それから数日後、私は博麗神社の縁側で、霊夢さんとお茶を啜っていた。あの残無との邂逅の後、私と藍さんは博麗神社の境内で倒れていた。恐らく残無が移送したのだろう。藍さんからは神妙な面持ちで迷惑をかけて申し訳ないと謝られた。藍さんが不覚を取ったのは私のせいだというのに。異変はその日のうちに決着がつき、霊夢さんは残無の企みを打ち破ったらしい。流石は霊夢さんだ。
「ねぇ、かさね?」
「な、何でしょうか?」
「あうんから聞いたけど、私の留守中に藍とどこかに行っていたそうね。何があったの?」
「…別に、何も。博麗神社を守るのに協力してもらっただけで、大したことは」
「ふーん」
霊夢さんがずずっとお茶をすする。畜生界での戦いと残無との出会いは私の胸の内にしまっておくつもりだ。霊夢さんに心配をかけたくない。いや、本当は、あんな自分の姿を知られたくなくて――
「――危ないことは、しないでよね」
霊夢さんがこちらを向いて、ぴっと人差し指を立てながら言う。私は無言でお茶を啜った。異変が終わっても、畜生界と残無の残した影は、私の心に残りつづける。