【四枚目のはがき】
『動物学者も土下座するほど生物に詳しいレミリアさんに質問です。幻想郷には"ヤゴコロ"という謎の生物が生息しているそうですね。一体どんな生物なのですか』
「あぁいるわねえヤゴコロ。あれほんとうっとうしいわよね」
「そうなの? 私知らないわ」
「夜になるとごっつ照明に集まってくるし」
「虫なの??」
「虫じゃない虫じゃない。ヤゴコロだって」
「ちょっと隙を見せると畑のネギ……ヤゴコロってネギが好物なんだけど、根こそぎ奪っていこうとするんだから」
「は?」
「おい何してんねん!!! 言うとビュゥーン逃げてくからね」
「それはなんなの?」
「ヤゴコロだってば」
「いやだからそのヤゴコロはなんなのよ」
「ヤゴコロはヤゴコロよ。それ以上どう言えってのよ」
「いや……あのね?」
「ただヤゴコロを甘く見ちゃダメよ? 出世魚だからねあれ」
「魚!!??」
「ああごめん、ブリみたいに成長とともに名前が変わる生き物ってこと」
「ああ、はい……」
「でも私達が普段見かけるのはほぼ100%といっていいくらい"ヤゴコロ"だけどね」
「えっと、私は見たことないんだけど、どんな格好してんの?」
「ええっ!? パチェ見たことないの!? ヤゴコロを!?」
「ないない、ないわ、教えてちょうだい」
「まあ~パチェはあんまり図書館から出ないから仕方ないっちゃ仕方ないね。ヤゴコロはあれで結構アウトドア派だから、休みの日とかは基本外にいるのよ」
「…………」
「神社に行きなさい。境内でも縁側でもどこでもいいわ、パン屑投げてごらんなさい。ごっつ来るからね、ヤゴコロ」
「でも霊夢がいるときはやっちゃダメよ? あの子鼻が利くからこっそりやっててもすぐ叱りにくるし、ヤゴコロも霊夢がいると隠れちゃうから」
「あの、レミィ」
「神社が無理なときは、蒸し暑い日が狙い目ね。池に……それこそ霧の湖にはい~っぱい泳いでるよ? 行楽シーズンとかほんと大盛況よ、ヤゴコロで」
「レミィ」
「あんまり多いもんだから、そろそろ使用料でも取ろうかなぁとは毎年思ってるんだけどね。一時間○○○円くらいでさ」
「まあ結局実施には至ってないわ。ヤゴコロにも色々お世話になってるからね。ちょーっと空いた時間でも、うちの前掃き掃除してくれたりするし」
「でも水撒きは気い遣ってやらないんだからちょっと考えてるところあるわよね」
「…………」
「後はー……そうそうお歳暮も毎年送ってくれるし」
「ハムなのよハム。フランがこのハム大好きでね~っ? "ヤゴコロハムだー!"って毎回はしゃぐもんだから、お礼がてら一回うちに招待してあげたいんだけどねぇ、ヤゴコロ」
「貴方最初と言ってること違うじゃない。うっとうしいんじゃなかったのヤゴコロって。ていうかヤゴコロってなに?」
「そりゃヤゴコロだって血も通ってて心も持った生き物なんだから、毎日同じ調子ではいられないわよ。私達だってそうでしょ? 私はフランのこと愛してるけど、あの子がイタズラしてそれを私のせいにしたときとかほんまど突いたろかって思うもん」
「…………レミィもしかしてヤゴコロのこと知らないの?」
「知ってる知ってるめっちゃ知ってるってなに言ってんのよパチェったら。知らないのにこんなに詳しく説明できるわけないじゃない、ヤゴコロのこと」
「じゃあ教えてよっ。ヤゴコロはなんなの? 何類?」
「ん〜〜〜とね…………」
「霊長類にさも似たりって感じかしらねぇ……」
「ンフッ。霊長類が、夜照明に集まってくるっての? ンン?」
「どうしたのパチェ……様子が変よ?」
「貴方のせいでしょレミィッ!!! 貴方が判らないことばっかり言うからっ!!!」
「ごっ、ごめんパチェ!? 悪かったわ! 実を言うとあんまり覚えてないのよヤゴコロのこと!! お歳暮ももう四、五年前からくれなくなったし、時々無言電話とかかけてくるようになったからこっちも会いづらくて……!」
「何があったのよヤゴコロとの間に!」
「でも一目見たらそれで全部思い出せると思うの。でも今時期的に慰安旅行の真っ最中だから……」
「なんなのよ"ヤゴコロ"ってえええええ!!!!!」