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東方流重縁~forgotten wanderer~ 第二話 大いなる弾幕には大いなる責任が伴う

2024/12/29 15:08:08
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翌日。私の記憶が戻った――なんてことはなく、いそいそと着替えと朝ごはんを済ませ、霊夢さんと境内に出た。
「よう、昨日ぶりだな」
境内には既に魔理沙さんが待ち構えていた。
「これからお前に弾幕ごっこの何たるかを教えてやるぜ」
「弾幕ごっこ…?」
「スペルカードルール、とも言うわね。人間と妖怪、神が同等に戦えるように定められた幻想郷のルール。」
かわって霊夢さんが続ける。
「決闘する両者は自身の能力や得意技を『スペルカード』と呼ばれる紙にしたためる。そうして、それを宣言して攻撃する。持っているスペルカードを相手に全て攻略されたら負けよ」
「ま、習うより慣れろだ。まずは私と霊夢の戦いを見ておくことだ」
そう言って魔理沙さんは箒にまたがり、空へと飛びあがった。
「さあ、決闘だ!黒魔『イベントホライズン』!」
魔理沙さんが高らかに宣言をしたかと思うと、辺り一面に星型の光弾がばらまかれた。
「…きれい」
鮮やかな七色の星々。その煌きに思わずため息を漏らす。
「弾幕に重要なのは鮮やかさ、美しさ、派手さ!ただの決闘じゃない。全てに意味があるのさ!」
「その通り…ねッ!」
霊夢さんも星型の弾幕を躱しながら空へと飛びあがる。そうして、魔理沙さんに向かって弾幕を撃ち込む。
ソラで繰り広げられる輝きの熱戦。私はただただ見入っていた。美しい弾幕。手に汗握る回避術。体の中で熱い何かが湧き上がってくる。私もこんな、こんな戦いが出来たなら――。
「ちっ…破られたか。」
星型の弾幕が消滅する。どうやら第一ラウンドは霊夢さんの勝ちのようだ。
「次はどうするの?」
「まだかさねに教えていないことがある。それはなぁ…」
目を凝らして、魔理沙さんの様子を伺う。何やら手に持っているようで、それを霊夢さんの方に構えている。
「弾幕はパワーってことだッ!恋符『マスタースパーク』!」
「…!」
そんな魔理沙さんの叫び声が聞こえた次の瞬間、七色の極光が空を覆いつくした。
これも弾幕なのか。先ほどの星型の弾幕の鮮やさとはまた違う、ダイナミックで見るものを震わせる力強い弾幕だった。
「霊夢さん!」
極光が霊夢さんを直撃する。私は思わず目をつむった。視界が黒く染まる。その暗闇の中に、声が響いた。
「霊符『夢想封印』!」
七色の極光から霊夢さんが飛び出るように浮かび上がった。そしてその周りに、七色の光弾が7・8個が現れたかと思うと、魔理沙さんに向かって次々と放たれていった。
「…うわっー!」
魔理沙さんの叫び声。大技を撃っていた分、回避する暇がない。無情にも全弾直撃だ。
ひゅーと魔理沙さんがこちらに向かって落下してくる。あわや激突か、と思ったすんでのところで態勢を整え、宙に留まる。
「っと、あぶねぇなぁ。しかし、中々勝てないもんだな」
続いて、霊夢さんもゆっくりとこちらに降りてくる。
「どう、かさね。これが弾幕ごっこよ」
「すごい…すごかったです!とても綺麗で、華やかで、白熱してて…!」
熱に浮かされるように霊夢さんに答える。先ほどの興奮は、まだ冷めていない。
「それなら実演した甲斐もあるというものね。さあ、さっそく練習しましょうか」
「はい!」
胸が高鳴る。私もあんな風に、華麗な弾幕ごっこを――
「…と思ったけど、一つ重要なことを忘れていたわ。」
霊夢さんがなんとも言えない微妙な表情でこちらを見る。
「あんた、飛べるの?」
「…あ」
た、確かに!先ほどの実演された弾幕ごっこを見るに空を飛ぶことは必須条件だ。地面にずっといたのでは相手にならない。
「まずはそこから調べてみましょう。才能があるといいわね」
そう言って霊夢さんは地面からほんの数十cmほど浮かび上がる。
「まずこれくらいね。さあ、飛んでみなさい。弾幕が撃てたくらいだから飛べると思うんだけど…」
緊張で胸が締め付けられる。せっかく実演してもらったのに、もしできなかったら二人に申し訳ない。それに、あんなに楽しそうな弾幕ごっこが出来ないのは、辛い。
「…やあっ!」
一度かがみこんでから、思い切り垂直にジャンプする。
「ふぎ…ふぎぎぎぎぎぎ!」
地面に再び足が就く間際、渾身の力を込めて地球の重力に反抗する。
すると…
「…だめか」
霊夢さんがため息をつく。いや、違う。違うんです。よく見てください。
「いや、よく見ろ霊夢。ほんの少し、浮いてるぞ」
魔理沙さんが私の足元を指さす。
「え…?ほんとに浮いてる?」
「よーく見てみろよ。ほら、ギリギリ草履と地面の間に隙間があるだろ?」
「あー」
そうなんです。飛んでるんです。私。ほんの数ミリだけですけど。
「って、すげぇ顔になってるな。女の子がしちゃいけない顔だろ、それ」
だって、力を抜いたら落ちるんですもん。声も出せない程、力を籠めないと浮きあがれない。
「まぁ、今日は飛ぶことをメインに練習しましょう。大丈夫、0と1とじゃ大きな違いよ。」
そうして、今日は丸一日空を飛ぶ練習をするはめになったのだった。

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