Coolier - 新生・東方創想話

星食み

2013/07/16 23:19:10
最終更新
サイズ
21.88KB
ページ数
3
閲覧数
5139
評価数
26/61
POINT
4120
Rate
13.37

分類タグ




 綺麗な満月だった。

 お師匠の魅魔様が別の世界の住人に勝って、世界を永遠に満月の夜にする夢を叶えてもらったのだという。
 魅魔様は月の光が大好きだ。満月の光はもっと好きだ。
 だから魅魔様は、ずっとお月様が出ている今がきっと幸せに違いない。魅魔様が望んだおかげで世界は暗いままだし、空には大きな満月が、お天道様の代わりに世界を照らしている。私も星が大好きだから、今が幸せだった。

 お日様は昇ってこない、永き夜の始まり。

 そう。

 永遠の満月。

 私と魅魔様は、靈夢の神社の屋根でお月様を視ていた。
 魅魔様は鼻歌交じりに、月のくっついたステッキをくるくる回したり、肩に担ぎ直たりしている。超ゴキゲンだ。
 私はというと、そのステッキにくっついた月と、お空に浮かぶ月を見比べたり、辺りに散らばるお星様を数えたり、自分でお星様を飛ばしてみたりしていた。

 でも、本当にしたいコト、訊きたいコトが私にはあった。

「ねえねえ魅魔様」
「あー?」
「お星様ってどんな味がするの?」
「知りたいかい」
「うん」

 魅魔様は天儀――オーレリーズと呼んでいるソレを呼び出した。
 赤、青、緑、紫。ぐるぐるとお星様が四つ、私達の回りをゆっくり回っている。
 魅魔様はその一つ一つを指さして、私に教えてくれた。

「この赤色の星がいちご味、これはハッカ味、それからコイツが抹茶味、最後の紫色がぶどう味だ」
「ほんと!」
「冗談だ」

 魅魔様はたまに意地悪だ。

「もう、本当のコト教えてよ」
「知らん」
「知らないの」
「知らんから冗談を言った。でもな魔理沙、嘘も、冗談も方便だ。知りたいコトを識るためには冗談が必要になる時だってあるんだよ」

 そう言って魅魔様は、夢心地のまま満月を見上げた。
 私もそれに倣って見上げてみる。
 綺麗だった。それ以外に出てくる言葉が見つからなくて、少し悔しかった。
 自分がまだまだ何も識らない未熟者だと分かると、もっと悔しくなった。だから、私は識りたい。冗談でなく、本心からそう思う。

「冗談を言っても結局は識らないままじゃない。私、そんなのイヤだわ」
「冗談を言うのは悪いコトじゃないのさ。お前はまだ深く考えなくていいんだよ。識るコト、学ぶコトを恐れるな。お前は識って識って、人様を真似て、たくさんのコトを学べばいい。その手段のうちの一つとして、冗談があるから、使えば良いだけだ」
「そっかぁ」
「理解が早くて結構。流石は私の弟子だね。はっはっはっは」
「魅魔様に褒められちゃった。うふ、うふ、うふふふふ……」

 満月。

 お月様。

 そういえば、お月様もおっきなお星様だもんね。小さいお星様と変わらないもんね。
 お月様に行けば星は食べ放題なのかな。いつか行ってみたいな。
 うさぎ、うさぎ、何見てはねる――


コメントは最後のページに表示されます。