幻想郷に暮らす吸血鬼、レミリア・スカーレットは、赤をとにかく好む。
好むあまり、自らの住まう館を―――「紅魔館」の名の通り―――赤基調に統一するほどだ。
そんなレミリアにとって、秋というのは特別惹かれる季節であるようで…
「咲夜」
「はい」
「紅葉狩りに行きましょう」
~~~~~~
「…それで、ここになるのね」
秋の木々が、赤や黄色に染まり、くるくると風に任せて舞っていく博麗神社。縁側で足をぷらぷらさせながら外を眺めるレミリアに向かって、巫女の博麗霊夢は、そうため息をこぼした。
「良いじゃない。せっかくなら、こうして霊夢とお話したい、とも思っていたところだったし」
レミリアは、そんな霊夢の呆れ顔を意にも介さず、ふふ、と微笑む。そんな彼女を見て霊夢はまたため息ひとつ。
そんな霊夢の横では、こちらもたまたま神社に来ていた魔法使い、霧雨魔理沙が、レミリアの従者、十六夜咲夜が持ってきた南瓜のパウンドケーキに舌鼓を打っていた。
「そうそう、良いじゃないか。お賽銭を入れてくれる貴重な参拝客なんだろ?」
「…まぁ、それについては、ありがたいというか、マメだなぁと思ってるけどさ」
「それに、こうしてお茶菓子にもありつける訳だしな!」
「魔理沙。あなたはもうちょっと遠慮なさい」
「良いじゃないかー。どうせ他にも誰かいると思って、多めに作って来たんだろー?」
「それはそれ、これはこれでございます」
「そんなぁ」
…まぁったく。これじゃあ、落ち着いて紅葉を眺めることも出来ないわね。
そう思いつつ、背後の少女たちの掛け合いに頬を緩ませてたレミリアの横に、うるさくなったのか、霊夢が歩み寄って、腰を下ろす。ちゃっかり、パウンドケーキは片手に持って。
「…紅葉、そんなに良いものなの」
「えぇ。景色が赤中心に染まる秋の季節は、私をとても楽しませてくれるもの。舞い散る動きも、落ちてグラデーションにあふれた地面も、とても綺麗」
「ふぅん…まぁ、アンタはそういうやつよね」
はむり、とパウンドケーキをほおばりながら、何の気もないように、霊夢も外を見つめる。
「私にとっては、ひたすら面倒なだけなんだけどね」
「あら、そう?」
「落ち葉掃除するの、結構大変なんだもの。掃いても掃いてもキリがない」
「ふふ…そうね。霊夢はそういうやつよね」
ちょうど、紅葉がひとひら、ふわり、と帽子に迷い込んできた。レミリアはつややかな赤い葉を手に取って、くるくる、と器用に軸を回す。
「そういえばさ、ここ、こんなに紅葉が綺麗だったらさ、名所として宣伝すれば良いじゃないか。そうしたら、レミリアみたいな参拝客がたくさん来てくれるだろうしさ」
咲夜との掛け合いを押し切ったらしい魔理沙が、よっこらせ、と霊夢の横に座る。咲夜はというと、レミリアの後方で正座しているようだ。まったく、こんな時くらい横に座っても良いのに。ま、咲夜らしいといえばらしいけどさ。
「仮に売り出したとしても、里から離れているここまで来るのが楽じゃないのだから。望み薄よ。それに、秋はそこまで収入に困っている訳ではないしね」
あぁ、と魔理沙は合点がいったように頷く。
「そうか、収穫祭があるのか」
「収穫祭?」
対して、レミリアと咲夜は、頭に「?」を浮かべている様子。
「人里で、秋の収穫の恵みに対する感謝と、来年の豊作を祈る意味で、毎年、稲の収穫の時期に合わせて、秋の神様とかも呼んで収穫祭を行うの。祈祷や秋神様を呼ぶ舞のために私もそこに参加して、その年の収穫物とかを分けてもらうって訳」
「へぇ…霊夢、ちゃんと巫女もしていたのね」
「どういう意味よ」
「ごめんごめん、冗談だってば」
まったくもう、と霊夢はため息をつくと、一つ、思い出したように「そうだ」と呟いた。
「ここの紅葉を赤く染めているのも、今話した秋の神様の一柱よ」
「へぇ」
幻想郷の紅葉を赤く染めなしている神様……か。
どんな神様なのだろうか。気になるわね。
うん。気になる。だったら、一つしかないわよね。
「ねぇ霊夢」
「何かしら?」
「その秋神様を祀っている場所がどこにあるのか、教えてもらえない?」
「……」
さっきよりも鋭く、霊夢がレミリアの方を睨みつける。
「…人里に近いところにあるんだから、騒ぎを起こしたりしたら承知しないわよ」
「もちろん。分かってるわよ」
レミリアはそんな鋭い視線もまったく意に介さず、くすくすと笑う。
「ちょっと、お参りに行くだけだから」
好むあまり、自らの住まう館を―――「紅魔館」の名の通り―――赤基調に統一するほどだ。
そんなレミリアにとって、秋というのは特別惹かれる季節であるようで…
「咲夜」
「はい」
「紅葉狩りに行きましょう」
~~~~~~
「…それで、ここになるのね」
秋の木々が、赤や黄色に染まり、くるくると風に任せて舞っていく博麗神社。縁側で足をぷらぷらさせながら外を眺めるレミリアに向かって、巫女の博麗霊夢は、そうため息をこぼした。
「良いじゃない。せっかくなら、こうして霊夢とお話したい、とも思っていたところだったし」
レミリアは、そんな霊夢の呆れ顔を意にも介さず、ふふ、と微笑む。そんな彼女を見て霊夢はまたため息ひとつ。
そんな霊夢の横では、こちらもたまたま神社に来ていた魔法使い、霧雨魔理沙が、レミリアの従者、十六夜咲夜が持ってきた南瓜のパウンドケーキに舌鼓を打っていた。
「そうそう、良いじゃないか。お賽銭を入れてくれる貴重な参拝客なんだろ?」
「…まぁ、それについては、ありがたいというか、マメだなぁと思ってるけどさ」
「それに、こうしてお茶菓子にもありつける訳だしな!」
「魔理沙。あなたはもうちょっと遠慮なさい」
「良いじゃないかー。どうせ他にも誰かいると思って、多めに作って来たんだろー?」
「それはそれ、これはこれでございます」
「そんなぁ」
…まぁったく。これじゃあ、落ち着いて紅葉を眺めることも出来ないわね。
そう思いつつ、背後の少女たちの掛け合いに頬を緩ませてたレミリアの横に、うるさくなったのか、霊夢が歩み寄って、腰を下ろす。ちゃっかり、パウンドケーキは片手に持って。
「…紅葉、そんなに良いものなの」
「えぇ。景色が赤中心に染まる秋の季節は、私をとても楽しませてくれるもの。舞い散る動きも、落ちてグラデーションにあふれた地面も、とても綺麗」
「ふぅん…まぁ、アンタはそういうやつよね」
はむり、とパウンドケーキをほおばりながら、何の気もないように、霊夢も外を見つめる。
「私にとっては、ひたすら面倒なだけなんだけどね」
「あら、そう?」
「落ち葉掃除するの、結構大変なんだもの。掃いても掃いてもキリがない」
「ふふ…そうね。霊夢はそういうやつよね」
ちょうど、紅葉がひとひら、ふわり、と帽子に迷い込んできた。レミリアはつややかな赤い葉を手に取って、くるくる、と器用に軸を回す。
「そういえばさ、ここ、こんなに紅葉が綺麗だったらさ、名所として宣伝すれば良いじゃないか。そうしたら、レミリアみたいな参拝客がたくさん来てくれるだろうしさ」
咲夜との掛け合いを押し切ったらしい魔理沙が、よっこらせ、と霊夢の横に座る。咲夜はというと、レミリアの後方で正座しているようだ。まったく、こんな時くらい横に座っても良いのに。ま、咲夜らしいといえばらしいけどさ。
「仮に売り出したとしても、里から離れているここまで来るのが楽じゃないのだから。望み薄よ。それに、秋はそこまで収入に困っている訳ではないしね」
あぁ、と魔理沙は合点がいったように頷く。
「そうか、収穫祭があるのか」
「収穫祭?」
対して、レミリアと咲夜は、頭に「?」を浮かべている様子。
「人里で、秋の収穫の恵みに対する感謝と、来年の豊作を祈る意味で、毎年、稲の収穫の時期に合わせて、秋の神様とかも呼んで収穫祭を行うの。祈祷や秋神様を呼ぶ舞のために私もそこに参加して、その年の収穫物とかを分けてもらうって訳」
「へぇ…霊夢、ちゃんと巫女もしていたのね」
「どういう意味よ」
「ごめんごめん、冗談だってば」
まったくもう、と霊夢はため息をつくと、一つ、思い出したように「そうだ」と呟いた。
「ここの紅葉を赤く染めているのも、今話した秋の神様の一柱よ」
「へぇ」
幻想郷の紅葉を赤く染めなしている神様……か。
どんな神様なのだろうか。気になるわね。
うん。気になる。だったら、一つしかないわよね。
「ねぇ霊夢」
「何かしら?」
「その秋神様を祀っている場所がどこにあるのか、教えてもらえない?」
「……」
さっきよりも鋭く、霊夢がレミリアの方を睨みつける。
「…人里に近いところにあるんだから、騒ぎを起こしたりしたら承知しないわよ」
「もちろん。分かってるわよ」
レミリアはそんな鋭い視線もまったく意に介さず、くすくすと笑う。
「ちょっと、お参りに行くだけだから」