ナズ星の七作目です。直エロスはありませんが、微変態で、いつものように脱線しっぱなしです。
過去の拙作の登場人物・設定の勝手解釈を引きずっております。
まぁ、つながりがあるようなないようなゆるいモノです。あ、でもやっぱり少しつながってますかな。
ご了承をいただけましたら、どうぞご覧下さい。
「パルスィさーん!」
「星さーん!」
互いに手を取り合い、ピョコピョコ跳ねている花も恥じらう美姫二人。
やや小柄で濃い金髪、白磁の肌、特徴的な翠緑玉の瞳を細めて喜んでいるのは水橋パルスィ。
大柄なもう一人の髪は黒と金が交じり合った獣王のもの、しかし猛々しさより優柔が表に出る寅丸星。
命蓮寺に珍客到来。
地底旧都の星熊勇儀と水橋パルスィを、旧知の寅丸星とナズーリンが出迎えた。
一昨年に催された地底の大宴会に命蓮寺代表で参加したのがこの二人だった。
「勇儀どの、久しぶりだね。元気そうでなによりだ」
小柄なネズミ妖怪が大柄な一本角の美鬼に話しかける。
彼我の力の差にもまったく動じることなく、当たり前に。
「私は見ての通りさ。地上にちょいと野暮用があるんだ。
パルスィが地上に行くなら寅丸に会いたいとねだるものでね。
少し休ませてもらえるとありがたい」
「ゆっくりしていってくれ。大宴会とはいかないが、酒と食事は用意するよ。 泊まっていくといい」
まるで寺の主のような物言い。
だが、ナズーリンは聖白蓮から外部折衝について大きな権限を与えられている。
彼女の判断、決定が後から覆されることは無い。
ネズミの従者が【この客人をもてなす】と言ったなら、それは聖白蓮の、命蓮寺の意思ということになる。
尼公は、毘沙門天の使いにして寅丸星の監視役、広い見識と良識を備えているナズーリンを信頼している。
「そいつぁ、ありがたい。いろいろ話もしたいしね」
ナズーリンと勇儀は少し距離をとったまま、話を交わす。
パルスィと寅丸はお互い涙を浮かべ、顔をクシャクシャにしながら抱き合っている。
大切な恋人が他人と真剣に抱き合っている。
ナズーリンも勇儀もそれまでの経緯を知っているので、浅薄な嫉妬は感じない。
感動の再会を演じている二人は、最初に会ったときから、お互いが気になっていた。
いや、最初はなんだか気に食わなかった。
パルスィは、何度も激しく倒れ、泣きながら立ち上がってきただろう寅丸の擦り傷だらけの純心が妬ましかった。
それは今までにはないほど激しく妬ましかった。
寅丸は想い人に注ぐパルスィの、一途で純粋、それなのに見事なまでに謙慎な想いが眩しくて羨ましかった。
パルスィの能力が影響したとしても普段の寅丸らしからぬ激情だった。
そして宴会の終盤、むき出しの感情のぶつけ合いがはじまり、果ては泣きながら罵り合った。
いわゆる【同族嫌悪】に近い感情だった。
自分が求める理想の姿を目の前の相手が具現している、と互いに錯覚していたから。
周囲は静まり返り、視線が自分たちに集まっていた。
宴席では法度の醜態に気づいた二人は、慌てて座を外し、別室で戦闘を再開した。
お互い好きなヒトの話をした。
自分の想いがどれほど深く、混じり気のないものか。
そしてそれが肝心の相手に届ききっていないことを歎き合っていたが、
じきに自分の想い人の鈍さ、素っ気なさ、デリカシーの欠如等、愚痴の言いあいになった。
「勇儀は節操がなさ過ぎなのよ!
人前ではダメだって言っているのに! 勇儀のためなのに分かってない!」
「それでも両想いなんでしょ? 羨ましいです。
パルスィさんは二人っきりのときに、もっともっと勇儀さんに甘えればいいんだと思います。
勇儀さん、甘えさせてくれますよ。とても優しそうだから」
「うー、まぁ、勇儀はホントに優しいんだけどね。そう、もっと甘えてもいいのかな?」
「そうですとも。うんと甘えて、そして、貴方も勇儀さんを甘えさせてあげればいいんですよ。
私、ナズーリンにこの気持ちを伝えたら、これまでのことが何もかも壊れてしまう気がして言えないのに」
「星さん、アナタ分かってないのね。
教えてあげるわ。ナズーリンはアナタのことが大好き。
自分の命より大事に想っている、アナタの幸せのためだけに生きている」
「えっ!? そんな、そんなことあるはずないです!」
「私は嫉妬に狂って妖になった身。ヒトの強い想いには敏感なのよ。
間違いない。彼女はアナタがなにより大事で大好き。狂おしいほどに。
でも、アナタが言うように【立場】を弁え、自重しているだけ。
だから待ってあげて。きっと彼女から想いを告げる日が来る。
そしたら全力で応えてあげるのよ」
パルスィのアドバイスに半信半疑の寅丸。
だが、後日、なし崩し的に告白しあったあの瞬間、彼女の言が正しかったことを思い出した。
後刻、宴席から抜け出し、二人の様子を見に来たネズミと鬼。
おーい、どうしたー? 大丈夫かー?
腫れぼったい目で【べー】とあかんべをする二人。
鈍感な想われ人たちは、その想いに気づきもせず、のん気に、【やれやれ】と見やった。
そして今。
「星さん、良かったじゃない」
星とナズーリン、想いが通じ合ったことを我がことのように喜ぶパルスィ。
「……うん、ホント良かったです」
涙ぐむ寅丸。
「そうか良かったな、オマエたちは似合いだと思っていたんだ」
寺の客間。
胡坐をかいてくつろいでいた勇儀がニカッと笑った
パルスィは夕食の支度をしにいった寅丸についていってしまった。
勇儀はナズーリンから寅丸星と想いを打ち明けあえたことを聞いて、心底嬉しそうに笑った。
「あの宴会の後、パルスィは私に思うところを語ってくれた。
そして二人きりのときにはこちらがドキドキするほど甘えてくるようになったんだ。
寅丸のおかげだと思っている。感謝しているんだ」
そしてぐっと身を乗り出してきて、少し声を落としてたずねる旧都の顔役。
「そんで、オマエたちは、いつもは、どんなふうに楽しんでいるんだい?
参考までに教えておくれよぉー」
にんまりしている鬼に対し、やや困り顔のネズミ妖。
「んー、それが実は具体的にはあまり進展していなくてね」
「はぁ? なんだぁ? オマエは凄腕のスケベだと見受けたんが、どうしたんだ?」
「ま、まぁ、いろいろ難しくてね」
きまりが悪そうに頭を掻く探索ネズミ。
「だらしないなー。
好き合っているのなら関係を進ませるのは造作もないだろうに……
よーし、私が少し手ほどきしてやろう。
ウホン。
いいかー? まず、ちょっとからかってやるんだ、拗ねたところを包み込んでやって、
ひょいと抱き上げてやって、顔中に口付けするんだ、敢えて唇にはしないのがミソだぞ」
「まてまて、私とご主人の体格差は、キミとパルスィどの以上なんだよ?
ひょいと抱き上げるって、絶対無理だよ!」
「うーん、そう言えばそうだなー。
よし、それならオマエが胡座をかいたところに後ろ向きで座らせるんだ。
座椅子だな、うん。 これはいいぞー、いろいろとまさぐり放題だぞ。
片手は胸、もう一方は下が基本だ。うひひひ。
そして甘いことをたくさん囁きながら耳を軽く噛んでやるんだ」
「つぶれる! つぶれるって! なぁ、真面目に言っているのかい!?」
「んー、オマエは少し体を鍛えたほうがいいなー」
「そんな問題じゃないだろ? キミは少し頭を鍛えたまえ!」
「すると間違いないのはこれか」
勇儀は両手をチョキにして、四本の指をぐにぐにと絡ませる。
「……そういった露骨な表現は感心しないね」
眉をしかめるナズーリン。
「んー? 分からなかったのか? これはだなー」
「説明には及ばないよ! まったく、もう!」
直截な表現に顔をしかめるナズーリン。
この手の話は好物だが、ここまであからさまだと興もそげる。
【エロス】は高尚なものであるべきと信念を持っているエロリストナズーリンだった。
「しかし、キミたちは楽しそうだな。正直、妬ましいよ」
これは本音。
勇儀がニヤニヤしている。
持参の酒を盃に注ぎながら問いかける。
「聞きたいか? 私らの、ここ最近一番のナーイスなプレイ。聞きたいかい?」
ナズーリンは、うんざり&あきらめ顔。
「言いたいんだろ?」
「しかたないなー、ならば聞かせてやろうか。
先に言っておくが、恥ずかしがるパルスィは格別可愛いんだ!」
ムフーっと鼻から盛大に息を噴き出す勇儀。
恥じらい。それは最も大きな魅力の表現形。
タイムリーな恥じらいはその個体のポテンシャルを最大限に引き出す。
それは間違いない。
はいはいはい。 いー加減に頷くナズーリン。
「えらく苦労して頼み込んで、下穿き無しで一日過ごしてもらうことにOKをもらったんだ。
いやー、土下座なんぞ数百年ぶりだったなー。
そんで、街を一緒に歩いたんだ。短いスカートを穿かせてな。
うひひひ。
ほんのり赤い顔で、裾を気にして、モジモジして、泣き出しそうで、
かーっ! ホント! たまらんかったなー!!
そんでもって、隙を見ては手を突っ込んでさわりまくって楽しんでいたんだが、
何度目かで本気で怒ってしまってなー、思いっっっっきり引っ叩かれた。
その後、丸二日間、口をきいてもらえなかった」
「一言いいかい?」
「なんだ?」
「キミはバカだ」
「……なんだと? ノーパンパルスィが隣にいて何もしないなんて、それこそバカだろうが!
オマエはパルスィのナマ尻のもちもちしっとりを知らんだろうなー。
手に吸い付いてくるんだぞ?」
勇儀は手をわきわきとさせ、にへにへ笑っている。
「そんで続きがある。聞きたいか? 聞きたいのかー?」
「……だから言いたいんだろう?」
「機嫌が直ったころを見計らって、
『この間のこと、少しだけ反省している、すまなかったな。
お返しに今日は私が脱ぐから好きにさわってかまわない、いや、むしろさわってくれ』
そう言って下履きを脱ぎ始めたら……また怒ってしまってな」
「あー、確かに私の方がバカだったよ」
「ふん、やっとわかったか?」
「聞いた私がバカだったよ。もういいよ」
ふーっと盛大にため息をつくナズーリン。
「私も大概だと思っていたが、キミは上白沢慧音に匹敵するほどの弩級スケベだな。
しかし、相手を怒らせているようではまだまだだ」
「上白沢慧音? んー? 誰だっけ?」
「ああ、人里の守護者で寺子屋の先生だ。
当人も文句無しの抜群の美人なんだが、【藤原妹紅】というパルスィどのと並ぶほどの可憐な美姫を、
毎夜、好き放題、縦横無尽に味わい尽くしている。
それだけではない、口惜しいことに、相互愛撫、攻守交替を容易に成立させている。
技の数は四、五十程度だが、そこにいくまでの雰囲気作り、言葉での縛り込み、
相手をその気にさせ、自分から乱れさせる手練手管は達人と言って良いだろうな。
分かるだろう? 一旦、自分の土俵に引き込んでしまえば、後はやりたい放題だ。
実は最も難しいこのあたりを巧みに操る上白沢慧音、ただのスケベではないぞ」
ナズーリンの解説を聞くうちに、見開かれていく勇儀の眼。
「ナズーリン!! ぜ、是非、紹介してくれ! その先生を紹介してくれ! 頼むー!」
「おわっ! いきなり頭を下げるなよ! 角コワイよ! 危ないよ!」
いずれ紹介するから、と言ってなんとか宥める。
「しかしナズーリン、そこまでいろいろ分かっているのに手が出ないとはな。
頭でっかちとはこのことだぞ?」
痛いところを突かれた。
「いや、私だって色々と行動は起こしているさ。
先日も風呂で入念に体を磨き上げ、首に贈答用の真っ赤なリボンを巻き、
ご主人の布団の中に潜り込んで待っていたんだ。
もちろん素裸で『たーんと召し上がれ(はぁと)』の札を付けてね。
布団を剥いだご主人は、ちょっと困った顔をしたまま私を掛け布団でくるみ、
帯で縛って私の部屋に放り込んでしまった。
絶対いけると思ったがダメだった。 ……何が足りなかったのかな?」
「一言いいか?」
「なんだろうか?」
「オマエはバカだ」
「……バカにバカと言われるのは思ったより腹立たしいものだな」
「そんなベタなやり方。……はぁー、まったく、なっちゃおらんなー。
オマエは寅丸が相手だとホントに頭が悪いなー」
「そこまで言うかね? 生まれてこの方、頭が悪いとハッキリ言われたのは初めてだぞ」
「悪いったら悪いんだよ、だいたいだなー……」
ロクでもないやり取りは晩御飯の声がかかるまで続いた。
晩御飯。星とパルスィが支度をしている。
お客様にそんなことさせるわけにはいきませんよ。
いえ、星さんとたくさん話をしていたいの。
料理を教えあう。
勇儀はお酒の肴ばかりだけどね。実は汁物はお酒のアテにいいのよ。
口をさっぱりさせると改めてお酒の美味しさが分かるんですって。
だから複雑な味は要らないの。
良い出汁が取れたら塩で整え、見た目に鮮やかで風味のある浮き身を入れればそれで十分。
今日は手鞠麩と黄ニラを添えましょう。
ナズーリンは、味はもちろんですが、歯触り、舌触りの食感を重んじるようです。
コリコリ、プチプチ、ヌメヌメ、パリパリ、スルスル、変化を楽しみたいんですって。
食材の組み合わせ、調理の仕方が工夫のしどころですよね。当たり前ですけど。
考えるの楽しいです。
今日は牛蒡を薄く長く削って甘辛味をつけ、油でカリっと揚げましょう。
これ以外にもいろいろと作りながら話し合う。
食事の支度がこんなにも楽しい。
お互いの想い人の嗜好をネタにノロケながら料理のキモを伝えあう。
寅丸星にとってナズーリンは、当初、緊張を強いられる存在だった。
自分よりもはるかに優秀なのに立場は従者、そして監視者でもあった。
そっけない言葉とほとんど変化しない表情に戸惑った数百年。
それでも二人きりで残された千年間、不安定な心をいつでも支えてくれた存在。
経典よりも頼れる道標だった。
数百年かかって信頼が親愛にかわり、そして至上不換の存在になった。
しかし主従の立場を超えて想いを伝えるわけにもいかず、鬱屈した時を過ごしていた。
パルスィは星熊勇儀からの告白に困惑した。
冗談に違いないと思いながらも【鬼は嘘をつけない】と言う風説を頼りに、
勇儀の強引なアプローチにとりあえず頷くことにした。
だが勇儀の情愛は本物だった。受け止め切れないほど大きく、むせ返るほど濃厚だった。
お前だけと言われ嬉しかった。身も心も痺れた。愛に飢えた存在だったから。
しかし旧都の顔役である鬼の大将格と下賤な妖怪である自分では身分の違いは明らか。
この陽気で優しい人気者の評判を落としたくなかった。
故に他の目があるところでは常に控えめにして、勇儀の酔狂で囲われているモノの一人として振舞った。
お互い溜めていた気持ちをぶつけ合ってそれなりの解決の糸口を掴んだ。
【同族嫌悪】が【同病相哀れむ】に、そして励まし、応援する相手になった。
寅丸星と水橋パルスィは驚くほどの短時間で盟友となっていた。
夕食をかねた小宴。
聖はいつもと変わらない。
しかし、一輪、ムラサ、ぬえ、そして、たまたま来ていた多々良小傘は緊張を隠せない。
魑魅魍魎の頂点部位にいる【鬼】。
圧倒的な怪力を誇るその種族の中で更に【力】の名を冠されている四天王の星熊勇儀がいるのだ。
なにかの拍子で暴れ出したら誰が止められるのか。
しかし、当の四天王の一角は、いたって穏やかで明るい。
料理に舌鼓を打ちながらのんびり酒を飲んでいる。
パルスィを、ナズーリンを、寅丸を肴に話題を振り、寺の皆、一人ひとりに陽気に話しかける。
聖にだけは【聖どの】と呼びかけ、話題の振り方にも気配りが感じられる。
無敵に近い鬼が、自分たちの主を別格と扱っていることに一輪、ムラサは気を良くした。
場の雰囲気が和らいでいき、勇儀を中心に宴席は緩やかに盛り上がる。
これもカリスマの一種か。
桁外れの大きな力と、ヒトを惹きつける存在感、包容力、細かいことに頓着しない雰囲気、
何となく毘沙門天の代理に重なることが多い。
封獣ぬえがボソッとつぶやく。
「自分に自信がついた代わりに品性がほとんど無くなっちゃった寅丸みたい」
(あ、そうかー、なーるほど)
その場にいた全員の心の声。
「実はパルスィが病気のようでな。 あ、いや、そんな深刻なモンじゃないんだが」
宴席がひけて勇儀とナズーリンは裏庭に面した縁側でくつろいでいる。
風呂の順番待ちだ。
客人が優先と言った聖に対し、【ワタシらは長風呂なんだ、先に使ってくれると気兼ねがない】
そう言って盃をあおった。
聖もそれ以上は言及せず、【そういうことでしたらごゆっくり】と風呂に行ってしまった。
縁側に繋がる部屋では寅丸とパルスィがお茶を飲みながら話をしているが、声はほとんど聞こえない。
こちらの声も聞こえていないのだろう。
ナズーリンは朧月を見上げ、猪口を舐めながら勇儀の話を聞いている。
「地上には妖怪も診てくれる腕の良い医者がいるらしいからな」
「永遠亭の八意永琳先生のことだね」
「どこが悪いというわけではないんだが、生命力というか、活力が細くなっているようなんだ。
寝込むことも多いし、以前のこぼれるような愛らしさにかげりが見える」
「変わったようには見えないけどね」
「私にしかわからないよ。
よがるときの声にハリがなくなってきている。
『あっひぃ~』が『あひ~』になっている。
これはおかしい。なにかおかしい。どこかおかしい」
「キミの頭がか?」
「まじめに言っているんだぞ?」
「ホントかね?」
「ホントだとも」
いつも余裕しゃくしゃく、冗談混じりの受け答えが身上の大鬼が珍しく真顔だった。
この陽気な好漢が本気で憂えるのは掌中の翠緑玉のこと以外にはない。
それくらいは理解しているナズーリン。
今回の地上遊山の目的はそれか。
「わかった、明日、案内しよう」
「頼む」
部屋の奥では寅丸とパルスィ、月も謝罪して消えるだろう二人が楽しそうに懇談している。
見ている側も心穏やかになる。
「麗しい絵画のようだね、うん、綺麗だ」
「ああ、最高の肴だ」
乾杯する守護者二人。しかし、本当に守られているのは果たしてどちらなのか。
「勇儀どの、パルスィどの、お二人は客間で寝てもらうことになるが、
キミら自重できるかな?
ここは寺だからね。ものスゴいことは控えて欲しいのだが」
そろそろ就寝の時間。
ナズーリンが客人の寝場所を決めようとしている。
「私がパルスィの口をずっと塞いでいれば済むことだろう?
迷惑はかけないつもりだが?」
「……キミは」
ナズーリンがド変態鬼に山ほど文句を言おうとした矢先。
「今夜はパルスィさんと寝たいです」
「私も星さんと一緒がいいの」
寅丸とパルスィがほとんど同時に提案した。
つもる話がまだまだたくさんあるのだろう。
それを聞いた勇儀は少しだけ寂しそうな顔したが、情人のたまの我侭を受け入れたようだった。
「そんじゃ、私はオマエと寝るのか?」
ナズーリンを指さす勇儀。
「うーん、なにもしないと約束するならかまわないがね」
「それはこっちの台詞だろう?」
「しかし、乳枕はしてもらおうか。勇儀どの。
もちろん私はうつ伏せだ、そして先端も少しいただくがよろしいな?」
「ナズーリン!!」
寅丸の怒号。
「ははは! オマエは節操がないなー。寅丸も苦労するよなー。
だが、ナズーリン、寝ぼけて私の指がどこぞに潜り込んでも知らんぞ?」
「一本だけなら。 二本以上はご主人の許可が要るよ?」
「うっかーー!! ナッ! ズウゥーリィーーン!!」
「ゆううううぎいいいい!!!」
つかみかかろうとしたパルスィの手を取り、きゅっと抱きしめる勇儀。
「おお! 久しぶりに威勢の良いパルスィを見たねー。
元気なパルスィは良いなー。はははは」
「バカ! バカ鬼! 最低!」
抱きすくめられ、むぐむぐ罵るパルスィの頭と背中を優しくなでる。
徐々に【バカ バカ】の声が小さくなる。
「ほう、なかなかカッコ良いな。そうか、これだな、わかったぞ」
得心のいったナズーリンが両手を広げ寅丸に向く。さぁおいで。
あれっ?
ナズーリンの相方は、立ちすくんでいる。
歯を食いしばり涙ぐんでいる。
やべっ! ガチ泣き寸前だ。
慌てるナズーリン。
「ご主人! 冗談! じょーだんだよ! 変態鬼にあわせただけだ!
そんなことするわけないじゃないか!」
「アナタはいつもそう、私の気も知らないで浮ついたことばかり言って振り回すんです」
「ち、ちがうんだよ! そういうつもりじゃないんだよ!
信じておくれよ! ねえ! ごしゅじーん!!」
跪いて寅丸の腰にしがみつき、必死に許しを請う。
(くっそー! なんでこうなるの!? 私、スゴいカッコ悪いよ?
なんだか締まらん! 何故うまくいかない!? 納得いかなーい!!)
結局勇儀は一人客間で寝ることになった。
ナズーリンも自室でおとなしく寝た。
翌朝、永遠亭に向かう四人組。
薄暗い曇り空、午後には一雨きそうだった。
夕べの朧月を見ていたナズーリンは一行の出発を早めた。
寅丸は朝課に出られない旨を聖に伝えたが、住職は何も聞かずに許可してくれた。
勇儀とパルスィは手をつないでいる。
地底では人目をはばかり、往来で手をつなぐことはなかった。
だが、地上では気兼ねする必要がない。
パルスィはとろけそうな笑顔で情人を見上げている。
本当に嬉しそうで、楽しそう。勇儀の懸念は取り越し苦労に見える。
「昨日の牛蒡の揚げ物は旨かったなー、気に入ったよ。
パルスィ、寅丸に作り方を教わっておいておくれよ」
「勇儀さん、おかわりの分を揚げたのは彼女なんですよ? もう完璧です」
ナズーリンと一緒に先導していた寅丸が振り返って言う。
「そうだったのか。さすがパルスィだ」
そう言いながらツレの髪を柔らかくかき回す勇儀。
照れくさそうに微笑んだ橋姫が囁く。
「帰ったらたくさん作ってあげるから」
迷いの竹林に入ったあたりで先行していたナズーリンが止まった。
「私がこのまま案内してもいいんだが、ここに赴いて声をかけないと後で拗ねるからね。
案内人を呼ぶとしよう」
息を大きく吸い込むナズーリン。
「おーい! てーゐ! いるかー! てーゐ!!」
小さな体からは想像できないほどの大音声。
十を数えるくらい待ったがどこからも返事はない。
「うーむ、聞こえているとは思うが、近くにいないのかなぁ」
ならば、と小さな鞭を取り出すナズーリン。
ピシッ、ピシッ、ピシッ、とリズム良く打ち鳴らす。
「マーチ○ッ! マーチー○ッ!! 出てこおおおおお~~~~いッ!!」
程なく竹林からひょいと姿を現したのは垂れ下がったウサギ耳の少女。
「聞こえているわよ!
誰がマー○ンなのよ! 誰が戦闘用マンドリルなのよ! バオーと闘わせたいの!?」
因幡てゐがムスッとしながら登場した。
「お、来たね。もったい付けてないで早く出て来いよ、お客さんだぞ」
腕組みをし、一行をねめつけているてゐ。
「コイツは迷いの竹林の主、極道ウサギの因幡てゐだ。
こちらは地底からの客人、星熊勇儀どのと奥方の水橋パルスィどのだ」
奥方と紹介され、ビックリしているパルスィ。
「まぁ、てーゐは口は軽いし、ウソつきだが、こう見えても実はまったく信用できないヤツなんだ」
「ナズリン? 今のおかしいよ? どっこも誉めてないじゃん!」
お互い本名が呼びにくいからと、ナズリン、てーゐと呼び合うようになったのはつい最近。
やっと見つけた友達、腹黒幼女風味のこの二人はなんだかんだでエラくウマがあった。
「寅丸さん、それお土産?」
目ざといてゐは、星が担いでいる荷物を指差した。
「あ、そうなんですよ。桜餅を作ってきましたから、永遠亭の皆さんで召し上がってください」
担いでいた荷を下ろし、菓子折りを取り出す寅丸。
普通、荷物は従者であるナズーリンが持つものだが、寅丸は譲らない。
『何かあったとき、ナズーリンの手が空いているほうが良いんです。それに私、とても力持ちですし』
過去の宴席で【力】の勇儀と力比べをした折【能力抜きなら互角】と評された武神の代理人である。
宣なるかな。
「八つ入りかしら?」
菓子折りを見て問いかけるてゐ。
永遠亭は作業ウサギを除けば実質四人だから二つずつでちょうど良いはず。
ちょっと考えているてゐにナズーリンが突っ込む。
「てーゐ、キミは四つだけ持っていって、半分をガメるつもりだな?」
「ふん、甘いねナズリン、一個ずつしかない方がよっぽど不自然でしょ?
だったら全部私がいただくわ」
「ご主人! ダメだ! コイツには渡すな!」
「てゐさん、貴方にはこの栗ヨウカンです。ですから桜餅は皆さんで。 ね?」
にっこりして小さな包みを渡す寅丸。
「ほーら、寅丸さんはちゃーんとわかってるんだよ。
そういうことなら話は別よね。
物分りのよいご主人様だよねー。アナタにはホントもったいない」
「ご主人! コイツを甘やかしてはいけない!
優しくしたって、図に乗るだけの忘恩の輩だぞ!」
「ふーん、甘くしていいのは【ワタシだけ】って?
相変わらず自分のご主人様の本当の器量がわかってないのねー。
ぬるいことやってたら、アナタ、置いていかれちゃうよ?」
「う、うぐぐっ」
「ほっほー、オマエが言い負かされるのを初めて見たぞ、面白いなー」
目を丸くし、兎と鼠を見やる大鬼。
「まー、ナズリンは寅丸さんが絡むときだけはズルズルに脆くておバカになるからね」
「違いない。
ナズーリンは少しバカだからなー。良いヤツなんだが、そこだけは残念でならんよ。
好きなモノを大事にするにも程度があるってことを知らんのだ」
自分のことは棚に上げっぱなしの勇儀。
「おいっ! キミらは好き放題言ってくれているな! 上等じゃないか!」
寄って集って【バカ】扱いされ暴れ出しそうなナズーリンを後ろからしっかり抱き止めている寅丸。
改めて地底からの客人二人に正対するてゐ。
「鬼のお姉さん、勇儀姉さん? じゃあ【ゆーねーさん】でいい?」
「アンタの方がずっとお姉さんだと思うがな」
勇儀には目の前の妖怪ウサギが経てきた年月、それが半端ではないことは見て取れる。
自分と同等以上の大妖になってもおかしくない経験を積んでいそうなのに、【力】は感じない。
漫才の相方のネズミ妖怪と【在り方】が似ている。
コイツらは永い年月をどんなふうに過ごしてきたのだろう。
戦いと酒色に明け暮れてきた勇儀には想像もできない。
「こういうのは見た目とか雰囲気ってあるからね。
そちらはパルスィ? スィーなの? どうも横文字は呼びにくいなぁ。
ぱるしー、ぱるちゃん、ぱるるん、それとも、パー子でいい?」
「最後のは絶対イヤ!」
それまで無口だったパルスィが反応した。
確かに具合が悪いのかもしれない。ツッコミが弱い。
普段の彼女なら【ペーの奥さんでも、パー○ン3号でもないわよ!】くらいは言う。
先導のナズーリンとてゐが異次元漫才を繰り広げているうちに一行は永遠亭に到着した。
珍しく待合室には誰もいない。
今にも降りだしそうな天気に具合の悪いモノたちの足も鈍ったか。
いつの間にか姿を消したてゐ。
皆がそのことに気づいたあたりで八意永琳があらわれ、挨拶をした。
今、診療室を掃除しているので少し待って欲しいとのこと。
直前の患者になにか粗相があったらしいが、当然詳しくは話さない。
ナズーリンが【うん、うん、よし、よし、眼福、眼福】と嬉しそうに何度も頷いている。
彼女が勝手に称している【幻想郷・乳八仙】のうち、三人までもが手の届く範囲にいるのだ。
「寅丸さん、先だっては失礼をしました。てゐはきつく叱っておきましたから」
永琳はこの一行に急患はいないと見て、気を緩め、寅丸に話しかける。
過日、寺の配置薬の申し込みに訪れた寅丸は、途中、てゐの幼稚な詐欺にひっかかって、
軽作業半日分くらいの給金分をだまし取られたことがあった。
「いえ、私こそ恥ずかしいところお見せしてしまいました。
あれもきっと縁あってのことだと思います。
あの後、いろいろ良い方に流れましたから、満足しておりますよ」
軽く頭を下げる寅丸を少驚の表情で見やる月の頭脳。
「不思議な方ですね、気にしていたと思っていたのに、すぐにそのように切り替えられるとは。
はじめから気にしないのとは違い、激しく揺れ動く感情を美しく御しておられるのですね」
「いえ、私はただの未熟者です。ですが、この身も心も支えてくれる存在があるのです。
立場は従者ですが、私を常に導いてくれる存在、ナズーリンがいるのです」
そう言って恥ずかしそうに俯く。
永琳は視線をネズミの従者に移す。
「従者にして導師ですか、やはりとても興味深いですね。じっくり話をしたいものです」
【やはり】? ひっかかりを感じたナズーリンだが追求はしなかった。
「力が弱っているわね」
パルスィを診察を終えた永琳の第一声は待合室の三人に対して。
別室で点滴を打たれている本人には聞かれないように。
「体には異常はないし、病気でもないけれど、妖怪としての力の源がとても小さく弱くなっているの」
嫉妬が高じて妖化したパルスィはそれを操る能力もさることながら、妬む心が存在の礎になっている。
他人を妬ましい、と感じることでその身が成り立っていた。
しかし、今のパルスィは満たされている。
嫉妬する必要がない。
星熊勇儀の存在が彼女の境遇を変えてしまった。
妬ましいと思わない、思えない橋姫。
ならば、その存在が薄くなるのは道理。
以上が八意永琳の【診察】結果の説明。
星熊勇儀は呆然としている。
そして【治療】の方法と段取りに移る医師。
「嫉妬心が戻れば力も戻るでしょうね」
それは嫉妬させるために、フリでも良いから勇儀に浮気をしろと唆しているに等しい。
「薬で疑心暗鬼にさせることも出来ないわけじゃないけれど、いずれ薬を飲むことにも疑いを持つわ。
効果が切れたとき、それまでの自分を激しく責めることになるでしょう」
仮に愛情に質量があるとしたらパルスィのそれは常人とは桁が違う。
それこそ妖鬼になるほどに。
その愛を疑ってしまったと気づけば、自分の心身を自ら傷つけるかもしれない。
そこに思い至った勇儀は俯いたまま首を振った。
「あるいは新たな力の源を付加するか」
神が地獄鴉に八咫烏の力を与えた例もある。
「でも、それは私の専門外。申し訳ないけれど」
「他に方法はないのかい?」
しばらく俯いていた勇儀がそのままの格好で聞いた。
「【対症療法】の観点では他に思い当たらないわ。
もっとも【原因療法】をしようにも、症例が皆無だから手の施しようがないの」
無責任な気休めを言わないのはいいとしても、少々冷たく感じる。
「まだしばらくは【嫉妬心】が残っているから大丈夫でしょうけど、
近いうちに貴方は決断しなければならなくなる。結局は貴方次第」
パルスィの様子を見に行きたいと言った鬼に許可を与えた医師。
立ち上がった勇儀がふらついた。
慌てて支える寅丸。
そのまま二人で別室の扉をくぐって行った。
永琳と二人残ったナズーリン。
「アナタがナズリンね」
「いや、ナズーリンなんだが」
「てゐと仲良くしてくれているのね」
患者には必要以上に感情移入しないのだろうが、切り替えの早さに呆れるナズーリン。
「週に一回、夕方から酒飲んでバカ話をするだけなんだがね」
「お酒と肴、持ち寄りなんでしょ? あのコ、肴は自分で用意しているのよ。
普段は料理なんてほとんどしないのに」
ナズーリンは驚いた。
【余り物だけど】【もらいものだけど】【鈴仙が作ったものだけど】
持ってきた漬け物や煮物、干物をいい加減に広げながらそう言っていたのに。
ナズーリンは自分で作ってはいない。
寅丸に作ってもらった肴を持っていっている。
どうせなら美味い方が良いに決まっているから。
てっきりてゐもそうだと思っていたのに。
「あら? 知らなかったの? てゐは言っていないのね?
うーん、じゃあ失敗ね。私が話したってことは内緒にしてね? 怒られちゃうわ」
気の利いた返しが思いつかないナズーリン。
「先週のハヤの甘露煮美味しかったでしょ?
何度も作っては失敗した甘露煮をウドンゲに食べさせていたのよ。
だからあのコ、甘露煮が嫌いになっちゃったみたい」
そう言えばあの甘露煮は確かに美味かった。
「せっせと作っていたわ。アナタと会うのがよほど楽しみなのね。
あんな姿、これまで見たことなかった。
アナタのこと、とても大事にしているのね。正直、羨ましいわ」
普段のてゐからは想像も出来ない話だった。
弱みを握ったようにも思える。だが、なんだか胸が締め付けられたナズーリン。
彼女がこのネタで、てゐをからかうことはないだろう。
「どんな話をしているのかしら? とても興味深いわね」
「ウサギとネズミの小妖がくだらん話をしているだけだよ。
月の賢者様が気にかけるようなものではないよ」
ほんの少し肩をすくめるネズミ妖を見て、くすっと笑う天才頭脳。
「あら、意地悪な言いかたね。
噂に高い賢将ナズーリンと【あの】てゐ、この二人が夜通し交わす楽しげな論陣、
少しでも自分の見識に自信があるモノなら興味を持って当然でしょ? 知りたいわ」
「買い被りすぎだね」
「私、アナタの【賢将】の二つ名はそのまま認めているのよ?」
「それはどうも」
片眉を上げて答えるナズーリン。
「可愛いのに可愛くないのね」
かつてナズーリンが推測したとおり、永琳はてゐに一目おいている。
調子は合わせるが、決して心を開こうとしない偏屈ウサギに永いこと手を焼いていた。
そこへ初めての【友人】ナズーリンの登場、天才の好奇心に火がついたらしい。
「今のあのコ、とても楽しそうなのよ。アナタもココに遊びにおいでなさいな。
私も【主人】とのつきあい方、教育、しつけ、たくさん話したいわ。
似た立場のヒトに初めて会ったのだもの。いいでしょ? ね?」
そう言って首をかしげて笑った。
何歳だか分からないが、ちょっと可愛いなと思ってしまったナズーリンだった。
しかし、八意永琳と個人的な繋がりを持てたことは収穫だが、今の優先事項は別にある。
気を取り直す。
「パルスィどの、あとどのくらいもつのかな?」
それを聞いた永琳は表情を引き締める。
「薄い嫉妬に何とか縋っている状態よ。それが無くならなければ数年は大丈夫でしょうね」
嫉妬狂いの妖怪に戻すだと? 冗談じゃない。冗談じゃない!
帰り道で何度もパルスィを抱きしめる星熊勇儀。
とまどいながらも嬉しそうなパルスィ。
「勇儀? どうしたの? なんだか変よ?」
「パルスィ、私はお前が好きだ。お前だけが好きなんだ。それなのに……」
「ホントどうしたのよ? 私も勇儀が大好きなんだから大丈夫よ?」
勇儀は顔を天に向けている。
鬼の目は潤み、歯は強く噛み合わされているが、その表情はパルスィには見えなかった。
寺に戻った一行、パルスィが【少し疲れちゃった】と客間の布団に潜り込んだ。
勇儀の匂いがすると言って、くすくす笑ったあとは静かな寝息。
それを見届けた勇儀はそのまま枕元に座り、想い人を見守った。
寅丸とナズーリンはかける言葉も無く、それぞれの仕事に戻るしかなかった。
陽が落ちた頃、予想通り雨が降ってきた。風もかなり強い。
「うひゃー! すいませーん!! 雨宿りさせてくださーい!」
ずぶ濡れで本殿の入り口を訪れたのは姫海棠はたてだった。
出迎えたナズーリンが大きめの手拭いを渡す。
「どうしたんだ? 天気を読み違えるとはキミらしくもないな」
「うー、面白い岩を撮影していたんですよー、雨雲に気づきませんでした! 失敗でーす!」
けらけら笑うはたて。
「まったくキミは……集中するのはいいが、体を壊しては元も子もないんだぞ」
「はーい、デスク、以後、気をつけまーす。えへへへ」
とりあえず上がりたまえ、そう言った瞬間、客間の襖がバンッと開いた。
「ナズーリン!! 来てくれ! パルスィの様子がおかしい!」
勇儀の姿を見たはたては目を丸くしてその場に尻餅をつく。
「……お、お、鬼、おにーーー!!」
腰を抜かしたはたてを放っておいて客間に駆け込むナズーリン。
パルスィは目を閉じて静かに寝ている。いや、静かすぎる。
口元に耳を近づける。
呼吸はしている、だが、間隔が長い、長すぎる。
立ち上がり、戸口から顔を出し叫ぶ。
「ひじりー!! ひじりーーー!! 客間だー! はやくきてー!!!」
文字通り飛ぶようにして駆けつけた超人・聖白蓮。
素早くパルスィの容態を診る、そして。
「気脈に乱れは無いわ、病の根も無い。
でも、大事な力の源がどんどん無くなっていっているの! 止められない!」
珍しく取り乱した聖白蓮が叫ぶ。
ナズーリンは八意永琳の言葉を思い出す。
【少し妬ましいとすれば、地下ではおおっぴらに接することが出来ないことくらい】
【薄い嫉妬に何とか縋っている状態よ。それが無くならなければ数年は大丈夫でしょうね】
地上に出て、パルスィは唯一妬ましかったことが解消されてしまった。
白昼堂々往来で人目を気にせず勇儀と手をつないで抱き合った。
日の光の元、愛する人と誰に気兼ねすることなく笑いあって歩きたい。
ずっと夢見ていた、ささやかだがパルスィにとっては何より大事だった願い。
ヒトによっては【他愛もない】と思えるちっぽけな願い。
愛に裏切られ、愛に飢え、狂って堕ちた先に運命のヒトが待っていてくれた。
(いつかこのヒトと日の当たる道を一緒に歩きたいなぁ)
彼女には、もはや妬ましいことは何も無くなってしまった。
勇儀の迸る愛情表現が症状を一気に進ませてしまったのだ。
そのあたりの調整を怠った自分のうかつさを呪うナズーリンだが、遅い、遅すぎる。
緊迫した空気の中、パルスィがうっすらと目を開ける。
「……ゆーぎぃー、わたしー、な、んだか、しあ、わ、せ、んふふ」
嬉しそうに言って、再び目を閉じる。
『パルスィーーーーーーーー!!!!』
怒号とともに立ち上がった星熊勇儀、何をしようとしているのかは明快。
嫉妬心を煽るなど間に合うわけも無い。今すぐ山に行くのだ。神に頼むのだ。
こうなっては止めようがない。
妖怪の山にいきなり鬼が乗り込む。事前に連絡をしておかねば悶着は避けられない。
だが、今回は時間がない。
勇儀の代わりに誰かがパルスィを連れて行けば良いのだが、激情に駆られている鬼が納得するはずもない。
「私も一緒に参ります!」
少し遅れてやってきた寺の住人たちの中、寅丸が状況を読んで名乗りを上げる。
「ダメだ!!」
従者の鋭い叱責に驚く寅丸。
「山の妖怪たちの面子が絡むかもしれない。命蓮寺の寅丸星はその場にいてはいけない。
もめ事が起きたとき、寅丸星が鬼の側にいると言うことは、命蓮寺は山の妖怪たちと対立する、
という構図ができあがってしまう。これはよろしくないのだ、だからダメだ、私が行く」
唖然としている寅丸を尻目に続けるナズーリン。
「命蓮寺の看板であり、聖白蓮の名代、毘沙門天の代理、
ご主人は自分の気持ちだけで行動してはいけない立場だ。
自分の気持ちに素直に正直に行動して良いのは私に対してだけだ。分かってくれるよね?」
(前半は道理だけど、後半は全然関係ないんじゃないの?)
その場の全員の心の声。
「は、はい、分かりました、お留守番してます」
顔を赤らめモジモジしている寅丸星。
(納得するのかー!)
妖怪の山、山頂に向かうのは、ナズーリン、防水布に包まれたパルスィを抱える勇儀、
そしてはたてだった。
はたては星熊勇儀の存在に体の震えが止まらない。
しかし、師匠のナズーリンから状況を聞いた彼女は自分が同行することで、
少しでも悶着を回避することができれば良いと判断し、震える体に活を入れた。
生憎の雨、風も強い、上空にいくほど強い。
うんと上空から山頂を目指す、というわけにはいかない。
仕方なしに山を舐めるような低空飛行を強いられる一行。
この悪天候が逆に幸いして、すんなり山頂の神社まで行ければ儲けモノなのだが。
しかし、ナズーリンは自分の淡い期待は実現しないだろうと確信している。
こんな豪雨強風の中でも山への侵入者を決して見逃さない奴がいるから。
それは犬走椛。
普段は、ぼんやりのんびりと見えるが、実は常に山全体に気と目を配っている千里眼の持ち主。
潜入探索を生業としているナズーリンは、自分だけなら誰に見咎められることもなく、
好きなところへ行く術を心得ているが、これほど目立つ同行者がいてはどうにもしようが無い。
妖怪の山自体を崩すことのできる怪力乱神の鬼が、その存在、その力を隠そうともせず、
山を登ってきているのだ。
椛が感知していないはずがない、とあきらめている。
ナズーリンの予想通り、山の中腹に来たところでその哨戒天狗に呼び止められた。
「止まってください!」
犬走椛が警告する。彼女は後ろに五人の白狼天狗を従えていた。
【山】が、今回の侵入者をどれほど重く見ているかがわかる。
鬼の肩に手を置くナズーリン。
勇儀にもその意味は分かる。無表情で前を向いたまま、軽く頷いた。
「椛! これにはわけがあるの! 後で説明するから今は通して!」
両陣営の真ん中に身を滑り込ませた姫海棠はたてが懇願する。
「はたて様、それでハイそうですかと通しては任務になりません……
すでに別の白狼が報告に行っています……
ほどなく判断のできるモノが参りましょう……
詳しいお話はそれからとなりましょう……
それまではお待ち願います……」
殊更ゆっくりと、時間を稼ぐように正論を吐く椛。
雨風の中、空中で対峙していると、やや下方から『豪っ!!』と突風が、いや轟嵐の塊が突き上げてきた。
慌てて勇儀の首にしがみつくナズーリン。
その風は上へ上へと吹き上げていたが、数秒でぴたりと収まった。
何とかその場に踏みとどまっていたモノ達がようやく目を開く。なぜか眩しい。
突然の眩しさに上空を見上げると、雨雲は吹き散らかされ、本来の主役である弓張月が当然のように輝いていた。
その月光を背負い、凛然と宙に立っていたのは射命丸文だった。
写真機も文花帖も持っておらず、大きな羽団扇だけの姿。
今は【新聞記者】ではなく、【山の鴉天狗】であることを示している。
「【風の三郎ヶ岳】の筆頭、鴉天狗の射命丸と申します。
そちらにおはすは、四天王の星熊勇儀様とお見受けいたします」
大きな声ではないが、冴え冴えと響く。
四天王の一角が応える。
「いかにも星熊勇儀だ。わけあって山頂の神社を訪うところだ。通してもらおう」
勇儀の声もよく響く。
「例え星熊勇儀様といえども、然るべき筋道を通していただかなければ、聞けませぬ。
どうか、今夜のところは、このままお引き取りを願います」
「山の連中には用は無いんだよ。神社の用事が済んだらさっさと引き上げるからさ。いいだろ? 頼むよ」
一転して態度を軟化させる勇儀、彼女にしては最大級の譲歩と我慢だろう。
パルスィのためなら天狗や河童に土下座しても構わないと思っている。
「なりませぬ。お引取りください」
冷たく突き返す鴉天狗。
勇儀が抱きかかえている布の塊がヒトであることは分かっている。
それに、あのナズーリンデスクとはたてまで一緒なのだ。
なにかとてつもなく緊急の用事があるに決まっている。
十分に状況を理解している文だが、ここは譲れない。
妖怪の山でそれなりに責任ある立場。
白狼天狗の報告で侵入者が【星熊勇儀】と知った山の中枢は驚愕し、対応を検討する時間稼ぎのため、
幻想郷最速の射命丸文に『とりあえず今夜は帰ってもらえ。なんとしても』と下知した。
なんとも浅慮な命令だが、今は何より大事な椛が応対しているはず。文は最大速度で現場に急行したのだ。
文の答えを聞いた星熊勇儀の中で何かが切れた。
「……ならば、もう頼まん! 押し通るまでよ!!」
長い金髪がうっすらと光り出し、命を持ったかのようにうねうねと動き始める。
それまで首っ玉に抱きついていたナズーリンが慌てて飛び退る。
勇儀の周囲の空気が、流れることを止め、不自然に張り付く。
『ミシッ! ミシッ!』
空気が固形物のように重く、硬くなっていく。
怪力乱神の【力】の欠片が解き放たれようとしている。
滅多なことでは使わない本来の【力】、山を崩し、河の流れをねじ曲げてしまう、
理解不能のとてつもない【力】。
星熊勇儀がその力を眼前の相手に行使しようとしている。
犬走椛、姫海棠はたて、そして他の白狼天狗たちは勇儀の変容に身動きすら出来ない。
圧倒的な力の差、鬼の【本気】に魂までも縫い止められていた。
しかし、射命丸文はその気に中てられながらも使命を果たそうと踏みとどまる。
こんな剣幕の鬼を山に入れるわけにはいかない!
「ならば仕方ありません。力及ばずとも、この身を盾にするだけです!!!」
じきに援軍が来るはず、それまでこの鬼をなんとか足止めする。この命を費やしても。
文は袂から取り出した小さな布袋を椛に向かって投げつけた。
それを受け取って驚く椛。
そして羽団扇を平正眼に構える鴉天狗。
(最悪だ!)これまでのやり取りを黙って見ていたナズーリンは、歯噛みする。
山の中枢のマズイ対応、文の予想外の同胞愛、状況は悪くなる一方だ。
このままでは怪我人程度では済まない。
このところ心が満たされ過ぎていて、色々と鈍っているのか。
事前に打たねばならないはずの手回しがすっぽり抜け落ちている。
なにが【賢将】か、役立たずめ!
それでも最善手をひねり出そうと思案していたナズーリンは、いきなり、はたてに飛びつかれた。
そして二人して一気に高度を落としていく。
「デスク! いけません!
あれは真空烈波の構え! スペカじゃありません! 文は本気です!!
無数のカマイタチがスゴい勢いで飛んできます! 巻き込まれたらバラバラですー!!」
抱きついたままのはたてが耳元で怒鳴る。
そんなものを喰らったら、勇儀はともかく、パルスィは無事ではすまない。
(ここは一旦、退くしかないのか)
ナズーリンは、はたてを振り払い、両者の間に割り込むべく上昇を開始する。
『双方それまで!』
突然、空に轟きわたった制止の声。
全員が見上げる先に居たのは注連縄を背負った八坂神奈子。
「なにやらとてつもなく大きな力がやってきた思ったら、鬼の大将だったか。
話はおおよそ聞こえていた。
この勝負、私が預かろう。
天狗たち、ここは八坂の顔を立てて引いておくれな。
天魔どのには後ほど私から話をするゆえ」
そう言いながら、勇儀と文の間に降りてくる。
それを見た二人は高めていた力を一気に緩めた。
文としては、天魔と同格である山の神の言を無視はできないし、勇儀の目的は目の前の神だったし。
「話は社で聞こうか。 では鬼の大将、参ろうか? 私についてきやれ。
ああ、そうだな。見とどけ役がいるだろう、そこの鴉天狗、そう、オマエだ。同道しなさい」
ナズーリンに追いついてきたはたてを指差す神奈子。
あっという間に戦場を畳んだ神奈子は、勇儀たちを伴って山頂へ向かっていった。
椛は文の元に駆けつける。
文が椛に投げたつけた布袋には、椛が彼女のために拵えた将棋の駒を模ったお守りが入っていた。
なにかと危なっかしいことをする文に、無事で帰ってきてくださいと満願をかけ、拵えたものだった。
それを椛に戻した文、【永久(とわ)のお別れ】と覚悟を決めたからに他ならない。
本気の鬼と戦うとはそういうことだから。
文は、一行が去った後もその方向を見つめたまま小刻みに震えていた。
椛が優しく抱くと、文の眼は涙を湛え始めた。
「……こ、怖かった……ほんとに怖かった……」
そんな文をあらためて強く抱く椛。
「文さま、素敵でした。貴方はとても強い心をお持ちなんですね。カッコよかったですよ」
そこまでは明るく誇らしげに言った椛。
「でも、悲しかったです。お立場は分かります、でも悲しかった。
私を捨てて、お一人で死ぬつもりだったのですね?」
とがめるような口調、まとっている雰囲気が変わり始める。
「文さまがいなくなった後、私がどうなると思ったんですか?
平気で生きていけると思ったんですか!?
何故、あのとき、一緒に戦えと、一緒に死んでくれと言ってくれなかったんですかー!!」
白狼天狗は涙声。
「あ、あやさまは、あやさまは、ヒドいヒトです!
私の全身全霊を受け止めるって言ってくれたのに!
一心同体だって、死んでも一緒って言ってくれたのに! ウソだったんですか!?
どうして!? どうして!? 最後には私を捨てるんですか!?
だったら、いっそ今、殺してくださいよ!
あやさまのバカ! バカあやさま! 私、ワタシ、こんなこと、二度と耐えられません!!!」
普段は冷静でどこかのんびりしている椛が真剣に怒っている。怖い。
椛だけは守りたいと思って行動した文だが、その結果、逆鱗に触れるどころか踏んづけてしまった。
先ほどまでの自分の激しい感情を脇に置いてでも宥めなければ。
「も、椛、ごめんねー、もうしないよ。だから、許して? ね?」
「なんですかっ!? 上辺だけカワイコぶって! ぜっん! ぜっん! 心に届きません!!
やり直しなさい!!」
こうなったら容易くは機嫌が直らない白い天狼、犬走椛。
文の本当の戦いはこれからだった。
「私、なにもできなくて申し訳ありません」
八坂神奈子と共に守矢神社へ向かっている途中、はたてが師匠と四天王に詫びていた。
「いつもの文は、お山の仕事も割りといい加減なんですけど、仲間の危機となると、人が変わるんです。
あと、星熊様の前でなんなんですけど、【鬼】のことになると、私達はかなり神経質になります」
お互い話が出来るほど固まって飛んでいる。
「おいおい、私には、そんなつもりは毛頭無いんだがなー」
神奈子に会えたことで普段の調子を取り戻しつつある勇儀が言う。
「そうだとしてもです。
妖怪の社会を容易く揺さぶるとてつもなく強くて怖い存在、それが鬼なのです。
少なくとも私はそう教えられてきました」
「んー……そんなもんか。
それならば、あの射命丸と言う鴉天狗は、随分と肝の据わった娘なんだな」
力の差を知りながらも一歩も引かず、命を懸け、気丈に立ちふさがった。
「そうです。文はスゴいんです。怖くないはず無いのに、私は竦んで身動きできなかったのに。
色々な意味で強いんです。私、全然及びません。彼女には敵わないんです」
ライバルとの器の違いを見せ付けられて悔しそうなはたて。
その肩にそっと手を置いたのはナズーリンデスク。
「今の自分の力を知り、いつも頑張って背伸びして、少しずつ成長している。
はたて君、キミがどれほど思いやりがあって、優しいのか、清廉な向上心を持っているか。
私はよーく知っている。 だから焦ることはない。
キミは、キミがなりたいと思うモノに必ずなれるさ」
「……デスク、ありがとうございます……頑張ります。私をずっと見守っていてください……」
はたては肩に置かれた手に自分の手を重ね、俯いてしまった。
「ナズーリンは存外浮気ものだなー」
麗しい師弟愛を目の当たりにした勇儀は、生来の気質から茶々を入れてしまった。
「違います! デスクは寅丸さん一筋です、私はたまにご一緒できればいいんです!
少しだけお情けをいただければ満足できます!」
「なんだその愛人志願は」
「えっ!? あ、愛人とかじゃありませんよ! 違いますよ!」
慌てて否定する弟子を少し呆れながらも優しく見つめるナズーリン。
自分へ向けられている感情は、思慕の域を出ないだろうと予想している。
これほど素敵で楽しい娘なのだ、いずれ生涯を誓える相手に巡り合うだろうと思う。
守矢神社に到着した一行を東風谷早苗が出迎える。
「早苗、諏訪子は戻ってきている?」
頷く早苗にいくつか指示を出す。それを聞いた風祝は小走りで社殿に入っていった。
神奈子が客人たちに向き直る。
「さあ、皆、本殿に上がっておくれ」
道中、ナズーリンは神奈子に今回の訪問の目的を説明し終えている。
本殿の床には布団が一組敷かれており、洩矢諏訪子が待っていた。
神奈子の指示でパルスィを布団に寝かせる勇儀。
二柱はパルスィの両脇に座り、半眼でじっと見下ろしている。
正体は不明だが、ナズーリンには【探査】系の力が橋姫を覆っているのが分かる。
ややあって神々は目を合わせ、頷きあう。
「鬼の大将」
神奈子の問いかけに鬼が答える。
「星熊勇儀だ」
「では星熊。この娘の容態は、先に診た医者の申す通りだ。力の源が消えかかっておる」
「だからアンタたちの力で新しい力を宿らせて欲しい!」
「ふむ」
相方の土着神の頂点を見やる。
諏訪子は腕組みしたまま少しだけ首を傾げる。
その仕種を見た勇儀は慌てる。
「おい! 出来ないって言うのかい!? 地獄鴉に【八咫烏】の力を与えたのはアンタたちだろ!?」
「星熊、落ち着け。確かにあの時、私たちは故あって鴉に力を付与した。
だが、今回は状況が全く異なる。まずは聞け!」
鬼の四天王を制する山の神。
「この娘、パルスィ、だったか? 純粋な心の持ち主だ。あの鴉もある意味、純粋だったがな。
新たな力を受け入れるには、その純粋な精神が必要となる。
そうでないと二つの心が反駁しあい、壊れてしまうからね。
疑いを持たず、一途に信じる心、だからあの鴉はやりやすかったのさ。
しかし、このパルスィ、純粋だが、複雑で繊細、その感情を幾度も洗い直し、繕い、今に至っている。
同じ【純粋】でもこの娘の心は、悲しく、脆く、そして美しすぎる」
一旦、言葉を切った八坂神奈子。
立ち上がった諏訪子が後を引き継ぐ。
「【力】を与えたなら、その【悲しく、脆く、そして美しすぎる】心が塗りつぶされるかも知れないんだ!
力の付加ってのは強引なんだ! 乱暴なんだ! ワタシが言うんだから間違いない!
失われるよ!? ホントに大事なモノがいくつもいくつも!
その細やかな配慮、いつの間にか薄布をかけるような控えめな心遣い。
我侭を許さないように振舞いながら、実は全て理解して許す不可視の慈愛。
常にオマエを最上の状態に保とうと心を砕き、それを自分の幸せと転化させる献妻の心根。
……それが全て失われるかも知れないんだ! 別人になるかも知れない!
オマエっ!! それでもいいのか!?」
洩矢諏訪子は叫んでいた。
二柱は、パルスィを【診た】とき、その心の深遠にも触れてしまっていた。
そして神の身でありながら、この薄幸の献妻に同情してしまっていた。
何とかしてやりたかった。
だが、神とて万能ではない。
儚く美しい心を壊すかも知れないとわかっていて、無茶は出来ない、したくない。
お互い眼でかわした結論は【このまま逝かせてやろう】だった。
【ドサッ】その場に崩れ落ちた星熊勇儀。
『パルスィ! パルスィー! パルスィーーー!!!』
鬼が哭いた。
数多の人妖を恐れさせ、泣かせてきた鬼が哭いた。
最も強く最も恐ろしいと謳われた無敵の鬼が、小さな翠緑玉を失うのを怖がって体を丸めて哭いていた。
翌日、弁当用の竹の皮を命蓮寺に届けにきた因幡てゐ。
それは口実で、興味本位でその後の様子を見に来たのだ。
「こんちはー、竹の皮ですよー、寅丸さーん」
少しして寅丸星が出てきた。
「こんにちは、てゐさん、いつもありがとうございます」
暖色系の笑顔に翳りを見て取ったウサギ。
「寅丸さん? どうしたの? 元気ないじゃん。なんかあったんでしょ?」
「えーと、詳しいことはナズーリンに聞いてください。貴方が来たら通すように言われていますから。
縁側に居るはずです、裏庭を通って行ってくださいね」
「あれ? ワタシが来るの読まれていたのか。まあいいや、おじゃましまーす」
裏庭伝いに歩いたてゐは縁側を覗いてみる。
ナズーリンがぼんやりと座っていた。
「はーい、ナズリン」
「てーゐ、遅いじゃないか」
「は? 約束なんかしてないよ?」
「面倒ごとがあるんだ。こんな時は察してすぐに来いよ」
「アナタ、自分がどんなに横暴か分かってる?」
「ああ、多少はね。だが、キミにしか言わないんだから構わんだろ?」
「それって、ワタシに甘えているってことでいいのかしら?」
「……ああ、そう言うことでいいよ」
「なに、その投げやりな言い方」
「いちいち文句を言うなよ、本題に入るぞ。座れよ」
いつも裸足のてゐは部屋まで上がることは少ない。
大体は縁側で並んで話す。
隣に腰を下ろしナズーリンの様子を見る。
(あらー、随分と疲れているわ、よっぽど面倒なことなのね。お節介ナズリン、お疲れさん)
昨夜、散々泣いて濡れたズダ袋状態だった星熊勇儀をナズーリンは怒鳴りつけた。
「星熊勇儀! 立て! どうした!? もうあきらめたのか!? 私はまだあきらめていないぞ!
それとも、キミのパルスィどのへの愛はタネ切れなのか!? これで何もかもお終いなのか!?
立てよ! バカ鬼! 立たないならパルスィどのは私がいただくぞ! このヘタレ鬼!!」
「……な、なんだとぉ?」
「キミがいらないと言うなら私が囲ってやる! キミよりたくさん可愛がってやるさ!
テクニックは私の方が上だ、キミ以上によがらせてやる! だから安心して腐っていろ!」
「ナ、ナズーリン、オマエ、自分がなにを言ってるか分かっているのか?」
「はっ! 悔しかったら立ち上がって私を打ちのめしてみせろ!
今のキミには負ける気がしないがな! さあ来い! へっぽこ鬼! その角はお飾りか!」
ゆらりと立ち上がった最強の鬼。
姫海棠はたてがナズーリンをかばう。
「デ、デスクー、洒落になってませんよー! 逃げてください! 本気でマズいですー!!」
自分をかばっているはたての前にスルリと体を移動させ、怒りに燃える鬼を睨みつける賢将。
勇儀は振り上げようとした拳を止める。そして大きなため息。
「……すまん」
張り詰めていた空気が緩む。
「勇儀どの、あきらめていないと言ったのは本当だ。
だが、キミが気力を失ってしまってはどうにも出来ないのだ、キミは最後まで立っていてくれないと」
「ああ、本当にすまない。私を立ち上がらせてくれたオマエの命懸けの誠意にいつの日か応えたい。
鬼の約定だ。必ず果たすからな」
守矢神社を辞した。
二柱は揃って頭を下げていた。
「気休め程度にしかならんが、パルスィには私たちの【気】を少しだけ入れた。
差し障りのない程少しだから、長くは持たんがね。
力になれず、申し訳ない。」
勇儀も二柱に礼を述べた。
幸いパルスィの容態に変化はなかった。
命蓮寺に連れ帰り、朝を迎えた。
そして今、ナズーリンがてゐに経緯を話し終わったところだった。
「てーゐ、キミはどう思う?」
ナズーリンは唯一【友人】と認める詐欺ウサギの洞察力に一目置いている。
広範な一般知識には疎いが、人妖の心の機微に関することであれば自分より深い考察をする。
勇儀には【あきらめていない】と言い放ったが、実のところ、妙案があるわけではなかった。
あの後も散々考えていた。てゐとのやり取りの中で、何かヒントを掴めればと思っていたのだ。
「力を失って消えていく妖怪、珍しいことじゃないわねー。どうにかしたいの?」
あっさり言った妖怪ウサギ。
「ナズリンお節介しすぎだよ。これからも知り合いは全部助けるつもりなの? アナタ何様なの?」
もの凄く痛いところをズバッと突いてくる。
でも、こんなことを言う、いや、言ってくれるモノはこれまで居なかった。
賢将と呼ばれながら、努力して何とか立ち回ってきたこれまでの自分。
それなのに、抜け落ちていたところを、見過ごしていたところを遠慮なく突きつけてくる存在の出現。
因幡てゐ。
初めは頭に来た、いらだった、不愉快だった。
自分と同等以上の思考力で追い詰められる、それを苦労して切り抜ける、次は逆転する、追いかける。
相手の論理の罠を見破り、引っかかったフリをしてこちらの罠に誘い込む。なんと気持ちの良いことか。
一生の宿敵、友人をやっと見つけた。 こいつとは死ぬまでやりあってやろう。
何様と言われ、返す言葉が見つからないナズーリンに、てゐは真後ろから追撃した。
「でもさぁ、ここで知らん顔するナズリンは私キライだねー、
よけいな苦労を背負い込み、悩んでかけずり回るお人好しナズリン、そうでなくっちゃ。
困って考え込んでいるアナタを眺めるのは楽しくてゾクゾクするからねー」
「……キミはホンッ! と、に性格が悪いな!」
「あれー? アナタへの好意を精一杯表したんだけどなー? 分かんないの?」
「全く分からんよ!」
「でも、願いがかなって消えていっちゃう妖怪はホント珍しくないよ?」
幸せになって消滅してしまった妖怪、ナズーリンもこれまでに何度も見てきている。
その都度、多かれ少なかれ別れの一幕があった。
今回の幕は特別過ぎる。ナズーリン自身もそうだが、パルスィを失った寅丸星がどれほど落ち込むか。
寅丸も幾多の悲しい別れを経験してきている。
だが、彼女にとってパルスィはナズーリンや聖たちとも違う特別な存在だった。
生まれて初めて芽生えた激しい恋情、それを理解し応援してくれた唯一人の【戦友】だから。
どちらが大事、などと単純に比べることのできない特別な存在だった。
元気のない寅丸。それはナズーリンが最も恐れてきたモノだ。
なんとかしたい。頭の中身をしぼりまくる小さな賢将。
幸せ(願いがかなう)になったら消えてしまう、ならば、
幸せではない(願いがかなっていない)状態に戻せば消えない。
(勇儀どの、旧地獄に戻ったら女遊びにうつつを抜かしたまえ、男でも構わんが。
パルスィどのが文句を言ってきてもヘラヘラかわすんだ。すぐバレるうそを吐くんだ。
たまに気紛れを装っていい加減に可愛がり、大いに妬まれることだ。これで万事解決!)
……ダメだ、解決はするが、こんなのダメだ……
どうにもまとまらないナズーリンは隣に座るてゐを見る。
足をブラブラさせてぼんやり空を見上げている。
「てーゐ、キミは何で妖怪になったんだ?」
「私は死にたくなかっただけ。
健康に気をつかっていたら結構長生きしちゃってて、いつのまにかこうなっていたわねー」
「キミらしいな。……いや、聖も根幹は一緒か。死にたくないって言うのは強い思いだよな」
「妖怪にしろなんにしろ、それまでの体から変わるのは強い思いがあればこそじゃない?
もちろん、思っただけで変われるわけじゃないし、望んでなくてもなっちゃうときはなっちゃうし。
それに私だって【妖怪ウサギになりたーい】なんて思ってなかったよ?」
「まぁ、そうだろうね。【妖怪】になりたいと思うモノは少ないだろうね。
強い思いありき、か。 んー、じゃあ、その思いがかなったキミはなぜ消えないのか?」
「なによ、消えて欲しいの? 【もっと長生きしたい】って思っているからじゃん」
「それは願いの内容が変化したってことかい?」
「新しい願いができちゃったって感じかな? ナズリンだって、昔と今じゃ願いは違うでしょ?」
確かに今のナズーリンの願いは寅丸星を中心にいくつもある。
しかし自分が【発生】したときには、当然寅丸は存在していなかった。
これも強い思いの内容変化だろうか。……だったら、だったら……
「ところでナズリンはどうやって妖怪になったの?」
「その話は次の機会だ。少々込み入っているからね」
「えー、ずるーい。私の恥ずかしい秘密を聞き出しておいて、自分は内緒なんてずるーい」
「恥ずかしいってなんだよ。ちょっと黙ってくれ! 思いつきそうなんだ」
「あー、ひどーい、困ったときだけ色々聞いてきて、用が済んだら黙れですって。
どんだけ都合のいい女なのよ私ったら。
寅丸さんに言いつけてやろーっと。ついでにお菓子もらっちゃおーっと」
てゐは縁側から飛び降り、厨房へと歩いていった。
お互いに分かっている。
ナズーリンが何か思いついて策を練り始めたことに。
てゐはその邪魔をしないように怒ったフリで離席したことに。
二人はそういう仲だった。
「パルスィどのの元気を取り戻す方法がわかった」
客間を訪ねたナズーリンは二人にそう、切り出した。
パルスィは布団の中だったが、起きてはいた。勇儀はその枕元に座っている。
「ホンとか!?」
「ああ、だがその前に約束して欲しい。絶対にあきらめずに取り組むと」
「おい、まさか」
勇儀の顔が不安に歪む。八意永琳、守矢の二柱に言われた対処方法が頭をよぎった。
どちらの方法もパルスィの心を激しく傷つけるものだったので、それに類することだとすれば、
簡単には肯けない。
「心配はいらないよ。どちらか一方が負担をする方法ではない。二人で負担するんだ」
「パルスィと二人なら、どんなことでもやってみせる!ナズーリン、言ってみてくれ」
「私も勇儀となら頑張れる」
布団から身を起こしたパルスィも応えた。
「二人とも後悔しないね!?」
「おう!」「はい!」
「よし! では説明するぞ!」
「おう!」「はい!」
「パルスィどの、星熊勇儀の子を産みたまえ!」
「お…?」「は…?」
「返事はどうしたー!」
キョトンとしている地底のバカップル。
「何をそんなに驚く? 愛するヒトの子供を産みたい、女性ならそう望んでもおかしくはないだろう?」
「あ、あのー、ナズーリン? 勇儀は女なのよ、これでも」
「そんなこと分かっている。
黙っていれば十分に美人だし、体は超弩級悩殺爆弾だ。男には見えない」
「そ、それでね、私も女なのよ?」
「なんだねパルスィどの、まどろっこしいな! キミは理想の女性像モデルの永久欠番所持者だ!
三千大千世界の男共が渇望し、女共が羨望する【イイオンナ】だ。間違えるバカがいるものかよ!」
そんな番号もらった記憶はないが、どえらく評価されていることはなんとなく理解した。
「なあ、ナズーリン? 聞き間違いがあってはマズいから、整理させてもらうよ?」
異様なテンションのネズミ妖怪に思わず下手に出てしまった勇儀。
相手は【よかろう】とばかりに顎で先を促した。
「えー、私は女、パルスィも女。ここまではいいよな?
そしてパルスィが私の子を産む、そうするとパルスィは元気になる、ってことなのかい?」
「そうだ、わかっているじゃないか」
「しかしだなー」
「なんだね、キミはパルスィどのに自分の子を産んで欲しくないのか?
それとも、キミが産みたいのか? パルスィどのの子を」
「いや、もちろん産んで欲しいさ。かなうならな。
あっ……もしかしてその方法があるっていうのか!? 教えてくれるのか!?」
今度は勇儀がいきり立つ。
「そんなもん知らんよ」
にべもない。
「ナズーリン!! おまっ! おまえっ! ふざけるのもいい加減にしろよ!」
「私! 産みます!」
掴みかからんばかりの鬼を止めたのは橋姫の元気いっぱいの声だった。
ビックリしている勇儀と、してやったりのナズーリン。
「言われて考えたの。私、今とっても幸せ。でも、もっともっと幸せになりたい。
勇儀との子ができたらきっとたくさん幸せだと思うから」
ナズーリンは、今回のことをじっくり話すことも考えたが、所詮、突拍子も無い話なのだから、
勢いで納得させてしまおうと、わざと芝居がかった雰囲気にもっていったのだ。
生きる力、目的、それが愛する勇儀との延長線上にあるものなら、【新たな力】として申し分ないはず。
妖怪の存在理由が変化するのなら、支えている力の源が変化したっていいはずと考えた。
猶予がなかったので、奇天烈な提案になってはしまったが、今のパルスィの活力は、
ナズーリンでも感じ取れるほど漲っている。
「パ、パルスィ? 私もオマエとの子は欲しいさ、ああ、ホントに欲しい。
でもな、どうやって『私が最初に言ったことを思い出してくれ!』
ちょっと弱気な勇儀の言をナズーリンが遮った。
「絶対にあきらめずに取り組むと、約束させただろう?
そもそも異なる種族の妖怪、しかも同性、子を生せるかどうかは分からない。
だが、探そう。調べよう。試してみよう。いつ答えが見つかるかは分からないけどね?
私も手伝うが、キミらがあきらめずに求め続けなければならないよ? どうだね?」
考え込んでいる星熊勇儀をパルスィが心配そうに見つめる。
ややあって愛しい妻に微笑みかける。
「正直、無茶苦茶な話だと思う。しかし、【絶対無理】【できっこない】ってのは嫌いな言葉だ」
パルスィを抱き寄せ頑張ろうと囁く。そしてナズーリンに向かい大きな声で、
「今夜は宴会だ! 頼むぞ! ナズーリン!」
「そんなわけで今夜は宴会になってしまったんだ。ご主人、よろしく頼むよ」
寅丸にパルスィが元気を取り戻したことを報告したナズーリン。
厨房の隅では、てゐがモグモグつまみ食いをしているので【子を産む】までの話はしていない。
てゐには今度タネ明かしを含め、ゆっくり話せばよいと思っている。
花が咲いたように喜んだ寅丸星。
「よかったー! ええ、ええ、ご馳走をつくりましょう!」
喜ぶ主人を見て、ナズーリンも楽になった。
すると、いつものからかい癖が頭をもたげてきた。
「詳しくは後で話すけど、要は、妬みの対象が実現可能であれば問題ないということだったんだ」
「あの? よくわかりませんが?」
「他人がイチャついているところを見て、【勇儀、妬ましいわ。私たちもイチャイチャしましょう?】
そうなればOKなんだね。
つまり私とご主人がイチャイチャしているところをたっぷり見せつけなければならないということだよ。
これまでよりかなり激しくなるが、分かってくれるよね? 必要なことなのだ、ヒト助けなのだ」
「うそばっかり。寅丸さーん、絶対全然関係ないと思うよ」
「てーゐっ! キミは黙っていろよ!
ご主人、うそつきウサギとこの私、どちらを信じるんだ!?」
「え? え?」
「そうそう、うそつきウサギと欲望のためには手段を選ばない極悪助平ネズミ、どっちを信じる~?」
「え? えー? 」
「キミはしゃべるなよ! ご主人、私を信じてくれるよね?」
寅丸は迷った。
普通であれば迷うことはないが、こと、このテに関してはナズーリンにちょいちょい騙されている。
「えと、えと、あの、あの」
「もおっ! ご主人ってばっ! しっかりしてよー!」
寅丸に抱きつき、訴えるたびにギュウギュウするナズーリン。
ナズーリンの頭と腰に手を回しつつも、なんだか困っている寅丸。
(はーん? 十分イチャイチャしてるじゃん。 ばっかみたい)
いつものように呆れるウサギ妖怪だった。
了
まぁ素晴らしいカップリングでしたよ、ええ
ちょっともこけねを詳しく…
後、ノーパンの部分を詳しく
ナイスな勇パル&ナズ星。
いつもと比べて少し甘さ控えめのシリアス増し増し、そして変わらぬ面白さ!
こんな幸せそうなパルスィは初めて見ました…!
回を追うごとに太いパイプを増やしていくナズーリン。次回も楽しみにしております!
男の妊娠はカリフォルニア州知事が既に通り過ぎた道だからきっと大丈夫。まあ後に続こうとは思いませんが。
でも大好き
ただ今までの作品と比べると多少消化不良が否めないかな、と。問題もまだ解決したわけではありませんしそのせいもあるのかな…。
しかし、賢(痴)将ナズーリンの物語、まだ続きますよねっ!これからの展開を楽しみにしています!!
しかし「そんなもん知らんよ」は実にナズーリンらしい台詞だ
色々なモノを端的に表現した個人的ベスト台詞
ナズリン?ナズーリン?
文に惚れそうだった
みんな良いキャラしてますな
ストーリーと登場人物達に、ただこの一言を送りたいです。
・・・・・・・・・いいぞもっとやれ
あやさまかっこよかったなぁ
きてる感じでどんどんおもしろくなってくるよね。はたてや文が出てきたらなんか「おー!」
て思う。前半部分はホントどうしようかと思ったけどww 『この陽気な好漢が本気で憂え
るのは掌中の翠緑玉のこと以外にはない。』てもう漢になってる!なってる!いけるよww
たぶん子供生めるとおもうよ!ww お嬢様
お料理の描写がいつもながら本格的ですね。「美味しんぼ」的な料理話ができるんじゃない
でしようか。超本格的なヤツ。あと「もちもちしっとりとした手に吸い付いてくるナマ尻」
てどんな尻だよっ!!て思いました。もう敵いませんホントw 話全体もそうですが、独特
の紅川テイストが溢れ出てきています。どうかこの調子で突っ走ってください! 冥途蝶
うん!変態だぁ! でもキャラがどんどん自由に暴れだしてきててわくわく感がでてきたの
は認めますww 私は何時だったかの霊夢さんとの掛け合いがすっごいツボなんであれもま
た見てみたいです。あの霊夢さんは他に無いから私すごい好きなんです。センセイの幻想郷
が桃色に広がっていく感じでこの先どんどん楽しみなってきますよ! 超門番
文さま超かっこいい! 勇儀も素敵な漢女ですが、事この作品に至っては「射命丸 文」こそが最高の漢女だ!!
ありがとうございます。CP詰め込みすぎで息苦しくなっちゃいました。
もこけねは今後もちょいちょい出る予定ですが、R18には気をつけます。
奇声を発する程度の能力様:
いつも本当にありがとうございます。ノーパンシチュに関しては一家言あります。
「だって、今日、穿いてないモン」この一言でどれほど勇気付けられたか! (←何?)
6番様:
ありがとうございます。勇儀のバカさ、強さ、優しさが今回書きたかったモノの一つでした。
良かったです。
9番様:
いつも読んでくださり感謝です。
甘・シリ・コメの配合は未だにうまく取れません。生暖かい眼で見守ってくださいませ。
パルスィは俺嫁ですが、勇儀になら譲ります(笑)。
ナズーリンは星のためにこれからも頑張ります。
結果、自分の評価が上がったとしても、あまり興味を示さないでしょう。
それがナズーリンだと思います。
11番様:
ありがとうございます。書くごとに好きになるはたてです。
次作は彼女のことが気になってきたあのヒトの話です。
ナズ星の外伝風になる予定です(あくまで予定ってことで……)。
私も出産はゴメン被ります。妻の出産の様子を扉越し聞いていただけで震えてしまいました。
あんな苦しそうで、痛そうなの、自分には絶対無理っス。
12番様:
変態! 上等です! これからも変態です! ありがとうございました!
13番様:
以前の魔理沙ネタもそうでしたが、キャラの行動原理に影響してしまうような出来事を起こしてしまうと、
あっさり解決するのが不自然に思え、また、途中経過に別件・別キャラを絡ませたくなり、
未解決で終わってしまっています。
(なら、そんなネタに手を出すなー!! っていうツッコミは……ゴメンナサイ)
一話完結を心がけている身としては、よろしくない傾向で、反省しております。
かくなるうえは、続きを書くことで挽回させていただきます。ありがとうございました。
17番様:
ありがとうございます。あっさり、はどうかと思いますが、もう少しすっきりの中にもコクが出るよう精進します。
19番様:
ありがとうございます。CP出しすぎですが、脳内鉄板CPはこれでほとんどすべてです。
あとは魔理沙ですかね。
ナズーリンは基本、素っ気無いんです。それなのに星絡みですと見すごせないんです。
そうあって欲しいんです。はい。
20番様:
ありゃ。
ナズリンとナズーリンが混在しているため、見落としました(いいわけ)。 ありがとうございます。文、今回は頑張らせていただきました。
22番様:
以下妄想モード。
【パリーサ(妖精のような)】は鬼の角と怪力は受け継いだものの、引っ込み思案で心優しい娘だった。
あの勇儀の娘、ということで何かと期待される。そのことは……
以上妄想終了。 ありがとうございました。
23番様:
ありがとうございます!
名前を忘れた程度の能力様:
ホント詰め込んでますよね。 やれるところまでやってみますか。
ありがとうございます。
26番様:
ありがとうございます!
28番様:
ナズてゐについてはほとんど負荷なく書けます。脳内相性がいいのかな。
文、頑張りましたよね? ありがとうございました。
お嬢様様:(←これって変ですよね)
前半部分は家人からも「やりすぎ」と指摘を受けました。でもやめません。
好漢……何度か校正したんですが完全にスルーでした。
自然すぎたのか(笑)それにこの方がいいや、ハハッ。
冥途蝶様:
料理の件、過分な評価で恐縮です、まぁ、年食ってるだけでござんす。
手に吸い付く尻! それはですね! 単なる肌理の細かさではなく(以下自粛)
超門番様:
あっあーー!! 認めてもらったー!! よかったー!!
霊夢との掛け合い、私の最大出力だったんです! よかったー!!!
次々回の紅魔館のパーティーシーンで出す予定でーす。
(このような言動を自縄自縛と称します。試験に出ます。一人緊縛プレイではありません)
34番様:
こちらも見てくださったんですね。ありがとうございます。
前作あとがきで『大好きな文に泣く泣くストーリーを引っ張らせました』と、
34番様のコメントには『文はこのままでは終わりません、そりゃもう。』とも書かせていただきました。
今回ようやくこんな感じです。よかったです。
神奈子様もまじぱねぇ…
てか、分類の文|椛 この壁要らないんじゃw
この2人ならいつかきっと…!
しかし、紅川さんのナズーリンワールドはどこまで広がっていくのか!
もっともっと素敵なお話を読みたいです!
うかー! ごめんなさい! 次から頑張ります!(多分)ありがとうございました。
39番様:
文、今回の登場にあたり、すんげ考えました。たくさん支持いただけて良かったー! ありがとうございました。
Admiral様:
全部読んでくれたんだ、全部コメくれたんだ……ありがとうございます、もう書くしかないっすよね、やらせていただきます!
恥ずかしがるパルスィが可愛いと言っておきながらノーパンで直接だなんて素人過ぎる。
そこはいつものスカートをはかせて町を歩きつつ、往来で何か落とした物を拾うフリしてあのヒラヒラぶら下がった紐を角で引っ掛けて捲る遊びをするべきでしょう!
勇儀姐さんからは見えそうで見えないアングルにドキドキ、パルスィは「もしかして回りに見えてるんじゃ」ってお互いに興奮する羞恥プレイを!
まあ妄想はともかくとして、今回の文ちゃんカッコよかったです。
てっきり神奈子様がやってくるのを見越して時間稼ぎのつもりで闘いを挑んでいたのかと思っていたらまさか本気だったとは……
愛する人を置いて目の前で死ぬなんて最大の不幸者ですぞ。今回の件で一段と深まった文ちゃんと椛。この日の夜はずいぶんと燃えたんでしょうねww
やっぱりこの椛と文ちゃんの微妙な力関係は大好きです。
しかしナズーリンの提案には本気で大声で全力ツッコミしてしまいました。
あと本当にナズてゐの関係も素敵です。作らない素のナズーリンを見られることでナズーリンがより一層魅力的になるんですよね。
最初パルスィがキャピキャピしててちょっとキモいと思いきやだんだんと可愛く見えてきました。これはきっとアレですね。「クラスで静かで目立たない子かと思ってたら隣のクラスの仲の友達と一緒のときは凄くいい笑顔で話しててときめいた」ってやつでしょうか。
さあ、ナズーリン次は誰を攻略だ?!
ありがとうございます。
ぺ・四潤様:
角でスカート捲りですか、個性を活かした素晴らしい発想です!
うーん、もっともっと頑張らねば! 引き出しを開けなければ! うおー! 負けませんよー!ww
文もみ、なんだかんだでいつのまにか椛にリードされている文、このシチュに萌えます。
今後もちょくちょく出したいです。
ナズーリンの提案は一時しのぎのごまかしですが、少女達が主役の幻想郷ではあって然るべき展開と考えます。
彼女達が遊戯のはてに最後は同族の異性となんとなく一緒になる、そんなの面白くありません(力説!)。
てゐは当初の予想以上にナズーリンに絡んでいます。
書いていて燃えるんです(萌えではなく)。
実はナズてゐのやりとりは不思議なくらいスラスラでてきます。 星が嫉妬するほどww
パルスィについての表現、うまいなー、貴殿は発想のコネクトがとても柔軟なんですね。 羨ましい!
パルスィかわいい。文さんかっこいい。
願いを叶えたら消えてしまう。そう認識するとやりきれないモチーフですね。そういう妖怪と言うのは。
さあ勇儀さん、がんばって生やす方法を考えるんだ。
ありがとうございました。
ナルスフ様:
詳細な設定がない・よく知られている魔物、原作の間口が広いからいくらでも捻れちゃいますよね。
姐御、生えますかね……