流浪の果て光よ在れ
ある日の法廷。
四季映姫は鏡に手を触れた。
映し出されるは夜の博麗神社。
いつになく神妙な顔つきで祝詞を読み上げ御幣を振るう巫女。
その前に立つ、一対の白狼天狗。
銀髪に紅い瞳、という特徴だけなら鏡にうつしたようにそっくりな二人。
「えー、めんどうだからこまかいあれこれはうっちゃっておいてー」
などの一節を織り込みながら、巫女は最終的に彼らを夫婦とすることを認める旨を宣言した。
半妖とはいえ、人間が妖怪と絡むことを良しとした例など、極めて稀だろう。
祝福される二人。振り返るとそこには、博麗神社では恒例となっている宴の図ができあがっていた。
彼らにとって、飲めれば理由などなんだっていいのだ。それがめでたきものであるならば、大歓迎。
そこから先は飲めや歌えの宇宙戦争……それは夜が明けるまで、続いた。
そんな記録を読むと、映姫は鏡から手を抜き、彼女はぽつりと、誰にともなく述べた。
「そう……まずは、ご自分の親よりも長生きするというのが、子として積める何よりの善行。
その善行の結果として、その出会い、今後の縁があるのですよ」
目を閉じて、彼女は言う。その口には、満足そうな笑みが浮かんでいた。
「今は姓も名も変わって、『犬走椛』……でしたか。
全く、前世の名前に戻るとは不思議な縁もあったものです。
これだから、人生というのはわからない」
彼女が視線を外した鏡の中。映像が消える最後の一瞬、二人の影が重なっていた。