Coolier - 新生・東方創想話

狛犬問答

2018/02/10 22:14:27
最終更新
サイズ
30.04KB
ページ数
6
閲覧数
3702
評価数
4/10
POINT
650
Rate
12.27

分類タグ

 ○

 高麗野あうんは考える。
 自分が生まれた理由と、その存在意義を。
 博麗神社を護るため。大好きな主人の笑顔を見るため。
 すぐに思いつくのはこの二つだった。
 とある異変により生を受けたばかりの身ではあるものの、幻想郷という世界の成り立ちや規律、そして自らの役割というものを彼女はどことなく理解はしていた。
 因果か業か。運命か幸運か。石像から転身して感情ある肉体が此処に在るのは、すなわち主人に貢献するためだという自負もあった。
 この身この意思すべては主のモノ。
 その前提に揺るぎはない。間違いなく。
 しかし、顕現してから数ヶ月。彼女には心のどこかにささくれ立つ危機感があった。この気持ちが一体何なのかわからないでいるのだ。
 一方の主人はいつも笑顔を向けてくれる。神社を護る自分に感謝だってしてくれている。事件や異変が起きたって、鍛え上げた力で見事に解決する。人望もあり仲間もたくさんいる。懸念材料は何もない。
 あの人が幸せでいれば自分も幸せであるはずなのに、どこか納得できないでいるのも確かではあった。
 なぜ?
 そんな凝りを患ったまま、あうんは今日も神社を警護する。
 博麗霊夢を慕う心にウソはないのだから。それが自らの幸せに繋がっていると信じて邁進することも、狛犬の役目だと言いきかせながら。

コメントは最後のページに表示されます。