4.
雲居談。人間を食べる妖怪は数多くいれど人間を食べることを存在理由とする妖怪は数少ない。
事実、そのような妖怪と出会ったことは伊勢国を通ったとき、少女姿の妖怪と出会ったときだけであった。彼女は村全ての人間を胃袋に収め、骨は地面に埋め、墓標を立てて、救いを求めるように祈りを捧げていた。それは長年築きあげてきた妖怪像を壊すには十分なほどに衝撃的で異様な光景であった。後に彼女が人喰いであることを知ったのは一○○年近く過ぎた頃になる。
その後、彼女と出会うことは一度としてなかった。
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