

働く閻魔様

2016/10/26 09:16:29
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「なんでですか!私がここで、残業明けなのに朝早くに起こされて、書類片づけないといけないのに裁判もして、挙句にシャツは全部半乾き。そんな中で仕事してるのに、あの野郎は温泉に行くんで休みます?寝言もいい加減にしなさい。どうして私に相談なしに休むんです?事前に相談する約束でしょう!そもそも、なんで天界に知り合いなんているんですか!関わりないでしょう」
「友人の多い方ですから…」
「それはズルいです。友人が多いからって誘われたら仕事休んでホイホイと宴会に行っていいわけないでしょう!」
「そりゃそうなんですが…」
「私なんて閻魔になってから一度も誘われたことないのに」
「…」
「閻魔になる前だって…私…なんて…一度も…」
 気づいたら泣いていた。部下を捕まえてまくし立てた挙句泣き出すなんて、なんて上司だろう。そう思うと自分が情けなく思えてますます涙が出てきた。裁判まで5分を切っている。行かねばと思うのに涙が止まらない。もう何が何だか分からなくなって泣いている。止めねばと思えば思うほど涙の量は気持ちに反比例して、とうとう床にへたり込んでしまった。
「取りあえず自室へお送りいたします。きっとお疲れなのでしょう。今日の裁判は全て延期にして、お休みになられるのがよろしいと思います」
 事務官の声が頭上から降ってくる。今日の自分が仕事にならないことは私もわかっている。だがそれを自分から言い出すことはできない。それは立場上のものでもあり、プライドからくるものでもあった。そして同時に事務官が対応してくれるという甘えの気持ちがあったことも自覚している。それでも、いや、だからこそ、私は涙を止めることができない。閻魔になってから初めての失態。初めて見せる部下への涙、ぶつけた不満、今自分が置かれている状況に対応することを全身が拒否していた。故に、事務官の言葉に対しても何ら反応を示せない。いや、言葉は正確に使わなくてはならない。反応を示そうという努力すら私はしていない。すべての責任を投げ出し、自分のことすら事務官に押し付け、あやしても聞かない幼児のようである。

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