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東方流重縁~forgotten wanderer~ 第七話 史上最強の超常現象

2025/07/25 20:44:31
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「ここがあの女のアジトよ!」
 チルノさんに連れられてきたのは妖怪の山。薄暗い洞穴の中をチルノさんは指さしている。
「あの女って…?」
「入れば分かるわ!ついてきなさい!」
 そのままずかずかと洞穴の中へと入っていくチルノさん。慌てて私もついて行く。果たしてその奥には、一人の女性が立っていた。雪を思わせる透き通るような髪色に、青を基調とした衣服。
「…何か用かしら?」
「とぼけるな!黒幕、レティ・ホワイトロック!」
「くろまく~?」
「証拠は挙がっているのよ。このマフラー!この前のクリスマスプレゼント交換会であたいからあんたに渡ったものだ!」
「…ちっ」
 証拠を突きつけられ、とたんに苦い顔をするレティ。この反応を見る限り、あのUFOに乗っていたのは彼女で間違いなさそうだ。
「…仕方がなかったのよ。これも私が生きるため。という訳で秘密を知られたからにはただで返すわけにはいかないわ!」
 そう言うや否や手のひらから弾幕を繰り出すレティ。
「うわっ!」
「下がってチルノさん!『半跏趺斬』!」
 飛ぶ斬撃で弾幕を切り落とす。
「この弾幕は…チルノさんの弾幕!?」
「ということは、あの時あたいの羽を奪ったのはお前だなー!」
「屈辱だわ。この私が氷精なんぞの力を奪わなければ存在できないなんて…」
「それはどういう…」
 なにやら、レティの方にものっぴきならない事情がありそうだが。それを聞き出すためにも、今は弾幕ごっこに打ち勝つしかない。
「寒符『フェアリー・リンガリングコールド』!」
 冷気が弾幕となって私に襲い掛かる。
「かさね!」
「大丈夫です!」
 弾幕の流れを感じ取れ。チルノさんの力を使っている相手は本調子ではないはずだ。冷静になれば、避けられるはず。
「そこ!奇剣『弾幕マンティコア』!」
「きゃっ!」
 形を変える弾幕がレティを貫く。
「ま、まだよ!冬符『フェアリー・フラワーウィザラウェイ』!」
 無数の弾幕が、私に向かってくる。
「力を貸すわ!かさね、刀を!」
 チルノさんが飛び出してきて言う。言われるがままに剣を掲げる。
「はあああああ!」
 チルノさんの手から冷気が放たれ、刀に宿る。よし、これなら。
「これで終わりです!氷剣『アイシクルスウィング』!」
 思い切り刀を振り抜く。冷気の波が放たれ、弾幕ごとレティを押しつぶす。
「…きゅう」
 倒れるレティ。それを無理やり起こすチルノさん。
「さあ、私の力を返してもらうわよ!」
「…それは出来ないわ」
「弾幕ごっこの結果が納得できないと?」
「違う。今私があんたの力を手放すと…消滅してしまう」
「「消滅!?」」
 全く事情が呑み込めない私たちを待つことなく、レティ…さんは続ける。
「私も理由は分からない。けれどある日意識を失って…気が付くと力が抜けて、倒れ込んでいた。雪女たる私はただでさえ冬でなければ力が弱まるのに。このままだと存在を保てなくなって、消えてしまう。そんな時…あいつが話を持ってきた」
「あいつ?」
「それは言えないわ。それが契約。あいつは、私を一時的に動けるように力を与えたあと、こう言った。『消えたくなければ、私に従いなさい。他の妖怪どもから力を奪うのよ』って」
「それで、チルノさんを?」
「そうよ。そこの氷精から力を奪って取り込んだ後、余った力はそいつに渡したわ」
「黒幕は別にいるってことですね」
 どうやらその黒幕を捜して倒さないことには、チルノさんや他の面々の力を取りもどすことは出来なさそうだ。
「そうと分かれば真の黒幕を捜すわよかさね!最強のあたいを出し抜こうなんて、いい度胸してるじゃない!」
 そう言ってチルノさんは洞穴の外へと出て行った。力を取り戻せなかったというのに、切り替えが早いなぁ。

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