序
弾幕勝負はあっさり決着が付いた。
本気の霊夢には流石に適わないし、本気だと解ったら、ちょっと気が引けてしまったレミリアなのだった。ただ、戯れ付きたかっただけなのだ。
「いや私じゃないってば、本当に」
頭のこぶを擦りながら涙目で訴えるレミリアを見て、霊夢は「ふむ」と大幣を降ろした。
「ひと…じゃない、妖怪違いか、悪かったわね、レミリア。でもあんたも悪いわよ、教えて欲しければ勝負しろだとか言い出すんだから――余計な手間とらされたじゃない」
「だって霊夢、最近遊んでくれないからさー」
「私は巫女業やってんのよ、今は。人里の被害者が出た以上、のんびりとはしていられない」
会話もそこそこに、紅白巫女はさっさと紅魔館を後にしてしまった。
用事が済んだらさっさと立ち去る。なんていけずな旦那様だろう――なあんてうっとりしているのも束の間のこと。レミリアは立ち上がって机に向かう。
霊夢に余裕がないのはいただけない。まず自分が楽しくないし。
机の上の鈴を鳴らせば「お呼びでしょうか」とメイド長が即座に現われた。文字通り、即座に。
「どーせ見てたし聞いていたのだろう、おまえ。状況はなんだか解らないけれど、ちょっと解決しておいで」
「畏まりました。でもお嬢様、いま人里を騒がせているのはお嬢様なのでは?」
「あー?」
「人里の、飲み屋の看板娘が生き血を吸われたと大騒ぎになっているのですわ。ちょうど昨日買い出しだったので色々と噂を聞けまして。なんでも空飛ぶ首に首筋を噛付かれて血を奪われたとかナントカ」
「首を引っこ抜く趣味はないんだけど?」
メイド長からとんでもない言葉が飛び出した。
勿論心当たりは無い。
――いやいやいや、と。
一瞬でも我が身を疑ったこと自体が腹立たしいレミリアである。
「それにねぇ咲夜、私が生き血を吸うなんてそんな、蚊蜻蛉じゃあるまいし、野蛮で無作法なこと、するわけないでしょう?」
「御自覚はあらせられるのですね」
「怒るぞ」
「うふふ……でもまあ、霊夢が此処まで来るということは、お嬢様が人里で疑われているのは明白……すぐ解決して参りますわ。我が主の名誉と真実のために」
「霊夢の邪魔はしないように。アタリでも、ハズレでも」
「心得ておりますわ」
スカートの端を摘まんだ一礼に対し、レミリアはふと思いついた事をいってみる。
「ところで私の名誉……は解るけど、真実のためってなんだ?」
「それはもう、お嬢様が血を嗜んではお口を真っ赤にしてしまう愛らしさを広め、噛付いて血を啜るような野蛮な真似などしないといいふら…いいえ、教えて回ろうかと」
「……二人だけの秘密にして欲しかったのに?」
「コホン、行って参りますわ」
咲夜が珍しく顔を真っ赤にして出ていった。
いい気味だ、たまにはやり返される事も解っておいた方が良い……この媚は、自分にもダメージがあるのが問題だが。
まあともあれ、咲夜に任せておけばよかろう。ともすれば霊夢より先に終わらせるやもしれない。その位の“御褒美”をあげたのだから。
弾幕勝負はあっさり決着が付いた。
本気の霊夢には流石に適わないし、本気だと解ったら、ちょっと気が引けてしまったレミリアなのだった。ただ、戯れ付きたかっただけなのだ。
「いや私じゃないってば、本当に」
頭のこぶを擦りながら涙目で訴えるレミリアを見て、霊夢は「ふむ」と大幣を降ろした。
「ひと…じゃない、妖怪違いか、悪かったわね、レミリア。でもあんたも悪いわよ、教えて欲しければ勝負しろだとか言い出すんだから――余計な手間とらされたじゃない」
「だって霊夢、最近遊んでくれないからさー」
「私は巫女業やってんのよ、今は。人里の被害者が出た以上、のんびりとはしていられない」
会話もそこそこに、紅白巫女はさっさと紅魔館を後にしてしまった。
用事が済んだらさっさと立ち去る。なんていけずな旦那様だろう――なあんてうっとりしているのも束の間のこと。レミリアは立ち上がって机に向かう。
霊夢に余裕がないのはいただけない。まず自分が楽しくないし。
机の上の鈴を鳴らせば「お呼びでしょうか」とメイド長が即座に現われた。文字通り、即座に。
「どーせ見てたし聞いていたのだろう、おまえ。状況はなんだか解らないけれど、ちょっと解決しておいで」
「畏まりました。でもお嬢様、いま人里を騒がせているのはお嬢様なのでは?」
「あー?」
「人里の、飲み屋の看板娘が生き血を吸われたと大騒ぎになっているのですわ。ちょうど昨日買い出しだったので色々と噂を聞けまして。なんでも空飛ぶ首に首筋を噛付かれて血を奪われたとかナントカ」
「首を引っこ抜く趣味はないんだけど?」
メイド長からとんでもない言葉が飛び出した。
勿論心当たりは無い。
――いやいやいや、と。
一瞬でも我が身を疑ったこと自体が腹立たしいレミリアである。
「それにねぇ咲夜、私が生き血を吸うなんてそんな、蚊蜻蛉じゃあるまいし、野蛮で無作法なこと、するわけないでしょう?」
「御自覚はあらせられるのですね」
「怒るぞ」
「うふふ……でもまあ、霊夢が此処まで来るということは、お嬢様が人里で疑われているのは明白……すぐ解決して参りますわ。我が主の名誉と真実のために」
「霊夢の邪魔はしないように。アタリでも、ハズレでも」
「心得ておりますわ」
スカートの端を摘まんだ一礼に対し、レミリアはふと思いついた事をいってみる。
「ところで私の名誉……は解るけど、真実のためってなんだ?」
「それはもう、お嬢様が血を嗜んではお口を真っ赤にしてしまう愛らしさを広め、噛付いて血を啜るような野蛮な真似などしないといいふら…いいえ、教えて回ろうかと」
「……二人だけの秘密にして欲しかったのに?」
「コホン、行って参りますわ」
咲夜が珍しく顔を真っ赤にして出ていった。
いい気味だ、たまにはやり返される事も解っておいた方が良い……この媚は、自分にもダメージがあるのが問題だが。
まあともあれ、咲夜に任せておけばよかろう。ともすれば霊夢より先に終わらせるやもしれない。その位の“御褒美”をあげたのだから。