レミィの羽がぴくりと震えた。いつのまにやら私達のテーブルに、影の境目が押し寄せていた。それくらい時間が経っていたのか。彼女の羽の先端が、いまにも日光にさらされてしまいそうになっている。
ああ、でも、レミィは日光別にそうでもないんだった。
そう思った矢先、レミィはコーヒーを飲み干した。まだ半分くらいあったにも関わらず、大口開けて、一気に。そして軽く咳き込みながら立ち上がると、屋根の影へと体を寄せた。
「危ない危ない。紫外線は美容の大敵だからね。今日はこれくらいにしときましょ」
そう言って、レミィは私に背を向けた。「ふふふふーん、ふふふふーん」と鼻歌混じりに室内へ向かっていく。
「レミィ」
私は席に座ったままレミィを呼び止めた。雲の動きは早いもので、テーブルには完全に日光が差していた。
レミィは振り向かず、私の呼びかけに返事をするように一回だけ鼻をすすった。
「もしかして寂しい?」
なぜこんなことを言ったのか。私は自分の放った言葉を頭の中で堂々巡りさせた。
するといつの間にか伸びてきていた手が私の手を取った。その手は私をぐいっと引っ張り上げ、席から立たせた。
レミィが、もう片方の手で私の胴を寄せて、いつもの不敵な笑みを間近からぶつけてきた。
「もう過去のことよ? 今は私の手が届くところにパチェも皆もいる。そんなわけないでしょう」
そう言うと私にハグして背中をぽんぽん叩いた。やがてレミィは離れ、また歩き始めた。私も一緒についていく。
「ひょっとして、パチェもRh(-)だったりしてね」
「まさか。私より、咲夜を確かめてきたら?」
「あは、そうね。とりあえず貴方は、心配ないもんね」
「ええ。まあね」
私達は紅魔館の中に戻った。
つぎもたのしみです