「へぇ、本当に三冊集められたのね」
翌日。私たちは紅魔館を再び訪れていた。
「妖魔本版『博物誌』に失われた史書『旧辞』、そして件の予言の書。なかなかいいじゃない」
レミリアさんは三冊の本をそれぞれ手に取って、しげしげと見つめる。
「と、いうことは…」
「おめでとう。ゲームクリアよ」
レミリアさんがにこりとほほ笑んだ。
「やったぜ!」
いえーい、とハイタッチを要求する魔理沙さん。少し恥ずかしかったが、私もそれに答えた。
「それじゃあ、クリアのご褒美をあげないとね。魔理沙、あなたはマジックアイテムでよかったかしら」
魔理沙さんが頷く。レミリアさんがぱんぱんと両手をたたく。すると、目の前に突然咲夜さんが現れた。そして、いつの間にか用意されていた机の上に、きらびやかなブレスレット、美しい装飾のついた短剣、不気味な絵柄のタロットカードなどが並べられていた。
「この中から一つ、好きなものを持っていっていいわよ」
「おお!…どれにしようかな」
そのまま魔理沙さんはマジックアイテムを手に取って物色し始めた。私やレミリアさんの事など目に入らない様子である。
「さて、かさね。あなたは何が欲しいの?」
レミリアさんが私に問いかける。
思わず考え込む。ご褒美は確かに嬉しいけれど、どちらかというと私は本を集める過程が面白そうだと思ってゲームをやろうといったから、具体的に何が欲しいかということは特に考えていなかった。
「うーん、私は特に何も…」
「無欲なのね。それじゃあこうしましょう。一つ貸しにしてあげる。あなたが困り果てた時、私を頼りなさい。一度だけ、全力で協力するわ」
「は、はぁ」
なんだかすごい重いご褒美を与えられてしまった。ちょっとした悩みごとを聞いてもらう程度で権利を使うわけにはいかない。結局いつまでたっても使えない気がしてきた。
「…よし、こいつにするかな」
どうやら魔理沙さんも貰うマジックアイテムを決めたようだ。
「それじゃあ、行きましょうか、魔理沙さん。霊夢さんの具合も大分よくなりましたし、今日は博麗神社でゲームクリアのお祝いをしませんか?」
「お、そいつはいいな。それじゃあ、夕方博麗神社集合だな」
「…それなら、私からもお酒をあげるわ。普段あんまり飲まないだろう洋酒、サービスよ」
「サンキュー。気前がいいな、レミリア」
レミリアさんからお酒を受け取った後、私たちは紅魔館を出た。澄み渡る空。三日間の楽しい冒険で得た達成感で胸をいっぱいにしながら、私はうんと背伸びをした。