【五枚目のはがき】
『レミリアさんは、なんと二足で立ち上がる珍獣"レッサーパンダ"を目撃したことがあるそうですね。一体どこで見かけたのですか』
「球場。プロ野球観に行った時にいたわ、レッサーパンダ」
「球場?」
「そうそう。紫に連れてってもらってね」
「野球場ってほんと白熱してるのね! 熱いってのはああいうことを言うんだなぁって思ったわ。フツーに盛り上がった。応援ユニフォームも着たし」
「でも売り子ちゃん私のことただの子どもと思って全っ然相手にしてくれなかったわ。正体見せたところでどうにもならないし……」
「紫はごっつビール飲んでんのよ隣で。私も飲みたかったわよ。ビール飲むでしょ? あの泡を口につけるやつ、アレに憧れてんの」
「そんなんはいいから。どこにいたの、レッサーパンダは」
「ああ決まってんじゃない観客席よ。私の右斜めちょっと前くらいにいたっけね。一番前の席とってたわ」
「んふっ。レッサーパンダが、観客席で野球観てたの?」
「観てたみてた。もう自分の応援チームの番来たらガァ立ってウゥオー!応援してたわ」
「でも最後はホームランボールキャッチして永久出禁喰らってたけどね」
「正式にホームランなる前にキャッチしたから、結局判定変わっちゃって。もう大炎上よ。すっごいヘコんでたわ。その後はもう一回も立たなかったわね。ずっと座ってたわ」
「まあそんなわけだから、もう球場行っても見られないよ、レッサーパンダ」
「ああそう……」
「でもその何日か後に劇場で見かけたけどね、同じ奴」
「もうほら、スタンディングオベーションで、めっちゃ拍手してたわ」
「レッサーパンダが?」
「レッサーパンダが」