Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷のお正月

2013/01/01 00:15:39
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・新年あけましておめでとうございます

・公式設定でお正月に博麗神社ではイベントがありますすが……スルーでお願いします。
・オリキャラ等は出てきませんが、勝手に作った設定がいくつかあります。

・異変は一年に一度、そして神霊廟異変が起きた年が明けた後のお正月の話としています。年齢はサザエさん時空ということでお願いします。

・登場キャラは非常に多いですが、出番に結構差があります。これは作者の好き嫌いというより、書きやすいキャラか、書きたい話があるかがほとんどです。キャラは皆好きです。

・幻想郷と外のお金は違いますが、この作品中ではイメージしやすいために『円』で考え、貨幣価値も現在のものと同様としています。

・それ以外にも質問や不満点を言っていただければ、できるかぎり答えます。気軽に感想を書いていただけると嬉しいです。

・結構自己設定多めなので、嫌悪感を感じる方は戻る推奨です。

・少し百合成分あります。

・『読み続けていって盛り上がる場面のある』といった感じの作品ではありません。一日目を読めば、その雰囲気が後半もずっと続くので、向かない人は戻る推奨です。

・長いです。二ページ目、三ページ目も文字数は減りません。少しずつ増えます。

・キャラの呼称や関係に違和感があるかもしれません。

以上のことを読んだ上で、それでも作品を読んでいただける方は少々お付き合いお願いします。注意点多いですが、楽しんでいただければ何よりです。





























「……」



 布団から出て時計を確認する。時刻は午前四時前、普段起きるはずない時間であるが、毎年この日はだいたいこの時間に起きている。覚醒しきってない頭を起こすため洗面に顔を洗いに行く。そこで少し身だしなみを整えて、いつもの(といっても冬は暖かい格好をしているためあまり着ないが)巫女服を身につける。外に出てみるとまだ日は出ておらず暗かったが、とりあえず色々と準備を始めることにした。
 今日は元日である。今日から三日間は初詣にいつもに比べて多くの人妖がくる……のが一般的なはずだ。少なくても普段入れないような奴もお賽銭を入れていく。異変解決を除けば私が一年の中で最も巫女をやっている三日間だ。境内を片付けつつ少し飾り付けを行い、箒で周りを履いておく。日が昇ってくる前に準備を終え、あとは参拝客を待つだけだ。



「どうも霊夢さん!明けましておめでとうございます!」
「あけましておめでとう♪」



 日の出からほとんど時間が経たずに文がやってきた。毎年のルールとして日の出前には初詣に来ないように知り合いには言っているし(そうしないと私の寝る時間がなくなるから)、里の人たちは夜に外を出歩くような真似はしないので、毎年日の出からまもなくやってくる文は一番乗りである。挨拶してやれば写真を撮られた。これも毎年のことだ。


「いやー毎年いい笑顔で挨拶してくれますよね霊夢さん。普段の姿からはとても信じられませんよ」
「ある意味一年で一番大事な時だからね。そりゃあ一年で一番全力の笑顔よ」
「そしてそれも結局続かず、どんどん笑顔が手抜きになっていって二日目の夕方頃にはいつもの顔に戻るんですよねー」
「こ、今年は三日目の昼くらいまで頑張るわよ!」



 文と適当に談笑し、いつも通り新聞紙をもらう。この『年末年始の特別号』とやらのおかげ毎年三が日には美味しい焼き芋が食べられるので感謝している。



「そういえば今年はツレの椛はいないの?」
「残念ながら今年は早朝から天狗の付き合いの方があったので、椛はそこにに私の代理で出てもらったんですよ」
「ふーん……あんたも毎年大変ね、そんなに早くうちに来る必要あるの?」
「一番乗りがクライアントのたっての希望なもので」
「そう……」



 神社にいたのは時間にして十分ほどだっただろうか。文は『この後もいろいろ行くところがあるので!』と言って、お賽銭箱に百円玉を三枚入れて空に飛び上がった。



「文、あとでにとり達に『守矢神社に入れたお賽銭に自分の年齢かけた額持ってきなさい』って言っておいて」
「了解しました!」
「あんたもね」
「えっ!?」
「あと……明けましておめでとう、文」
「はい!また改めて来るのでよろしくお願いしますね!」



 そう言って今度こそ行ってしまった。



◇◇



 それから少しして、早起きな人ならそろそろ起きようかという時間に二人目の参拝客がやってきた。



「明けましておめでとう、霊夢」
「明けましておめでとう、アリス。今年は椛がいなかったからあんたが二番目よ」
「あら、そうなの」



 二番目の参拝客はアリスだった。アリスも毎年、いや、あの年以来だいたいこのくらいの時間に来る。賽銭箱に千円札を入れた後、特に何をするでもなく人形をいじるなり、本を読むなりしながら私と話して時間を潰す。元日のいつもの風景だ。



「今年もお節料理余分に作っておいたから持ってきたんだけど、食べる?」
「そうね、適当なタイミングでいただこうかしら。毎年ありがとうね」
「そういえばこの時期って毎年萃香はどこにいるの?大抵はここに居候してるのに、この時期に一度も見た記憶がないんだけど?」
「あぁ……よくわかんないけど私に気を使ってどこかに行ってるのかもね。この時期は一応里の人たちも来る可能性があるし、鬼がいるってなるとそれだけで怖がる人たちもいるとか考えてるのかも。他にももっとおっかないやつがいっぱい来るから構うことないのに」
「どうせ人里から『普通の人間』が来ることなんてないのにね」
「そ、そんなことないわよ!」
「じゃあかけでもする?」
「『来ない』に全財産かけるわ」
「二人共おんなじ方にかけるから不成立ね。てっきり萃香のことだからどこかの宴会に顔を出してるんだと思ったけど」
「あぁ……ひょっとしたら地底で鬼達と宴会してるかもしれないわね」



 こんな感じでだらだらと会話するだけである。前に一度アリスに『どうして毎年元日をここで過ごすのか?』と聞いてみたところ『年始くらい誰かと一緒に過ごしたいから』という答えが帰ってきた。結局のところ寂しがり屋なのだろう。実際、迷惑になるようなことは何もないし、それどころかご飯の面倒を見てくれるのは助かるし、人が来ない間の話し相手になってくれるのもありがたい。なんだかんだ一年で一番気合を入れたところで参拝客が大勢来て忙しいなんてことはなく、参拝客を待って退屈な時間が多いのだ。



◇◇



「霊夢来たわよ!歓迎しなさい!」
「明けましておめでとう、天子」
「あ、明けましておめでとう、霊夢、それにアリス。……なんだかすっごいいい笑顔だけどなんかいいことでもあったの?」



 アリスとのんびりしゃべりっていたらちょうど朝食時に天子がやってきた。今年の犠牲者?第一号はどうやらこの子らしい。



「巫女にとっては一番大事な仕事の時期だからね。私もちょっとくらい頑張るわよ」
「あれ?巫女の仕事ってお茶飲んでぐーたらやる事なんじゃないの?」
「誰よ、そんなこと言った馬鹿は」
「え、霊夢だけど」
「……去年のことは忘れたわ」
「そういえば去年天子は何時ごろ初詣に来たんだったかしら?」
「だいたい毎年二日目の夕方ね。元日は天界に来る萃香とドンチャン騒ぎするから」
「とりあえず去年までの萃香がいないのは宴会が原因ってわかったわね」
「今年はなんでこのタイミングで来たの?」
「……萃香が地底に誘われて、宴会に行っちゃったから」
「あんたも行けばよかったのに」



 天子の格好はいつもとは少し違い、きちんとした正装(最も天界における正装なんて知らないが)っぽい服を着ている。ちなみに今までに来た文もアリスもいつもの格好だった。前者は仕事中だから、後者は着物が似合わないからという理由だ。



「ところで天子、残念ね。それともおめでとうって言ったほうがいいのかしら?」
「え?何が?」
「少しの間よろしくね」



 そう言って部屋の奥からいつもの巫女服を取り出す。



「……へ?なにこれ?」
「私は今から朝ごはん食べるんだけど、その間誰も巫女がいないんじゃ里の人たちが来た時に困るでしょ?だから食事中だけ代理よろしく」
「なんで私なのよ!」
「毎年ご飯時に来た奴にこの仕事をさせるように決めてるの。あんたの来たタイミングが悪かっただけ」
「絶対やだ!」



 天子は頑なに引き受けようとしない。まぁ今までも嫌がった奴は何人かいたし、時には力づくで押し付けたことだってあるのだから別に珍しいことでもないのだが。


「こんな機会じゃなきゃうちの巫女服着れないわよ?」
「別に興味ないし」
「終わったらアリスの作ったお節料理分けてあげるわよ?」
「そんなに食い意地張ってないし」
「今度天界にみんな連れて遊びに行ってあげるから。ね?」
「……ほんと?」
「それくらいのことで嘘つかないわよ」
「……わかった、やる。感謝しなさいよね!」



 そう言って私から巫女服をふんだくって、部屋の奥に着替えに行った。そのあとすぐに『着方わかんないんだけど……』と言ってきたので手伝ってやった。



「ど、どうかしら……?」
「あら、思ったより似合うじゃない」
「と、当然よ!」
「そうね、私なんかよりずっと似合うと思うわ」
「……まだ根に持ってるのね」



 数年前に一度アリスが代理の役になってしまった事があり、その時居合わせた魔理沙に『アリスって和服あんまり似合わないな!』と言われたことがあるのだ。おそらく『洋服に比べて』というニュアンスだったのだろうが、アリスはそれ以来和服を着ることがなく、初詣も必ずご飯時を外してやってくるようになった。



「仕事の内容は簡単よ。やってきた参拝客に最高の笑顔で『明けましておめでとう』って言うこと。あと一番重要なことだけどお賽銭払わない輩は帰しちゃダメよ。おみくじとか他の仕事が出来たら私を呼んでくれたらいいから」
「わかったわ、けど私さっきの霊夢ほど上手に笑えないかもしれないわよ?」
「大丈夫よ、あんた(見た目はとても)かわいいし」
「なっ……!?」
「それじゃあ、よろしくね?」



 とりあえず天子に任せて部屋の中に入り、朝食の準備をする。しれっとアリスが自分の分も用意しているが、これももはや毎年のことだ。もちろんアリスの作ったお節料理の出来が完璧なのも毎年のことである。







「お疲れ様」
「……え?……あぁ、うん」



 朝食を食べて少しゆっくりしたあと、天子の分のお茶を持っていってやった。時間にして一時間ほど任せていたのだろうか?役目が終わったというのに天子はどこかしっくりしないという顔をしている。



「あのさぁ……、誰も来ないんだけど……?」
「まぁ毎年このタイミングはあんまり来ないからね。代わってもらったのも正直に言えば念のためよ」
「せっかく笑顔の練習してたんだけど……」
「あら、じゃあその練習の成果見せてくれない?」
「やだ」
「そう」



 その後アリスのお節料理を適当につまみ、お賽銭として五千円入れて(入れるときこちらを同情を含んだ眼差しでチラリと見ていた。……どうせ元日にも録に人が来ないですよーだ)天子は帰っていった。帰り際に見せた天子の笑顔は練習の成果なのかとも思ったが、この子は元から素直に笑ってれば可愛かったとも思う。



◇◇



「明けましておめでとうだぜ!霊夢、アリス」
「「明けましておめでとう、魔理沙」」



 まだ元気のある私はとびきりの笑顔で、アリスは素っ気なく魔理沙からの新年の挨拶を返した。天子が帰ってから数時間した頃、朝食と昼食のちょうど間くらいの時間に今年も魔理沙がいつものモノクロな格好で人里の方角からやってきた。



「今年も元気そうだったの?」
「なんのことだぜ?」
「ならいいわ」



 魔理沙の様子から特に何か隠しているようには見えない。ならきっと実家は変わりなかったのだろう。



「それじゃあ来たとこだが、この後もいろいろまわるつもりだし、また三日の宴会でな!」
「毎年いろんなとこ行ってるわね」
「元日は家族水入らずで過ごしたいのか、こっちから出向かないと知り合いと全然会えないんだよ。でも新年の挨拶は元日にするもんだろ?じゃあこっちから出向かないと」
「どこ行くか決めてるの?」
「いや、気分次第だぜ」



 魔理沙は毎年の通りお賽銭の代わりに結構な量のさつまいもを置いて数分も経たずに去っていってしまった。いろいろな場所を挨拶にまわるなか、なんだかんだで一番最初に『挨拶』に来るのがここなのはやはり腐れ縁というやつなのだろう。



「……私もお賽銭回収に出歩いたほうがいいのかしら?」
「……え?」
「魔理沙みたいに積極性がないからお賽銭が集まらないのかも。来年はお賽銭箱背負って人里に降りて行ってみようかしら?」
「随分とシュールな光景ね。どこからどう見てもただの借金取りのヤクザにしか見えないわ」
「いいアイデアだと思ったんだけどなぁ……」



◇◇



「そういえば今年は誰なの?」
「誰だと思う?」
「そうね……、去年はチルノだったし、今年はミスティアかしら?」
「今年は大妖精よ」



 魔理沙が帰ってからしばらく経ってそろそろ太陽が一番高い位置に来ようかという時間になったが、その間に参拝客は一人も来なかった(まぁ予想通りだ。……言ってて悲しいが)。アリスと会話しながら神社の裏に落ち葉をためていると、噂の五人組がいつもと変わらぬ姿でやってきた。



「「「「「明けましておめでとう(ございます)ー!霊夢(さん)ー!」」」」」
「明けましておめでとう」



 この五人は毎年元日の昼食時にやってくる。先ほど天子にも『おめでとう』と言ってみたのも実は皮肉だけではない。この巫女服を着たい子は実際にいるのだ。この子達もそうで、毎年元日の昼食時にやってくる。



「これが服の分で、こっちが焼き芋の分です」
「了解」



 この中で唯一支払いの能力のあるミスティアが私にお金を払う。これはお賽銭とは別の博麗の巫女の衣装代とこの子達の分の焼き芋のお金だ。お金を受け取って代わりに巫女服を渡す。私のサイズしかないので大妖精には少々大きいかもしれないが、まぁ許容範囲だろう。



「霊夢さん着れました!」
「うんうん似合ってるわよ。じゃあもう仕事の内容は言わなくてもわかってるだろうからよろしくね。少ししたら焼き芋持ってくるから」
「霊夢ありがとーなのだー!」



 仕事を任せて私の分も含めて神社の裏に焼き芋を焼きに行く。集めた落ち葉に火を点け、その中にさっきもらった新聞紙でくるんださつまいもを放り込む。その瞬間視界が光に包まれ焼き芋が吹っ飛んだ。……少し焦げたかもしれないが、まぁいいだろう。神社の方に意識を向けると、どうやら大妖精達は『博麗の巫女ごっこ』なるものを始めてしまったらしいが……、まぁアリスも一緒にいるし、仕事はきちんとこなしてくれるだろう。



「こ、こんな感じかな……?」
「もっと霊夢はやる気なさそうだったと思うぞー!」
「それに霊夢は確か緑じゃなくて赤い巫女よ!きっと返り血ね!」
「それに霊夢が動くのは報酬が必要だよ!橙のところの偉い人とそんな会話してたもん!」
「幻想郷の怖いものは天子・衣玖さん・もこ・雲山って言うけど、なんで巫女の名前がないのかって里の人達も不思議がってたし、やっぱり巫女は怖くて危ないんだよ」
「あんまり言ってたらその霊夢がやってくるから、そこらへんでやめておきなさい。霊夢は忘れっぽいから恨んだりはしないだろうけど怒られるわよ?」
「あんたらが私のことをどう思ってるかはよーくわかったわ。あとアリス、いつまで根に持ってんのよ」
「友達だと思ってたのに……」
「ご、ごめん……。ほら焼き芋持ってきたしこれで許して?あんたらの分もあるから取りに来なさい」



 七人分の焼き芋を持ってきてみんなで食べる。春雪異変の件は……まぁ私が悪いし仕方ない。アリスはとりあえず怒っている様子はないが、この件については一生言われるのだろう。



「そういえばさっき神社の裏ですごい音が聞こえたけど、何かあったの?
「あぁ、焼き芋焼いてたらなんか爆発したのよ」
「大丈夫なの?」
「まぁちょっと焦げちゃってるかもしれないけど食べれるでしょ」



 夕方くらいまで五人は騒いで帰っていった。せっかく博麗の巫女の服を着てるから、この後もいろんな所に行きたいそうだ。



◇◇



 夕日が沈み始めた頃、やっと次の参拝客がやってきた。



「「「明けましておめでとう(ございます)、霊夢(さん)」」」
「明けましておめでとう、輝夜、永琳、鈴仙」



 うっすらと月が出始めた頃、永遠亭の連中がやってきた。毎年のことだがここの連中は初詣はかなり着飾ってきてくる。鈴仙も永琳もそれは綺麗であるが、特に輝夜は普段から着物を着ているのもあってよく似合ってる。



「今年もてゐは来てないの?」
「てゐは毎年この時期は里にお賽銭集めに行ってるからね」
「退治してやろうかしら……」
「そんな物騒な……その代わりに今年も私たちがついたお餅持ってきたから」



 そう言って鈴仙が持っていた袋を渡す。この子達のつくお餅は美味しいから正月の楽しみの一つだ。そんなことを考えているとお腹がすいてきた。ちょっと早いけど夕食にしよう。部屋の奥から巫女服を取り出す。



「ちょっと早いけどそろそろ夕食にしたいのよ。この中で誰が『博麗の巫女』してくれるの?」
「あら、今年はちょっと早いのね。その時間を外してきたつもりだったんだけど」
「あんた達の持ってきたお餅みてたらお腹すいてきたのよ。で、誰がやってくれるの?」「じゃあわたs「うどんげよろしくね」」
「……え?私ですか師匠!?」
「ちょっと!私がやるわよ!」
「ダメです姫。せっかくいつもより着飾ってるんですから今日一日くらいは『かぐや姫』らしくいてください」
「あ、あの……それなら私じゃなくて師匠がやってもいいんじゃないですか……?」
「何のためのあなただと思ってるの?」
「私は師匠の身代わりじゃないんですけど……」
「それに私じゃいろいろとサイズが合わないから着れないわ。あなたならギリギリ着れるでしょ?」
「分かりました……」
「じゃあ鈴仙よろしくね?着方分かる?」
「姫様が着てるの何回も見てますから、和服の着方は分かるんで多分大丈夫です。……せっかくおめかししたのに」



 そう言って少し不満そうな態度ながら部屋の奥に着替えに行く。少ししたら『すいません、このままだと、その……いろいろ見えちゃうので助けてくれませんかぁ……』と半泣きで言ってきたので結局永琳とアリスと私の三人で手伝うことになった。







「……なんかあざといわね」
「何が?」
「いや、あの格好でウサ耳ってあざといなって思って。可愛いけど」
「今まで気づかなかったの?霊夢の着てる巫女服っててっきりそういう需要に答えたんだと思ってたんだけど」
「少女趣味の金髪人形師のあんたには言われたくないわね。私はただ着たい服を着ているだけよ」
「でもたしかにイナバって見方によったらあざとく見えるかもね」
「私の趣味です」
「あれ永琳の趣味だったんだ」



 お餅をみんなでつつきながら、外で参拝客を待っている鈴仙を見ながら雑談をする。



「そういえば夕食はお餅だけなの?……相変わらずなのね……」
「そんな同情の目で見ないでくれない?悲しくなるから。それに毎年元日くらいはちょっと豪華よ。……ほら噂をすれば」



 箒で掃除をしながら参拝客を待っていた鈴仙がやってきた人物に真っ先に気付いたようで、私が気づいた時には既に挨拶に向かっていた。……ふむ、笑顔といい仕事の態度といいこの子がいたら色々と便利じゃないだろうか?いやでも妖怪を神社に置くのは……まぁ萃香が居候してる時点で手遅れか。



「明けましておめでとう、霊夢」
「明けましておめでとう、藍それに橙も」



 やってきたのは紫の式の藍とその式の橙だ。今年も着飾っており、特に藍はいつも以上に綺麗である。前に藍にそのことについて聞いてみると『この時期にはとっくに紫様が冬眠に入っておられるから、こき使われることがないんだ。そういういろいろから解放されたというのが顔に出ているのかもしれないな』と冗談交じりに言っていたが……それで間違いないだろう。



「おや、そのお餅は晩御飯かな?今年は霊夢の分の鍋はいらないか?」
「今日一日楽しみに待ってたんだからそんなこと言わないでよ。今年もよろしくね」
「うむ、任された。それと霊夢……」



 台所に向かおうとしていたところで立ち止まり、こちらに振り返りながら袋を取り出し私に渡す。



「今年の分のお年玉だ」
「……ん。ありがと」
「気にするな。普段任されてる仕事に比べればなんのこともないさ」



 そう言って再び台所に向かっていった。



「八雲の式は何しに来たの?」
「あぁ、毎年私のところにお年玉届けに来てくれるのよ。それでもってそのついでに晩ごはんに鍋を作ってくれるの。よかったら食べていく?」
「うちで兎たちも待ってるし、遠慮しようかしら」
「そう、じゃあまたね」
「あ、これ永遠亭のみんなの分のお賽銭ね。それと……」



 輝夜は一万円札を私に渡したあと、周りに気づかれないよう気をつけながら何かを訴えるようにじっと私を見てる。正直こんな目で見られたら同性、異性関係なく惚れてしまいそうになる。……まぁ私は輝夜相手にそうなることはないが。



「はいはい、いつもの通りにすればいいんでしょ?」
「絶対にバレちゃダメよ!」
「分かってるって……」
「じゃあおねがいね?」



 そう言って丁寧に和紙で包まれた箱を私に渡し、そのあとすぐに永遠亭の連中は帰っていった。







「相変わらず美味しいわね」
「ほんと。ここまでなんでもできるなら私も式を扱えるように勉強しようかしら」
「人形とは根本的に違うから何とも言えないが、アリスは案外向いているかもしれないな」



 藍の作った鍋はやはり美味しかった。藍の料理の腕だけでなく、紫が冬眠前に外の世界から仕入れた食材(もちろん鮮度の境界はいじってある)を使用しており、まぁ美味しくないわけないのだ。



「さてと、明日も早いしそろそろ寝ようかしらね」
「じゃあ私もそろそろ帰ろうかしら。またね霊夢」
「またねアリス」



 別れを言ってアリスは一人で帰っていく。そして……藍はというと私の分と自分の分の布団を引いていて、橙に至っては既に深い眠りについていた。



「やっぱり今年も泊まっていくのね……」
「まぁそこまでが仕事だからな。別に襲ったりなどしないさ」
「……まぁいいけど」



 そうして一日目が終わった。

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