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東方流重縁~forgotten wanderer~ 第七話 史上最強の超常現象

2025/07/25 20:44:31
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翌日。
「ふむふむ、円盤型、アダムスキー型…。UFOにも色々種類があるんですね。ケネス・アーノルド事件、ロズウェル事件…?」
「菫子の奴がいればもっと話は早かったんだがな。いや、かえってややこしくなるか?」
「ちょっと、立ち読みばかりじゃなくてちゃんと本を借りてってくださいよー」
 私とUFO事件に興味を持った魔理沙さんは鈴奈庵でUFOについて調べていた。平日の開店直後に来たからか、店内は私たち以外に一人しかお客さんがいない。
「UFOと言えば、宇宙人ですよね。日本語で言えば「未確認飛行物体」ですから必ずしもUFOが宇宙人のものとは限りませんけど。私が見たUFOは宇宙人が乗っていたのでしょうか?それとも…」
「さあな。ただ、UFOを乗り回すような妖怪がいないとも限らん。「虚舟」の話を知ってるか?」
「虚舟?」
「江戸時代ごろだったか。常陸国に円盤型の不思議な船が流れ着いた。中には異国の女が乗っていて、どこのものか分からない文字が刻まれていたそうだぜ」
「――まるでUFO!」
「まあ、その異国の女が本当に異人だったのか、それとも妖怪の一種だったのか、あるいは宇宙人だったのか。今となっては確かめるすべはない。ただ昔の日本にもそんな話が残っているくらいだから、宇宙人だとばかり思うのもどうかと思うぜ」
「なるほどです」
「あとはまあ、昨日も言ったが。正体不明の妖怪の仕業か。なあ、そこのぬえ。お前もそう思うだろう?」
「「「えっ!?」」」
 魔理沙さんがミニ八卦炉を店内にいた客に向ける。その客はびくっとした後、観念したかのように首を振った。客の姿がぐにゃりとゆがむと、次の瞬間には、黒い髪の少女がぬっと立っていた。
「ぬ、ぬえ…さん!?」
「な、何故ばれた…」
「私は意外と顔が広くてね。こんな時間に鈴奈庵に来るようなもの好きな里の奴の顔は全員覚えているんだ。でも、その誰でもない。おまけになぜか特徴がよく分からない。男か女か、どんな顔立ちか、どのくらいの背か。そういうことが何故か印象に残らなかった。こんな芸当が出来るのは鵺的妖怪くらいなもんだ」
「ふ、ふん。言っておくけど、今回は何の関わりも無いからね。里でもUFOの目撃情報で盛り上がっているみたいだけど、正体不明の種なんか植えてないから」
「あ、ぬえさん。その節はどうも…」
「ふん。あれから少しは出来るようになったか?今度暇な時にでも相手してやるよ」
「ところでぬえさんは何で鈴奈庵に?」
「それは…その」
「ふふっ、案外可愛い所あるじゃないか。その本、外来の少女漫画とかいう奴だろ」
「~っ!!!!!」
 魔理沙さんの指摘に顔を真っ赤にするぬえさん。
「あ、確かに最近よく少女漫画を借りに来ていたお客様がいたっけ。記憶に残らなかったのは、妖怪だったからなのね」
「――悪いかよ!妖怪が少女漫画を読んじゃ悪いのかよ!」
「いや、悪いってことはないと思うぜ。ただ、少女漫画、ふふふ」
「言いふらしたら殺すからな!」
 今度私も読んでみようかな。少女漫画。
「んじゃ、代わりにちょっと付き合え。お前もUFO事件の主犯って疑いをかけられるのは嫌だろ」
「なんで私が…」
「嫌なら幻想郷中にお前の趣味を言いふらすだけだ」
「お前。…しょうがないなぁ。ちょうど暇してたところだし、少しだけなら」
 やれやれというようにぬえさんが言う。さすがに少し可哀想だ。
「よし、実力者も手に入ったところで、チルノと合流するか」

「遅―い!」
 鈴奈庵を出て、待ち合わせ場所にやってきた私たち。
「お前なぁ、待ち合わせ場所の指定がざっくりすぎるんだよ。なんだよ広い原っぱって。見つかったからいいけどさ。やけに草深いし」
「ごめんなさいチルノさん、少し調べたい事があったので…」
「ふーん。まあいいわ。あたいは心が広いからね」
「何で私が妖精なんぞに付き合わなきゃいけないんだ…」
「おっ、そっちも助っ人を呼んできたのね。あたいの方も、何人か呼んできたわ。今からやろうとすることには人手がいるもの」
 そういってチルノさんはわざとらしくパチンと指を鳴らした。すると、チルノさんの後ろからぞろぞろと姿を現す人影が。左から緑髪の触覚が生えた少女、金髪のリボンをつけた少女、桃色髪の羽が生えた少女。
「紹介するわ、かさね。あたいの友達、リグル、ルーミア、ミスティアよ!」
「よろしく」
「そーなのかー」
「ららら~♪」
「こいつらと同類扱いされてるの、私?」
「うお、こりゃバカの四重奏だな」
「いや、私はまともだと思うけど。他と比べると」
「そーなのかー?」
「ららら~♪ぶちのめされたいか~♪」
「ちょっと魔理沙さん、失礼ですよ」
 まあチルノさんの友人だけあって、何となくみんな抜けている気もするが。
「さあ、早速作業に取り掛かるわよ!みんな、あたいの指示で動け!」
 チルノさんがびしっと人差し指を立てる。
「ところでチルノさん、何をするつもりなんですか?こんなに人手が必要なんて」
「ふふん。それは…ミステリーサークルづくりよ!」
 高らかに宣言するチルノさん。
「ミステリーサークル!本にも書いてありました。UFOの着陸によって田畑に現れる不思議な模様…」
「そう、UFOとミステリーサークルは密接に関係しているのよ!」
「でもそれって因果が逆転してないか?UFOが現れたからミステリーサークルが出来るのであって、ミステリーサークルがあるところにUFOが来るわけじゃないだろ」
「所詮は妖精か」
「確かに」
「そーなのかー?」
「ららら~?♪」
「細かいことはいいんだよ!天才のあたいの完璧な作戦にケチをつける気!?さあ、早く作った作った」
 チルノさんにどやされ、仕方なく動き始める私たち。
「そこの草を3メートルくらい右に切って、リグル!ルーミアはその下を円形に!みすちー、そっちじゃない!こらー、真面目にやれ、ぬえ!魔理沙とかさねは斜めに切って!」
 上空からチルノさんの指示が飛ぶ。一体どんな図形を作ろうとしているのだろう。
「ああくそ、なんで大妖怪の私が妖精なんかにこき使われなきゃいけないんだ」
「これでいいの、チルノ!?」
「うおお、私はまるで妖怪チェーンソーなのかー」
「ららら~♪労働と歌が結びついていた時代を思いだすわね」
「やれやれ、草深い原っぱを選んだのはこれが理由か」
「ふうふう、弾幕ごっこのときより刀を振るっている気がする…」
 チルノさんの指示に従いながら、草を切り続けて数刻後。とうとうその時がやってきた。
「よーし、出来た!終わり終わり!」
「やれやれ、疲れたよ」
「やっとなのかー」
「いったいどんな図形を…?」
「ららら~♪確かめてみましょう~♪」
「くだらないもんだったら承知しないからな」
「それじゃ、皆で上から見てみるとしようぜ」
 魔理沙さんの呼びかけと共に、飛び上がってミステリーサークルを確認する面々。眼下に広がるこれは…チルノさんの顔?
「じゃーん、これがあたいの最強ミステリーサークルよ!」
 私の目の前でびしっと決め顔したチルノさんとまったく同じ顔が、下に展開されている。顔の下には「あたい参上 かかってこいUFO」という文字まである。
「…おい」
「い、いたた!槍で刺すな!何が気に食わないのよ、ぬえ!」
「すべてだよ!」
「まあまあ」
「これでうまくいきそーなのかー?」
「ららら~♪皆でUFO召喚の歌を歌いましょ~♪」
「それだ!みんな、みすちーに続け!」
「た、確かに!UFOと交信して呼び出した事例があるって、本に書いてありました!」
「…かさね、お前ちょっと素直すぎないか?」
 歌を歌い始めるチルノさんたちに、念じる私。こいこい、UFOこいこいこい。…交信はこれであってるのだろうか?――すると。
「…ほんとに来やがったぜ!しかも複数!」
 一体何が要因なのかは分からないが、UFOが5機、上からこちらに迫って来た。フォンフォンという音を立て、太陽と見まごうような光をこちらに向けている。
「来る!」
 チルノさんの叫び声をかき消すように、五機のUFOから光線が放たれる。
「うわっ!」
「あばばばばばば~♪」
「退場が早々なのかー」
 リグルさん、ミスティアさん、ルーミアさんに光線が直撃する。光線を直撃させたUFOたちは逃げるように飛び去って行く。
「このバカどもが!何の役にも立たないじゃない!」
 悪態をつきながらぬえさんが三叉を投げつける。三叉は逃げるUFOの一機に直撃し、ミステリーサークルへと墜落していく。慌てたように、UFOは逃げながらも再び光線を放つ。
「恋符『マスタースパーク』!」
 その光線を、七色の光彩が包み、押し返す。光彩はそのままUFOたちを空の彼方へ押し流す。
「って、押し流したら犯人が分からないじゃないですか!」
「てへ。ちょっとやりすぎたぜ」
「やれやれ。それじゃあ撃墜した一機を確認するか」
 戦いを終え、弛緩した空気が流れる。その刹那。
「――後ろ!魔理沙!ぬえ!」
 突如として現れたUFOがもう一機。
「っ!恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」
「鵺符『弾幕キメラ』!」
 慌てて反撃する二人。
「ふ、不可知剣『鬼女返し』!」
 私もそれに合わせて反撃する。しかし。UFOはそれをすべてかいくぐった後、二本の光線をぬえさんと魔理沙さんに向け発射する。
「う、あばばばばばば」
「この私が…ぐぅぅぅうううう!」
 光線があたり、地面に落下していく魔理沙さんとぬえさん。UFOはそのまま飛び去っていく。
「ま、待て!」
 私はただ、意味の無い呼び止めを言うだけしかできなかった。
「くそー、作戦は完璧だったのに。まさかこれだけの頭数を揃えて負けるなんて。あたいが万全ならこんなことには」
 悔しがるチルノさん。
「それよりも皆さんは!?」
 墜落していった皆は無事だろうか。慌てて地面に降り立つ。
「皆さん、大丈夫ですか!?」
 地面に倒れ伏している面々に声をかける。
「うーん」
 ゆっくりと立ちあがるリグルさん、ルーミアさん、ミスティアさん、魔理沙さん。
「…あれ、虫の声が聞こえない?」
「力が出ない…これじゃ闇を生み出せなさそーなのかー」
「…!?…!…!」
「ミスティアさん、もしかして声が…」
「ああくそ、まんまとしてやられたぜ。UFOはそいつの特徴的なチカラを奪うのか。私の場合は、魔力と気力…一歩も動けないぜ」
「そんな…」
 チルノさんの羽が奪われたようなことが、他の四人にも起きてしまった。――何もできなかった。私は運よく攻撃を逃れたに過ぎない。何としても、皆の力を取り戻さなくては。
「ところでぬえは?」
 いつの間にか私の隣に降りてきたチルノさんが疑問の声を上げる。
「あれ、そういえば…ん?」
 よく見ると、魔理沙さんの横にぽてっと倒れている謎の動物が。
「う、うう」
「喋った!」
「くそ、うまく立ちあがれないぞ。何がどうなって」
「その声、まさかぬえさん!?」
「あ?みりゃ分かるだろって、なんじゃこりゃああああ!」
 ぬえさんが驚きの声を上げる。それもそのはず、ぬえさんの姿は可愛らしい小動物に変化していたからだ。えーと、この動物は確か…。
「ぷっ、あははははは!ぬえ、お前、レッサーパンダになってるぞ!」
 ああ、そうそう。レッサーパンダ。
「顔は猿、胴体は狸、足は虎で、尻尾は蛇だか狐だか。た、確かに、当てはまっているといえば当てはまってるぜ…ぷふふ。」
「ふざけるな!そんなわけないだろ!だいたいレッサーパンダは日本にはいない!」
「どうやら「正体不明」を奪われたようだな。似合ってるぜ、その姿…」
「殺してやる!」
 ぐわっと立ちあがるレッサーパンダぬえさん。
「…かわいい」
 いわゆる威嚇のポーズ。
「ちくしょう、体が勝手に」
「茶番はそこまでよ!ぬえが撃墜したUFOが一つあったはず。それを調べるのよ!」
 そうだ、チルノさんの言う通りだ。何か手がかりを見つけないと。
「これがUFO…?」
 撃墜したUFOを調べる。
「この材質は…!?」
 UFOに触れる。すると、今まで金属に見えていた外壁が、突然ぺらぺらの紙へと変貌してしまった。
「つまり…UFOは何らかの幻術だったってこと?」
「あれ、これは…」
 チルノさんが何かを見つけたようだ。そして、勝ち誇ったようにそれを掲げる。
「…マフラー?」
「黒幕が分かったわ!かさね、今から黒幕のところに殴り込みよ!」
「え、ええ!?」
 一体チルノさんは誰の事を指しているのだろうか。そもそも最後の不意打ちを含めたら6機いたUFOの内の1機だから黒幕とは限らないのでは。いや、でも今はこれ以外に手がかりがない。とりあえずチルノさんについて行こう。

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