Coolier - 新生・東方創想話

『東方聖魔録』

2026/03/30 18:50:16
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――――――――――――――――――――
 序章 聖魔異変
――――――――――――――――――――

第一節:異変の始まり

夜の闇は、いつもより静かだった。
風が止まり、
虫の聲(こえ)も消え、
ただ、世界が息を潜めているような静寂が広がっていた。
その静寂の中を、
ひとりの少女がふわりと漂っていた。
金色の髪。
赤い瞳。
闇を纏うような黒いリボン。
ルーミア。
彼女はいつものように、
夜の闇を楽しむようにふらふらと歩いていた。
「ふふーん……今日は月が明るいねぇ……」
闇を操る程度の能力。
幻想郷の中では決して強者ではないが、
弱者でもない。
少なくとも――
“この夜に潜むもの”よりは、
ずっと強いはずだった。
そのはずだった。

――――――――――――――――――――

◆ 違和感は、風の揺れから始まった
草がざわりと揺れた。
だが、風は吹いていない。
ルーミアは足を止め、
首をかしげた。
「……ん?」
闇の膜が彼女の周囲に広がる。
視界は奪われるが、
代わりに“氣配”がよく分かる。
しかし――
その夜は違った。
氣配が、読めない。
まるでそこに“存在していない”かのように、
空氣が空白になっている。
「……なんか、変だねぇ……」
ルーミアが闇を濃くした、その瞬間。
――カサ……
草むらが揺れた。
ルーミアは反射的に振り向く。
そこにいたのは――
“何か”だった。

――――――――――――――――――――

◆ それは、形を持たない“影”だった
白い膜のようなものが揺れ、
黒い影がその中で蠢いている。
人でも妖怪でもない。
動物でもない。
霊でもない。
ただ、
“存在してはいけないもの”がそこにいた。
ルーミアは眉をひそめた。
「……なに、それ?」
影は答えない。
ただ、揺れた。
次の瞬間――
影が“伸びた”。
「っ……!」
ルーミアは闇を濃くし、
影の攻撃を避ける。
だが――
影は闇の中でも“見えていた”。
「え……?」
闇の中にいるはずの影が、
闇を裂くように迫ってくる。
初めての感覚だった。
闇が効かない。
「なにそれ……!」
ルーミアは闇を収束させ、
反撃に転じようとした。
その瞬間――
影が“形”を変えた。
白い膜が裂け、
黒い翼のようなものが生え、
赤い光が瞳のように灯る。
それは、
ルーミアの“闇”を吸い取るように揺らめいた。
「……私の、闇……?」
影が伸びる。
ルーミアは避ける。
だが――
影は彼女の動きを“読んでいた”。
「っ……!」
胸に衝撃が走る。
闇が破られた。
「な、んで……?」
影が、ルーミアの身体に触れた。
その瞬間――
ルーミアの瞳が揺れた。
「……あ……」
影が彼女を包み込む。
闇が吸われる。
能力が吸われる。
生命の“氣”が吸われる。
ルーミアは抵抗しようとした。
「まだ……残機……ある、もん……!」
しかし――
影は彼女の“残機”すら吸い取った。
闇が弾ける。
光が揺れる。
そして――
ルーミアは影の中に沈んだ。
声もなく。
痕跡もなく。
ただ、影に“取り込まれた”。

――――――――――――――――――――

◆ 影は、進化した
白い膜が黒く染まり、
黒い翼が大きく広がり、
赤い光が瞳のように輝く。
その姿は、
先ほどまでの“影”とはまるで違う。
闇を纏い、
闇を操り、
闇に紛れる。
まるで――
ルーミアそのもの。
しかし、
それはルーミアではない。
影は静かに空を見上げた。
赤い瞳が、
夜空を裂くように光る。
そして、
影は闇の中へと溶けていった。
まるで、
最初からそこに存在しなかったかのように。

――――――――――――――――――――

◆ こうして、最初の犠牲者が生まれた
幻想郷の夜は、
静かに、
しかし確実に“侵食”され始めていた。
誰もまだ知らない。
この夜が、
幻想郷の崩壊の始まりであることを。
ただ――
草むらの中で揺れる小さな葉だけが、
そのすべてを“見ていた”。

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