【三枚目のはがき】
『"うー!"と"がぉー!"を持ちネタとするレミリアさんに質問です。「"ぎゃおー!"ね"ぎゃおー!"。あと前者はネタですらねえわよ」過去、レミリアさんはチスイコウモリとして超巨大動物園の中で暮らしていた時期があると聞きました。よければその時の話を聞かせてください』
「あぁ~懐かしいわね…………。だいぶ昔。パチェが来る前……美鈴が来るよりもっと前の話よ。 まあ暮らしていた……っていうよりは、迷い込んだっていうのが正しい表現ね。ちょっと調べ物あって図書館行こうとしたら、いつのまにか草原に辿り着いてたのよ」
「!?」
「まあほら、頭で他のこと考えながら動いてたら、本来の目的の場所とは違うところに行ってたこととかたまにあるじゃない。それよそれ。あの時二徹くらいしてたから頭ボ~ッとしてたし」
「ま、まあいいわ。それから?」
「そこが変わったところでねぇ! 草は茂ってるけどそんなに青々としてなくて、若干乾き気味? って感じで、木もほっとんど……ちょこちょこっとしか生えてなくてね? 多分ここサバンナ地方…………んーまあ、とにかく迷子になっちゃってたんだわ」
「大変じゃない……それからどうなったの?」
「私も焦ったわよ。とりあえず歩いてみたんだけど、どこに行けばいいかも全然判らないんだもの」
「でもしばらく歩いてたらね!? なんか二足歩行の猫が木から飛び降りてきて、ごっつ笑顔でこっち走ってきたのよ!」
「え? 猫なの?」
「猫~……って言うのもちょっと違かったわね。猫にしては耳が長めで、尻尾も変にボリューミーだったわ……。ただめっちゃみゃーみゃー言ってたし、猫の一種だとは思うの。いやでも"あぁははは~"とかも言ってたから、やっぱ違うのかも…………」
「え〜とにかくそのまま受けるわけにもいかないじゃない? どんな奴で何してくるかも判らんのに! だから私逃げたのよ! そしたら"狩りごっこだねー!"とかなんか訳の判らんこと言いながらごっつ追いかけてくんのよ! しかもめっちゃ笑いながら!」
「何気に怖いわね」
「ええ。そしてそいつも結構速くてね。しかも中々バテないもんだから一瞬飛んででも振り切ろうかなぁと思ったんだけど……。よく考えたら第一村人発見なわけであって、こういった出会いはこの先ないかも判らないから、とりあえず会話ができそうならするという判断で立ち止まったわ。まあ襲われたとしても負けはしないし? めっちゃ暑かったけどね」
「結局そいつは私に抱き付いて"捕まえたー!"言うだけで何をしてくるわけでもなし……。ああ、"たーのしー!"とも言ってたわねそういえば」
「そんで話してみれば、ほんっとフレンドリーな良い子でね。こんな子中々いないわよ? すぐ仲良くなったわ」
「あら、良かったじゃない」
「ただ妙に和名が多かったわね」
「和名?」
「その最初に会った子も名前が確か~……定春だったかしらね。苗字はちょっと聞きそびれちゃったんだけど。あとフツーに新井さんもいたし」
「へえ~……」
「あーそうそう思い出した! なんか常にリュックサック背負った奴がいんのよ! だからなのかみんなから"鞄ちゃん"って呼ばれててね? いやいや名前で呼んだりなさいよ!!ってごっつツッコミ入れたくなったわ。まあその子自身気にしてないみたいだし、ふつーに仲良さげだったからやめといたんだけど」
「で、その定春って子と会って、それから?」
「ええ。ここに迷い込んだこと相談したら、"図書館に行けばきっと帰り道が分かるよ!"って。なぁぁんで図書館なのかは全然判らんかったけど、施設である分ここよりはマシな気はしたし、その話に乗ったわ」
「どうやら私が迷い込んだ草原はその子のナワバリらしくてね? その外まで案内してってくれたのよ。それでさいならかと思いきや、結局あとまでついてきてくれて。どこまでお人好しなのかしらね」
「そこから私と定春との旅が始まったわけよ。まあナワバリの途中で鞄ちゃんとも会って既に合流してたんだけどね。だから三人で一緒にバス乗ったり歌聴いたりなんか建物轢き壊したり色々あったわけよ」
「大騒ぎね……」
「そうそう! その途中にね!? ところどころ変な奴がいんのよ! なんていうか……スライム? 一つ目のスライムみたいな、ぜんっぜん定春達とは似てなくてなんか浮いてる奴なのよ! なんやこいつと思って近付いたら、定春も鞄も"駄目だよー! 離れてー!"ってめっちゃ慌てて止めてくんの」
「後で聞いたらその地のいわゆる危険生物みたいなもんらしくてね? なんかヒシ?ヘシ? をド突いたら倒せるらしいけど、私は普通にシバくだけで倒せたみたいなのね。定春"すごーい!"言うてたわ」
「なんだかんだその後も旅は続いたんだけど、次第に判ってきたのが、みんなそれぞれ"動物の個性や習性"を持ってるってことなのよ。走るのが速かったり泳ぎが上手かったり、あとは~ジャンプ力ぅ……とか、飛んだりとかね。泳いだりもか。まあ鞄は最後までよく判んなかったんだけど……」
「だから定春も最初私の羽を見て"飛べるけものなんだね!"ってめっちゃ言ってたわ。言いふらすかのごとく言ってたわ。後々"チスイコウモリのフレンズだったんだね!"とか言ってきて、誰がコウモリやねん!ってど突いてやろうかと思ったけどね。すごい純粋な顔して言うもんだからその気も失せちゃったわよ」
「楽しそうねぇ……」
「それでね? 既に道中いろんな子に会ってきたんだけど、みんなおかしいのよね。人工物……というか文明の利器をうまく使えないというか……。 定春なんて単なるプラスチックの蓋開けれんかったからね。ただフイッて上にやればいいだけなのに。なんかちょっとアホっぽいのよ」
「かと思えばカレー作ってみたり。頭にボールかなんかつけてシバき合いしてみたり、よく判らないノリが多かったわ。出会い頭キスしてくる奴もいたし……。鞄は普通っぽかったんだけどね。まあでも基本みんな仲良しで、毎日どったんばったん大騒ぎ、高らかに笑いあったわね……」
「もうその頃にはみ~んなが友だ……フレンズだわフレンズ」
「なんで言い直したのよ」
「で……旅の果てにようやく図書館が見えてきてね。とうとう定春達ともお別れってわけよ」
「思い出すわねぇ、夕暮れ空の下で最後はみんな歌で私を見送ってくれたのよ。 不覚にもちょっとウルっときちゃったわ」
「もう東にも西にも吠えててね、すごい一体感あったわ。そしてその一体に私も含まれてて、けれど今から離れなきゃいけないっていう事実が、なかなかにツラいものがあったわね……」
「彼女達の歌を背中に受けながら、次第に離れていくんだけど……私もう涙ボロッボロで、前なんかまったく見えなくて、とりあえず図書館の扉開けて中に入って…………涙を拭って気がついたら、いつもの紅魔館の図書館にいたの」
「…………不思議な話ね」
「ええ……最後のあの子達の歌、今でも思い出せるわ」
「その歌の歌詞ね、"姿形も十人十色、だから魅かれ合う"んだって。ほんといい歌詞よね……。私その歌にすごく感銘受けてね? だから私も、(別種の)妖怪の美鈴や魔女のパチェ、人間の咲夜……あとは妖精にホフゴブリン達とか……。その機会があった時は、種族は一切問わずに誰でも紅魔館に迎えるの」
「そうだったの……すごく良い経験したのね」
「う、ん、ぐすん…………ご、ごめんなさいね……。と、とにかく、私の大切な思い出の一つよ」