砂浜に下り、波打ち際まで近寄った。
相変わらず海風が吹き付けてくるが、その涼が心地良い。
砂浜では大きく寄せた波が砂に吸い込まれて、いくつもの泡だけを残しては、また波に浸るを繰り返している。
二人は波が届かない、けれども波打ち際のギリギリの辺りで腰を下ろす。
水平線の向かいの空では、雲が速く速く流れていく。海では地上よりも多く、強い風が生まれやすい分、それだけその勢いに押し出されるのだという。
数年前、初めてアリスが幻想郷を訪れた時にも、こうして空を眺めていた。
あの時は霊夢に完敗し縁側に転がされていたのだが、その時の浮雲もこんな感じで疾く疾くと頭を過ぎて行ったものだ。
空に散らばる雲も、眼前の蒼の世界も、どこまでも際限がない。
「……この世界って、どこに繋がってると思う?」
流れる雲の様に、取り留めのない言葉が浮かんだ。
「どこかには続いてるでしょ」
霊夢の返事も掴み所がない。
そのままぼんやり海を眺めていると、不意に隣の霊夢が腰を浮かし立ち上がった。
その口元にはどこか挑む様な笑みが浮かんでいる。
「ねえ、この海がどこまで続くのか試してみない?」
霊夢がだしぬけに明るい口調で言った。
「どこまで行けるかしら」
「どこかまでは」
残り時間は二時間あまり。時間いっぱいまで使ったとしても、たかが知れてるだろう。
それでも――。
「――まあでも、悪くはないかしらね」
「なら、決まりね」