私は今さとり様の命で死体を探している。
若く、新鮮な女の死体。
こいし様の素体とするために死体を探すのはこれが初めてではない。
こいし様はいつも無茶ばかりするから。
死体に覚の象徴であるサードアイを取り付け、さとり様がこいし様に触れて何か呟きつづける。
するとむっくりと起き上がり、こう言うのだ。
「おはようみんな!」
お空や他のペットたちは喜んで、それからパーティが始まる。
死者が蘇り、動物が踊り狂う。まるでサバトだ。
...私は何度か前のコワれる直前のこいし様と話したことがある。
館から出て行くこいし様に、
こんにちは、お出かけですか? たまには他の子たちと遊んでくださいよ。寂しがってますから。
なんて。
そしたらこいし様は
「湖に釣りに行くんだー。大物釣れたらお土産にするから楽しみにしててよ。それからしばらくやりたい事もなかったし一緒に遊ぼうよ 」
なんて言うから、わーいとか言いながら別れて仕事してたかな。
死体を見つけたのは私だった。
釣りにしては帰りが遅いなと思ったから、仕事ついでに地底湖を覗いてみたのだ。
こいし様は泳げたはずなのに。
水を吸った身体は醜く、醜悪な匂いを発しながらそこにいた。
魚に食い荒らされたのだろうか。身体はボロボロで顔は誰かも判別できないほどだった。
着ていた綺麗な服は、ただの布切れとなり弱々しく身体に張り付いているだけだった。
誰かも分からないその物体はただ一つだけ、青色の閉じた眼だけが私に真実を伝えてくる。
この火車の仕事も長いから死体は多く見てきた。
自殺も他殺も病気も事故も。
あの、下半身に集中したコワされ方は......
いや、もう私には知り得ない事だ。
その後しばらくして集落の何人かが変死体で見つかったのも私には関係のない事だ。
...その時もこいし様は笑顔でおはようなんて言って起きてきた。
その時何となく、言ってしまった。
外は危ないですし前に言った通り皆と遊んでくださいよ。
「えー?そんな事言ってたっけ? まぁやりたい事もないし良いかー」
こいし様はコワれる直前の事を忘れてしまっていた。
いや、死の記憶なんて覚えてない方が良いのかもしれない。
...でもこいし様は私の知ってるこいし様とは少し違ってしまっていた。
それは、ちょっと寂しい、と思う。