明るい大地に優しく流れていくそよ風。
綺麗なスカイブルーの空から降り注ぐ、温かな太陽。
風を受けて踊る草花達。
そんな景色の中に居ると、不思議と柔らかな気持ちになってくる。
ふわふわで、ぽかぽかで、まあるくて。
思わず鼻歌でも歌いたくなるような、楽しい気分。
それともこれは、隣にいるあなたのお陰だろうか―――?
「なぁアリス、来て良かっただろ?」
前を軽い足取りで歩いていた魔理沙が振り返る。
表情はとっても明るい笑顔で、こっちにまで楽しさが伝わってきそう。
「もう、急にお昼は外で食べたいなんていうんだもの」
あまりにも楽しそうな魔理沙にため息をつく。
といっても、それはあくまで形だけで、本当は私も来てよかったと思っていた。
「こんなに気持ちよく晴れてるんだからさ、外で食べなきゃ勿体無いだろ? 第一アリスだってお弁当作ってるときから楽しそうだったじゃないか」
「やるとなったらしっかり取り組むのが癖なだけよ。それに家には料理を作るとすごく美味しそうに食べてくれるのが一人居るからね」
前の方はただの建前で、後ろの方が本音。
魔理沙は私の料理を毎回美味しそうに食べてくれるから作り甲斐がある。
料理を食べているときの幸せそうな魔理沙の顔を想像しながら作るから、どうしても顔が綻んでしまうのだ。
「アリスの料理は最高に美味しいからな。今日のお昼も楽しみだぜっ」
魔理沙が全身で気持ち良さそうに日差しを浴びながら、笑顔でそう返してくれる。
そんな魔理沙の様子に今まで不機嫌を装っていた私の頬も、思わず緩んでしまう。
きっとまた、魔理沙は凄く美味しそうにご飯を食べてくれるに違いない。
そのことを考えただけで、心は自然と弾みだす。
ふふっ、今日はどんな風に魔理沙は喜んでくれるかしら。
「ったく、素直じゃないよなアリスは。もうすっかり楽しそうな顔してるぜ?」
「さ、さぁ? なんのことかしら? とりあえずもうお昼なんだからお弁当食べましょう」
ニヤリと笑いながら顔を覗き込まれ、慌てて表情を取り繕い草の上に腰を下ろす。
日差しが温かいせいかそこはほんのり温かく心地いい。
空から降り注ぐぽかぽかの日差しと、そっと頬を撫でる気持ちのいい風も相まって、寝転がったらすぐに眠ってしまいそうだ。
「それは賛成だぜっ。さっきからお腹がすいて仕方ないんだ」
私の提案に魔理沙は頷き、お弁当を入れたバスケットを挟み隣に腰を下ろす。
「さ~て、今日のお昼はなぁにかな~?」
「こら、そんなに焦らなくてもお弁当は逃げていかないわよ」
「でもこうしている間にも私のお腹は悲鳴をあげてるんだってっ」
「だ~め、お行儀良く待てない人にはこれはお預けよ」
「えぇ~っ!?」
バスケットをひょいと持ち上げ私の身体で隠してしまうと、魔理沙が抗議の声をあげる。
そんな声を上げたって、ダメなものはダメなのだ。
「ちぇっ…。まぁ、少しくらい時間置いたほうがもっとお腹減って、さらに美味しくなるかもしれないからいいけどさ…」
一時お弁当のことは諦めたのか、しぶしぶっといった感じで身を引き仰向けに寝転がる魔理沙。
私はその反応に満足して頷く。
「うん、物分りが良くてよろしいっ」
「ったく、調子がいいやつだぜ」
「くすくす」
ちょっと拗ねた様子に思わず笑みがこぼれる。
魔理沙と一緒に居ると本当に退屈しない。
楽しくて、あったかくて、やわらかくて、まあるくて―――そんな気持ちになる。
今まで生きてきて、ここまで素敵な気持ちになれるのは魔理沙の隣にいるときだけだ。
それだけ私にとって、魔理沙は特別ということなのかもしれない。
「しかしこうして寝転がっているとホントに気持ち良いな。アリスもやってみろよ」
「そうね、確かにこんなにいい天気だと寝ころんでお昼寝とかしたくなるわ」
魔理沙に促され、同じように仰向けで横になる。
日差しが全身に降り注ぎ、まぶしくて思わず手をかざす。
身体がぽかぽかしてきて、今すぐにでも眠ってしまえそうだ。
「そうだな、目を閉じちゃったら寝ちゃいそうだぜ。…こんなに空腹じゃなかったらな」
「もう、そんなに急がなくったっていいでしょ? 魔理沙ったらホントにせっかちなんだから」
私の方をジト目で見てくる魔理沙に苦笑する。
やっぱり魔理沙としては、今すぐにお昼を食べたいらしい。
「だって仕方ないだろっ? アリスのお弁当は絶対おいしいだろうから早く食べたんだよ~!」
「あら、ありがとう。けどもうちょっと待ってもらうことにはかわりないけどね」
「…まぁ、そうだとは思ったけどな」
「「ぷっ」」
二人で顔を見合わせて吹き出してしまう。
無理な不機嫌顔が、繕った澄まし顔がおかしくて。
そのままお互いお腹を抱えて笑い合った。
魔理沙と一緒にいると、本当に退屈しない。
それどころか、話していると自然と笑みがこぼれてくる。
柔らかな日差しに包まれて。
隣には愛しいあなたがいて……
「なんだか幸せ……」
「…奇遇だな。私も凄く幸せだぜ」
思わずこぼれた呟きに、笑顔で頷いてくれる魔理沙。
目の前に魔理沙の顔があって、少しドキドキする。
「…なぁアリス、私の帽子の便利な使い方教えてやろうか?」
「便利な使い方…?」
突然魔理沙が不思議なことを言い出して首を傾げる。
なんだろう? つばの部分が結構大きいから、日除けに使うとかかしら。
「それはさ、これさ」
「えっ? ちょ、ちょっと魔理沙っ」
そう言うといきなり魔理沙が、私の顔の上に帽子を乗せてくる。
びっくりしてそちらに気を取られていると、気がつけば魔理沙の顔が目と鼻の先まで迫っていて、その距離がゼロに―――
「い、いいいっ…いきなりなにするのよっ!?」
「だから帽子の便利な使い方だよ。つばが広いからするのを隠すにはもってこいだぜ」
「か、隠れてるからってやっていいことと悪いことがあるわっ」
ま、周りに見えないからっていきなりこんなことするなんて…!
「なんだよ、アリスはされるの嫌だったのか?」
「うっ……べ、別に嫌って訳じゃないけど…」
確かにいきなりのことで驚きはしたけれど、けして嫌だったわけじゃない。
むしろ、その……う、嬉しいくらいだし。
「ならいいじゃないか。アリスの“嫌じゃない”は嬉しいってことだしな」
「う、うぅ~……」
なんとか言い返してやりたかったけれど、図星過ぎて言い返せない。
なんだか少し悔しい気もけど、私をよく分かってくれてるってことで納得しておこう。
…その代わり、もうちょっとお弁当は我慢してもらおうかしら。
「なぁアリス」
「こ、今度はなによ?」
魔理沙に声をかけられて思わず身構える。
さっきのことがあるから、不意打ちされないようにしなくちゃ…!
「安心しろって。もうなにもしないからさ」
「そ、そう…。なにもしないんだ…」
「…今ちょっと残念に思っただろ?」
「お、思ってないわよばかっ」
ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる魔理沙。
…だけど、魔理沙の言っていることはまったくもって見当違いよっ。
も…もう一回くらいしてもらったら嬉しいかななんて思ってないんだから…!
「アリス、好きだぜ」
「あうっ…!? ふ、不意打ちは卑怯よ…」
意識が他にそれた瞬間に言われて、顔が一気に熱くなる。
前に比べれば耐性ついたはずなんだけど、こうやって身構えていないときに言われると動揺を抑えられない。
「赤くなってるアリスは余計に可愛いからな。たまに見たくなっちゃうんだぜ」
ニカっと歯を見せ悪びれもせず笑う魔理沙。
…どうやら確信犯だったようね。なおさら達が悪いわ、まったく…。
…可愛いって言ってくれるのは…その……う、嬉しい…けど……そ、そのくらいで騙されたりしないんだからっ!
「ところでアリス、私は言ったんだからアリスも言ってくれないのか?」
「い、言うってなにを…?」
「私のことが好きってさ。約束しただろ? アリスはそう決めなきゃ自分から言わなくなっちゃうから、私が好きって言ったらアリスもなるべく返すようにするって」
「うぐっ…そ、それは……そうだけど…」
そうだった。最初の頃あまりにも私が口に出して気持ちを伝えないからって、二人でルールを決めたんだ。
そのルールとは「相手が気持ちを伝えてくれれば、それをきちんと返すこと」
といっても魔理沙はそんな決め事しなくても自分から言ってくれるから、これは私専用のルールみたいなものだ。
「まさかアリスが約束を破るなんて、そんなことはないよな?」
「うぅ……い、言えばいいんでしょ言えばっ!」
半ばヤケクソになって叫ぶ。
さっきの不意打ち二連発のせいで胸はドキドキしっぱなしで、まともに言える気がしないけど。
だ、だけど二人で決めた約束なんだし、ちゃんと言わなくちゃ…!
「あ、あのね魔理沙…」
「あぁ、なんだ?」
「そ、その……わ、私もね…」
「うん、私も?」
「え、えっと……だから………わ、私も……」
なかなか言えず言葉に詰まっている私に大して、ニヤニヤしながら魔理沙がその先を促してくる。
ぜ、絶対楽しんでやってるわっ!
こ、これはなんとしても搾り出さなきゃ悔し過ぎるっ!
真っ赤になる私を楽しそうに見ている魔理沙を見返してやるために、理性を総動員して口から言葉を押し出してやる。
そうして苦悩の末私が搾り出した言葉は―――
「……………………私もよ…」
「…私もって何がだよ?」
「だ、だからっ……私も、そうなのよっ」
「いや、だからなにがどうなんだよ?」
うぅ、魔理沙ったら絶対わかってるはずなのに、あくまで白を切る気なのね…!
もう恥ずかしすぎて泣きそうよぉ…。
「だ…だから私も好きなのよばかーっ!」
あまりの恥ずかしさに泣きそうになりながらも、なんとか言葉を押し出した。
か、顔から火が出そうよもう…。
「よしよし、涙目になるほど恥ずかしかったのに良く頑張ったな。偉いぜアリスっ」
「ホントはわかってたくせに…。魔理沙のばかっ」
満足そうに頭を撫でてくる魔理沙を睨み返す。
そんな嬉しそうな顔しちゃって…!
「ごめんごめん。どうしてもアリスの口から聞きたくてさ。あとやっぱり、真っ赤なアリスが可愛くてつい」
「うぅぅ~っ!!」
完全に魔理沙の手玉に取られてしまったみたいですっっっごく悔しいっ!!
なんとか少しでも仕返ししてやれないかと周りを見渡すと、目に入る一つのバスケット。
―――これよっ!
魔理沙はさっきからずっとお腹を空かしているんだから、一矢報いるにはこれしかないっ!
ピンと来た私は立ち上がってバスケットを持ち上げると、ぽかんとする魔理沙に向かって言ってやる。
「そんなイジワルばっかりするやつは、今日のお昼は抜きだからねっ!」
「なっ!? ちょ、ちょっと待ってくれよアリスっ! 私もう空腹でヤバイんだってっ!」
「知らないっ! お腹ペコペコにすればその減らず口も直るんじゃないのっ!」
それだけ言うと魔法で空に飛び上がり、魔理沙を残し自分の家へと飛んでいく。
「わ、悪かったから待ってくれよアリスっ! 謝るからっ! 謝るからお昼抜きだけは勘弁してくれ~!」
後ろから何かを言いながら魔理沙が追いかけてくるが、そんなことは知らない。
せいぜい私で遊んだことを後悔するといいのよっ!
…未だにちゃんと気持ちを言葉に出して伝えられない私も、少しは悪いかもしれないけど…。
……それに、割と反省してるみたいだし、私のお昼楽しみにしてくれてたみたいだし…。
…追いついて謝られたら許してあげようかな。
「…はぁ、ホントに甘いなぁ…」
…美味しそうに私の料理を食べてくれる魔理沙の顔もみたいから、別に良いかな。
それに、ご飯はやっぱり……好きな人と一緒に食べたほうが美味しいものね。
「待ってくれってアリスっ! 私が悪かったから~っ!」
「許して欲しかったら、まず私に追いつくことねっ! もし追いつけたら考えてあげるっ!」
追いかけてくる魔理沙にべ~っと舌を出し、さらにスピードを出して逃げる。
まぁ、魔理沙のほうが飛ぶスピードは早いから、そのうち追いつかれちゃうのはわかってるんだけどね。
だけど簡単には捕まってあげない。
ちょっと遅いお昼ご飯まで、青空の鬼ごっこを楽しむとしよう。
このスピードで飛んでたらすぐに家には着いちゃいそうだし、方向転換でもしようかしら。
自然と綻ぶ口元を隠しながら、さっきの草原へと方向を変える。
あの草原の上でわざと追いつかれて、ピクニックの続きにしようかなと考えながら―――
綺麗なスカイブルーの空から降り注ぐ、温かな太陽。
風を受けて踊る草花達。
そんな景色の中に居ると、不思議と柔らかな気持ちになってくる。
ふわふわで、ぽかぽかで、まあるくて。
思わず鼻歌でも歌いたくなるような、楽しい気分。
それともこれは、隣にいるあなたのお陰だろうか―――?
「なぁアリス、来て良かっただろ?」
前を軽い足取りで歩いていた魔理沙が振り返る。
表情はとっても明るい笑顔で、こっちにまで楽しさが伝わってきそう。
「もう、急にお昼は外で食べたいなんていうんだもの」
あまりにも楽しそうな魔理沙にため息をつく。
といっても、それはあくまで形だけで、本当は私も来てよかったと思っていた。
「こんなに気持ちよく晴れてるんだからさ、外で食べなきゃ勿体無いだろ? 第一アリスだってお弁当作ってるときから楽しそうだったじゃないか」
「やるとなったらしっかり取り組むのが癖なだけよ。それに家には料理を作るとすごく美味しそうに食べてくれるのが一人居るからね」
前の方はただの建前で、後ろの方が本音。
魔理沙は私の料理を毎回美味しそうに食べてくれるから作り甲斐がある。
料理を食べているときの幸せそうな魔理沙の顔を想像しながら作るから、どうしても顔が綻んでしまうのだ。
「アリスの料理は最高に美味しいからな。今日のお昼も楽しみだぜっ」
魔理沙が全身で気持ち良さそうに日差しを浴びながら、笑顔でそう返してくれる。
そんな魔理沙の様子に今まで不機嫌を装っていた私の頬も、思わず緩んでしまう。
きっとまた、魔理沙は凄く美味しそうにご飯を食べてくれるに違いない。
そのことを考えただけで、心は自然と弾みだす。
ふふっ、今日はどんな風に魔理沙は喜んでくれるかしら。
「ったく、素直じゃないよなアリスは。もうすっかり楽しそうな顔してるぜ?」
「さ、さぁ? なんのことかしら? とりあえずもうお昼なんだからお弁当食べましょう」
ニヤリと笑いながら顔を覗き込まれ、慌てて表情を取り繕い草の上に腰を下ろす。
日差しが温かいせいかそこはほんのり温かく心地いい。
空から降り注ぐぽかぽかの日差しと、そっと頬を撫でる気持ちのいい風も相まって、寝転がったらすぐに眠ってしまいそうだ。
「それは賛成だぜっ。さっきからお腹がすいて仕方ないんだ」
私の提案に魔理沙は頷き、お弁当を入れたバスケットを挟み隣に腰を下ろす。
「さ~て、今日のお昼はなぁにかな~?」
「こら、そんなに焦らなくてもお弁当は逃げていかないわよ」
「でもこうしている間にも私のお腹は悲鳴をあげてるんだってっ」
「だ~め、お行儀良く待てない人にはこれはお預けよ」
「えぇ~っ!?」
バスケットをひょいと持ち上げ私の身体で隠してしまうと、魔理沙が抗議の声をあげる。
そんな声を上げたって、ダメなものはダメなのだ。
「ちぇっ…。まぁ、少しくらい時間置いたほうがもっとお腹減って、さらに美味しくなるかもしれないからいいけどさ…」
一時お弁当のことは諦めたのか、しぶしぶっといった感じで身を引き仰向けに寝転がる魔理沙。
私はその反応に満足して頷く。
「うん、物分りが良くてよろしいっ」
「ったく、調子がいいやつだぜ」
「くすくす」
ちょっと拗ねた様子に思わず笑みがこぼれる。
魔理沙と一緒に居ると本当に退屈しない。
楽しくて、あったかくて、やわらかくて、まあるくて―――そんな気持ちになる。
今まで生きてきて、ここまで素敵な気持ちになれるのは魔理沙の隣にいるときだけだ。
それだけ私にとって、魔理沙は特別ということなのかもしれない。
「しかしこうして寝転がっているとホントに気持ち良いな。アリスもやってみろよ」
「そうね、確かにこんなにいい天気だと寝ころんでお昼寝とかしたくなるわ」
魔理沙に促され、同じように仰向けで横になる。
日差しが全身に降り注ぎ、まぶしくて思わず手をかざす。
身体がぽかぽかしてきて、今すぐにでも眠ってしまえそうだ。
「そうだな、目を閉じちゃったら寝ちゃいそうだぜ。…こんなに空腹じゃなかったらな」
「もう、そんなに急がなくったっていいでしょ? 魔理沙ったらホントにせっかちなんだから」
私の方をジト目で見てくる魔理沙に苦笑する。
やっぱり魔理沙としては、今すぐにお昼を食べたいらしい。
「だって仕方ないだろっ? アリスのお弁当は絶対おいしいだろうから早く食べたんだよ~!」
「あら、ありがとう。けどもうちょっと待ってもらうことにはかわりないけどね」
「…まぁ、そうだとは思ったけどな」
「「ぷっ」」
二人で顔を見合わせて吹き出してしまう。
無理な不機嫌顔が、繕った澄まし顔がおかしくて。
そのままお互いお腹を抱えて笑い合った。
魔理沙と一緒にいると、本当に退屈しない。
それどころか、話していると自然と笑みがこぼれてくる。
柔らかな日差しに包まれて。
隣には愛しいあなたがいて……
「なんだか幸せ……」
「…奇遇だな。私も凄く幸せだぜ」
思わずこぼれた呟きに、笑顔で頷いてくれる魔理沙。
目の前に魔理沙の顔があって、少しドキドキする。
「…なぁアリス、私の帽子の便利な使い方教えてやろうか?」
「便利な使い方…?」
突然魔理沙が不思議なことを言い出して首を傾げる。
なんだろう? つばの部分が結構大きいから、日除けに使うとかかしら。
「それはさ、これさ」
「えっ? ちょ、ちょっと魔理沙っ」
そう言うといきなり魔理沙が、私の顔の上に帽子を乗せてくる。
びっくりしてそちらに気を取られていると、気がつけば魔理沙の顔が目と鼻の先まで迫っていて、その距離がゼロに―――
「い、いいいっ…いきなりなにするのよっ!?」
「だから帽子の便利な使い方だよ。つばが広いからするのを隠すにはもってこいだぜ」
「か、隠れてるからってやっていいことと悪いことがあるわっ」
ま、周りに見えないからっていきなりこんなことするなんて…!
「なんだよ、アリスはされるの嫌だったのか?」
「うっ……べ、別に嫌って訳じゃないけど…」
確かにいきなりのことで驚きはしたけれど、けして嫌だったわけじゃない。
むしろ、その……う、嬉しいくらいだし。
「ならいいじゃないか。アリスの“嫌じゃない”は嬉しいってことだしな」
「う、うぅ~……」
なんとか言い返してやりたかったけれど、図星過ぎて言い返せない。
なんだか少し悔しい気もけど、私をよく分かってくれてるってことで納得しておこう。
…その代わり、もうちょっとお弁当は我慢してもらおうかしら。
「なぁアリス」
「こ、今度はなによ?」
魔理沙に声をかけられて思わず身構える。
さっきのことがあるから、不意打ちされないようにしなくちゃ…!
「安心しろって。もうなにもしないからさ」
「そ、そう…。なにもしないんだ…」
「…今ちょっと残念に思っただろ?」
「お、思ってないわよばかっ」
ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる魔理沙。
…だけど、魔理沙の言っていることはまったくもって見当違いよっ。
も…もう一回くらいしてもらったら嬉しいかななんて思ってないんだから…!
「アリス、好きだぜ」
「あうっ…!? ふ、不意打ちは卑怯よ…」
意識が他にそれた瞬間に言われて、顔が一気に熱くなる。
前に比べれば耐性ついたはずなんだけど、こうやって身構えていないときに言われると動揺を抑えられない。
「赤くなってるアリスは余計に可愛いからな。たまに見たくなっちゃうんだぜ」
ニカっと歯を見せ悪びれもせず笑う魔理沙。
…どうやら確信犯だったようね。なおさら達が悪いわ、まったく…。
…可愛いって言ってくれるのは…その……う、嬉しい…けど……そ、そのくらいで騙されたりしないんだからっ!
「ところでアリス、私は言ったんだからアリスも言ってくれないのか?」
「い、言うってなにを…?」
「私のことが好きってさ。約束しただろ? アリスはそう決めなきゃ自分から言わなくなっちゃうから、私が好きって言ったらアリスもなるべく返すようにするって」
「うぐっ…そ、それは……そうだけど…」
そうだった。最初の頃あまりにも私が口に出して気持ちを伝えないからって、二人でルールを決めたんだ。
そのルールとは「相手が気持ちを伝えてくれれば、それをきちんと返すこと」
といっても魔理沙はそんな決め事しなくても自分から言ってくれるから、これは私専用のルールみたいなものだ。
「まさかアリスが約束を破るなんて、そんなことはないよな?」
「うぅ……い、言えばいいんでしょ言えばっ!」
半ばヤケクソになって叫ぶ。
さっきの不意打ち二連発のせいで胸はドキドキしっぱなしで、まともに言える気がしないけど。
だ、だけど二人で決めた約束なんだし、ちゃんと言わなくちゃ…!
「あ、あのね魔理沙…」
「あぁ、なんだ?」
「そ、その……わ、私もね…」
「うん、私も?」
「え、えっと……だから………わ、私も……」
なかなか言えず言葉に詰まっている私に大して、ニヤニヤしながら魔理沙がその先を促してくる。
ぜ、絶対楽しんでやってるわっ!
こ、これはなんとしても搾り出さなきゃ悔し過ぎるっ!
真っ赤になる私を楽しそうに見ている魔理沙を見返してやるために、理性を総動員して口から言葉を押し出してやる。
そうして苦悩の末私が搾り出した言葉は―――
「……………………私もよ…」
「…私もって何がだよ?」
「だ、だからっ……私も、そうなのよっ」
「いや、だからなにがどうなんだよ?」
うぅ、魔理沙ったら絶対わかってるはずなのに、あくまで白を切る気なのね…!
もう恥ずかしすぎて泣きそうよぉ…。
「だ…だから私も好きなのよばかーっ!」
あまりの恥ずかしさに泣きそうになりながらも、なんとか言葉を押し出した。
か、顔から火が出そうよもう…。
「よしよし、涙目になるほど恥ずかしかったのに良く頑張ったな。偉いぜアリスっ」
「ホントはわかってたくせに…。魔理沙のばかっ」
満足そうに頭を撫でてくる魔理沙を睨み返す。
そんな嬉しそうな顔しちゃって…!
「ごめんごめん。どうしてもアリスの口から聞きたくてさ。あとやっぱり、真っ赤なアリスが可愛くてつい」
「うぅぅ~っ!!」
完全に魔理沙の手玉に取られてしまったみたいですっっっごく悔しいっ!!
なんとか少しでも仕返ししてやれないかと周りを見渡すと、目に入る一つのバスケット。
―――これよっ!
魔理沙はさっきからずっとお腹を空かしているんだから、一矢報いるにはこれしかないっ!
ピンと来た私は立ち上がってバスケットを持ち上げると、ぽかんとする魔理沙に向かって言ってやる。
「そんなイジワルばっかりするやつは、今日のお昼は抜きだからねっ!」
「なっ!? ちょ、ちょっと待ってくれよアリスっ! 私もう空腹でヤバイんだってっ!」
「知らないっ! お腹ペコペコにすればその減らず口も直るんじゃないのっ!」
それだけ言うと魔法で空に飛び上がり、魔理沙を残し自分の家へと飛んでいく。
「わ、悪かったから待ってくれよアリスっ! 謝るからっ! 謝るからお昼抜きだけは勘弁してくれ~!」
後ろから何かを言いながら魔理沙が追いかけてくるが、そんなことは知らない。
せいぜい私で遊んだことを後悔するといいのよっ!
…未だにちゃんと気持ちを言葉に出して伝えられない私も、少しは悪いかもしれないけど…。
……それに、割と反省してるみたいだし、私のお昼楽しみにしてくれてたみたいだし…。
…追いついて謝られたら許してあげようかな。
「…はぁ、ホントに甘いなぁ…」
…美味しそうに私の料理を食べてくれる魔理沙の顔もみたいから、別に良いかな。
それに、ご飯はやっぱり……好きな人と一緒に食べたほうが美味しいものね。
「待ってくれってアリスっ! 私が悪かったから~っ!」
「許して欲しかったら、まず私に追いつくことねっ! もし追いつけたら考えてあげるっ!」
追いかけてくる魔理沙にべ~っと舌を出し、さらにスピードを出して逃げる。
まぁ、魔理沙のほうが飛ぶスピードは早いから、そのうち追いつかれちゃうのはわかってるんだけどね。
だけど簡単には捕まってあげない。
ちょっと遅いお昼ご飯まで、青空の鬼ごっこを楽しむとしよう。
このスピードで飛んでたらすぐに家には着いちゃいそうだし、方向転換でもしようかしら。
自然と綻ぶ口元を隠しながら、さっきの草原へと方向を変える。
あの草原の上でわざと追いつかれて、ピクニックの続きにしようかなと考えながら―――
終始2828できました!
「捕まえてごらんなさ~い」
ということですね
許せるっ!
作者としてはちょっと甘い程度のつもりだったのですが、甘々だろうと突っ込まれまくりですね^^;
私は甘党なのでタグについては3割り増しくらいで考えていただければw
なにはともあれ、皆さんに喜んでいただけたようで嬉しいです。
次は今週か来週末くらいに、またマリアリSSあげたいと思いますので、よろしければそちらもよろしくお願いします^^
青空の下でピクニックするのってあこがれる・・・・
おにごっこのシーンはつい2828してしまいました