そうしてきっと、ここは夢の中。
空に大きな月があり、広い土地を照らしている、そんな夜。
やいのやいのと、声がする。
私は清蘭と一緒に餅つきの最中だ。
そして、ここに居るのは清蘭だけじゃない。
誰だろう。おぼろげで、まだ少し遠くのところだ。私にはまだ分からない誰かがたくさん、賑やかに居る。
どこかで見た顔もある。久侘歌も、射命丸もいる。それから、紅白の巫女に、白黒の魔法使い。緑色をした風祝。
みんなよりも私たちと近いところに鈴仙の姿があって、こっちに手を振っていた。
きっと、この餅つきが終わったのなら、私と清蘭も鈴仙と連れ立って、あちらへ行くんだろう。そんな予感をなぜか確信していた。
そうして、私は食べていた。私の好きな月白色の団子。気付けば鈴仙も一緒に食べていた。まだ私には分からない、鈴仙の好きな団子だ。大切そうに両手で持ちながら、ゆっくりと食べている。それから清蘭も食べている。それは清蘭の好きな小さな団子だ。その味が何かは、私にはまだ分からない。それでも清蘭は一口食べると言うのだ。
「これ、美味しいねえ」
そうやって清蘭は笑うのだ。私も鈴仙も、つられて笑い返す。
そうやって色々な物事が巡っていく。歌のように巡っていく。
それから私たち三人は、たくさんのお団子を作って、あちらへいるみんなへと渡していく。
誰かから誰かへ伝わって。受け取った誰かが、また誰かに伝えていって。
そうしてみんなも、お返しにと、たくさんのものを私たちに渡してくれた。それが何かは、私にはまだ分からない。
けれどもそれは歌のように。
みんなが声を合わせて一つになるもので。みんなが自分の想いを胸に抱いて、他と異なるもので。
そうやって一つの大きなものになっていく。それぞれの想いを大切にしたまま、集まっていく。
そうやって、やいのやいのと歌声が。
巡り巡って、空高くまで満ちていく。
夜空の高く、一際大きくぽつんと光る月に向かって、響いていく。
たくさんの色、たくさんの想いを、結んで繋げて一つにのせて。
ばらばらの物が一つになって。けれどもそれぞれが、その想いをしっかり抱えて。
土の上の歌声は、空の上の高くまで届いていく。
きっと、いきのできない月まで届いて響くはずだ。
みんなと一緒に私と清蘭も声をそろえて歌っていく。
月を見上げて、歌っていく。