それから、最後に一つだけ。
しんと静かな夜の中。私はふと、自分の意識が現にあることに気が付いた。
けれども私は、夢と現の曖昧な境界の上に居て、ぼうっと夢見心地に現の感覚を漂っていた。
そんな私の耳に、清蘭の声がかすかに聞こえてきた。
「そんなにいい顔、しっちゃてねえ……きっといい夢、見てるんだねえ……」
清蘭の声もまた、夢見心地にふわふわと浮かんでいた。そうして私もまた、夢見心地でふわふわと聞いていた。
だからこの出来事は、現の話か、夢の話か、そんな境界だって、とても曖昧なものだった。
けれども、どうも一つだけ、確かなことがあるはずだ。
地上で暮らすことになって、はじめて眠った夜に、私が見た夢。
それはどうやら私にとって、とてもいい夢だったらしい。
それはきっと、私がいつも、胸の中でそっと見ている夢なのだ。