「……で、めでたしめでたしと思ったんだけど~…………どうしてよっ!」
翌々日くらい。青娥は目の前の惨状を睨みながら金切り声を上げた。
彼女がいつも寝転びながら漫画を読んだり映画を見たりする憩いの間が、まだあの三人に占拠されていたからである。
「あー、ほら。あれだけの豪邸を建てるとなるとタオパワーがたっぷり必要じゃないですか。だからこうしてエネルギーをチャージしているのでして」
そう言いながら神子は冷蔵庫に入っていたプリンを腹にたっぷりとチャージしていた。
「こっちの方が漫画が揃っておりますので、せめて読み切るまでは滞在を許されたく存じます」
「存ざないで。読み切るまでって何日かける気なの」
布都の前には派出所勤務の警官が主役の漫画が積み上がっていた。これを全巻読み切るまで帰らないらしい。
「まあまあ、良いじゃんかよ」
軽いトーンで青娥の肩を叩いた屠自古は、動物アニメのディスクを小脇に抱えていた。今日の気分はハムスターのようだ。
「正直に言えよ。私らが帰って静かになったら寂しくなるんだろ? あっちの家に遊びに来ちゃうんだろ?」
「否定はしませんけどもっ!」
神子は洋菓子が好きで、布都は漫画が好きで、屠自古はもふもふの動物が好き。そして青娥の住まいには常にこれが置いてある。新しい物を常に買い足しているのだ。理由は言わずもがな。
それはそれとして、いつまでも100%お客様ムーブをされても困る。これが可愛い弟子達じゃなければとっくにキョンシーの一部にしているところだ。
手のかかる子ほど可愛いとは誰が言ったか。それは青娥も否定しないが、この三人に目を付けた理由は手のかからない優秀な人間だからのはず。いったいどこで道を間違えてしまったのだろう。
そういえば、昨日は小町が涙目で謝罪に来た。それもあの映姫と一緒にである。吹っ掛けすぎた自覚はある弁償金を適正価格に抑えてくれとの直談判だ。
あれは子供でも弟子でもないが、手のかかる点では同じか。仙人に頭を下げる屈辱にも付き合うほど優しいのか、甘やかしてしまうのか。おそらくは両方なのだろう。
よそ様の家庭事情に思いを馳せつつも、目下の問題はこっちの手のかかる子供たちである。ああそういえば、そろそろ芳香にご飯を与えないと空腹で胃酸を撒き散らしてしまう。青娥は何が残っていたかと想像の中で冷蔵庫を開けた。
「青娥……ネコならぬ、ミコの手も借りたいなら貸しますよ?」
「ドヤ顔してないで、手伝う気があるなら最初からそうなさい!」
ああこの感じ、本当に遠い昔、いつまで経っても子供のように純粋なあの人と我が子が居た時もそうだったか。いや、あの時は家人も居たし、今の方が間違いなく騒がしいか。
そんな己の境遇に苦笑しつつ、神子を引き連れて冷蔵庫へとぱたぱた駆け出していく青娥なのであった。
ハブられてちょっと拗ねた神子様、なんだかんだ一家のお母さんしてる青娥と地味に有能な芳香。オチまで含めてとても楽しく読めました、面白かったです。
せーがかわいい
こんな目に遭ってるのに底抜けに明るいノリを維持する豪族たちに笑いました
これには映姫様も苦笑い
めっちゃ面白かった。
ありがとうございます。
まさかの真犯人