こいしちゃんはカラダ壊れちゃったのに大丈夫なの?
『大丈夫では無いけど、私は無意識に潜む妖怪だからね。身体はただのデバイスに過ぎないの。今は緊急避難的にフランちゃんに居候させてもらってる』
居候?
『憑依とかそんなイメージだよ。フランちゃんの無意識の部分に私のコアを置いてるの。私が身体に依存しない、精神に作用するタイプの妖怪で良かったわね』
憑依?ええー?なんかへんな感じ。いつまでいる気なの?
『なにその言い草。誰のせいだと思ってるのさ。とりあえずお燐呼んで身体を修復してもらわなくちゃ。器が出来次第元に戻るからそれまでかな』
でも、こいしがここにいることどうやって伝えるの?
わたしここから出たくないよ?
『ええー? それくらいやってくれてもいいじゃない。自分の蒔いた種でしょ?』
...もぐもぐ。
『あっ! コラ! 私の身体食べないで! 分かったから! 自分で連絡取るよ!』
もぐ......?できるの?
『集合的無意識を利用してお姉ちゃんの意識にテレパシーを飛ばすの。疲れるからあんまりやりたく無いのに......』
それは、良かった。
『はぁ。フランちゃんが地下室に閉じ込められてる理由が分かった気がするよ』
......別に閉じ込められてるわけじゃ無いもん。
『でも出て行こうとしてもお姉さんに戻されちゃうんでしょ? 出て行けないなら閉じ込められてるのと一緒じゃん』
...ぐぬ。
『図星じゃんー。お姉さんには勝てないの? 吸血鬼としてのスペック自体はフランちゃんの方が高いって聞いたよ?』
......たしかにそうだけど、でもわたしは“妹”だから。
吸血鬼の世界では“妹”は“姉”には勝てないの。血筋の優越はどうやっても覆らない。
どんなに力量差があっても、どんなにハンデがあろうとも。
“そういうふう”にわたしたちは出来てる。
『ふーん。わたしはおねえちゃんには絶対負けないけどね。意識を操って戦うおねえちゃんには意識を無視できるわたしには絶対に勝てない。“そういうふう”に出来てる』
そうなんだ。どんなものにも天敵はいるのかしらね。
『フランちゃんはそういう世界のルールに嫌気がさす事はないの?』
どうして?
『だって、普通なら勝てる相手なのに、勝負したら絶対勝てないなんて悔しくないの?』
ああ...物が上から下に落ちるってくらい当然の事に疑問なんて普通持たないでしょ?
『そう? 私はそうは思わないけどなぁ。視野を絞ることは大切だけど、ただ目を閉じるだけじゃ分かることも分からなくなると思うよ』
んー自虐?
『私は視点を切り替えただけ。見えないものを見るために、見えるものを見えなくしただけ。』
ん......
『闇、夢、幻覚......昏い土の下の箱。普通じゃ見えないものに神秘性を見いだす。でもフランちゃんは違うでしょ。』
............
『いつまで何も見ないで死んでいるような生活をしているつもりかしら?』
......おやすみ。
『夢の中で大冒険か。ま、今はそれでもいいかもね。じゃあ、おやすみなさい』