Coolier - 新生・東方創想話

宵闇亭

2012/09/12 01:46:17
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 童女はしばし小首を傾げます。

「でもわたし、お腹ぺこぺこだもん」
「な、何でもするからっ、いっ、命だけは助けてくれっ、なっ、頼む!!」

 懇願する男を見て、童女はクスりと笑います。
 そしてその小さな唇を目一杯に広げ、男にゆっくり近づくのです。
 童女の歪に並んだ牙と、赤黒くてらてらと光る口腔の中が男の視界を塞ぎます。

「っ、ああああぁぁ」

 男はそこで目を覚まします。
 周りを確かめると、見飽きるほど見慣れた自宅の寝室でした。
 泥酔して前後不覚になりながらも、ちゃんと家に帰り着いていたのでしょう。

「おい徹治、おめぇいつまで寝てるんだよ、オイ!!」

 勝手口のほうから頭領の怒鳴り声が聞こえてきました。
 窓から差し込む光が、寝過ごしてしまったことを教えてくれます。

「ははっ、はははっ」

 男は乾いた笑いを浮かべます。
 酷い夢だった。
 相当うなされたのか寝間着もぐっしょり濡れてる。
 でも夢でよかった。

 男は安堵し、額の汗を手で拭います。

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