17819日目
冬が終わらない。五十年前ぐらい前にもこんなことがあったわね。今回の首謀者は西行寺のお嬢さんではないようだけど、春が来なくて嬉しいやつなんているのかしら。いるとしたら、そいつはとんだ大馬鹿者だわ。でも重要なのはそこじゃない。あの子が、私の後任の子が初めて異変解決にいくことの方がよっぽど一大事だ。あの時の私よりちょっと年は上だけど、私と同じような表情で、お嬢様の命を受けていた。能力も開花して、戦闘には事欠かさないだろうけど、ものすごく不安になってくる。子を旅立たせる親も、こんな気持ちになるのかしら。結婚をしなかったことに後悔はないけど、もう少しだけ早くこんなことを経験したかったなんて、とんだ矛盾よ。どんなことを言っても年寄りのお小言になっちゃうのは寂しいわ……。
私はもう満足に館内も動き回れないし、お嬢様のお付きも、あの子が半分以上やってくれている。もうすでにメイド長なんてやめているのだからいいんでしょうけど、仕事中毒が治らないのも考え物ね。でも基本的にはまったりと、お嬢様とおしゃべりしたり、本を読んだりしている。昔はほとんど読まなかったのにね。
館もほとんど外観と変わらない内装になってしまった。皆狭い狭い言うけれど、それほど嫌そうじゃないのはなんでかしら。確かに、それぞれが近くにいることは多くなったけれど……あれ、私今まで館を拡張してたのって無駄だったの? ……そうでないことを祈るばかりね。