「……ここに、ハニワさんがいっぱい居るんだね?」
瓔花はキラキラした瞳でその異物を見つめた。
一同の前にそびえ立つそこは、遺物にして異物と呼ぶのが相応しい。かつては畜生達の憩いの場であった霊長園だが、生き物が暮らす場所とは程遠い、機械仕掛けの無機質な建造物に変貌していたからである。
「間違いないわ。土の匂いに混じって貴方達水子の臭いも流れてくる」
「キョンシーセンサーもそう言っている! 水子率80%だ!」
「ドロポンと同じか。あんまり信用したくないな……」
「まあ水子達は確実に居るでしょうね。それ以外が問題なんですけど」
それ以外の問題。霊長園を今の姿に変えた邪神こと、埴安神袿姫。創造神である彼女が土と水を捏ねて生み出した物は無機物ながら意志を持って動き出し、要するにノーマルタイプ故に畜生霊達ゴーストタイプの技が効かない天敵の兵団となっていた。そんな恐ろしい神でも、実際は美大生と揶揄されるようなエプロン姿に彫刻刀を握った見た目だったりするのだが。
「あの埴安神と相対するのに、本当に驪駒様は呼ばなくていいのですか?」
「もう一度言うけど、呼ばなくていいわ。話がややこしくなるから勘弁してちょうだい」
青娥は苦笑いを浮かべながら慧ノ子の提案を断った。
敵対組織であり好戦的な早鬼が居たら問答無用で戦いになるだろう。ボスと戦ったからって何かが得られるわけでもなし、水子を連れ戻すだけの話で衣服を傷めたくないのだ。それに何より相手は本物の神。この人数で挑んでも不滅の兵団に返り討ちの可能性は高い。
「……そういや、黒駒ってお前によく唾飛ばしてたよなあ」
「そうそう、太子様に近付く泥棒猫!って鳴かれ……たけどそこは別にいいのよ、本人も忘れてるでしょうし。暴れ馬はもう間に合ってるって話」
「ん、まあ暴走キャラは一人で十分かねえ」
屠自古は納得の表情で芳香の後頭部を見つめた。そんな屠自古の横顔を青娥も何か言いたげな表情で見つめるが、今暴走されても面倒なので慧ノ子に向き直った。
「とにかく、貴方もここまでで十分よ。道案内に感謝致しますわ」
追加のお駄賃としてハッピーな粉のかかったお菓子を渡す。長生きした者は幼い見た目の相手に食べ物を与えたがる習性だからである。
「ありがたくいただきます。皆さんもどうかご武運を」
「おう、黒駒によろしくな」
慧ノ子は一礼してダッシュで街の中へと戻っていった。早くおやつを食べたいのか他の約束でもあったのか、犬ながら脱兎の如き速さであった。
「じゃあハニワ! 早くハニワさんに会いに行こう?」
さて、大人達のよく分からない会話が終わったと見て、瓔花が鼻息荒く霊長園の中へと促してきた。手近な芳香の腕をぐいぐい引っ張るものの、体幹が頑強すぎて直立のまま動いていない。
「……埴輪ってそんな子供心にヒットするもんか?」
「お絵かきが簡単そうなところとか? まあ子供の笑いのツボってよく分からないし……っと、屠自古さんの前で壺の話題はNGだったわね」
「うっせえわタコツボ女。そんな話はいいから作戦会議だよ。瓔花ちゃんもちょっと来てくれ」
「しょうがないなあ。ちょっとだけだよ」
一同はしゃがみ、と言うよりヤンキー座りみたいなポーズで向かい合った。関節の都合で無理な芳香だけは尺取虫のように寝そべって参加するが。
「んで、その埴安神ケーキってのはヤバい奴なのか?」
「うーん、神の時点でまともな会話が出来るか怪しいわね」
例えば天にうちの地域だけは雷を落とさないでくださいと言って通じるだろうか。幻想郷の神はやたら庶民染みているので案外話が通じたりするが、本来は天災のようなもので価値観が人とは根本的に違う。ただ畏れ敬うしかできない存在のはずなのだ。
「魂をこねくり回して土偶に変えちゃうとか。当然、水子も材料に出来るでしょう」
「じゃあ、みんなもハニワさんになってる……ってコト!?」
それでも瓔花はちょっぴり羨ましそうであった。水子で骨の無い彼女にとって、カチカチの体は憧れなのだ。
「あくまで可能性ね。水子の匂いがするってあのワンちゃんは言っていたけども……」
「……全員無事かは分からんな。だけどそいつもあの紅白の巫女にボコられて一度は大人しくなったんだろ? あんまり過激な事はしないと願いたいね」
「うむ、あの時は流石の私も永眠するかと思ったぞー」
「私もあの赤白の子にもうすぐ新記録だった石を壊された!」
芳香と瓔花も、まさしく天災と呼べるアレの恐ろしさにうんうんと頷いた。幻想郷に住まう人外は大体博麗の巫女被害者の会でもある。そういった意味ではこれから会う埴安神も仲間と言えるだろうか。
「でも……そっか、弾幕ごっこには付き合ってくれたんだよな。そういう事なら私に提案があるんだが」
「あら偉い。やっぱり豊聡耳様が居ないと自分の頭を使うのねえ」
「他に軍師出来そうなのがお前しか居ない地獄だからな。良いから耳貸せ、ここに居る全員が重要なポジションだ」
一同が屠自古に顔を寄せる。美少女密度が極限まで上がったところで、重要だと豪語するポジションと役割に沿った行動がひそひそと告げられた。
「屠自古……やはり青娥に劣らぬ天才であったかぁ……!」
「私、やるよ。みんなを連れ戻すためにがんばる!」
かつては博麗の巫女ですらも大量の畜生霊と一緒に袋叩きにしてやっと勝てたという埴安神。それに勝とうと思えば生半可な覚悟では足りないが、瓔花と芳香は目を爛々と輝かせて力強く頷いた。
「まあ、貴方達が良いなら良いんじゃないかしら」
一方、まだ戦うかも決まっていないのにそういう体で話しているわけで。暇を持て余す昼間の団地妻のような気怠い顔を浮かべる青娥は、盛り上がる三人とはちょっぴり距離を空けるのであった。
団結に若干の陰りはあるが作戦は決まった。水子奪還の最終(かは定かでない)決戦の地、霊長園。決意を固めた四人は瓔花を先頭に、そしてちょっぴり距離がある青娥を最後尾に、絶対に負けられない戦いが今始まろうとしていた――。
「はーいみんなー。次はカメさん型の土偶を作るわよー」
『やったー!』『けーちゃ~ん』『けーきさま~』
また一方その頃、霊長園の最奥ではあの恐怖の埴安神が教育テレビのような微笑ましい光景を広げていた。外では物騒な会話が繰り広げられているなんて露知らずにだ。
神とは、崇められる事で力を得る存在である。
ちょっと前、不思議な建物に惹かれて水子が入ってきた。それが動く土偶できゃっきゃとはしゃいでくれた。嬉しくなった袿姫は新たな土偶を作り、また喜ばれた。以下無限ループ。閉じたコミュニティで袿姫が一生食うに困らない需要と供給が完成していたのだ。
「袿姫様……子供の相手も良いですが、兵隊の補充が遅れている事もお忘れなきよう……」
古代の甲冑に身を包んだ人型の土偶兵士長・杖刀偶磨弓が、毅然とした態度で苦言を呈した。神ともあろう者が幼児にかまけているからか、あるいは『私の袿姫様が他人に笑顔を向けているのが気に入らない』からか、真実は神のみぞ知る。
「やれやれ、私が造ったのに磨弓は真面目だねえ。心配しなくても今造ってる土偶だって立派な兵士よ」
本人はそう言うがビジュアルに一抹の不安が残るから磨弓も気にするのだ。この亀だってジャンプで踏みつけられたら中身が甲羅からすっ飛んでいきそうな、そんな頼りなさがにじみ出ている。
「……だけど、やはりお前は優秀ね。心配した矢先に私の領域を犯した者が居るみたいよ」
「な……!」
袿姫の表情と声のトーンがすっと一段階下がった。神は土地と結びついている場合が多く、不法侵入者が現れれば感覚で分かるのだ。今回は例えるならば鼻から蕎麦をすすらされたような、そんな果てしない不快感のイレギュラーが入り込んだらしい。
「迎え撃ちますか。袿姫様、ご指示を!」
弓を構え、命令さえ下ればいつでも飛び出せる態勢に入った磨弓だが、それを袿姫は彫刻刀を握ったままの手で制して止める。
「待ちなさい。どうやらいつものヤクザ動物じゃないわ。この感じは水子が多数……この子達の仲間かしら」
「ふむ、袿姫様の素晴らしさが他の水子にも伝わったのでしょうか?」
「……だけじゃないわね、大人の人間もいる。それも穢れに穢れきった存在が、壁を突き抜けて向かってくるわ」
「壁を……! それでは防衛配備が役に立たない……!」
サイバーな見た目をしていても霊長園は一種の墓地だ。内部はピラミッドよろしく侵入者をミイラにする為に兵隊だらけの迷路構造となっているが、侵入者は的確に配備をすり抜けて本丸に近付いていた。
「でもね、話は単純よ。気配を隠す気も無いし、どうやらあちらさんは私に用がある、それもこの人気絶頂パワー全開の私に。むしろ消耗した相手じゃ物足りないってものよ」
「確かに、負ける姿が想像できません。ですが……私だけは袿姫様の前に立つ事をお許しを」
「勿論よ。頼りにしているからね、磨弓」
「はい!」
袿姫への忠誠心をそのまま己の強さとするのが磨弓の能力。ほぼ完全無欠状態となった袿姫がそれでも頼ると言ってくれた事で、彼女の力も極限まで高まっている。今ならおんがえしも最大威力だ。
そんなやる気満々の二人の前に、不法侵入者も依然その闘志を隠す事なく真っ直ぐに近付いてくる。500メートル、300、200、100、50。とうとう隔たりは壁一枚。そして遂に目の前の壁に丸い切れ目が入った。
ある意味潔い不法侵入者を迎え撃とうと、磨弓が弓を構えた、次の瞬間!
穴開けパンチした紙のように豪快に壁を蹴り抜き、もはや説明不要であろうあの一行が姿を見せた。
「ハニヤスシンケーキ! あなたの所業はこの戎瓔花がまるっとお見通しだ!」
「……なんですって?」
袿姫はぱちくりと目を丸くして小さなヒーローに視線を合わせた。水子がいるのは分かっていたが、意外にもこのお子様が周りを率いているらしい。
「あなたは私の仲間である水子をかど、かど…………お姉さんなんだっけ?」
(かどわかし、ね)
「かどわかし、こんな所で楽しく遊ばせていた! なんということだ! あなたはそれに相応しい報いを受けるだろう!」
「いや、なんという事なのよ」
あの青色の禍々しい仙人。瓔花と名乗った水子に耳打ちした事からあの女が台詞を用意したのだろう。だとすれば、やはり青い仙人こそが黒幕で水子はただ矢面に立たされているだけか。磨弓がそれを問いただそうと口を開けるや、続いて二の矢三の矢を放つのはやはりあちらの方が早いのであった。
「蘇我の末裔、屠自古と申す! 偉大なる埴安神と刃を交わすは武家の誇り。いざ、お手合わせ願おう!」
「同じくぅ、宮古の末代、芳香である! 御前様には何の恨みもないが、義によって助太刀いたそう!」
蘇我氏って武家だっけ? 何で見た目はキョンシーなのに侍っぽいの? 生真面目な磨弓の思考回路には既に軽いバグが発生しかかっていた。
「様子のおかしい奴らです。もう殺して宜しいですか?」
「残念だったなあ! ここに居る我らはとっくに一度死んでおるわぁ!」
「無敵の人か、こいつら……」
脳味噌スカスカっぽいキョンシーが自信満々にふんぞり返る。そんなもんだから磨弓はというと、がらんどうなはずの頭に鈍痛を感じていた。
「そこの青いお前、見たところ貴方が一番話が通じそうだけど説明とか無いの?」
知らない磨弓からすればそう見えるだろう。だがしかし。
「残念だったな! その青い奴が私達の中で一番頭がおかしいのさ!」
「失礼ねえ。これでも私オートマ限定だけど免許持ってるのに……」
普段の言動もまとも寄りではある。だからこそタチが悪い霍青娥であった。
「話をする気が無いようですし慈悲など不要でしょう。排除の許可を、袿姫様……!」
磨弓は弓を引き絞って照準を芳香に合わせた。衣装こそエプロンだが、袿姫だって畜生界の極道三組織全てを敵に回して互角以上に渡り合える、名実共に神なのだ。自分の創作物には愛情を持っているが、それをぶち壊す敵には一切の容赦無し。先ほどから黙っているが相当腹に据えかねているだろう。一言あれば、私が鬼となって襲い掛かる。その一言をさあ賜ろうとちらりと後ろに目を向ける磨弓、だったのだが――。
「良いでしょう……受けて立つわ!」
「け……?」
なんと袿姫は頭のおかしい奴らに合わせる方を選んでしまったのである。
「水子を取り戻しにここまで乗り込んできたその蛮勇、気に入った! ならば私も全力を持って応じよう!」
「け、袿姫様。貴方がお手を煩わせる必要などありません。私がこいつらを片付け……」
「我が磨弓よ、お前こそが私の最強の剣である! 究極の一撃をもって葬りなさい!」
「は! はい!」
いや、やはり袿姫様は袿姫様だ。自分を信じて奥義を委ねてくださったのだ。磨弓は改めて忠誠心を滾らせて腰の刀に持ち替えた。袿姫の力が体に染み渡り、光となって漏れ出す。以前巫女達にやられてから奮起した磨弓が身も心も新たに生み出した必殺技であった。
「よっしゃ、こっちも行くぞ!」
一方の屠自古達である。こっちはこっちで狙い通りの展開になった事でとことん昂揚していた。
この作戦において一番大事だったのは『決して袿姫を侮辱しないこと』にあった。弱者が強者と戦う時は興を削いではならない。こいつは不愉快だから消すとなったらそこに一切の慈悲は無くなると知っていた。神子もかつて政敵に対してそうであったからだ。
「フォーメーションS、準備ッ!」
「おうッ!」
「まかせておいて!」
芳香の肩に瓔花が仁王立ちした。この時の為に前々から準備しておいた、ことにしてほしい、必殺技の体制である。司令塔に屠自古が立ち、芳香と瓔花の二人で放つ究極の合体奥義だ。
「私、聞いてないんですけど」
青娥が『何それ知らん怖……』な顔で口元を両手で隠すが知った事ではない。壁抜けに一生懸命で後ろを振り返らなかったのが悪い。
「みんな、集まって! パワーを一つに!」
「うおおおぉ! 瓔花に元気を分けるのだぁ!」
瓔花が頭上に浮かび、両膝を抱えて丸まった。そこに向けて芳香が両手の平を向ける。号令を受けて胎内に居た水子達が一斉に飛び出し、瓔花の元に集中した。
「……まだだよっ! まだ足りない! みんな、もっともっと集まってー!」
「そこの水子達、瓔花が頑張ってるのが見えるだろう! 君らもあの子を応援するんだ!」
屠自古が呼びかけたのは袿姫を囲んでいた水子達。ついさっきまで袿姫を慕っていたのは事実だが、この子らも瓔花に最も仲間意識を持っているのは言うまでもない。まして何やら凄そうな技の一員になれるのならば一切迷いは無かった。さらに水子が集まり、その中心の瓔花が磨弓に劣らぬ強い光を放ち出す。
「いや、こんなんじゃダメ! 神様を倒すにはもっとパワーがいるわ!」
「水子達よおおぉ! 瓔花に集まれぇ! もっとパワーうぉおおおおおお!!」
芳香の咆哮は、霊長園を突き破って畜生界全土に響き渡るほどの本日最大ボリュームであった。しかし叫んだところで既にこの場の水子は全員瓔花の元に集まっている。気合だけ入れても空回りで終わるだろうと引いた目で見ていた青娥……と思いきや、彼女も第六感はしっかりしているのでそれをしっかり捉えてしまうのだった。
「これは、集まっている……共鳴しているのだわ……埴安神様を倒すという目的の為だけに、散らばっていた水子達の全てが……!」
ここでまさかの100%コンプリート達成。どこからともなく壁をすり抜け大量の水子が飛んできた。まさか屠自古はこの展開すら織り込み済みで熱血していたのだろうか。だとしたら弟子が師匠を上回る感動の展開のはずだし、なんかアニメに出ていたお姉さんっぽい台詞でノリには合わせたのだが、やっぱりどこか納得いかない顔の青娥であった。
「……面白い! 磨弓の一刀が勝つか、その水子の群れが勝つか! 全力で来るがいい!」
袿姫も流石で全く怯まず、逆に闘志を漲らせる。これは強者のプライドだ。勝つだけならあの大技を躱せば良いが、真正面で受けてこその神である。
「参ります!」
掌を前に突き出して磨弓に合図を送る。いくらパワーが集まってもたかが水子の集合体。神の創造物に勝てるものかと誇りを持って一歩を踏み出した!
屠自古も瓔花の玉が十分に膨れ上がったのを見て大声で号令を下す!
「芳香! 瓔花! 行くぞ、シャドーボ……!」「待ちなさい」
流石に青娥も肩を掴んで止めた。
「それ、パクリでしょ。なんか他の死者っぽい名前にしなさい」
「キャノンボール!!」
「しゃあっ!!」
芳香の全力を持ってぶん投げられた水子の塊は強烈なトップスピンで飛んだ。
「縄文文化アタックですって!? 磨弓、打ち返しなさい!」
「承知!」
袿姫は何か知っていたのか初見のはずの技を一瞬で察して指示を切り替えた。具体的に言うと敵の大玉は剣で跳ね返して攻略するのが作法なのである。
「せぇえいやぁ!」
大玉の本体、瓔花を狙った磨弓本気の横振り!
幼児をぶった切ろうとする最悪の絵面。しかしやらねば負ける。磨弓の太刀に一切の迷いは無い。タイミングも合わせた。瓔花の顔面に刃が迫る――次の瞬間!
「しぃいいいんく!」
かくん。
トップスピンが掛かっていた瓔花弾は縦に落ちた。
「ま!?」
野球だったら見事なストライク。しかしこれは野球では無いので地面に着弾しても何の意味も無い。
いや、無くはなかった。
「え?」
そう、前回転なのだから地面に落ちてもまだ転がる。
では磨弓の足元から前に進んだらどうなるか、言うまでもなくあとは袿姫である。
「袿姫様、回避を!」
とんでもない失態に磨弓も大慌てで叫ぶ。あんなおぞましい水子の集合体、当たったらどうなるか分かったものではない。
そして一方の袿姫だが。
「とりゃぁああああ!」
ごろごろころん。
多少スピードは乗っているが、要するに子供がでんぐり返しで自分に向かっているのが現状である。そんな可愛らしい場面で大人はどうするのが責務かと言えば。
「ぬわああぁ!」
ヌワー、ぬわー、ぬわー……――。
景気良く断末魔を上げ、袿姫はゆっくりと背中から倒れ込んだのであった。