Coolier - 新生・東方創想話

ゆかれいちゅっちゅっ【冬】

2011/03/03 14:42:47
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* * * * *


 お風呂から上がった紫は、一声とで言えばダルそうだった。
 普段もそれなりにダルそうにしてる事もあるけれど、そういう時は妖艶さが先立つのに、今はただただ気怠そうで顔色も悪い。
 ご飯のろくに食べれずに、やっぱり「ごめんね」と小さく言って箸を置いて。
 その後は縁側に座って、外をぼんやりと眺めていた。

 もういい加減限界なんだって、流石に分かった。


「……そんなトコいて、寒くないの?」
「うん」

 紫はゆっくりと頷く。霊夢は膝掛けを持ってきて紫の隣に座った。
 くっ付いて、二人の足に膝掛けをかける。紫の肩を引くと、何の抵抗もなく、その体が傾いだ。
 肩に頭を凭れ掛けさせてやると、紫は喉の奥で嬉しそうに小さく笑った。

「紫……」
「……ん?」

 呼ぶけれど、返事が何テンポか遅れて来る。
 痩せたというか、やつれているというか。なんとなく、抱き締めている紫の体がいつもよりも細く、頼りないように感じた。

「……ゆかり」
「……だいじょうぶ」

 血の気が全くない顔は、蒼いというか、白かった。色が無いといってもいいかもしれない。そんな風に全然大丈夫じゃなさそうなのに、なのに紫は「だいじょうぶ」だと笑う。
 本当なら「だいじょうぶ」だと言って笑わなきゃいけないのはコッチなのに。
 「だいじょうぶだよ」って、「心配しないでよ」って、笑えればいいのに。
 「寒くなんかない」って、強がればいいのに。言えばいいのに。
 でもその言葉は喉の奥で蟠ったまま、するりと出てこない。
 酷い奴だ。
 名残惜しいのは、お互い一緒なのに。

(……一緒、なのかな……)

 紫も一緒なの? 同じなの?
 分からない。
 だって、言わないんだもん。
 好きとかは言っても、寒いとか言っても、そうとは。
 全然素直じゃない巫女さんと、ひねくれ者でずるくて意地悪な妖怪。
 互いの口からはまだ……その言葉は出ていない。

「冬も、本当に綺麗ね……」

 紫の瞳は、真っ白に染まった幻想郷を映して、柔らかく、穏やかに細められていた。
 一旦止んでいた雪が、また降り始める。ふわりふわり空を漂う。紫の声は、そんな雪と似ていた。
 ふわふわと漂って、頼りなくて、淡かった。
 紫の感触を確かめるように頬に触れる。冷たくなっていた。抱き締める腕にそっと力を込める。
 次第に、紫の瞳に映っていた雪が淡く潤んで消えて行く。
 目尻がとろんと下がって、眉尻が困っているかのように下がっていた。瞼も、もう半分くらい下りている。

「本当は……眠りたくない、の……」

 眠たそうに、たどたどしい口調で、紡がれる言葉一つ。
 幼子のようなしゃべり方に、不意に頬が緩んでしまった。
 だって、それはまるで。

「……寝たく、ない……」

 眉間に皺を寄せて、駄々をこねる。
 悲しそうに、ただ悲しそうに。

 そして、さびしそうに。


「……ゆかり」

 いつも余裕に笑ってるクセに。
 ばか。分かんないじゃない。
 何よ?
 いつもそうやって、笑顔の下に隠してるだけだったの?
 ほんとはいつも、そんな悲しそうな顔してたの?
 ……ばか。

「ゆかり」

 呼ぶと、紫はいやいやするように、首を左右に緩慢に振った。
 首に紫の柔らかい髪が擦れてくすぐったい。
 霊夢は紫の頭を撫でて、もう一度名前を呼んだ。

「ゆかり」

 いとおしさを込めて。名前を呼ぶ。
 『だいじょうぶ』って、伝えるように。
 雪がふわりふわりと空から舞い落ちて来るように。
 溶けて紫の心に染み入るように。

「ゆかり」

 ゆっくりと、もう一度。
 安心させるように囁く。

「だいじょうぶ」

 今度こそ、言えた。

 紫の額に額を重ねる。
 見詰めた先の、半分くらいしか開かれていない紫紺色の瞳には、うるうると涙が溜まっていた。
 雪がその頬に降って、溶けて一筋流れた。
 その透明な雫を拭ってやって、霊夢は柔らかく笑む。

「あたしも幻想郷も、だじょうぶだから」

 ちゃんと待ってるから。
 ちゃぁーんと良い子にして、待ってる。
 でも、さみしくて堪らなくて、もうダメになりそうだったら、呼ぶから。
 ちゃんと呼ぶから。

「だから、あんたも呼びなさいよ」

 すぐに行ってあげる。
 あたしも、幻想郷も。
 この世界で一番大切なものなんて、もうとっくの昔に決まってんのよ。

「……れ……む……」

 小さな声で呼ばれる。
 途切れ途切れに、うわ言のように。
 呼び返しながら微かに震える唇に、そっとそっと触れる。
 紫の瞳から、流れる一雫。
 そうして、ギリギリで保たれていた意識はぷっつりと絶えた。

「ゆかり……」

 頬を流れて行った雫を口唇で拭う。
 雪混じりにそれは、少ししょっぱくて、柔らかくて……甘かった。

「ほら、言ったじゃない」

 霊夢は紫の寝顔に微笑みかける。

「海の味がするって」

 海なんて知らないけれど。
 でも、あたしが知っている紫色の海は、こういう味。


「おやすみ」


 ――待ってるから。


 そう囁くと、『また春に』って答える声が微かに聞こえた気がした。










END
季節にやっと追い付いたかと思えば、もう三月になってたという罠です/(^o^)\ナンテコッタ
ゆかれいむは冬でもイチャイチャしてればいいと思ったんだ。ってか年がら年中イチャイチャしてれば良いと思ってる、そんな風愉菓子(ふゆがし)でございます。
でも、なんだかもうちゅっちゅっさせ過ぎて、なんかもうちゅっちゅっがインフレ状態です。ちゅっちゅってなんでしたっけ?でれいむってなんでしたっけ?甘いのってなんでしったけ?糖分ってなにそれおいしいの?
とりま、次の【春】でこのちゅっちゅっシリーズは完結すると思いますので、もしよろしければあともう少しだけお付き合い頂ければと思います。

ゆかれいむが俺のロードぉおおおおおぉぉぉぉおおおぉぉおぉぉおおお!!!!
万屋和風愉菓子店
http://fuyukudu.web.fc2.com/
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コメント



0.1440簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
もう春夏秋冬ちゅっちゅさせちゃいなYO!
もうでれいむ可愛いなちくしょう!!

ゆかれいむは俺にとってもロード!!
7.100名前が無い程度の能力削除
相変わらず紫ラブの霊夢が可愛い。
ゆかれいむは俺達のロード!
8.100名前が無い程度の能力削除
面白かった。
春も期待してます。
9.100奇声を発する程度の能力削除
春が楽しみだ!!
11.60鈍狐削除
ちょっとグレーゾーンで遊びすぎている感じがしました。
12.100名前が無い程度の能力削除
春が楽しみだぁあああ!!
13.100名前が無い程度の能力削除
悶え死にかけたじゃないですか!?
どうしてくれるんです!!
でも春を楽しみに待ってます!
22.100名前が無い程度の能力削除
でれいむ可愛過ぎ。
あと、ゆかれいむ最高!
春が待ち遠しいです!
25.70名前が無い程度の能力削除
途中、2キャラ以上の心情を語っているのに一人称だったりと視点が混同しているヶ所が多々ありました。
それを除けば概ね面白かったです。
26.100名前が無い程度の能力削除
そんなに愛し合っちゃって大丈夫か? どちらかが欠けた時の事を想像するとあばばばば
27.100名前が無い程度の能力削除
あいかわらずすばらしいゆかれいちゅっちゅですね。
32.100名前が無い程度の能力削除
終始甘く、温かなゆかれいむを思う存分堪能させていただきました。
どうして冬が来てしまうのでしょうか?
春をお待ちしております。
35.100名前が無い程度の能力削除
ゆかれいむ なのか れいゆか なのか 分からんが二人が好き合ってる事が感じられて良いな
幻想郷と霊夢の心配しちゃう紫様も包容力あって優しい霊夢さんもたまらん!!!
作者様はこのままロードを突き進むべきですねw
38.100名前が無い程度の能力削除
なにこれあまい……
冬でもあったかなゆかれいむ素敵です。
42.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいゆかれいむだ素晴らしい