※一部過去作品の設定を流用してますが、多分見なくても問題ないとは思います。ただ、マリアリ成分とパチュリー様鬼畜成分を含みます。設定の流用に使われた過去作はあとがきにて紹介します。
―――私、フランドール・スカーレットの能力には大きな制限がある。
私の能力は「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」と言われている。しかし、本当にその場で何でも破壊出来るのならば「程度」という言葉は付けられない。何でも好きに破壊できることは、世界を操ることに等しいからである。
では、なぜ「程度」という言葉が付いているのか。これは至って簡単な話で、ある条件を満たさないといけないのである。その場で破壊したいと思ったとしても、すんなりと破壊出来るわけではないのだ。
それで、その条件は何かというと―――
「妹様。起きられてますか? 朝食のお時間です」
「あ、今行くー」
―――ご飯を食べた後知ってもらいたいと思う。私の能力の秘密に比べたら、咲夜の作る食後のプリンの方が大事だし。
――(少女食事中)――
「ふう、お腹いっぱい。プリン美味しかったなー」
私は今、咲夜の作った美味しい食事が終わって自室へと戻っている。少し前までは自室で一人食事をしていたが、少し前から姉であるレミリアからの提案で、一緒に食事をすることになったのである。なんでも白玉楼や永遠亭といった面々が主従関係無しに食事を共にすると聞いて、咲夜や美鈴、パチュリー、小悪魔、そして私と一緒に食事をしようと考えたらしい。他のメイドたちがいないのは、お姉さまのプライドが影響しているからだろう。咲夜と美鈴は従者というよりも友人に近い位置にいるし、パチュリーは友人で小悪魔は客人、私は妹だからあくまで「家族のような形」を作りたかったのだと思う。お姉さまはそんなこと言わないだろうけど。
そんなことを考えていると、いつの間にか自室の前に到着していた。私は扉を開けると、明かりをつけて中へと入った。私のような吸血鬼は日光に当たり続けていると燃えてしまうため、窓は一つとして無いのである。なので、自然の光がこの部屋に入ることはない。
そのまま私は普段ならベッドに倒れこむのだが、何となくベッドの横にあるタンスへと移動した。そのタンスは大分大きく、私が10人ぐらい入れるほどの大きさだ。そしてこのタンスこそが、食事前に伝えようとしていた私の能力の秘密である。
私は自分の胸辺りの高さにある「紅魔館」という張り紙の付けられた引き戸を開けた。するとその中には更に小さな正方形の形をした透明なケースが敷き詰められいる。そのケースにも「お姉さまの足」や「晩御飯の人参」といったような言葉の書いてある張り紙が付けられていて、その中には………私にしか見えない「眼」が入っている。
―――そう、これこそが私の能力の制限である。
私は何でも破壊出来る代わりに、破壊しようと思ったらこのケースに入っている「眼」を破壊しないといけないのである。しかし距離にも制限があり、「眼」から半径10メートル以内に存在しているものなら破壊出来ると考えてくれれば良い。また、この「眼」は自分で作ることが出来るのだが、効果を発揮するまで三日ほどの時間をあけなければならない。なので、あくまでコレクションとしてこの様にケースの中にしまって保存している。
これを使う時は大抵の場合握りつぶすのだが………例外もある。何となく面白そうで作った「お姉さまの服を破壊する眼」をケースにしまおうとしたら、突然入ってきたお姉さまに驚いてつい落としてしまったのである。そしたらその「眼」が壊れて、その場でお姉さまの美しい裸体が目の前に………あったのだが、すぐ元の服装に戻っていた。さすが咲夜、少し残念だが早い仕事である。
もうひとつ例外を挙げると、弾幕ごっこの時も「魔理沙のスペカ破壊する眼」とか「お姉さまのスペカを破壊する眼」を予め準備しておいてから挑むのである。10メートルと短いが、そのスペカに向かって「眼」を投げればうまい具合に破壊することが出来る。弾幕を打ちながら投げれば、相手には見えないため簡単にボムることが可能なのである。
これが私の能力に「程度」がついた由来である。おまけに私は吸血鬼。雨の日や晴れの日の行動に制限がある為、もっぱら紅魔館内でのイタズラぐらいにしか使用出来ないのだ。
そんなことを考えていると、何だか無性にイタズラがしたくなってくるから不思議である。いろいろな「眼」も作ったことだし、今日は少し遊んでみよう。
――(少女移動中)――
数分後、私は魔理沙が大図書館に来ていると聞いて「パチュリーのイスを破壊する眼」と「パチュリーの服を破壊する眼」、そして「小悪魔の部屋の隅にある人形を破壊する眼」を選んで、それらを持ったまま大図書館へと移動した。
ここだけの話、大図書館には二つの入口がある。実際は大きめの扉から中に入るのだが、隣にある小悪魔の部屋から大図書館へと通じる扉があるのだ。私が以前イタズラをしているところを小悪魔に見られた時に教えてくれたのである。「イタズラならおまかせを」だそうだ。さすが小悪魔、話が分かる。
私は「小悪魔の部屋の隅にある人形を破壊する眼」を握りつぶすと、部屋に誰か現れた気配がした。召喚魔法のようなもので、設置してある人形を破壊すると小悪魔が部屋に呼び戻される仕組みらしい。私は三回ノックをすると、一度ドアを蹴り飛ばした。合図である。
空いたドアから出てきた小悪魔は人の良さそうな笑顔を浮かべると、私を部屋へと招き入れてくれた。招き入れた後は、イタズラを楽しむ子供のような表情を浮かべていたが、私も同じような顔をしているので文句は言えない。
私はイタズラの内容を簡単に小悪魔に伝えると、それを聞いた小悪魔が「少し待っていてください」と言ってパチュリーの元へと向かっていった。パチュリーに対するイタズラなのだがどうするのだろう―――そう考えていると小悪魔がこちらへと戻ってきた。
小悪魔に聞くと、今魔理沙はアリスと一緒に本を探しているらしい。珍しく盗みに来たのでは無く、正式な客人として来たようだ。小悪魔は「パチュリー様は最近良い趣味してますから、楽しめますよ」と言っていたので、パチュリーにも参加してもらうことになった。予定は変わったが、小悪魔が言うのだから大丈夫だろう。イタズラに関しては彼女程の策士を私は知らない。
とりあえず、私は最初の予定通りにやれば良いと言われたので考えた通りにイタズラを実行することにした。イタズラの結果はきっと自分の考えよりも面白くなるのだろうと、不思議と確信したのである。
しばらくして、魔理沙とアリスが部屋から出てきた。パチュリーは魔理沙を呼ぶと、自分の方に少し来るように言い出した。普段なら魔理沙がパチュリーのもとへと行くのだが、アリスが来ているせいかそのまま帰ろうとしていたのである。小悪魔がいなければ、私のイタズラは失敗していただろう。
しかし、何はともあれ魔理沙がパチュリーの側へと移動したのだ。私は最初の予定通り「パチュリーのイスを破壊する眼」を投げつけると、「眼」が破壊されパチュリーのイスが砕けた。そのままパチュリーは倒れ込んだが、パチュリーの目の前にあった机が邪魔をして、うまく姿が確認できない。しかし、遠目から魔理沙がパチュリーの様子を伺いながらしゃがみ込んだところで「パチュリーの服を破壊する眼」を投げつけた。確認はできないが、突然パチュリーの服が無くなって魔理沙はとても驚いているだろう。これが私の考えた「パチュリーがいきなり訳も分からず裸を見られる」といったイタズラである。
すると小悪魔が大きな声で「あー、パチュリー様大丈夫ですか!?」と言い出した。するとパチュリーが「ま、魔理沙………いきなりなんて、そんなっ!」と大きな声で答えていた。服を破壊したのが私にも関わらずだ。
その声に反応したアリスがもの凄い勢いでパチュリーと魔理沙へと向かっていくと、その姿を見たアリスが………絶句した。
「ま、魔理沙………貴方………」
「………いや、ま、待て! 違うんだアリス、これはいきなりパチュリーが―――」
「―――もう知らない! 魔理沙なんかどっかに行っちゃえ!」
「ま、ま、待ってくれ! 頼む、いや私にも何がなんだか………あああ、アリス待ってくれええええ!!」
そういうと魔理沙は、早足で帰っていくアリスを必死に追いかけていった。私はいきなりの急展開に少し驚いていたが、小悪魔が楽しそうに笑い、タオルを巻いたパチュリーが地面を叩きながら「お、お腹、ブフッ、痛、ハハッ、やば、し、死ぬ、クフフッ」と言いながら悶えているのを見て
つい笑ってしまった。イタズラは大成功である、少し罪悪感があるが。
私は大図書館から出ると別の「眼」を取りに部屋へと戻ろうとした。少しアリスと魔理沙が可哀想だったが、イタズラなのだから仕方ない。しかし、そろそろ部屋に着くだろうというところで言い争う声が聞こえてきた。私は恐る恐る声のする方へと移動して、丁度曲がり角から顔を覗かせると………そこには頬を赤く腫らした魔理沙と、涙を浮かべているアリスの姿が見えた。
私は罪悪感が膨らむのを感じながら、二人の言い争いに耳を傾けたのである
――(少女言い争い中)――
「何よ………前のパチュリーの仕組んだ魔法書は嘘だと思ってたけど………どうせ本当だったんでしょ!」
「違う、違うんだアリス」
「何が違うのよ! 急にパチュリーを押し倒して服を脱がすなんて!」
「落ち着いてくれ、アリス………」
「魔理沙なんて大嫌い!」
―――パンッ!
「ち、近づかないで!」
―――パチン。
「もう、近づかないで………お願い………」
「アリス………」
「………お願い………魔理沙のばかぁ………」
―――トン。
魔理沙は何故こうなってしまったのかと、ずっと考えていた。
パチュリーに呼ばれて近づいてみれば、いきなり彼女が地面へと倒れ、心配して近寄ってみればいきなり裸になったのである。そこからは頭が真っ白になって何も考えられなかったのだが、気づけばアリスが泣きながら部屋を出ていこうとしていたので追いかけてきた。パチュリーのイタズラなのだと思ったが、彼女に対する怒りよりもアリスに嫌われることへの恐怖心が心を支配している。
今も誤解をとこうと必死なのだが、アリスに叩かれた頬がジンジンと痛んできた。一度叩かれる度に「パンッ」と渇いた音がしていたが、段々と頬を叩く音が小さくなっていった。最後には、小さな拳を軽く胸を叩く程度まで弱くなってしまったのである。
見下ろしてみると、自分よりも少し背の高いアリスが今は自分の胸の中に顔を埋めていた。必死に叩こうとしている拳は軽く当たる程度で、その弱々しい姿を見ているだけで何故だか涙が溢れくる。普段は強気な彼女が、私に裏切られたと思って絶望しているのだ。それを自覚すると溢れた涙が赤く腫れた頬を伝い落ちていった。
「アリス」
「………呼ばないで」
「アリス、聞いてくれ」
「………お願い、離れ………んっ」
私は器用な人間ではない。もしかしたら、こういった状況でも簡単に誤解を解ける言葉を持っている人がいるかもしれない。でも、私は不器用なのである。
だから………好きな相手には、行動で示そうと考えた。
「ま、魔理沙………?」
今ふれあった唇が不思議と熱い。普段はここまで熱くはならないのだが、アリスに私の気持ちが届いて欲しい―――その想いが、不思議と気持ちと一緒に唇を熱くしたのだと、私は思った。
突然の行動に驚くアリスに私はしっかりと目を合わせると、ゆっくりと言葉を選びながら、慎重に伝えていった。
「私はアリスが大好きだ、この世界の誰よりも。その気持ちが嘘だと思ったなら、私のことを捨ててくれ。私はアリスだけを想って生きていく。今日みたいなことがあっても………アリスが私を捨てるなら構わない。それでも私はアリスが大好きだ―――愛してる」
「………魔理沙」
そういうと魔理沙は、自分の胸に顔を埋めているアリスをそっと抱きしめた。アリスは少し身体を強ばらせたが、ゆっくりと身体の力を抜いて、魔理沙へと自分の全てを捧げるかのように体重をかけた。
「あ、アリス?」
「ねえ、魔理沙」
魔理沙がアリスへ何か言葉をかけようと迷っていたとき、アリスが魔理沙へと話しかけた。
アリスは魔理沙の胸の中にいるせいか、少し声がくぐもって聞こえる。それでもアリスは魔理沙から離れようとはせずに、言葉を続けた。
「今更………貴方無しで生きていけるはずないじゃない」
「アリス………んっ!」
―――そういうとアリスは顔を上げて、自分の唇を魔理沙の唇へと重ねあわせた。
――(少女帰還中)――
「はぁぁあ~………」
いきなりアリスが魔理沙へとキスした時、恥ずかしくなって急いで部屋へと戻ってきてしまった。
良くは分からないが、とりあえず二人とも仲直り出来たのだろう―――そう思うと、先程まで心の奥にあった罪悪感が少しだけ軽くなったから不思議である。しかし、罪悪感は完全に消えたわけではない。ちょっとしたイタズラからあそこまで人間関係に影響するなんて、考えもしなかったのである。
「ちょっと………やりすぎちゃったな」
そう言いながら、私はタンスの引き出しを開けてみる。そこには数えきれないほどの「眼」があり、その一つ一つが使い方次第では人間関係を悪化させるものなんだと思うと心が締め付けられる感じがした。
さっきも魔理沙とアリスが仲直りしたが、魔理沙の頬は遠目でも分かるほど赤く腫れていたし、アリスの目も遠目でも分かるほど泣き腫らしていたのである。もしもあのまま仲直りしなかったら私は今頃、罪悪感で泣き崩れていただろう。
「…………」
私は無造作に、一つだけケースに入った「眼」を取り出した。この「眼」を面白半分に作ったからこそ、今日のような事が起こってしまったのである。
自分の浅はかさを呪いながらその「眼」を睨みつつ、しかし、適当に破壊するわけにもいかないため、その「眼」をケースの中へと戻そうとした。
その時である―――
「妹様! パチュリー様が笑いすぎて腹筋が―――」
「あっ」
突然部屋にやってきた小悪魔と、脇に抱えられたパチュリー。
思わず驚いた私は手に持っていた「眼」を落として………ふと視線をタンスへと移すと、確認してなかったケースに書かれた張り紙が視界に入った。
『パチュリーの腹筋を破壊する眼』
―――その日、紅魔館の魔女の腹筋が崩壊した。
―――私、フランドール・スカーレットの能力には大きな制限がある。
私の能力は「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」と言われている。しかし、本当にその場で何でも破壊出来るのならば「程度」という言葉は付けられない。何でも好きに破壊できることは、世界を操ることに等しいからである。
では、なぜ「程度」という言葉が付いているのか。これは至って簡単な話で、ある条件を満たさないといけないのである。その場で破壊したいと思ったとしても、すんなりと破壊出来るわけではないのだ。
それで、その条件は何かというと―――
「妹様。起きられてますか? 朝食のお時間です」
「あ、今行くー」
―――ご飯を食べた後知ってもらいたいと思う。私の能力の秘密に比べたら、咲夜の作る食後のプリンの方が大事だし。
――(少女食事中)――
「ふう、お腹いっぱい。プリン美味しかったなー」
私は今、咲夜の作った美味しい食事が終わって自室へと戻っている。少し前までは自室で一人食事をしていたが、少し前から姉であるレミリアからの提案で、一緒に食事をすることになったのである。なんでも白玉楼や永遠亭といった面々が主従関係無しに食事を共にすると聞いて、咲夜や美鈴、パチュリー、小悪魔、そして私と一緒に食事をしようと考えたらしい。他のメイドたちがいないのは、お姉さまのプライドが影響しているからだろう。咲夜と美鈴は従者というよりも友人に近い位置にいるし、パチュリーは友人で小悪魔は客人、私は妹だからあくまで「家族のような形」を作りたかったのだと思う。お姉さまはそんなこと言わないだろうけど。
そんなことを考えていると、いつの間にか自室の前に到着していた。私は扉を開けると、明かりをつけて中へと入った。私のような吸血鬼は日光に当たり続けていると燃えてしまうため、窓は一つとして無いのである。なので、自然の光がこの部屋に入ることはない。
そのまま私は普段ならベッドに倒れこむのだが、何となくベッドの横にあるタンスへと移動した。そのタンスは大分大きく、私が10人ぐらい入れるほどの大きさだ。そしてこのタンスこそが、食事前に伝えようとしていた私の能力の秘密である。
私は自分の胸辺りの高さにある「紅魔館」という張り紙の付けられた引き戸を開けた。するとその中には更に小さな正方形の形をした透明なケースが敷き詰められいる。そのケースにも「お姉さまの足」や「晩御飯の人参」といったような言葉の書いてある張り紙が付けられていて、その中には………私にしか見えない「眼」が入っている。
―――そう、これこそが私の能力の制限である。
私は何でも破壊出来る代わりに、破壊しようと思ったらこのケースに入っている「眼」を破壊しないといけないのである。しかし距離にも制限があり、「眼」から半径10メートル以内に存在しているものなら破壊出来ると考えてくれれば良い。また、この「眼」は自分で作ることが出来るのだが、効果を発揮するまで三日ほどの時間をあけなければならない。なので、あくまでコレクションとしてこの様にケースの中にしまって保存している。
これを使う時は大抵の場合握りつぶすのだが………例外もある。何となく面白そうで作った「お姉さまの服を破壊する眼」をケースにしまおうとしたら、突然入ってきたお姉さまに驚いてつい落としてしまったのである。そしたらその「眼」が壊れて、その場でお姉さまの美しい裸体が目の前に………あったのだが、すぐ元の服装に戻っていた。さすが咲夜、少し残念だが早い仕事である。
もうひとつ例外を挙げると、弾幕ごっこの時も「魔理沙のスペカ破壊する眼」とか「お姉さまのスペカを破壊する眼」を予め準備しておいてから挑むのである。10メートルと短いが、そのスペカに向かって「眼」を投げればうまい具合に破壊することが出来る。弾幕を打ちながら投げれば、相手には見えないため簡単にボムることが可能なのである。
これが私の能力に「程度」がついた由来である。おまけに私は吸血鬼。雨の日や晴れの日の行動に制限がある為、もっぱら紅魔館内でのイタズラぐらいにしか使用出来ないのだ。
そんなことを考えていると、何だか無性にイタズラがしたくなってくるから不思議である。いろいろな「眼」も作ったことだし、今日は少し遊んでみよう。
――(少女移動中)――
数分後、私は魔理沙が大図書館に来ていると聞いて「パチュリーのイスを破壊する眼」と「パチュリーの服を破壊する眼」、そして「小悪魔の部屋の隅にある人形を破壊する眼」を選んで、それらを持ったまま大図書館へと移動した。
ここだけの話、大図書館には二つの入口がある。実際は大きめの扉から中に入るのだが、隣にある小悪魔の部屋から大図書館へと通じる扉があるのだ。私が以前イタズラをしているところを小悪魔に見られた時に教えてくれたのである。「イタズラならおまかせを」だそうだ。さすが小悪魔、話が分かる。
私は「小悪魔の部屋の隅にある人形を破壊する眼」を握りつぶすと、部屋に誰か現れた気配がした。召喚魔法のようなもので、設置してある人形を破壊すると小悪魔が部屋に呼び戻される仕組みらしい。私は三回ノックをすると、一度ドアを蹴り飛ばした。合図である。
空いたドアから出てきた小悪魔は人の良さそうな笑顔を浮かべると、私を部屋へと招き入れてくれた。招き入れた後は、イタズラを楽しむ子供のような表情を浮かべていたが、私も同じような顔をしているので文句は言えない。
私はイタズラの内容を簡単に小悪魔に伝えると、それを聞いた小悪魔が「少し待っていてください」と言ってパチュリーの元へと向かっていった。パチュリーに対するイタズラなのだがどうするのだろう―――そう考えていると小悪魔がこちらへと戻ってきた。
小悪魔に聞くと、今魔理沙はアリスと一緒に本を探しているらしい。珍しく盗みに来たのでは無く、正式な客人として来たようだ。小悪魔は「パチュリー様は最近良い趣味してますから、楽しめますよ」と言っていたので、パチュリーにも参加してもらうことになった。予定は変わったが、小悪魔が言うのだから大丈夫だろう。イタズラに関しては彼女程の策士を私は知らない。
とりあえず、私は最初の予定通りにやれば良いと言われたので考えた通りにイタズラを実行することにした。イタズラの結果はきっと自分の考えよりも面白くなるのだろうと、不思議と確信したのである。
しばらくして、魔理沙とアリスが部屋から出てきた。パチュリーは魔理沙を呼ぶと、自分の方に少し来るように言い出した。普段なら魔理沙がパチュリーのもとへと行くのだが、アリスが来ているせいかそのまま帰ろうとしていたのである。小悪魔がいなければ、私のイタズラは失敗していただろう。
しかし、何はともあれ魔理沙がパチュリーの側へと移動したのだ。私は最初の予定通り「パチュリーのイスを破壊する眼」を投げつけると、「眼」が破壊されパチュリーのイスが砕けた。そのままパチュリーは倒れ込んだが、パチュリーの目の前にあった机が邪魔をして、うまく姿が確認できない。しかし、遠目から魔理沙がパチュリーの様子を伺いながらしゃがみ込んだところで「パチュリーの服を破壊する眼」を投げつけた。確認はできないが、突然パチュリーの服が無くなって魔理沙はとても驚いているだろう。これが私の考えた「パチュリーがいきなり訳も分からず裸を見られる」といったイタズラである。
すると小悪魔が大きな声で「あー、パチュリー様大丈夫ですか!?」と言い出した。するとパチュリーが「ま、魔理沙………いきなりなんて、そんなっ!」と大きな声で答えていた。服を破壊したのが私にも関わらずだ。
その声に反応したアリスがもの凄い勢いでパチュリーと魔理沙へと向かっていくと、その姿を見たアリスが………絶句した。
「ま、魔理沙………貴方………」
「………いや、ま、待て! 違うんだアリス、これはいきなりパチュリーが―――」
「―――もう知らない! 魔理沙なんかどっかに行っちゃえ!」
「ま、ま、待ってくれ! 頼む、いや私にも何がなんだか………あああ、アリス待ってくれええええ!!」
そういうと魔理沙は、早足で帰っていくアリスを必死に追いかけていった。私はいきなりの急展開に少し驚いていたが、小悪魔が楽しそうに笑い、タオルを巻いたパチュリーが地面を叩きながら「お、お腹、ブフッ、痛、ハハッ、やば、し、死ぬ、クフフッ」と言いながら悶えているのを見て
つい笑ってしまった。イタズラは大成功である、少し罪悪感があるが。
私は大図書館から出ると別の「眼」を取りに部屋へと戻ろうとした。少しアリスと魔理沙が可哀想だったが、イタズラなのだから仕方ない。しかし、そろそろ部屋に着くだろうというところで言い争う声が聞こえてきた。私は恐る恐る声のする方へと移動して、丁度曲がり角から顔を覗かせると………そこには頬を赤く腫らした魔理沙と、涙を浮かべているアリスの姿が見えた。
私は罪悪感が膨らむのを感じながら、二人の言い争いに耳を傾けたのである
――(少女言い争い中)――
「何よ………前のパチュリーの仕組んだ魔法書は嘘だと思ってたけど………どうせ本当だったんでしょ!」
「違う、違うんだアリス」
「何が違うのよ! 急にパチュリーを押し倒して服を脱がすなんて!」
「落ち着いてくれ、アリス………」
「魔理沙なんて大嫌い!」
―――パンッ!
「ち、近づかないで!」
―――パチン。
「もう、近づかないで………お願い………」
「アリス………」
「………お願い………魔理沙のばかぁ………」
―――トン。
魔理沙は何故こうなってしまったのかと、ずっと考えていた。
パチュリーに呼ばれて近づいてみれば、いきなり彼女が地面へと倒れ、心配して近寄ってみればいきなり裸になったのである。そこからは頭が真っ白になって何も考えられなかったのだが、気づけばアリスが泣きながら部屋を出ていこうとしていたので追いかけてきた。パチュリーのイタズラなのだと思ったが、彼女に対する怒りよりもアリスに嫌われることへの恐怖心が心を支配している。
今も誤解をとこうと必死なのだが、アリスに叩かれた頬がジンジンと痛んできた。一度叩かれる度に「パンッ」と渇いた音がしていたが、段々と頬を叩く音が小さくなっていった。最後には、小さな拳を軽く胸を叩く程度まで弱くなってしまったのである。
見下ろしてみると、自分よりも少し背の高いアリスが今は自分の胸の中に顔を埋めていた。必死に叩こうとしている拳は軽く当たる程度で、その弱々しい姿を見ているだけで何故だか涙が溢れくる。普段は強気な彼女が、私に裏切られたと思って絶望しているのだ。それを自覚すると溢れた涙が赤く腫れた頬を伝い落ちていった。
「アリス」
「………呼ばないで」
「アリス、聞いてくれ」
「………お願い、離れ………んっ」
私は器用な人間ではない。もしかしたら、こういった状況でも簡単に誤解を解ける言葉を持っている人がいるかもしれない。でも、私は不器用なのである。
だから………好きな相手には、行動で示そうと考えた。
「ま、魔理沙………?」
今ふれあった唇が不思議と熱い。普段はここまで熱くはならないのだが、アリスに私の気持ちが届いて欲しい―――その想いが、不思議と気持ちと一緒に唇を熱くしたのだと、私は思った。
突然の行動に驚くアリスに私はしっかりと目を合わせると、ゆっくりと言葉を選びながら、慎重に伝えていった。
「私はアリスが大好きだ、この世界の誰よりも。その気持ちが嘘だと思ったなら、私のことを捨ててくれ。私はアリスだけを想って生きていく。今日みたいなことがあっても………アリスが私を捨てるなら構わない。それでも私はアリスが大好きだ―――愛してる」
「………魔理沙」
そういうと魔理沙は、自分の胸に顔を埋めているアリスをそっと抱きしめた。アリスは少し身体を強ばらせたが、ゆっくりと身体の力を抜いて、魔理沙へと自分の全てを捧げるかのように体重をかけた。
「あ、アリス?」
「ねえ、魔理沙」
魔理沙がアリスへ何か言葉をかけようと迷っていたとき、アリスが魔理沙へと話しかけた。
アリスは魔理沙の胸の中にいるせいか、少し声がくぐもって聞こえる。それでもアリスは魔理沙から離れようとはせずに、言葉を続けた。
「今更………貴方無しで生きていけるはずないじゃない」
「アリス………んっ!」
―――そういうとアリスは顔を上げて、自分の唇を魔理沙の唇へと重ねあわせた。
――(少女帰還中)――
「はぁぁあ~………」
いきなりアリスが魔理沙へとキスした時、恥ずかしくなって急いで部屋へと戻ってきてしまった。
良くは分からないが、とりあえず二人とも仲直り出来たのだろう―――そう思うと、先程まで心の奥にあった罪悪感が少しだけ軽くなったから不思議である。しかし、罪悪感は完全に消えたわけではない。ちょっとしたイタズラからあそこまで人間関係に影響するなんて、考えもしなかったのである。
「ちょっと………やりすぎちゃったな」
そう言いながら、私はタンスの引き出しを開けてみる。そこには数えきれないほどの「眼」があり、その一つ一つが使い方次第では人間関係を悪化させるものなんだと思うと心が締め付けられる感じがした。
さっきも魔理沙とアリスが仲直りしたが、魔理沙の頬は遠目でも分かるほど赤く腫れていたし、アリスの目も遠目でも分かるほど泣き腫らしていたのである。もしもあのまま仲直りしなかったら私は今頃、罪悪感で泣き崩れていただろう。
「…………」
私は無造作に、一つだけケースに入った「眼」を取り出した。この「眼」を面白半分に作ったからこそ、今日のような事が起こってしまったのである。
自分の浅はかさを呪いながらその「眼」を睨みつつ、しかし、適当に破壊するわけにもいかないため、その「眼」をケースの中へと戻そうとした。
その時である―――
「妹様! パチュリー様が笑いすぎて腹筋が―――」
「あっ」
突然部屋にやってきた小悪魔と、脇に抱えられたパチュリー。
思わず驚いた私は手に持っていた「眼」を落として………ふと視線をタンスへと移すと、確認してなかったケースに書かれた張り紙が視界に入った。
『パチュリーの腹筋を破壊する眼』
―――その日、紅魔館の魔女の腹筋が崩壊した。
また別の人をターゲットにトラップ発動を見てみたい。シリーズ化を希望!!
この紅魔館で『影牢~紅魔館真章~』とか誰かゲーム化してくれんかなww
それにしても悪戯のためなら全裸でしりもち大開脚までするパチュリーの芸人根性には賞賛を送りたい。
ところで、他作と共通点はないって、「前のパチュリーの仕組んだ魔法書は嘘だと思ってたけど」って思いっきり前作の続きじゃないかー!!
元から壊れてますw
何このマリアリとパッチェさんの温度差wwwww
ていうか、フランの能力設定良いな・・・眼を地面にぶつけたら、幻想郷の一部が破壊出来るのかな? それとも、幻想郷そのものがそのまま破壊されるのだろうか・・・
腹筋を破壊とか誰うまだよwww
てかマリアリやばいwww砂糖がwwwww
このフラン可愛いすぎるってば!
前から思っていたが、今確信したよ、小悪魔の真の能力を!!
『取り返しのつかない事態にさせる程度の能力』
…あれ?隕石を能力で破壊したって
あれ?
簡単にお返しをば。
>ぺ・四潤様
Oh、シリーズ化ですか…思いついてパパット書いたので、まぁ何か面白じゃなくて感動出来そうなの思いついたら出させた頂きたいと思いますヾ('A`)ノ
ぁー、他作というのは、あとがきに書かれている作品以外をさしています。れみりゃ様が娘ryとかとは関係ないって意味ですね
>16様
一定の効果範囲ですから、その場所から効果範囲内に影響を及ぼすと考えて頂ければ、はい
>31様
まさにそれだ! でも小悪魔もイジメt……いや、ちょっと弄りたいですね。
>38様
それはきっと夢のなかの話しなんです(ぁ
まぁ、二次ですから広い目で見ていただけたらなぁとヾ('A`)ノ
>そのは他の方々
パチュリー様は永久の不滅です!
マリアリ好きですはい
では、今後ともよろしくお願いします