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次の日、霊夢に秋神様の祠を教えてもらったレミリアは、咲夜に準備してもらったバスケットを持って、祠の前に立っていた。なるほど、確かにここは人間の里から近いらしく、後ろには稲が収穫された後の田園が、焦茶色の土を見せながら広がっている。
あまり手入れされてなさそうな古ぼけた祠のまわりは、他の場所よりも一足早く、秋が深まっているらしい。濃い紅色や朽葉色、あるいは山吹色になっている乾いた落葉があちらこちらに積み重なっており、一歩一歩歩くごとにカサリ、と音を立て、冷たい風が吹くたびにカラカラと転がっていく。今は曇っていて見えないが―――私にとっては本来それが望ましいことなのだけど―――、こんな景観に夕日でも差し込んだら、きっとさらに寂寞の趣を増すことだろう。うん。見てみたい気がする。吸血鬼が夕景を見たいなんて、ちょっと前なら、考えもしなかっただろうな。
落葉の絶間や祠の下にはよくよく見ると、薄茶色の枯草に混じって竜胆の花が咲いており、それが、背後の田園と合わせて、晩秋の空気をさらに強調させているように見えた。
これも、秋神様の神力によるものなのかしら…そう見とれながら、レミリアは、賽銭箱にからんと、小銭を投げ入れる。
そして、二礼。
二拍手。
また、一礼。
この形式も、博麗神社に遊びに行っているうちに、随分と慣れてしまった。文化は学んでみるものだなぁ。
お参りを終えたレミリアは、祠から視線を上げて、くるり、と辺りを見回してみる。そして、にやり、と、口角を上に傾けた。
祠から少し離れたところにある大木の陰から、朱色の帽子と黄色の袖がちらりと姿を見せていたのだ。
すかさず、ふわり、と羽を動かして、その大木の近くに接近する。まさか気付かれているとは思わなかったのか、相手はびくっと思わず木の幹を強く握りしめていた。
「失礼。あなたが秋の神様かしら?」
「は、はい…」
ちょっとびくびくしている様子の少女に構うことなく、レミリアは白いドレスの裾を少し上げながら、恭しく一礼した。
「はじめまして。私は「紅魔館」という館の当主である吸血鬼…レミリア・スカーレットよ」