【四枚目のはがき】
『仕草の一つひとつがミケランジェロの彫刻のように美しいレミリアさんに質問です。レミリアさんが時々やっている、両手で胸を隠すようなポーズ、あれはなんの意味があるのですか』
「これはね、胸を隠してるのよ」
「そのまんまじゃない」
「そのまんまもなにも事実を言ってるだけよ。じゃあなに? 捻ったことでも言えばよかったの?」
「そういうわけじゃないけど……。いいわ、なんで胸を隠してるの?」
「説明するにあたってまずは吸血鬼の特徴を言ってごらんなさい。言っちゃいなよ」
「特徴?」
「特徴というか、強みよ強み。もっと言えば私の強み」
「鬼のパワーに、天狗のスピード、強大な魔力……とは言われるわね」
「ああんまだあるぅ! 今から話す一番重要なのが抜けてるぅ! なんでそれをピンポイントで外すわけ!?」
「な、なに? 判らないわ……」
「もう言わせないでよ! ほら! 今も私がリアルタイムで醸し出してるものがあるじゃない!」
「…………?」
「も~パッチェがこんなに鈍い子だとは思わなかったわ」
「降参よ。教えて教えて」
「カリスマよカリスマ! ほら! 出てるじゃん!」
「……そう?」
「まあ判りやすくいえば魅力よね! 吸血鬼は相手を魅了することにも長けてるの! ここポイント! いい?」
「判ったわ」
「その色気やらフェロモンやら色々なものが混ざったセクシィーな波動がね、常に私の体からこう出てるわけよ。特におっぱいからなんてもう噴水のように出てるからね? "そんな出さんでも!"ってくらいしとどに溢れてるからね!?」
「だからこ~やって手で胸を隠すのよ。不必要に相手を惑わせないように」
「へぇ……」
「でも手ブラじゃないよ? それだとカッコつかないから、指をパラ~ってして、ちょっとそれっぽい構えにしてんのよ」
「この手をひっくり返してお尻に持ってくこともあるよ。お尻からも出てるからね、セクシャルな波動が」
「理由は判ったけど。私別に感じたことないわよ? 貴方のセクシーな波動なんて」
「オォン何言ってんのよパチェったら。貴方最初、出会った瞬間気絶したじゃん!」
「!?」
「だからか、覚えてないのは。 大変だったのよ~? 私が紅魔館までおぶって連れていき……優し~くベッドに寝かせ……お粥まで、卵粥まで作ってあげて……」
「粥の種類はどうでもいいわ。てか嘘でしょ。私そんな覚えないわよ」
「それは仕方ないわよ。私のセクスィーさに当てられたら、まともな意識を保つことすらできないから」
「それで貴方目ぇ覚まして私見たら、その瞬間また気絶したじゃない。せっかくおかゆ、卵粥食べさせてあげようと思って。ミツバまで添えたのに」
「…………」
「仕方ないから遠目に眺めてたら、貴方ゾンビみたいに起き上がってそのままうちの本読み出したじゃん」
「かと思えばなんかめっちゃ本持ってきて住み始めるし」
「覚えてないわ…………」
「それくらい朦朧としてたってことよ」
「…………」
「それで咲夜もね〜! 大きくなって私の魅力が判るようになったらもう大変だったわ。私見るたびに鼻血噴き出して。仕事にならないのよ」
「ま、そういうわけだから、この溢れんばかりのセクシィウェイブを抑えるために、基本はこんな長袖のふわ~っとしたドレス着て、ボディラインがなるべく出ないようにしてるの。スカートの下にも股引履いてるし」
「股引て」
「だってそうしないと決闘も楽しめないのよ!? 勝手に相手が倒れて、なんにもすることないんだもの!」
「だから決闘の時は常に手ブラだし! 後ろに下がる背を見せる時は尻隠すし! 大変よ!」
「そういえばそうだったわね」
「紅霧異変の時もねえ。巫女を魅了しちゃってせっかくのゲームが台無しになっちゃ嫌だから、胸隠して、ごっっつ真顔で登場したわ」
「じゃあ私達がまともにいられるのは、レミィがその魅力を抑えてるからなのね」
「そそ。まあでもパチェもみんなもだいぶ慣れてきたみたいだけどね。最近は手で隠す必要もなくなってきたわ」
「流石に水着姿になったら、霊夢は目ぇ瞑って絶対こっち見ないようにしてたし、魔理沙は顔真っ赤っか。咲夜なんてもう映されへんくらいの顔してたからね一瞬」
「今だって初見の雑魚ならおっぱいだけで倒せるよ。お尻でもいけるわ」
「ちょっとマヌケに聞こえるわね……」
「私はこの力を夜王色の覇気って呼んでるわ」
「…………」
「相手にするまでもない雑魚の群れは、私が手ブラを外すだけで全滅よ」
「手ブラやめて服もまくっちゃえば、それこそどんな奴でもイチコロだからね」
「もうフツーに手ブラ言うてんじゃない」