Coolier - 新生・東方創想話

■紅ノ魔館■

2015/10/31 00:00:36
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「…はぁ?」



話をするのが久し振り って言ったけど…

うん、もうね 意識がハッキリしなくて

大分…分からなくなってきたの


館になったばかりの頃は常に意識があったんだけど…段々眠ってる時間が増える様になって
起きてても自分が目覚めてる事にすら気付けなくて


気付いたら今日まで随分寝てたみたいで…

いつのまに引っ越したのね、私


「当然でしょ むしろ館に成った時点で普通は自我なんて消し飛ぶ筈なんだけど お前しぶと過ぎ」


…予想はしてたけど、冷めてるぅ


「それで?遺言でもあるの?」


…うん

次はいつ目覚めるか…
目覚めたとして、今程話せるかどうか


もしかしたら、もう二度と会えないかも知れないし


「そりゃよかった… で?」




幸せになってね



「……はぁあ?」



貴女は、本当に頑張った

フランドールを救って、守り続けて、助けようとして

パチュリーの様な周囲と噛み合えない人とも強く接して

咲夜を拾い上げて、手を引いてあげて、居場所を作ってあげて

皆が暮らすこの館の全てに対して、善処改善に努めて


心配だったのよね

悲しそうなフランドールが
つまらなそうなパチュリーが
苦しそうな咲夜が


貴女は本当に優しい人

他人の運命を見定め、それを無視出来ずに掬(救)い上げて来た

勿論見境無く全ての人にそうして来た訳じゃないし、沢山襲って奪って来たけれど
それを考えても、多くに関わり助けて来たのだから…


「……」


貴女が皆にして来た事はきっと報われる

未来や運命が見えない私にもそれくらい分かる

そしてそうでなくちゃ…私が気に入らない


「……」


多分貴女は…この館に住む、自分の家族だけで生きていこうと思ってる
自分達だけが幸せになれればいいと

自分が背負うには、それだけで精一杯だと

それ以外…それ以上の余裕は無いと


「…」


もう、背負わなくて大丈夫なのよ

貴女が助けて来た人達はもう、自分の足で歩ける

まぁ肩を貸してあげた方がいい子もいくらかいるけど…昔よりも断然よくなっているわ

少なくとも、貴女が掛かりきりで面倒を見なくてもいいの


「……」


もっと外を見て

この郷にいるのは敵ばかりじゃない
圧倒して、従わせるだけの人ばかりじゃない

貴女にいい刺激を与えてくれる人達が 貴女が刺激を与えるに相応しい人達が、沢山いるの


沢山の人の運命を変えて来た貴女なら、彼女達を変えられる


そして、貴女の運命すらも変える力を持っている


「……」


…幸せになるかどうかは他人に指図される事ではないし、ましてや私の貴女の下に就く者

そして貴女はレミリア・スカーレット
誰かに指図される様な人じゃない


だからこのお願いは、指図でも頼みでもない


私の抱いた、叶って欲しい願い事


だから




「、あぁ」



ん?




「悪い、心底下らない」



…あらあら…



「この私に向かって『幸せになれ』だなんて…御目出度い勘違いと呆れ返る程の無礼さ どちらから折檻してやったものかしらね…?」


「高々百年と少し“住んでやった”程度で乳母にでもなったつもり? 建築物風情が笑わせないで」


「私はいつだって、自分の為だけに生きてきた…あいつらにして来た事も、全て望んでやった事だ 他人の為にやってきた事など何一つ無い」


「私は自分の面倒しか見られない様なお子様じゃないの… 妹や友人や部下の面倒も見られないくらいに幼く見えたかしら…?」


「あいつらが悲しい?つまらない?苦しい? 建築物風情が私の家族の何を知ってるの? そんな下らない感傷に浸り続ける様な連中じゃないわよ…!」


「幻想郷の連中等、フランの玩具やパチェのモルモットや咲夜の料理の材料に過ぎん 全て我々が喰い物にする…!」

「こんな片田舎の芋共に…!私の運命を変え ら 、…」








「…おい」








「……紅?」










「…眠ったか…」




いやまだ起きてるけど?



「  」


ねっね?続きは?続き続き


「…やっぱり焼き払うか…」


あぁん槍向けないで 刺さっちゃうよ刺さっ、熱!


「やっぱり、あの日、殺しきっておくべき、だったかしら、ね」


痛ッ、床に穴が痛ッ、 修理熱ッ、大変熱ッ、 やめッ


「ホントに、お前は…お前は…」


ふふ…ごめんね?


「……」


…?ごめんね? 頭抱えないで?


「……ふふ、ふ」


…?



「来たか…」



わぁお 瞳孔パックリ



 …、あ


「でかい図体して気付くのが遅過ぎ」


いや~貴女に見とれちゃって、なんて、ハハッ…


…はぁ


「森の方…やはりあの神社のある方角からね」


…来てるわね…


ずっと向こうの森で、周囲を蹴散らしながらこちらを目指し突き進んでいる

黒いのと…赤いのが


「……」


楽しみね?



「…私から」


ん?


「私から、お前に最初で最後の命令よ」


えー

今まで散々あれこれ言われてきた気がするんだけど


「建ってるだけでいいお前に命令なんてした事無いわよ」


…あら


「安心なさい、一つだけ守ればいい」


素敵な笑顔ね…

鋭い牙



「私達を守りなさい」


はいはい、今まで通りに


「この館を…お前の脱け殻を守りなさい」



これからも



「私に楯突くあらゆる無礼者を生かして通すな…!」



いつまでも




「分かったら、門の前で眠りこけてる貴様の指人形を叩き起こしなさい…!」





全然一つじゃないじゃないの

ワガママちゃんめ





「…いけ 用無しだ」



えぇ





本当に、愉しい事だ

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