Coolier - 新生・東方創想話

宵闇亭

2012/09/12 01:46:17
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「ねぇ」

 闇の向こうより何者かの声が聞こえてきました。
 その声は調律の狂ったピアノのごとく、歪で不快な響き。

「わたしお腹がすいてるの。あなたを食べてもいい?」

 闇から滲むかのよう、目の前に童女が現れました。
 金色の髪に、血の気の無い白い頬。
 あどけない瞳は紅く不気味に光り、荒く吐く息は人というよりも獣のそれ。
 その姿を間近に見てもなお、理性を保つことなどできようはずもありません。

「う、うわあぁぁぁぁ!」

 男は無我夢中で逃げ出しました。どちらに向かうかなんて考える余裕もありません。
 目の前に現れたあやかしから少しでも遠くに。
 それだけを考え、ただただ逃げました。

 しかし周囲は相変わらずの闇。
 おぼつかない足取りで二度三度と岩に足を取られるうち、男は勢いよく転んでしまいます。
 対して童女は空を飛んで悠然と追ってきました。
 絶望に震える男の顔を嘗められるくらい、童女は顔を近づけて、僅かに鼻を鳴らします。

「たっ、頼む、後生だから見逃してくれっ!」
「んー?」
 

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