Coolier - 新生・東方創想話

《大豆同盟》

2008/11/14 00:53:58
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お品書き(注意事項)

・本SSは、拙作 測られたり! (作品集62)と共通の世界観を有しています。
 ですが、お読み頂かなくても一切の問題は御座いません。



























 《大豆同盟》規約

 一つ、豆を称えよ。――
 一つ、常に努力を怠る勿れ。――
 一つ、去る者は追わず、来る者は拒まず。――






 月が煌々と夜の暗闇を照らし、初冬の風がひんやりと吹き込んでくる、赤提灯が揺れる元――。



 屋台の店主である私、ミスティア・ローレライはほとほと困り果てていた。

 今日は此処で、月に一回の大事な集会があるのだ。

 とは言え、少人数で行われる集りであり、時刻も夜中に設定していた為、店を閉めると言う事はしなかった。
 私以外の参加者フタリも、屋台の運営を優先してくれていい、と言ってくれたのでこうして開けている。
 それでも店先には、‘本日の営業二十二時まで‘と明確に示していたのだが……。

 その注意書きは確かに、常連のお客さんや、いつも来てくれているリグル、ルーミアには効果があった。
 『なにかあるの?』と聞いてくるリグルに曖昧な返事をし、『もっとお話してたいなぁ……』と呟くルーミアに苦笑で応える。
 小さな胸が理由を言えない事に疼いたが、是ばかりは事情を説明する訳にもいかない。

 そう、私と、そしてフタリの名誉の為にも、断じて、言う訳にはいかないのだ。

 だと言うのに。
 客がフタリ、延々と飲み続け、帰ってくれない。
 表の文字が読めねぇのかこら、と視線で伝えたが、どこ吹く風だ。

 そんな迷惑な事この上ない、フタリの客とは――。



「もーねー、藍ってば、いっつも私を怒ってばっかり! 小さかった頃なんて、紫様紫様ってそれはもう、もう、はぁぁんっ」

 結界の大妖怪、八雲紫。はぁぁんっじゃねぇ、いや、気持ちはわかるけども。

「ウチの姫様もよぉ! えーりん、あかちゃんはどこからくるの? なんて聞いてきた時には懇切丁寧手取り足取りよっ」

 月の頭脳、八意永琳。教えんな、言葉もままならないちっちゃい子に。全くけしからん。



「え、ちょっと、えーりん、そんな羨ましい事したのっ?」
「いいえ、何故か姫様が怖がっちゃって……」
「あー、わかるわぁ。私も、藍の姉妹が欲しいって言葉を聞いた時に、ちょっと流し目を送ったら泣かれたのよねぇ」

「ストレートだな、ゆかりん!
そりゃ怖がるよ、えーりん!?
わかんなよってか、あんたら絶対に肉食獣の眼をしてたんだろ!?」

 ぜぇはぁと、妖力の絶対的な差にもめげず、私は今日何度目にもなる突っ込みを入れた。

 途端、とろんとした二つの双眸が、此方に向けられる。

「な、なによっ? 言っとくけど、今のあんた達なんて怖くないからね!」

 正直、今の彼女達のカリスマなんて「あげる」って言われても、「いらない」って答える。

 目をよせ剣幕まで作った効果がでたのか、フタリは腕を交差させ上腕部を掴み、震えた。

「あぁ、えーりんが言ってた通り、小さい子に罵られるのって、こう、ときめくわ」
「でっしょう? きゅんっきゅんくるわよね!」
「ふふ、ミスティアの瞳にかんぱーいっ、って、酒がないわよー!」

 どんだけ性質が悪いんだ。もうほんと帰ってくれ、あんたら。

 心の底からの願いは、けれど、口に出なかった。
 言っても意味がない事を頭が理解してしまっているからだ。
 少なくとも、コップをマイク代わりにして歌いだす彼女達は言葉なんかで帰りやしない。

「かんぱーい、いま、きぃみはじんせーいのぉ」――それでも美声な辺り、軽くむかつく。

 そろそろフタリが来てしまう。時間がない。呻く頭を押さえ、私は最終手段を実行することに決めた。

 蒲焼を炙る用の火を消し、棚の奥にしまっていた瓶を取り出して、とくとくと大ジョッキに注ぐ。
 二杯目に注いでいると、強すぎるアルコールの匂いが鼻をついた。
 それほどお酒に強くない私だと、この匂いだけで酔ってしまいそうだ。

 少し、躊躇いが生まれる。
 幾ら絶対的な力を持つ彼女達とて、是を手渡すのは流石にどうだろう。
 鬼の持つ瓢箪の中の酒と言えど、度数的にはこれほど強くない。
 それに、彼女達はどれだけ性質が悪くても、お客さんなのだ。
 悪意を持って接するのはヒトリの店主として、やはりするべきではない行為――。

「ミスティアー、お酒早くぅ! 出してくんないと貴女を食べちゃうわよー」
「あ、じゃあ、ひん剥かれた後はウチにいらっしゃいな、鳥だけに」
「逆でしょ、もう、えーりんったら」

「あははははっ」

 勿論性的に、ですね。よし、好きなだけ飲むがいいわっ。

「ごめんごめん、おまたせっ、ぐいっと飲んじゃってぐいっと!」

 それぞれにジョッキを渡し、手を叩いて飲むのを催促する。

 つられたわけではないだろうが、紫の方はこくこくと順調に飲み進めていった。
 一方の永琳は……匂いに怪訝な顔をしていて、口をつけていない。
 普段から薬品が身近な彼女らしいと言うべきか。いいからさっさと飲みやがれ。

 仕方ない――私は体を永琳に向け、胸元で手を組み、彼女を見上げながら言った。

「あのね、ミスティアね、えーりんが格好良く飲んでる姿、見たいなぁ」

 所謂、おねだり作戦。

 突っ込みは要らない。

 私だってキャラじゃないと思うし、それは以前にものは試しと実行した折に痛いほどわからされてもいる。
 大ちゃんとレティの微笑なんて可愛いもの、リグルはぽかんとし、橙は爆笑、チルノには馬鹿にされた。おのれ、チルノ。
 幽香に至っては『薬は苦いかも知れないけれど頑張って直しなさいよ……っ』と目頭を押さえる始末。ど真面目に言うな。
 いやぁ自分をわかってくれている友達が多くて嬉しかったなぁこんちくしょう。

 因みに、ルーミアとメディだけは可愛いと絶賛してくれた。
 幼女はいい……心が洗われる……。
 でも、あんたらの方が絶対に似合う。私なら落ちる。いや、落ちかける。

「ミスティア――」
「え、ぁ、なにっ?」

 しまった!
 一瞬とは言え、永琳から意識を外してしまっていた自分に心の中で舌を打つ。
 彼女は私の動揺を見抜いたように鋭い視線を向け、空になったジョッキを眼前に突き出した。

 ……空?

「――四十八の飲み方の一つ、一気飲み。ふふ、少女がしてはいけないわよ?」
「少女じゃなくても駄目だっての。と言うか、あんたには四十八も飲み方があるのか……」

 どこの正義超人だ。

「あら、昔から言うじゃないの。まつば」
「そっちかよ! ナチュラルにセクハラ発言するな!」
「やぁん、私は途中までしか言っていないのに、ミスティアってばおませさんっ」
「あはは埋まってろーっ!」
「にせりべんじゃーっ!?」

 頭突き一発、永琳は目を回した。始めからこうすればよかったんだ。

 ……なんて思うが、実際には頭のダメージなど微小で、単に酔いが回ったんだろう。
 その割には頬の色が聊か普通すぎるが、酔いが顔に出ない例なんて幾らでもあるし。
 ん? 何か引っかかった。なんだろう。頬の色……違う、酔い、そう、それ――。

「みすてぃあ~、ゆかりぃ、酔っちゃったみたーい」

 それ、そら、そうか、おっぱい。

「おっはぁぁ、耳に吐息、背中に乳!?」
「もう、こんなに酔わせて、どうするつ・も・り?」
「おっねぇさぁぁぁぁぁんっ!?」
「少女だっつってんだろ、だらず」
「まじすいませんでしたっ」

 でも、少女は酔ってもそんな言い方しないと思う。

「ふふ、冗談よ。それにしても、だいぶ強いわね、このお酒」
「あ、あはは、まぁ、強いあんた達には、それ位で丁度いいかなぁって」
「お上手ね。――色具合からして、ウォッカかしら」
「違うよ。ウォッカじゃない。だって、匂いが強いでしょう?」
「言われてみればそうね。まさか、スピリタス? もう、ほんとに酔ってしまいそうよ」

 言いながら、しなだれかかってくる。あんたこそどうするつもりだ。

 しかし、どうしよう。秘蔵のスピリタスでも駄目か。むぅ、おっぱい。

 ……豊満な胸の感触にいい加減自制が効かなく、いや、むかついてきたので、くるりと振り向いた。
 と、体重を全て預けていたのだろう、紫はぽふりと腕の中に納まってくる。
 見上げてくる紫、どきりとする私、視線と鼓動が交わ――なんだこのシュールな図、ミスユカなんて聞いた事もないぞ。

 ともかく、潰すにはもうひと押しなんだ……よし、一計を仕掛けよう。

 考えをまとめ、私はにこりと笑みながら紫に語りかけた。

「あはは、でも、すごくアルコールに強いんだね、紫」
「うふん、是でも大妖怪と言われている位ですもの。お酒程度に倒されているようじゃ、ね」
「それ、お酒じゃないよ」
「……は? いや、だって、アルコールに強いって言ったじゃない」
「うん。だから、それ、アルコール。正確に言うと、エタノール」

 ぶふっと真正面から吹かれた。汚いなぁ。

「なに、『粗相なんてして、いけない子猫ちゃんね』みたいな顔しているのよ! あ、もう駄目、きりきりばたーん」

 間違っても、私はあんたを『子猫ちゃん』なんて思わない。

 ふざけた言葉に反するように、紫は艶めかしい表情のまま、瞳を閉じた。
 途端、くぅくうとすげぇ似あわない寝息を立てる彼女を見て、私は自分の機転に満足する。
 一応脈を測り正常に動いている事を確認しながら、今しがたの現象に心が躍った。

 偽薬効果って、妖怪にもあるんだ。



 もうすぐ来るであろうフタリに嬉しい報告ができる事を喜びつつ、意識を失っている永琳と紫を店の奥に運ぶ。
 できれば帰って欲しかったが、こうやって眠らせる事が出来ただけでも私にしては上出来だろう。
 いや、上出来過ぎる。なんてたって、彼女達は幻想郷でも最上位の存在なのだから。

「すやすや……ひめさまってば、いつのまにちいさくなられたのですか」
「むにゃむにゃ……あぁ、らん、ちっちゃいおむねのあなたもすてきよ」

 ……欠片もそう思えないけど。

 おらぁっと気合い一発、寝惚けてすり寄ってくる彼女達を簡易の寝床に放り投げる。
 直後、自分のミスに声を出してしまいそうになった――起きちゃう!?
 どきどきしながら様子を窺う。
 するとすぐに、永琳の手は頭に、紫の手は腰に、各々もそもそと緩慢に動いた。

 うわ、やっぱ目覚めちゃったかな、どうしようっ?

 無意識の動作かも、という一縷の望みにかけて、じっと静観。
 十秒……二十秒……三十秒が経過しても、彼女達は体を起こしてこなかった。
 思ったよりも、彼女達の眠りは深いのかもしれない。

 良かった、心配は杞憂に終わったようだ。

 胸をなでおろした後、さぁどうしようかとまたも頭を悩ませる。
 酔い潰れたお客さんを一時的に放り込む為だけの寝床なので、当然、扉や鍵なんてない。
 店先とは少し離れているから、よほど大声を出さなければ、まず此処まで届かない。
 だが、相手はあの紫と永琳だ。
 警戒はどれだけしても足る事はないように思える。

 むぅと小さく唸る――と。

 外から私を呼ぶ声。その声だけで誰かを判断するのは難しかったが、時間の経過を考えればフタリが来たんだろうと推測がつく。

 もう一度、寝床に転がる紫と永琳を確認。
 静かな寝息を立てている彼女達は、放っておけば朝と言わず昼過ぎまで惰眠を貪るんではなかろうか。
 それはそれで迷惑なんだけど、なんてちらりと考えつつ、とりあえずこのまま放置する事に決め、私は店先へと戻る。

「すまない、少し遅れたわね」
「ごめんなさい、待たせてしまいました」

 私の足音が聞こえたのだろう、推測通りのフタリが其処にいた。

 いいのいいの、と手を振り応え、そのまま自分の口に人差し指を当てる。
 沈黙を促す合図にきょとんとするフタリ。
 けれど、不意にでも大声を出されて、奥にいる紫と永琳を起こされては集会どころではなくなってしまうのだ。
 と言うか、フタリと彼女達がぶつかれば、屋台は吹っ飛び私も無事では済まないだろう。
 いや、最悪、幻想郷全土を巻き込んだ争いの発端になりかねない。マジで。

 とにもかくにも、事情をフタリに説明――「ミスティア、後ろに! 伏せてっ!」――しようとしたらいきなり大声出された!

 硬直によるタイムラグは一瞬、言葉に反応して振り返りつつ、叫びに応じて伏せるっ!



「あの程度で私達を煙にまけたと思っていたの、ミスティア!」
「大妖怪と月の頭脳を甘く見たのが運の尽きよ、喰らいなさいっ」



 鼓膜を震わせるのは眠らせた筈の永琳と紫、やっぱエタノール飲ませるんだった!
 瞳に飛び込んできたのは拡散された線状の弾幕、うっわ大人げねぇ、死ぬ!?
 べちゃり――弾幕の大半を顔にぶつけられた私は、反射的に目を閉じた。
 間際に見たものは、弾幕の残滓が残る二つの手。
 そして、彼女達の凄みさえ覚える妖艶な微笑。



 ……あん? 「べちゃり」?



 頬に手を当てる。

 ぬちゃ。ぬちゃぬちゃ。

 えーと……納豆?

 呆然とする私、辛うじて目を開くと、永琳と紫は身を震わせていた。



「ふふ、聞いていたのよ、ミスティア。貴女が、てゐをこの集会に誘っている時に、ね」



 あぁ、うん。確かに数日前、誘ったっけ。断られたけど。



「大豆同盟……話を持ちかけられた時、私は首を傾げたわ。
そんな豆愛好家の集まりを告げる為だけに、何故隙間にまで入ってきたのか、と」



 隙間って無理やり他人が入れるものだったのか。

 言葉を切り、再び、彼女達は震え、声をあげた。



 ――歓喜の声を。



「私は、瞬時に悟ったわ! 貴女の目的を! その偉大なる計画を!」
「人畜無害の名前は隠れ蓑! その実態は! 少女達による納豆ぶつけ大会!」
「あぁ、なんて破廉恥!」
「そして、そう、素晴らしい企画!」

「「流石、私達の後継者! サクセサー・オブ・ラバーフェチ、ミスティアっ! さぁ、私達も混ぜなさいっ!!」」



 えと。ちょっと待ってね。すぅ~~~~。

 あ、息を吸う音ね?

 うん。準備完了。いっくよー。



「間違ってるよ駄目琳っ、なんだそのけしからん大会はだめりん! んでから勝手にあんたらダメリン`sの後継者にするなー!?」

 あと、別にゴムフェチでもない。どんだけ私を特殊さんだと思ってんだコラ。

「あぁん、もっと!」
「もっと罵って! ぶってっ」

 二の句が継げなかった。駄目だ、こいつら真性だ。真性のあかんヒトらだ。

 呻きながら頭を抱える。
 彼女達に何を言っても無駄な気がしてきた。ねちょ。
 あぁぁ、トレードマークの帽子にまで納豆付いてるじゃないか、ちくしょう!



 ――く、くくく……。



 ――ふ、ふふふ……。



 やり場はあるがぶつける方法が思いつかない怒りに体を戦慄かせていると、背後から重い笑い声が聞こえてくる。

 あぁ、そうだ、フタリがいたんだ。もうどうにでもなぁれ。

 悟りを開いた私がフタリに振り向いたのと、だめりん`sがフタリを視認したのは、奇しくも同時だった。

 そして、声が重なる。



「「「納豆まみれの幼女! ブラボー、おぉ、ブラボォォォっ!」」」



「青い髪、となるとメルランかしら……え、幼女?」
「メルランは少女じゃないかなぁ。――身長的には私よりも低いね」
「緑色でショートヘア、リグルんね……って、あれ、その帽子には見覚えが?」
「リグルは帰ったじゃん。そりゃ、わりかし皆被ってるし。あぁ、あんた、苦手なんだっけ」

 呟きと言うよりは独り言――だとわかっていたが、律儀に応えてあげる。
 だめりん`sが愕然としているうちに、私はそそくさとフタリの方に進んだ。
 近づいただけで、フタリの凄まじい力は沸騰しそうなほど煮えたぎっているのがわかった。

 出会い頭に納豆ぶつけられりゃ、怒るわな。



「くくく、……罵って欲しいそうだ、閻魔よ」



「ふふふ、……ぶつのはお任せしましょうか、吸血鬼」



「はい、と言う訳で、フタリはレミリア・スカーレットと四季映姫・ヤマザナドゥでしたぁっ」



 ごたいめーん。



「たたた、退路は防がれているわ、えーりん! 私、隙間から逃げるけど!」
「ししし、死ぬときは一緒よ、ゆかりん! 私、死なないけど!」

 わー、仲はいいけどお互いえげつなーい。

 慌てまくる彼女達と言うのも珍しい。
 まぁ、気持ち的にはわからないでもなかったりする。
 仮に彼女達の云うとおり、集まっていたのがメルランやリグルだったなら、どういう事態になったとしても、それこそ彼女達で
あればどうにでも出来たであろう。
 言葉から考えるに、どさくさに紛れて参加するつもりだったみたいだし。

 けれど、いや、流石と言うべきか、あからさまに動揺していて尚、彼女達の妖力は測り知れない。

 このまま突貫してきたら、やっぱりお店は壊れちゃうだろうなぁ……。

 遠い目をしながら起こるであろう損失は何処に訴えるべきかを悩んでいると、ぽん、と両肩を叩かれた。

 叩いたのは、レミリアと映姫のフタリ。

「安心しなさい、ミスティア」
「そうね。此処に、何より貴女に被害を被らせるのは、私達の本意ではないわ」

 交互に二人の顔を見る。浮かんでいるのは、柔らかい微笑み。

「あはは、えと、ごめん」
「何を謝る。……あーもしかして、ミスティア、私が暴れると思ったの?」
「うん。だって、レミリアだし」
「ふふ、レミリア、貴女はそう、普段からもう少し落ち着きを得た方が良さそうですね」
「あ、いや、映姫も一緒になって暴れるかなぁって」

 顔を見合わせ、すぐにフタリはぷいと私から顔を背けた。

「「ひどい、ミスティア!」」
「だから、ごめんてっば~」

 両手をぱんっと合わせ、また謝る。

 あー、でも、なんか、そう、いいやね。
 「私、とっても怒ってます」なんて感じの顔をされると、ぞくぞくすると言うか。
 いや、むしろ、もっと私を怒って欲しいとさえ思っちゃってるかも?
 レミリアにぽかぽか叩かれつつ、映姫にぷんすか口を尖らせてもらう……。
 あぁ、なんてシチュエーション、ディ・モールト(素晴らしい)……!

 自分の発想に震えていると、フタリが多少焦りながら寄ってきた。

「や、ミスティア、私も映姫も本気では怒っていないからね?」
「そ、そうです、貴女の言葉と同じで冗談ですよ。ですから、嘆かないでくださいな」

 見上げてくる二つの視線、かけられる言葉の優しさに、ぽろりと本心が零れる。

「暴れると思ったのは、冗談じゃないんだけど……」
「「……もぅ、ミスティアってばっ!」」



 わーわーきゃーきゃーもみもみくちゃくちゃ。



 私達サンニンは、姦しく騒々しく戯れた。
 「戯れ」と思うのは、私もレミリアも映姫も、笑っているから。
 笑顔の中に険しさは一点もなく、ただただ遊ぶようにお互いの肩を叩きあう。

 それにほら、このフタリに本気で殴られたら、私もっと大変な事になるだろうし。

 ひとしきりはしゃいだ私達は、それじゃあ本題に入りましょう、と誰からともなく椅子にすわ――。



「貴女達、いい加減にしなさいよ……?」
「よくもまぁ、私達を無視して話を進められるわね……」



 ――ろうとしたら、異様なオーラを醸し出している永琳と紫がゆらりと動いた。

「あ、まだいたんだ……」
「背景は背景らしくそのまま消えていればいいものを」
「脇役なんですから、引き際が大事ですよ?」

 それぞれ反応を返す私、レミリア、映姫。フタリとも、さり気にきっつい事言うなぁ。

「い、いいわ、そういう態度を取るのなら、もう戯言はしまいよ!」
「そ、そうね、永遠に曖昧な恐怖を味あわせてあげるわっ」

 どんなのだろう。でもまぁ、とりあえず。

「泣くか怒るかどっちかにしなよ。あと、錆びた鉄の匂いのする奔流と朝露みたいにきらきらしている滴をなんとかして」

 突っ込みに、そそくさとポケットからハンカチを取り出し優雅に鼻にあてる永琳。うわ、白い生地が一瞬で赤になっちゃった!

「だって! ちっちゃい子の戯れ合いって辛抱たまらんじゃないっ。ねぇ、ゆかりんっ!?」

 ぐぃと拳で口元を拭い、そのまま腕を勢いよく此方に向ける紫。おわ、熟れた果実がばいんばいんて、にっぽんいちぃ!

「そうよ、えーりん! でも構ってもらえないと涙が出ちゃう、だって私達女の子だもの!」

 淀みも躊躇いもなく言い切りやがった。やっぱり、こいつら格が違う。



 ――なんて。
 思考は冷静に動いているが、彼女達に言葉と動作を向けられた私達は、即座に力を解放する!

 レミリアは、燃え盛る紅蓮のような魔力を立ち上らせ。
 映姫は、台風の予兆を告げるぼんやりとした雲のような薄紅色の霊力を滾らせ。
 そして、私は、熱い夏の到来を彷彿とさせる紫陽花のような紫色の妖力を爆発させた!

 ……うん、ちょっと虎の威を借りたけど、やっぱり狐は狐だね、私の妖力霞む霞む。けーん!



 レミリアは永琳に、映姫は紫に、各々が指と悔悟の棒を指し向け、言う。



「八意永琳。お前には、死よりも尚重い『運命』を授けよう」



「八雲紫。貴女には、逃れようもない『判決』を聞かせましょう」



 聞いているだけで、背筋が粟立つ感覚。
 だと言うのに、向けられた永琳も紫も余裕の笑みを崩さず、悠然と構えている。
 出鱈目な力を持った彼女達だからこそ、であろう。

 ぶつかる視線、わいわいがやがやと姦し外野、吹き込んでくる肌を刺すような風、。



 ――って、誰だこんな時に、危ないから逃げて!



 シリアスモードの四人から外れ、そそくさと此方へと来るモノ達に注意しようと暖簾をくぐる。
 と、ふにょんと柔らかい壁に当たった。
 わ、しかも、いい匂いがする。高貴な匂いだ。

「……ミスティア? くすぐったいのだけれど」
「あ、こら、姫様に抱きつくなんて、ずるい!」
「鈴仙、お酒入っているからって、ちょっと自分に正直過ぎるよ」

「え、あら、姫様、うどんげ、てゐ……?」

「永琳、此処にいたのね。亭の何処にもいなかったから、誘えなかったわ」
「へ? 誘うって、あの、何に?」
「しっしょーがずぅっと言っていた、じゃないですかぁ。神社の近くに温泉が出来たから、行こうって」
「そうね、言っていたわね。あと、うどんげ、私や姫様と違って貴女は酔うんだから、お酒はほどほどにしなさい」
「永琳の言う通りだよ。ほら、湯冷めする前に帰ろう?」
「……今の会話から推測すると、ひょっとしてもしかして、もう嬉し恥ずかし裸のお付き合いをした後なのでしょうか?」
「普通に入浴後じゃ駄目なの? ええ、そうよ。――と、因幡達が風邪をひく前に戻るわね」
「てゐ! 姫様! 心配してくれて、私は嬉しいですぅ!」
「あぁもう、鈴仙、温泉の中でもずっと抱きついてきてたんだから……まぁ、その、別に」

「お、ぉ、ぅ、おぉぉぉぉっっ……!」

「ふふ、私が風邪をひかないように、二羽ともくっついて頂戴」
「はぁい、ひめさまぁ!」
「姫様は風邪を……、いえ、その、ありがとうございます」
「いいのよ、てゐ。――それじゃあ、貴女達も、またね」
「あ、うん、また皆で来てね!」
「ええ、ありがとう。永琳も、何故か固まってるけど、余り遅くならないように」

 嘆く声も枯れ果て石になっている永琳を残し、月の姫君とそのペット達は寄り添って帰って行った。



「――くく。どうだ、お前に授けた『運命』は?」



 それを実際、レミリアが操ったのかどうかはわからない。
 けれど、彼女の言っていた通り、永琳にとっては重すぎる『運命』が訪れた。
 耐えきれなかった月の頭脳は、受け入れることを拒否し、考えるのを放棄する。マジ泣きしてたもんなぁ。

「え、えーりぃぃぃんっ!?」

 戦友のあっけない無残な敗北を目の当たりにした紫が、叫ぶ。

「嘆いている暇などありませんよ。次は、貴女が彼女の様になるのですから」

 紫と同等の力を持っているのだろう、映姫はさも愉しそうに告げる。あんた、Sっ気があったんだ……。

 直後、ぷちん、と何かが弾ける音。
 途端、紫の全身から凄まじい妖力があふれ出す。
 寸前、レミリアと映姫が巨大な防御陣を張り、なんとか私も弾かれずに済んだ。

 振り返った私は、その妖力に圧倒される。
 段違いなんてもんじゃない、桁違いでも言い足りない、次元が違う。
 一年半ほど前に、彼女と並び称される幽香の『本気』を垣間見たのだが……ごめん、幽香、紫の方が強いかもしれない。

「えーりんはいい奴だった……いい奴だったんだぞぉぉぉ!」

 咆哮と共に、更に紫の妖力が高まる! 嘘でしょ、まだ限界じゃなかったの!?

「八雲紫……貴女は、妖怪にしては強過ぎる力を持っている。何故かは聞かないけれど、それを少し自覚せよ!」
「とっくに気付いているんでしょう? 穏やかな」
「聞いてませんってば。あと、穏やかはあり得ません」

 台詞を潰されてぱくぱくと口だけを開く紫。映姫、そこは聞いてあげようよ。

「言わせなさいよーっ!」

 言葉は力を帯び渦巻く妖力が衝撃波となり、迫りくる!

 展開されている防御陣の隙間を縫うように妖撃は巧みに動き、私を吹き飛ばす!

「ちんちーん!?」

 命の危機に久しぶりに鳴いちゃった! リグル、ごめん、不可抗力なの!?
 吹き飛ばされながらも、一瞬赤面する映姫が見えた。このおしゃまさんめ!
 ……意外と余裕あるなぁ、私。

 ぽにゅん、と壁にぶつかり、頭を押さえる。何時の間に此処の内装はこんなに柔らかくなったんだろう。あと、もふもふしてる。

「状況が全く分からないんだが……ミスティア、怪我はないか?」
「もふもふ……藍先生?」
「あぁ、私だ。えーと、何がどうなっているんですか、紫様」

「いい所に来たわ、藍! 私と共に、裁きの鉄槌を」
「――下すのは、私ですよ。八雲の式、藍。久しぶりですね。貴女は何故、此処に?」
「ちょっと、ロリ閻魔様! 藍と」
「あぁ、映姫様、久しく。えぇと、私は単に晩御飯が出来たので、紫様を呼びに来たのですが……」
「あ、こら、藍、待ちなさいよ!」
「飛んできたようですが……そんなに急いでいたのですか?」
「ザナたん、私をスル―しないで」
「隙間が何故かアルコール臭かったんですよ。まぁ、急いでいたと言えばそうですね」

「しくしくしくめそめそめそ……」

「ふぅ……やはり、貴女にも説教が必要なようですね」
「私に、ですか? はて、特に思い当たる節は……」
「いいえ、貴女はそう、少し主に甘え過ぎている」
「なっ!? 私の何処が紫様に甘えていますか! むしろっ」
「『むしろ、紫様が私に甘えている』ですか? そう言うところが、甘えていると言うのです」
「む……ぅ」
「貴女は、どういう事であろうと必要以上に主に構う。それは従者としては当然でしょう。ですが……」
「……はい」
「貴女もまた、主なのですよ、藍。貴女の可愛い式の呼ぶ声が聞こえませんか?」
「橙!? 橙の声ですか!?」
「こほん……『藍しゃま、お腹空きましたにゃん……ふにゃぁ』」
「おぉぉぉぉ、確かにマヨヒガにいる筈の橙の比較的甘い声が! 今行くぞ橙待っていろ橙! あ、紫様、ご飯は後で」
「藍。先程頷いた事をもう忘れてしまいましたか」
「一緒に食べるつもりでしたが、そんな事はありませんでした。おヒトリでどうぞ! ではまた!」
「あ、藍先生、また橙と一緒に来てくださいねー」
「うむ、ありがとう、ミスティア。ではなっ!」

 隙間に突っ込みながら背を丸め声もなく沈む紫を放って、藍先生は愛する式の元へと帰って行った。



「貴女に説教するのは時間が借りますからね。言ったでしょう、『判決』を『聞かせる』と」



 紫に届いているかどうかはわからないが、映姫はとても愉しそうに軽やかな笑い声をあげる。
 ……いや、聞こえているようだ。ずぶずぶと隙間に埋もれていっているし。
 逃れようもない彼女以外への判決に、彼女は完膚なきまでに叩きのめされた。



 ――かくして、レミリアと永琳、映姫と紫の対決は、余りにも非情な方法で前者が勝利を掴んだ。



 嘆いていようが崩れていようが、敗者にかける慰めなどない。
 それは勝者が受け入れなくてはならない最低限の礼儀であろう。
 けれど……慰めをかける事は許されなくても、喉を震わせ歌を響かせるのはよしとさせてもらう。

 それが、曲がりなりにも私を『後継者』と慕ってくれた、彼女達へのせめてもの贐だ。

 ――主よ、永遠の安息を彼らに与え、
 ――絶えざる光でお照らしください。

 眠れ、永琳、紫。勇敢に戦い、散っていったモノ達よ……!

 その場を厳然な雰囲気が包み。
 永琳はさらさらと灰になり。
 紫は溶けて流れた。

 こうかはばつぐんだ!

「み、ミスティア! 歌うのを止めてください!」
「ご、ごめ、映姫、『永琳と紫にとどめを刺したのは私だから経験値も私のモノっ』なんて思ってないよ!?」
「彼女達等どうでも宜しいのです、そうではなくて、レミリアが!」

 どうでもいいんだ。まさに閻魔。

「って、レミリアがどうかしたの?」
「耳が体が頭がい~た~い~!?」
「十字架効かないのになんで鎮魂歌は聞くのよ!?」
「貴女、妖力を込めているでしょう。だからではないですかっ?」
「え、じゃあ、このままいけばラスボス三体やっつけた事になるの!?」

 凄い。いよっ、ミスティア無双!

「だから、やめなさーい!」
「ミスティアのいじめっこー!」
「わわわ、ごめんってフタリともー!?」



 わーわーきゃーきゃーもみもみくちゃくちゃ。



 辺りに舞う灰はほんのり赤くなり、床を浸す液体はピンク色になった。何処辺りが鼻と口なんだ、えーりんとゆかりん。







 もぐもぐ、あむあむ、ねちゃねちゃ。



「んーっ、運動をした後の納豆ご飯は美味しいね」
「ええ、全くです。と、レミリア、頬に糸が付いていますよ」
「だいぶ上手に食べれるようになった筈なんだが……むぅ」

 ごしごしと頬を拭うレミリアを見て、私は笑い、映姫は苦笑した。

 ばっちり換気をし、ごしごしと床を磨き、ぱしゃぱしゃと顔を洗ってから。
 私達は漸く当初の目的を実行に移していた。
 そう、大豆同盟の集会を。

「おぉ、そうだ、土産があるんだ。大豆入りのクッキーを焼いてもらったぞ」
「それは有難いですね。納豆は美味しいのですが食べ続けると飽きが来てしまいますし」
「客商売してると匂いも気になるしね。ありがと、レミリア」

 大豆同盟――その実態は、勿論、豆愛好家の集まりではない。
 そう言う意味では、永琳の推測も強ち外れていたわけではなかった。
 尤も、アレは発想の根元が腐っていたので至った結論もどうかしていたのだが。

 では、一見何の繋がりもない私達が、こうして集い、類稀なる強い絆を結べているのは何故か。

「あ、そうだそうだ、朗報! 前回に言ってたアレ、慧音先生経由で里の人間から貰えそうだよ!」
「ほんとか!? よし、お小遣いも持ってきているから、今のうちに払っておくぞ!」
「あ、私も。凄くいい名前ですよね。とても効果がありそうですし!」
「だよね、豆で乳ってそのものずばりじゃん! おっきくなるよ!」



 ――バストアップ以外に何があると思ってんだこらぁ!



 一年半ほど前の夏。
 お地蔵様に大豆を捧げた私の元に、首を捻りながら映姫はやってきた。

『普通、地蔵に捧げる物はお米とかではありませんか?』

 唐突に現れた彼女。
 仕事はどうしたと問うと、『小町が……ふふ』と遠い目になったので屋台に場所を移し愚痴を聞く羽目に。
 マシンガンの様に続く部下への愚痴、そして続くノロケにも似た言葉に辟易していると、レミリアが現れた。

 彼女は言った――『運命が、私を呼んだのだ』と。

 倒置法使ってまで言う事なのかなぁなどと浮かんだが、これ幸いと、私は映姫の出会い頭の質問に強引に話を移した。

『……何の話だ?』
『彼女がどうしてだか地蔵に大豆を捧げたの。で、その理由を聞いている訳です』
『いやまぁ、その、ちょっと見返りも期待してたって言うか。胸が大きくならないかなぁって』

 途端、フタリに電流が走る――!

『胸!?』
『おっきく!?』
『うわ、ものっそい食いつき……うん、大豆に入っているイソフラボンって成分が』
『細かい話はいいのっ』
『そう、結論だけ教えてください!』
『レミリアはともかく、映姫まで……あー、だから、胸が大きくなる要因になりえるんだって』

 言葉は最後まで言えなかった。フタリに抱きつかれたから。

『ありがとう、教えてくれてありがとう、ミスティア! 何時フランに抜かれるか、私はもう不安で不安でっ』
『あぁミスティア、貴女は死後極楽行きです今決めました! 小町と対比されて、私がどれだけ嘆いている事か……!』

 そんな理由で判決を逃れるのもどうかと思ったので、やんわりと断った。
 あん、酒の席での冗談じゃないのかだと?
 ふざけるな、映姫の目はどうしようもなく真っ直ぐだ。

『他には、他には何か知らない?』
『そうです、蜘蛛の糸は僅かでも太い方がいい!』
『えーと、あるにはあるけど、ちょっと私もどうかと。胸を刺激すれば、要は揉めば、って流石にねぇ』
『映姫、やるわよっ』
『きなさい、レミリア!』

 勇ましい声をあげ、お互いの胸を弄るフタリ!
 うわ、すげぇ、ぜんっぜん悩ましくない! 
 むしろ、胸がほんわかしてくる図だ!

 にこやかに眺めていたら、ぺたりと胸に各々の余っている手を当てられた。ぺたり……はは、悲しくなんか、ない。

『え、と、これはどういった意図でしょうか……?』
『何を言っているの、貴女も仲間でしょうっ』
『あれ、是って仲間とかそういう流れ?』
『ミスティア、さぁ、私達の胸も!』
『ばっちこーいっ!』



 ――と、まぁ、そんな訳で。

 私達サンニンを始めとした大豆同盟は、昨夏からひっそりと活動中なのだ。
 あー、『今回、胸を揉むのは何時からだ』って?
 もうそれ終わった。運動した後のご飯は美味しいって言ってたじゃん。

「豆乳……今度こそ、劇的に効くといいなぁ」
「ですねぇ……小町は依然として大きいままなのに、私はそれほど変わりませんし……はふ」
「まぁま、今までのも全く効能なかった訳じゃないんだし。霊夢だってこの前、晴れて脱退できたしね」

 花束を受け取り涙ながらに去っていった博麗の巫女を思い出し、少ししんみりとする私達。
 彼女は寂しげに振り返り、けれど力強く前を向き、歩いていった。
 『もう、ちっちゃいなんて言わせない……っ』

「……そう、ね。つい弱音を吐いてしまったわ。すまない」
「ありがとう、ミスティア。また貴女に救われましたね」
「そんな大層な事じゃ。や、大層な事か。――ともかく」



 言葉を切った私、レミリアと映姫は顔を見合わせ、そして、私達は手を叩き合わせた。



「「「――燃え上がれサポニン、駆け巡れイソフラボン! えいえい、おー!!」」」





 《大豆同盟》規約

 一つ、豆を称えよ。――燃え上がれサポニン、駆け巡れイソフラボン!
 一つ、常に努力を怠る勿れ。――毎日の納豆・ミルクと豊胸体操は欠かさずに!
 一つ、去る者は追わず、来る者は拒まず。――いつだって大歓迎! ただしB以上は来るな!







 次回の《大豆同盟》は!



 同盟の同名――あっはっは、うまい事言った――があると聞き、愕然とする私達!
 私の制止も聞かず、レミリアと映姫は飛び出して行った……が!
 帰ってきた彼女達は、いきなり膝をつき、声をあげた!

「ぶるんぶるんて……ふぇぇぇん」
「あのヒト達、全員地獄行きにするもん……ぐす」

 真っ青な表情のレミリア、真っ赤な顔の映姫、あぁもう可愛いなぁこんちくしょう!

 眼福眼福と頷いていると、屋台に吹きすさぶ吹雪! レティ、もうちょっと登場は控えめにねっ!

「こんばんは、ミスチー。……あら、また会ったわね、貴女達」

 いそいそと蒲焼を作る私、だが、その言葉に引っかかりを覚えた――『また会った』!?
 愕然としていると、がやがやわいわいとレティの連れが入ってきた!
 あぁ、あぁ、あんた達は……!

「ほんとに効くといいですよねぇ、納豆。門番と相まって肩が凝っちゃって凝っちゃって。あら、お嬢様」
「ビタミンEが血行を良くするらしいからねぇ、ま、期待しようじゃないか。って、映姫様っ?」
「胸ばっかりに栄養がいっちゃうのよね、困ったわ。ん、どうしたの、ミスチー?」

 第百二十三季 霜月 『血戦! 同名対決! 勝てる気がしねぇ……』



 ふとしたきっかけで、私達の強固な絆にひびが入った。
 そのひびは、塞がれる事なく、段々と大きくなる。
 そして、ある日、当然のように、決壊した。

「ひどい、騙していたのね、ミスティア!」
「貴女、大きくなってるじゃありませんか! 私達を笑っていたんですね!?」
「あ、いや、違うよ、ほんと、Bはないって、ぎりぎりAのままだって……っ」

 本当の事を言えない私に、彼女達は涙ぐみながらにじり寄ってくる。

 でも、それでも、言えない。ちょっと幼女と戯れるのが気持ち良かったから一時的に大きくなったなんて。

「それは確かに言えませんね。――おフタリとも、安心してください。彼女は、私達の仲間のままです」

 誰!? 暖簾をくぐって現れたのは……いや、ほんと、あんた誰?

「迫りくる妹の脅威……」
「フランがそろそろブラつけようかなって、ふぇぇぇぇ」
「眼前に提示される配下からの絶望……」
「小町ってば、またでかくなちまって晒しが巻きにくく、なんて、ぐぅぅぐすぐす」
「あんたが何者か知らないけど! これ以上、フタリを虐めるなら容赦しないよっ!」

 私の啖呵に、レミリアと映姫は顔をあげた――その様を見て、彼女は笑った。

「聞きましたか、おフタリとも。今の紛れもない本心を。ねぇ、ミスティア・ローレライ」
「……!? 私、あんたに名乗ってないよ……!」
「看板に書いてました」
「オゥイエス」
「――言ったでしょう、私達は仲間だと。先程のは、私の現状です。ふっ……」

 第百二十三季 師走 『加入! コードネームは小五ロリ!? あるよね、分かり易過ぎるサブタイトルって』



 リグルにばれた。

 第百二十四期 睦月 『解散!? 《大豆同盟》! ごめ、違っ、あぁレミリアと映姫のこっぱいがっていやぁぁぁぁ!?』



 ……やっぱり続かない!











                      <了>
七度目まして。

このお話はパロと勢い(納豆)とおっぱい。
脳内で駆け回る「まるで成長していない……」。
でも、思いついたからには書きたかったんです。

幸せについて本気出して考えたらおっぱいだったから……!

あと、小さいのも好きですが、勿論、大きいのも好きです。おっぱいに貴賎なし。

以上。
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コメント



0.2230簡易評価
5.100謳魚削除
お嬢様も四季映姫様もたゆんが好きです。
でもみすちーとさとりさんは控え目で。
えーりんとゆかりんはもう、どうしようも無い位可愛いなぁ。
大豆同盟・真打(仮)はいくら何でも強すぎ。
みすちーはどれだけハーレムの一歩手前に愛されているんですか。
GJ過ぎて泣けてきます。
ただ何があってもりぐるんが可愛いヤキモチを妬くことだけはデフォルトなんですね。
8.100名前が無い程度の能力削除
今回も楽しく読ませてもらいましたよ。
ディ・モールトっす、道標さん!!
会話のテンポも良いし、ミスチーの変態度も上がってるし。
モテモテのミスチーは何処まで行くのか楽しみだぜ。
次回作も期待してます。
10.100名前が無い程度の能力削除
もうGJとしかいえないぜ……
あなたのみすちーは最高だ!!
14.100名前が無い程度の能力削除
いやー、笑った
さりげなくオーフェンのネタがあったのにも笑いました
29.無評価道標削除
大豆には、女性ホルモンと似た成分のサポニン、イソフラボン、そして、血行をよくするビタミンEが豊富に含まれています。
肩コリには様々な要因がありますが、概ね血行を改善すれば好転する場合が多いので、そういう症状をお持ちの方は、
意識して大豆製品を摂取することをお勧めします。以上、営業トーク。

以下、何事もなかったようにコメントレスです。

>>謳魚様
思い思いのキャラクター像があってよいかと。ロリ巨乳万歳。
えーりんとゆかりんはそう言っていただけると嬉しいです。格好いい彼女達も何時かは……。
リグルに関しては、ミスチー視点の場合、女の子女の子して感じているようにしているから、だと思います。

>>8様
会話文と地の文はいつも配分に悩みます。んが、テンポを気にしつつ、どうしても会話文が長めになっちゃってますね(けふ。
それをいいように感じていただけているなら、嬉しいです。
モテモテ……あー、いっそのこと、総領娘様も入れればよかったかも(笑。

>>10様
ありがとうございます。
ミスチー視点は頗る書きやすいので、また何れご提供できるかもしれません。期待せずお待ち頂けると。

>>14様
あぁよかった気付いてもらえたっ>ネタ。
古いネタが多いのでいつもどきどきしています(笑。

以上
30.100名前が無い程度の能力削除
ずっとかわいい同盟さんたちのままでいてくださいと、切に願ったオレがいた!驚異!小乳好きじゃないのに!
34.100名前が無い程度の能力削除
萌え
44.80名前が無い程度の能力削除
>サクセサー・オブ・ラバーフェチ

どこのキエサルヒマ大陸だこの幻想郷www

そして続けwww