Coolier - 新生・東方創想話

短編集

2022/03/02 21:30:00
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   『其処には何があった?』



 其処には何があった?


 其処には噂があった。


 最初にそれを発見したのは、里に住む子どもたちだった。

 里の外には沢山の危険が潜んでいる。その意は人物と言葉を変え、幼い頃から何度も教わる。子どもたちも御多分に漏れず寺子屋から、両親から、近所のやかましい爺婆から。何度も何度もと教え込まれてきた。子どもたちはその言葉を正しく理解できる程に賢くはあったが、年相応に好奇心が強くもあった。
 
 ある日子どもたちは人里からほど近い森へと探検に来ていた。最初こそ反対の意見も出ていたが、森の入り口から里が確認できる程には近いこと、そして幼さゆえの好奇心と見栄が反対の意見を跳ねのけるには然程の時間も要らなかった。

 大人たちの目を盗み、子どもたちは里を抜け出した。まだまだ寒さの厳しい時期ではあったものの、森に着いてもまだ日が高かったこともあったのだろう。少年たちは木を昇り、少女たちは形の良い落ち葉を見て楽しみ、どんどんと森の奥へと進んでいった。木々の隙間を抜けた先、先頭を歩いていた兄貴分の少年がそれを見つけた。

 少年たちの前に現れたのは、里では見たことが無いような大きな洋館だった。森の奥にある洋館の話など誰も聞いたことが無い。だが、人の気配は無いように感じられた。

 誰が、というわけでもなかったが、子どもたちの中にあった好奇心は段々と萎んでいった。そして同時に、その隙間を埋めるようにしてじわりじわりと、別の感情がそれぞれの胸中に侵食していった。一人の少年があっと声を上げた。どうしたのかと皆が尋ねると、その少年はある扉を指さした。


誰か、いる


 他の子どもたちも視線を向けるが、入口であろう扉はしっかりと閉じられている。脅かすなよと兄貴分が息をついたところで、ぎい、と音が鳴った。子どもたちは外していた視線をゆっくりと玄関に戻す。しかし一人の少年だけは、さしたままの指先をがたがたと震わせていた。

 子どもたちが視線を向けた先、館の二階、洋風の窓にはどこか顔色の悪い少女の顔があったのだ。


うわああぁっ 


 子供たちはそれぞれが絶叫しながらその場から逃げ出した。子どもたちがいなくなった後、がちゃりと、扉の閉まる音が森の中に響いた。







 其処には何があった?


 其処には困った表情を浮かべた教師の顔があった。


 教師から一通りの話を聞いて、巫女である博麗霊夢は『フムン』と鼻を鳴らした。困り顔を戻さぬまま教師、上白沢慧音はどうだろうかと再度霊夢に尋ねる。何秒かの間の後に構わないぜと返事をしたのは霊夢ではなく、その後ろで話を聞いていた黒白の魔法使い、霧雨魔理沙だった。


「アンタが言うんじゃないわよ」

「いいじゃあないか。減るもんでもなし。それにこっちも準備万端みたいだぜ」


 霊夢が向けた視線の先では、風祝の東風谷早苗が瞳を輝かせている。別段断る気は無かったのだが、間を作ったのはこの二人を帰してから返事をしようと思っていたためだった。案の定というべきか、早苗も魔理沙も首を突っ込む気は満々であるらしい。面倒なことになったと思いつつも、霊夢は慧音に引き受ける旨を伝える。ほうと息を吐いて、慧音は心底安堵した表情になると、よかったと一息をついた。

 子どもたちが館を発見してから、人間の里は俄かに騒がしくなっていた。件の森は里からも確認ができるほどに近い。そこに得体のしれないモノが潜んでいるかもしれないのだ。住民たちが不安になるのも無理からぬ話であったし、それ以上に危険なのが、この情報を持ってきたのが子どもたちであるという点だった。事実、既に何人かの子どもたちが館を見に行こうとして何人も自警団に捕まっている。このままでは大人たちにも子どもたちにも良い影響にはならぬだろうと、早急な解決が求められている。それこそが慧音が霊夢を訪ねた理由だった。


「面倒なことにならなければ、いいけどねえ」


 慧音を見送った後、居間に戻った霊夢はそう呟きながら冷えた指先を茶の入った湯呑で温める。じわりとした刺激を感じながら目を細めて思考を走らせる。

 妖怪が暴れている、幽霊がいる、といった依頼は霊夢にとっては楽な部類だった。

 過程はどうでも最終的には対象を退治すればいいだけの話なのだから。勿論退治するにも様々な方法があるのだが、その手間は霊夢の中では面倒の中には入っていないのだ。逆に本来の巫女としての勤めの方が煩わしいと感じているあたりが、妖怪神社などと揶揄される博麗神社の現状を表しているのかもしれない。


「ま、なんとかなるでしょ」


 魔理沙と早苗に聞こえぬように、霊夢はそう呟くのだった。







 其処には何があった?


 其処には確かに館があった。


 慧音から相談を受けた次の日。霊夢たちは噂の森へと足を運んでいた。小さな子供たちにとっては大冒険だったのかもしれないが、森に足を踏み入れてから程なくして館は見つかった。マジックアイテムや茸を取りによく方々を飛び回っている魔理沙も、この館の存在はわからなかったようだ。


「しっかし、随分と痛んでるなあ。こりゃあ本当に幽霊の根城になっているかもな」


 魔理沙は愉快そうに笑いながら館へと近づいていく。まだ冬ということもあって葉のついていない木々は陽の光を邪魔することは無いが、それでも寒いものは寒い。白い息を吐きながら元気なものだと霊夢は魔理沙を眺める。逆に霊夢の隣で立ちすくんでいる早苗は、誰の目から見てもわかるほどに顔が引きつっていた。


「大丈夫?顔色悪いわよ、アンタ」

「だ、いや、大丈夫ですよぉ。ただ、ちょっと、怖そうだなっていうだけで……」


 妖怪化生は嬉々として退治しようとする風祝は、どうやら幽霊お化けの類は苦手らしく霊夢はなんともアンバランスな価値観だと感じたが、早苗が言うには何も怖がらない方がおかしいとのことだった。饅頭は怖いわよと返したところで、館の角から魔理沙がこちらに向けて手を振っていることに気が付いた。どうやら中に入りたくて仕方が無いらしい。


「さっさと入ろうぜ。何があるかわからんしな」

「何があるかわからないから、慎重になるんじゃないんですか?」

「知らないのか。感情と情報は鮮度が命なんだ」


 若干腰が引けている早苗の意見を一蹴し、魔理沙は力強く玄関を開けた。重厚な両開きのドアはその見た目か想像ができるように重厚な軋みを三人の耳に響かせる。中に入った三人が目にしたのは、意外な光景だった。


「……外と違って、随分と掃除が行き届いているみたいね」

「みたいだな」


 玄関を開けた先には大きなホールと二階へと続く両階段。外からだとあまり感じられなかったが、中々に大きいつくりをしている。光を取り込むために造られたのだろう円形の天窓は、その役目を存分に果たしている。外から見た廃墟のような印象は無く、むしろ建てたばかりなのではないかと思う程に館の中は綺麗で、静謐を保っていた。

 一通りホールの周りに視線を巡らせたところで、霊夢は両階段の踊り場に人影を見つけた。和服姿の女と。洋装の男。霊夢は何故だか、二人はきっと夫婦だろうと確信した。そして同時に、その二人が既にこの世の者ではないことも悟った。二人の身体は青みがかった光を纏い、薄っすらと透けていたのだ。

 ちょっと。そう霊夢が声を出した時には、夫婦の幽霊は姿を消していた。魔理沙は別段驚いた様子もなく、早苗は未だに顔を青ざめさせている。しかし一瞬だったからだろうか、それとも館の中が明るいからだろうか、霊夢は夫婦から悪意を感じなかったのだ。







 其処には何があった?


 其処には様々なものがあった。


 どこかに消えた夫婦の幽霊がいるかもしれない。人の住処ではないと改めて確信した三人は館の中を探し回った。悪意が無いと感じていたのは早苗も魔理沙も同様だったようで、各々が好きなように館内を巡る。霊夢は階段を昇ると目に着いた部屋へと入る。寝室だったのだろう、品の良い家具とベッドが設えられた部屋だった。

 テーブルの上に置いてあった革張りの装丁がなされた本は、館の中とは時間の流れが違うかのように古ぼけている。表紙を捲ると沢山の写真が貼り付けられていた。


「……これは?アルバム、ってやつかしら」


 仕事をしている男の写真。テーブルを囲んで談笑する女たちの写真。炊事場で水仕事をする女中たちの姿も撮られていた。そして、大体の写真では写っている者たちは笑顔を浮かべている。きっと幸せだったのだろう、知らず霊夢は口元を緩めていた。

 ふと、頁をめくる手が止まった。そこに貼られていたのは、赤子を抱いて微笑む女の写真だった。どうやら夫婦の間には子供がいたらしい。そして写真の割合も子供が多くなっていく。アルバムの中で、子どもはすくすくと育っていく。四つん這いだったのが二本の足で立ち上がるようになり、ふくふくとしていた顔は少女らしく成長していく。ピアノを習っていたのだろう、小さい腕を懸命に伸ばしてピアノを弾いている姿が写真には写っていた。指の感触が変わる。後の頁には何も貼られてはいなかった。

さっき目撃した、夫婦の幽霊を思い出す。その傍らに子どもの姿は無かった。それが意味するところは複数あるのだろうが、どれが正しいだろうかと霊夢は嘆息する。

 分かっていることは、夫婦の幽霊のようなものは確かに館内に現れるということだ。そも目的も無ければ幽霊になどならない。そして往々にしてその目的とは怨恨か未練が先に来るものである。だが夫婦の姿からは悪意のようなものも、さらに言えば人外の者特有の気配すらも感じることが出来なかった。霊夢が発見できたのは単純に視線を動かしていたからであって、気配を察知したわけではない。

 少し、何かがずれている。そう思いながら霊夢は次の場所を探索する。

 霊夢がアルバムを眺めている間、早苗は調理場を探索していた。霊夢は早々と階段を昇って二階へ向かってしまうし、一緒に一階を探索していた魔理沙は早々に別の部屋へ向かってしまったのだ。本当ならば二人のどちらかについていきたい気持ちがあったのだが、対抗心と見栄が混ざった結果、結局早苗も一人で探索をすることに決めたのだった。

 調理場は幻想郷の一般的な調理場と違い、早苗が持っているイメージに近いもの、所謂キッチン然としていた。大正か、昭和の初期か、もしかしたら明治にもすでにこのような造りはあったのかもしれない。流石に建築様式を見て年代を当てられるほど雑学に精通しているわけではなかったが、このキッチンとも呼べる調理場は、早苗にある種の確信を持たせた。


「やっぱり、幻想入りしたものなんだ、ここ」 


 以前に、霊夢から聞いたことがあった。曰く幻想郷には全てから忘れ去られたものが流れ込んでくるのだと。隣にあった食堂も先程調べたが、年代相応の埃が積もっているだけで整然としていた。キッチンも同じだ。

 薄暗い室内に差す陽光。初めて来たはずの場所なのに、視界に入る景色は早苗の脳内にある記憶に強く重なった。
 
 まだ外の世界に居た頃だった。遅刻をしてしまった早苗は教室までの道を足音を立てずに歩いたことがあった。春の季節だったことを憶えている。まだ午前中ということもあってか、廊下の電気は消されていた。教室に日が入る時間帯、逆に廊下は薄暗かった。その時の、かくれんぼで鬼が近くにいるときのような、思わず声が出そうになるような、あのむず痒い感覚が去来したのだ。
 
 窓から差す光は、そんな早苗の逡巡を察しているかのように埃を照らしている。薄暗い部屋の中で切り取られた埃はゆらりと動くその姿がまるで迷子のように見えて、早苗は知らず足音強く捜索を続けるのだった。

 霊夢と早苗が探索を続ける中で、霧雨魔理沙は己の好奇心に従って探索を始めた。つまりはお宝や珍しいものがないか、というのを主目的にしていたのだ。

 だが館はそんな彼女の欲求を満たすことは出来なかった。魔理沙が見た大体の部屋が、客間なのだろうかベッドとシンプルな家具類のみの、『がらんどう』とした部屋ばかりだったのだ。


「……肩透かしかな」


 ついていくと言った手前顔にこそ出す気は無かったが、それでも魔法の森で新種の茸でも探していた方が知的探求心は満たされただろう。

 そうして廊下の突き当り、今まで調べたものとは違う両手扉の部屋に入る。それは今までの部屋以上に寒々しいほどの空間を持っていたが、それと同時にその部屋の中心には今までの部屋とは違うものが見えた。

 真っ黒な体には幾何もの汚れもついておらず、窓からの光は届いていないはずなのに、まるで輝いているようにも見える。それは誰が見てもピアノで、魔理沙は自分でも知らず、口笛をひゅうと鳴らした。

 瞬間、意識が幼かった頃に逆行した。

 母はピアノが上手だった。大問屋の女将などゆっくりできるはずもないのに、彼女は時間を見つけては、ピアノを弾いてほしいとせがむ自分に優しい音色を聞かせてくれた。

 それは魔理沙が普段耳にしていた番頭や父親、そして客たちの活気のある声とは違う、ただただに透き通った音だった。ピアノの音があまり漏れないようにと壁を厚く作っていた部屋で、魔理沙は母の背中を眺めながら、あの透き通った時間を楽しみにしていたのだ。
 
 思い出が視界に重なったままに、魔理沙はピアノへと歩みより、そして見つけた。青白く透けた肌の少女が、ピアノを弾こうと座していたのだ。

 目が合う。生きている人間には出すことが出来ないほどに、その瞳は真っ黒く澄んでいた。調査を依頼されるような曰くのありそうな建物で出会った人間ではないであろう少女に対して、それでも魔理沙が臨戦態勢を取らなかったのは、ひとえに少女から邪気のようなものを感じることが出来なかったからだろう。


「一曲、お願いできないか?」


 魔理沙の言葉に、少女はにこりと笑うのだった。







 其処には何があった?


 其処には思い出があった。


 少女が一所懸命に弾くピアノの音に霊夢と早苗が気付くのには、さほどの時間もかからなかった。

 やってきた人間三人を客として、幽霊少女の演奏は続く。

 霊夢には、親との思い出というものが少なかった。物心がついたころには、すでに巫女としての修行を始めていたから。だがそれでも、今自分が耳にしている音が素朴で、そして侵してはならない類の何かを持っているのだということは理解が出来た。
 
 早苗が久しぶりに耳にしたピアノの音は、魔理沙と同じように、早苗の過去と結びついていた。それは家族との思い出ではなく、主に学校で過ごした級友たちとの思い出だった。音から拾い出した思い出は、早苗の中にあった見知らぬ場所を探索する緊張や簡単な恐怖を、柔らかく安堵で包む。

 霊夢と早苗が幽霊少女の演奏に耳を傾けているのように、魔理沙もまた目を閉じて音に身を委ねていた。
 
 少女の背後に、あの夫婦の霊が立っていた。きっと親子なのだろうその夫婦の目は、きっと今はまだ演奏に夢中で後ろに気づいていないのだろう娘を、優しく見つめていて。

 そこに早苗は在りし日の両親の瞳を思い出し、霊夢と魔理沙は微かな胸の痛みを感じた。それはきっと、幼いの頃に欲しがっていた景色の一つだったからかもしれない。

 演奏が止んだ。少女は椅子から降りると霊夢たちに一礼し、そして背後にいた両親にようやくと気が付いた。びっくりしている少女に、両親は微笑み、そしてその姿が消えていった。


「……幽霊、ですよね」

「まあ、そうだろうが」


 口を開いたのは早苗だった。それに魔理沙も頷いたが、霊夢だけは人差し指を唇に寄せたまま部屋を後にする。

 どうしても、霊夢には先程の親子の霊に『意志』のようなものを見ることが出来なかった。喉元まで出かかっている言葉を、玄関ホールで再び見た親子の霊が後押しした。


「そっか」


 霊夢は言うや、館を出た。早苗は霊夢の考えを知ることもできなかったが、なんとなく答えにたどり着いたのだろうと、魔理沙は考えた。その魔理沙の予想通りに、館から出て十歩ほど、霊夢は振り返ると今出たばかりの館の二階部分を見つめた。

 わかったのかと、魔理沙の口調に霊夢は軽く首をかしげると、まあ、とだけ呟く。そうして目を剥けていた場所を指さし、魔理沙と早苗に示した。そこには先程満足して消えたはずの少女の幽霊が、窓からこちらを見つめていた。


「この館が見せてるのよ」


 入るときには随分と痛んでいた館の外観は、新雪のように真っ白に染まっていて。霊夢たちが中で見た内装のように在りし日の姿を取り戻していたのだ。


「きっと、愛していたんでしょ。住人たちを」

「愛されていたんだなあ」


 館は、ただ見せていただけだったのだ。在りし日、自分が愛し、そして自分を愛してくれた家族たちを。








 其処には何があった?


 其処には何とも言えない慧音の顔があった。


 
 結局、事の顛末を聞いても慧音は眉尻を下げたままだった。その気持ちは霊夢にも十二分にわかるものだった。この狭い世界に生きる人間や、そこに属するものたちにとっては、どうしても館の存在は不安を拭えないものだろう。

 
「まあ、わかったよ。あの館に悪いものは無いんだな」

「多分ね。変に刺激しなければ大丈夫でしょ」


 お茶を啜る霊夢。そして炬燵にあたり『とろけている』魔理沙と早苗に、慧音はもう一度問いを投げた。其処には幽霊が守る財宝も、晴らさなくてはならない恨みや憎しみも、何もなかったのだ。では何故あそこに館は現れ、幽霊を見せるのか。

 もっともな質問に、霊夢はお茶を一息に飲み干し、境内に目をやった。今朝は随分と冷え込みが和らいだのを感じていた。もう春も近いのだろう。

 ふと、境内の桜の木の下だけが現実から切り離され、呼び起され、霊夢の視界に飛び込んだ。幼かった頃、まだ育ての親がこの神社に住んでいた頃の記憶。

 だが、その視界に移ったのは自分の思い出ではなかった。なぜなら思い出の視界には、自分が映っていたから。それはきっと育ての親の視点で、そこにあったであろう感情を、霊夢は今になり改めて気づいたのだ。それは、あの館で見た夫婦のような感情、気持ちとそう違いは無いのだろうとも。

 きっとあの館は、あの時、あそこにあったものを見せているのだ。宝物を自慢する子どものように、純粋なまま。

 霊夢は慧音の問いに口を開き、言葉を出す前に再び湯呑に口をつけた。答える気が無いのだと知った慧音は不満を隠さぬままに、教えてくれてもいいだろうとせがむのだった。きっとあの館は、訪れた者に平等にあの時を見せるのだろう。


 其処には何があった?


 其処には確かに愛があった。



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