Coolier - 新生・東方創想話

超紅白弾頭

2011/03/03 20:01:29
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 ~序章~

 まあ、不幸な出来事だった。
 発射地点は魔法の森。その中の一角、霧雨魔法店。その中から、一基のミサイルが発射された。
 そのミサイルは、それこそ何で出来ているのか分からない推進力を元に、常識ではあり得ないほどの加速力を持って幻想郷上空へ到達し、そのまま結界を突き破って外へ出て行ってしまった。
 日本上空。ミサイルはどんどんと加速を続ける。太平洋上空。加速を失う。太平洋上空。まだ落ちてこない。ハワイ上空。おいこれちょっとやばいんじゃないのか。
 かくして、ミサイルはその後ふらふらと進路を変え(推進力を失った事と、地磁気の関係が大きい。分からない事があれば、地磁気と言っておけば良いのである)ホワイトハウスの庭へと落下。
 アメリカは、核の炎へと包まれた。



 ……なんてことはなく。
 ミサイルは、不発に終わった。辺りには、衝突の際に巻き起こった土煙が舞っているだけである。それでも、すわ敵襲かとSPさんやなんやらは忙しく走り回っていたのだが。
 飛ぶ打電(打電などを使う時代ではないが)。既に、国防総省はミサイルの発射場所を突き止めている。「おいコラジャップ、何やってんだよ」

 遺憾の意である。
 今回ばかりは本当に遺憾の意としか言えない。なんたって、知らないうちに知らない場所からミサイルが発射され、気づいた時にはアメリカに喧嘩を売られかけていたのだから。
 緊張する日米関係。アメリカの世論は、真っ二つに割れた。即ち、「日本を倒せ」と「ミサイルを飛ばし返せ」である。結局攻撃の意志に変わりないのが怖ろしい。
 しかし、日本もまた、負けては居ない。こう言った有事には、流石に人物と言う物は出てくるものである。先進国の名は伊達では無い。
 ここでは本名の記述は避けるが、とにかく凄い人物である。イニシャルだけなら良いか。Oさんである。ここにはまあ、各自凄そうな人の名前を当て嵌めてくれて構わない。
 さて、そんな人物が現れた。彼は言う。「アメリカさんの言いなりになっちゃって良いんですかねえ」と。
 そう、有事の際には即断即決が基本なのである。日本は、アメリカに対して強硬姿勢を取る事を決定した。そして同時に、ミサイルは何故発射されたのか。国家の威信をかけて、調査が開始された。


 ~だから弾幕ごっこはごっこ遊びだって言ってるでしょうが~

 このような事態が引き起こされた原因。それは数年前にまで遡る。
 その日、有る晴れた日だったように思う。いや、曇りだったかな。季節は、うん、夏か冬かのどっちか。まあいいんだ、そんな事は。
 とにかくその日、奇妙な船(船とは呼べない外観であるが)に乗って、二人の人間が幻想郷へと舞い降りた。
 自らを異世界人だと称する彼女らは、当時既に普及していたスペルカード戦により、人間の魔法使い、霧雨魔理沙にこてんぱんにのされた。
 異世界人、何するものぞ。特に霧雨魔理沙氏はスペルカード戦において無類の強さを発揮する。あ、あと、凄いかわいい。金髪おさげがチャーミングである。ただ、当時の色彩センスはちょっと酷かった。
 金髪の魔法使いに倒された彼女達は、「異世界からの贈り物よ」だのなんだの言って、なんか、赤と白のカラーリングをした円筒と円錐を合体させたような物を手渡してきた。
 そう、その当時は知る由も無かったそれこそが今回の件のミサイル。飛行速度は音速を遥かに超える化物兵器。ICBMであった。
 異世界の技術で作られたICBMは凄まじかった。何しろ、大きさが精々モーターバイクと同程度でしかない。モーターバイクである。ご存知だろうかモーターバイク。
 ちなみに、幻想郷にもモーターバイクは存在する。ある店に行けば、取り扱っているだろう。尤も、燃料も無ければ走らせるための道も無いので全く意味が無いのだが。
 このICBM、何のためにプレゼントされたかと言うと、聞いて驚く無かれ、決して誰かを爆散させたりするためではない。スペルカード戦に使ったらどうかと、そう言う事なのだ。
 怖ろしい話である。幾ら信管も爆薬も抜いてあるからと言って、音速の数倍程度で飛来する弾である。そんなものまともに受けたら、人間でなくても確実に爆散する。
 と言うか、衝撃波。衝撃波やばい。辺りの物も全て薙ぎ散らかして進んでいくだろう。後に残るのは壊れた自然と悲惨に飛散した臓物だけだ。
 と言う訳で、さしもの魔法使いも、普段から「力こそ全て」と豪語している彼女も、ついぞ家の奥底にしまいこんで、使用する事は無かった。
 そのミサイルが、何かの拍子に点火してしまったのである。原因はまだ、分かっていない。

 さて、このミサイル発射事件で一番頭を悩ませたのは妖怪の賢者達だ。と言うか、スペルカードルールの責任者、八雲紫だ。
 部下の式はぶち破られた結界の修復にてんてこ舞い。穴が予想外に大きかったのも有るが、かなりの上空なので寒いらしい。だからと言って毛皮の有る狐モードに戻ると、細かい作業が行なえない。
 「私がこれほど辛い思いをするのも、全てあのミサイルが悪いんだ!」と言って主人に陳情を重ねた狐は、羽毛布団を渡されたと言う。空で、羽毛布団。無言の陳情拒否である。ただ、渡された羽毛布団は最高級品であった。この辺りに主人の愛が見え隠れしている。かもしれない。
 しかしてこの事件、放って置く訳にはいかなかった。何せ、この幻想郷にはそれこそ洒落にならないような力を持った者が大勢居るのだ。八雲紫は危惧した。そう言った妖怪達が好き勝手に暴れれば、また今回のような事態が引き起こされるのでは無いかと。
 かくして、「スペルカードルールにおける大量殺戮能力の保持を認めないノ法」が作られた。人は、これを世紀の悪法と呼ぶ。
 参ったのは山の神様達である。自身の能力もさる事ながら、これから核融合によってクリーンなエネルギー、柔軟なエネルギーをスローガンに幻想賢者会への出馬を試みていたのだ。
 ちなみに、この政策、外の世界を知っている妖怪達には概ね不評である。人気が有るのは歳若い妖怪と一部の人間達だけ。彼らを相手に、都合の良い事美辞麗句を並べ立てて信仰を広げている。
 随分と、あくどい手法だった。て言うかこれ、下手すると神社ごと取り潰されかねない。こんな危ない橋を渡らなければならない辺り、おちゃらけてそうに見えて神様業も大変なのである。

 まず、地霊殿が対象になった。勿論狙いは、かの地獄烏、おうつほちゃんである。諸君も、名前を耳にした事はあるだろう。現時点で、最大出力は全幻想郷でもトップクラスを誇る。抵抗はあったようだが、八雲紫には敵しえない。地獄烏の能力の元のようなものを奪い、すんなりと戻ってきた。
 そして次に、妖怪の山。その中に有る守屋神社。息つく間もない襲来だったと言う。交渉は三日三晩に及んだ。半分恐喝のようだったと目撃者は語るが、定かでは無い。
 とにかく、この文明推進派二大巨頭をどうにか出来ればよかったのだ。今すぐにそう言った類の事業を全て凍結すれば、追い出すのは勘弁してやると言ったらしい。八雲紫らしくない、感情的な物言いである。
 最後の日、ついに神が怒って実力行使に出た。こうなったら、力ずくで八雲紫を黙らせようと言う事なのだろう。比肩する者なき大妖怪と軍神との戦い。大惨事は必至であった。そしてそれに巻き込まれた風祝が……。
 これは、書いてしまっても良いのだろうか。こう、乙女の純潔的な意味で。いいや、面白かったから書いてしまおう。
 風祝が、腋の境界をいじられて密林にされたのである。これには私も苦笑い。八雲紫曰く「無益な折衝(殺生)はしたくないのよ」との事だったが、これは思春期の乙女にはあまりにもむごい。
 それでも断固とした意志を見せ付けようとした神。流石、軍神と言った風格だが、風祝が部屋から出てこなくなってしまったので、泣く泣く要求を呑み戻してもらったと言う。
 そして後は、「あんまり強い技とか使わないようにしてねっ?」(意訳)と言う通達が渡り、収束を迎えた。これが、異変の前段階となる。


 ~謎の美少女Cpt.MARISA~

 所変わってこちらはアメリカ。ホワイトハウスに落ちたミサイル。爆発はしなかったが、流石にそのままにして置く訳にも行かないので、処理班が呼び寄せられた。
 しかし、遠巻きにしていたので気付かなかったのだが、良く見てみるとミサイルの近くに何かが見える。
 大統領の傍に付き従うSP達。そしてその中の一人。ここではボブと表記しておこう。ボブが、あるものを見つけた。
 人間大の大きさで、なんだか黒っぽい。まさに人間だった。それもまだ小さな女の子。すぐさま駆け寄って助けられたが、その体格差は凄まじいものだったろう。

 その女の子は、医務室に運ばれていった。何故あんな場所に倒れていたのかは分からない。ただ、その場に居た全員が思った事は、あの子はあのミサイルに乗ってきたのだろうな。と言う物だった。荒唐無稽であろうが構わない。確かに、そんな確信があった。
 女の子が目を覚ました。そして驚いたのが、全く言葉が通じない。お前そのナリでイングリッシュ喋れないのかよ。皆思った。
 多分日本語だと誰かが言ったので、日本語の通訳が呼ばれた。その間女の子は、ちょっと寂しそうにしていた。これが「ジャパニーズモエ」か。大統領は一人そう感じた。
 しかしこの格好、いわゆるコスプレと言うものなのだろうか。どこからどう見ても魔女の格好をしている。魔女の割に、歳は若くてかわいいが。またその上、こんな欧風の格好をしているのに対して喋っているのは日本語なのだ。日本だったらもっとこう、なんかあるんじゃないのか。その場の全員、それなりにジャパニーズカルチャーに寛容ではあった。
 通訳が来た。女の子の名前は、「MARISA」と言った。彼女が言っている事の一割も、そこに居る者は理解が出来なかったが、ただ、観光に出かけたいと言ったので許可が出された。


 所戻って幻想郷。魔理沙の家跡地。そこに、二人の妖怪が居た。
 一人の名は、アリス・マーガトロイド。魔理沙とは仲が良い。結構面倒見が良く、一人で居る事を好む割には寂しがりやでもあるので、近くに住んでいる数少ない友人とは自然仲が良くなっていくのであった。
 もう一人は、河城にとり。あの、河城の名を持つ者である。自称であるが、河城に何の意味が含まれているのかは、未だ不明。彼女もまた、魔理沙とは仲が良かった。
 二人とも、魔理沙の家の辺りから轟音がしたと、それだけで駆けつけて来る程度には情に篤い者達であった。
 魔理沙の家は、それはもう半壊などと言う生易しい物ではなく、最早跡形も無かった。クレーターが出来ているのだから、その惨状は推して知るべしであろう。
 ただ、幸いにも魔理沙がコレクトしていた魔法アイテムの類は無事なようだった。魔理沙は、そう言った重要品の全てに、強固な防御魔法をかけて保護している。何故か。爆発が起きたのはこれが五度目である。つまりはそう言う事だった。
 ちなみにそう言ったアイテムの数々は、そこに居た二人で山分けされた。まさに火事場泥棒と言う他無いが、当人達は至って幸せそうである。幻想少女の心胆は、得てして図太い。
 彼女達は、友人の家が爆散していると言うのに何も思わなかったのか? 否、否なのである。彼女達は、魔理沙の生存を確信していた。
 アリス・マーガトロイドの家には、何体もの人形が有る。そしてその中には幻想郷の知り合いに似せて作った物も居て、特に魔理沙など一部の人間には、また特別な呪法が施されていた。
 どんなものかは、推して知るべし。ろくなものではない、と付け加えておく。そして、そうした呪法によって魔理沙の生死はおろか、その健康状態に至るまでアリスには筒抜けだったのである。
 さて、彼女の生存は確認された。だが、それならば彼女は何処に行ったのか? 考えうる答えは、一つしかなかった。


 アメリカの、とある都会。まあ、ホワイトハウスからはそんなに遠くないよ、うん。
 そこに、魔理沙は大統領につけて貰った案内人数人と一緒に歩いていた。勿論観光である。
 外の世界、それに度々夢見てきた少女にとって、それは何もかもが新鮮だったと言う。「別にそこまで興味とか無かったし」とは彼女の談だが、そんな事はあるまい。背伸びとか良くないと思う。
 建物がとにかく高いのだそうだ。そして、色とりどりの看板。車と言う物も、想像以上の安定感で、これまた想像以上の数でそこらを走っていたと言う。
 食べ物も多種多様。全体的に清潔感があり、便所などはなんと水が流れる親切設計。魔理沙は、それは大層満足した。
 都会散策を満喫した後、ホテルなるものに通された。靴を、脱がないのだと言う。そして、寝床がベッド。ベッドである。幻想郷の人間にはあまりに馴染みが薄いそれに、魔理沙は飛び込んだ。ふかふかだった。しかし、魔理沙の寝床は元々ベッドであった。その辺り特に新鮮味は無い。



 ~情報提供者T~

 魔理沙が居なくなって後、おかしな動きが出たとアリス達は知った。八雲紫の式、八雲藍がひたすら忙しい事になっていると言うものだ。
 それを教えてくれたのが情報提供者Tである。その情報を手に入れた経緯、また、彼女達がそれを聞き出すに至った経緯は、謎である。謎の方が良いと私は判断する。とにかく、情報を提供してくれるTと言う者が居て、それには確実性があり、それをアリス達は知る事が出来た。
 そして、アリスとにとりは悟る。「何事かがあって、魔理沙は外の世界へ放り出されてしまったのだ」と。爆発を伴い、結界に穴を開ける程の威力。昔外の世界の資料で名前を見た事がある。そう、ロケット。ロケットでしかなかった。彼女は、何かしらの方法を使ってロケットを作り出し、宇宙(ソラ)へと飛びたっていったのだ。
 宇宙は、遥か彼方に。きっと魔理沙は心細さに涙を流しているだろう。宇宙は危険だ。宇宙怪獣はうようよ居るし、月には旧き侵略者が残した巨大要塞がある。戻って来る方法だって、無いかもしれない。
 でも、助けに行かないなんて選択肢は無かった。友情である。ここに、コードネーム「MIMI-TYAN」と名付けられた魔理沙救出作戦が、華麗に幕を開けたのだ。

 最初は、開けられた結界をそのまま通って、魔理沙の後を追おうと思った。
 しかし、情報提供者Tによると、結界の修復に当たっている八雲藍は今とても気が立っていて、下手に近づけば弾幕ごっこはおろか、事故に見せかけて始末もされかねないような状態なのだと言う。
 九尾の力は強大だった。かたやただの人形遣い。もう片方はと言えばこれまたただの河童である。戦闘を開始したとして十秒後、そこにはスプラッターな光景が広がっている事だろう。
 流石に乙女として血と肉の塊になるのだけは勘弁願いたい。何か、他の方法を考えなければならなかった。

 暫く二人して唸りながら考えたものの、二人とも良い案は思いつかない。そもそも、外の世界にまで出かけると言う事自体非常に難易度が高いのだ。現に、何人もの人間や妖怪が外の世界を夢見ては、結界の力に敗れ去っている。それほどまでに、結界は強固だった。
 また幾らか考えたが、やれ博麗の巫女に結界を開けさせる、スキマ妖怪に結界を開けさせる。結局の所どの案も自分より力の強い者を力ずくで押さえ込んで言う事を聞かせると言う所に落ち着いてしまう。言うまでも無く、実行すればスプラッターである。
 にとりが、「せめて痛くない死に方が良いね……」などと言い出す。そんな程度には、外の世界への道は絶望的だったのである。アリスは、にとりに操り糸をくっつけて特攻させる事を考え始めていた。この外道め。
 そんな時、にとりが妙案を閃いた。妖怪の山はとにかく大きく、幻想入りの際に少し結界を傷つけてしまったのだと言う。そして、その時の結界の揺らぎがまだ妖怪の山のどこかにあり、そこを通って外まで出ている妖怪が居ると、そんな話を聞いた事があると言うのだ。
 最後の望み、それは今までで一番期待のできる望みだった。早速二人は妖怪の山に忍び込む方法を探しに行く。

 人里で物資を集め、カバンに放り込む。ナイフとか、ランプとか、人形とか。ランプはいらないかも知れない。にとりは、自前の耐水カバンがあるのでそこに自らの作ったグレイトフルメカを詰め込む。
 そして、妖怪の山侵入ミッションは、静かに開始された。姿は、にとりのグレイトフルメカの一つ、光学迷彩マントによって隠されている。何故スーツではないのか。屈んで歩かなければならないし、足元も見えそうになる。だが、マントなのだそうだ。なお、臭いや音までは隠してくれないので注意が必要。
 順調に進むかと思われたが、ここで問題が発生した。にとりはその結界の抜け穴の場所を知らないのである。あまり上へ登ることはできない。そこまで行くと高位の天狗がひしめいているため、姿が見えない程度のにとり達では簡単に見付かってしまうのだ。
 どうしようかと悩んでいると、アリスが言った。「結界のある場所なんだから、山の北のほうなんじゃないの?」山の南面は既に幻想郷内部である。「グッドアイディアだ、アリス君」にとりがそう返す。お前のキャラは何なんだよ、とアリスは心の中で突っ込んだ。
 少々遠回りにはなるが山の麓の辺りをぐるっと周り、北部へと向かう。なんとも、起伏の激しそうな山であった。まあ、二人とも飛べるので問題は無いのだけれど。
 さて、北部に着いた。山の北は、日の光が遮られ薄暗い。そのため、魔法の森ともまた違う奇妙な不気味さを放っている。一体、抜け穴は北部の何処に存在するのか?
 まず一つ、抜け穴は管理者の目が届かないよう隠してあると考えられる。二つ、抜け穴が有る割にはにとりの元に外からの情報が届いていないため、それなりの機密であるとも考えられる。
 もしかしたら人間調達用の穴かも知れないが、それだったらそれで好都合である。人間を運ぶ姿は、それなりに目立つ。
 光学迷彩マントにくるまり、上空へと浮かぶ。ちなみにこの状態、姿が見えていないから良い物の二人して相当に間抜けな格好で浮かんでいる。つくづく、何故スーツにしなかったのか。
 どこかにそれらしき場所が見付かるかと思ったが、そう簡単にはいかないようだった。アリスが、苛立ちを見せ始める。
 ここで、にとりのダイナミックメカ第二段が取り出された。ただの黒く、丸い球体なだけのようにも思える。アリスが、説明を求めた。

「別に大したものじゃないよ。Bで始まってBで終わるものさ。BB弾だよBB弾。BB弾を撃って遊ぶおもちゃあっただろ、あれと似たようなものに使うんだよ」

 BB弾が何を表すのかアリスには分からなかったが、ボウリング玉大の、BB弾だった。にとりはおもむろにそれを抱えたまま回転すると、裂帛の気合と共にそれを宙へと放り投げた。

「(うおおおおおおおおおおーーーーーっっっっ!!!!)」

 もちろん、叫ぶフリである。声を出したら居場所がばれてしまう。古代にはそういった、声を出さずに声を出す方法があったのだと聞く。
 放物線を描き、BB弾は飛んでいく。遠く、遠くまで。幻想郷の、BB弾投げ新記録が樹立された。そんな種目はありはしないが。だが結構飛んだ。
 数瞬後、大気をつんざく轟音と共に、森の一角が吹き飛んだ。思うに、あの辺りにもし誰か居たらどうするつもりだったのだろうか。きっと妖怪なので死にはしないのだろうが、爆裂させられた方はたまったものではない。
 にわかに、天狗達がそこかしこから現れる。そしてそれを、アリスとにとりは身を隠しながら見ている。沸き方から、めぼしい場所が、いくつか見付かった。
 何人かの天狗が山の中腹へ向かい、そしてまた何人かの天狗が良く分からない場所へと出向いていく。あそこだ、と思った。
 しかし、あともう少しで辿り着けると言う所にまで来て、一人の天狗に気配を察知された。姿は見えない筈なのに、どんどんと二人のもとへ向かってくる。
 にとりが、狼狽している。無理も無い事だった。これ程の騒ぎである。もし自分の仕業だとばれれば打ち首……はこのご時世無いだろうけども、まず仲間内から「よー、裏切り者にとりー」程度の嫌がらせをされる事は想像に難くない。そうしたらにとりは、泣いてしまうかもしれない。試験もなんにも無くとも、妖怪社会は厳しいのだ。
 「仕方ないわね、安心しなさい」アリスが言った。カバンを開け、何か包みを取り出す。そしてそれを開け、マントのスキマから外に放り投げた!
 それは、人形だった。そしてその人形は、人の形とは呼べなかった。全身、あらゆる所に目が付いている。え、口? 何か変な形に歪んでてこわい。甲高い奇声を上げて、飛び回っている。
 これには流石の天狗もぎょっとする。「けキャきゃきゃきゃきゃきゃきゃ」怖ろしい声を上げながら、なおも天狗の周りを飛び続ける人形。天狗の顔に、恐怖の色が混じる。
 人形めがけて、蹴りを繰り出す。アリスは、精妙な指裁きでそれを避ける。そして天狗の胴体にしがみつかせて一言。




「ツーカマエタァー」




 直後、爆発。あわれ天狗は、不意を食らった人形形爆弾によって地へと落ちていった。そしてそれを見て寄ってくるほかの天狗たち。結界の傍は隙だらけだ。
「サウザンドアイズサクリファイス。撹乱用の人形よ」どう見ても目玉の数は30個位しかないが、そう言って微妙にキメポーズを取ったアリスを尻目に、にとりは結界の抜け穴を通っていった。


 ~世界21<ザ・ワールド トゥエンティワン>~


 結界を抜けた先は、人気の無い山奥であった。ついに、不肖谷河童と人形遣いは、外の世界の土を踏んだのである。
 にとりが、やにわに興奮し始める。「あれ、ちょっとアリスさん。私達、外来ちゃってるよ外」今更ではあるが、確かに快挙だ。
 アリスは、自称都会派なので何も感じないわとばかりに振舞っているが、脚が微妙に震えている。しかし知っての通りここは都会ではない。山奥である。少し気が早かった。
 (一応)冷静を振舞っているアリスは、自分達の体にも注意を向けていた。見るまでも無い問題が、一つ。にとりが、奇妙すぎる。ちなみに、自分は帰国子女の美少女です、で通ると思っている。まあ、間違っては居ないが、自分で言うのはどうなのか。
 ここで三度、にとり御大のビックリド……ゲフンゲフン、スーパーメカが披露される。即ち「髪色変更スプレェー!!」である。原材料:墨汁と、あと何か。
 外の世界にも似たような物があるらしいが、河童謹製のこちらはやはり外の世界のものとは一味違う。なんと、髪を全く傷めないのである。替わりに水に濡れると落ちるようになってしまった。使い捨ての割に、容量は食う。というか水に弱いのは河童の持ち歩く物では無い気もする。
 かくしてにとりの水色の髪は黒になった。次の問題は、この巨大なカバンと、無骨な作業服である。だがにとりは、この二つだけは手放そうとしない。
 「こいつらは河童の命なんだよお」そう同行者に伝える河童の目には一筋の涙が光っていたと言う。
 「じゃあどうにかあなたが居ても不自然じゃない設定を考えましょう」そう切り出したのはアリスである。ちなみに、この間二人はちゃんと人の居る場所へ向けて歩いている。流石に抜け穴のすぐ傍でじっとしていたらまずい。
 山を降りた時、にとりの背中には二人分のカバンが乗っていた。「お嬢様と、それに付き従う哀れな奉公人」と言う形に落ち着いたのだ。アリスはかなり酷い事をしているように思えるが、一応は魔法使いより陸に上がった河童の方がまだ力は有る。あくまでも、適材適所である。だがにとりはこの構図、疑問に思わなかったのだろうか。

 山を出ると流石に道が整備されていた。二人が外の世界へ出て思った事は「あれ、外の世界も思ったより発達してなくね?」である。しかし間違えないで欲しいのが、幻想郷と言うものは本来秘境とも呼ぶべき場所で、そんな所から少し動いたぐらいでは都会のような町並みなどありはしない。もっと都会のような所に行けばもう少しは都会然としている。
 二人は、遠くに見える何かこう、石造りの家のようなものがたくさん有る場所へ向けて歩いていった。流石に目測、墓であるとは思いにくい。縮尺がおかしい。きっとあれが、外の世界の町と言うものなのだろう。幻想郷の家とは根本的に造りが違うようだった。
 町へと辿り着いた二人は、嫌でも目を引いた。それが果たして先を行くお嬢様へ向けての物なのか、ドギツイ作業服に身を包み、あまりに大きな荷物を背負って後ろを付いて行く従者に向けての物なのかは、定かでは無い。あなただったらどちらに目を向けるだろうか。きっとそれが答えである。
 歩いている内、アリスはある事に気付く。「ねえにとり、あなたその格好じゃお店に入れないわ」そう言って、外で待っててくれない? などと言う。にとりは、無言でアリスの脚を蹴った。
 そしてまたアリスが、ある事に気付く。「ねえにとり、通貨が全然違うみたいなんだけど」当然である。外界との通行が途絶えて、ゆうに百年以上は経過していた。「アリスは手先が器用なんだからスリでもすれば良いんじゃないの」にとりは、まだ少し拗ねていた。
 そして、どうにか二人は金を入手した。どうやって入手したのか、それは誰にも分からない。もしかしたら困っている少女二人を見かねて、誰か優しい人がお金を恵んでくれたのかもしれない。片方はいかにもお金を持っていそうなお嬢様の服装をしていたが、ある所にはあるものだろう。きっと。
 そうやって町を練り歩いていると、人々が何か一つの話題について話しているのが分かった。何かと思って、新聞を一部買う。にとりが「これで私達も外の新聞デビューだね!」などと興奮していた。アリスも、最初は気にしていなかったのだが、言われて気付いた。
 二人は、カルチャーショックを受けた。外の世界の新聞は、幻想郷の新聞などと違い、余計な事が一切書かれていないのだ。誇張表現なんて物は一切見当たらない。もしかしたらあるのかも知れないが、地元のあれとは別格であった。ああ、ただ、一面だけは嘘みたいな事が書いてあった。

「出所不明のミサイル、アメリカへ直撃、か……どう思うにとり」
「もう、知らん。私は知らんぞアリス。私達は、アメリカに渡って魔理沙を連れ戻す、それだけだ。こんな、下手すれば外交問題どころか戦争にすらあばばばばばばば」

 にとりは混乱している。ミサイルだった。ロケットでは無かったのだ。まあ、宇宙に行かなかっただけでも良しとしましょう。そう言ったアリスの頼もしさは、同姓の私でも少しドキっとしてしまったよと、後ににとり氏は語る。

 アメリカは、遠い。
 二人は、一路空港まで向かった。そう言った物が、外の世界にはあるのである。とても巨大な鉄の塊に乗って空を飛び、その速度は天狗に並び、乗り心地は快適この上ないと言う。
 目的地に着いた時、既に日付は変わっていた。空港から、アメリカ行きの便は出ていなかった。色々と情勢が不安なので、色々とあって便が無くなったのであろうと推測できた。詳しい事は分からない。何分二人はおのぼりさんなもので。
 さて、二人はとても困った。なんとこれでは魔理沙を見つける事はおろか、居るであろう場所にすら辿り着けないのだ。
 
 ふいに、ポンと、肩を叩かれた。スーツに身を包んだ男性が三人、後ろに立っていた。



 HOTELに連れ込まれた霧雨魔理沙は冷静だった。
 しかし、周りに、常に数人の誰かしらが付いている。これは非常にまずい、と彼女は思った。
 詰まる所、監視されているのである。外の世界でも魔法は使えるのだろうか、とか、空は飛べるのだろうか、とか気になる事はたくさんあったが、それを試す事は出来なかった。
 そして、自分はこれから、多分明日。その辺りにでも尋問をされるだろうな、とも思っていた。その時、幻想郷の名前を出してしまってはこれもまたまずい事になるのだろう、とも。
 頼みの綱は八雲紫だけだったが、八雲紫はこの時、地底へと出かけている。それに、もし手が空いていたとしても、人間政府の前に堂々と姿を現すような愚挙は避けただろう。
 研究所にだけは絶対行かないからな。せめてもの抵抗として、彼女はこれだけを周りの人間に言い続けた。


 ~若死にするのは善人だけ~


 殺気。一瞬の間に、それらは交換された。
 スーツ姿の男達と、得体の知れない風貌の少女二人。にとりが、息を呑む。アリスの指が怪しく動き、今にもカバンの中から人形達を召喚しようとした所で、にとりが、両手を挙げて両者の間に割って入った。降参の意思表示である。
 「そんな、危ない事はやめようよお……」河城にとり生来の臆病癖が出た物と思われるが、決して悪い手ではない。どちらかに死者が出る可能性は十分にあるのだ。人間と敵対するのは避けたい。人間が総力をあげてエリミネートに来た場合、地球上に絶滅を免れる動物は居ないのだから。
 張り詰めた空気が元に戻り、空港は、日常へとかえる。スーツの男達が、付いて来いと促した。黒塗りの車に乗せられて、二人は空港を後にした。

 暫く走った後、二人が入れられたのは、良く分からない建物だった。と言うか、幻想郷住人に外の世界の建物なんて分かる訳が無い。
 荷物を没収される。その時点になって、アリスが渋りだした。これ以上大人しくしている意味が有るのか、との事だった。にとりは、考え込んでいる。

 「うん、これだけ狭い場所なら、もう問題ないよ」

 その言葉を皮切りに、男達が銃を抜く。しかし、遅い。アリスの放った高速の糸により、それらは弾き飛ばされ、床に落ちた。同時に、二人が走る。
 間合い、というものがある。いかな陸河童、貧弱魔法使いとは言えただの人間に遅れをとるいわれは無い。幾ら銃を持とうが、この逃げ場も無い、絶対至近距離に二人を置いた事がそもそもの間違いだったのだ。
 警報が鳴る。建物の中が騒がしくなる。二人は、角を曲がり、人目のまだ来ていない事を確認すると、マントを翻し身を隠した。直後、通り過ぎる人の群れ。
 「で、この先どうするのさ。空港は使えないみたいだよ?」にとりが言う。「まあ待ちなさい。私に良い考えがあるわ」私に良い考えがある。もう一度そう言い直して、アリスは進んでいく。
 アリスが向かったのは、上の階にある、なんか偉そうな人の居るところだった。どう偉いのかは、例によって分からない。勿論周りには、人も大勢居る。
 アリスが言う。この要人を捕まえて人質にすれば飛行機も手に入るのでは無いか、と。飛行機程度、自分ならなんとか操縦できる自信はある、と。しかし、にとりは難色を示す。
 にとりの言い分はこうだ。そんな方法で手に入れた飛行機には絶対に細工がしてあると。自分は技術屋だが、だとしてもそれ位の事はすると。確かに、そう考えると難しい物はあった。
 議論は、平行線を辿った。未だ遠くアメリカに渡る方法は見付からずじまいであった。

――

 日本政府は、苦悩していた。アメリカで発見されたと言う少女。その正体が、一向に掴めないのだ。
 そしてミサイルが発射された場所も。日本国内のどこかなのは分かる。だが、それがどこなのか、全く特定できない。
 辛うじて、東北のどこかだとは突き止めた。仕方が無いので、その怪しいと思われる地点周辺に人をやった。何か一つでも良い、手がかりが見付かれば。
 近くの町で、奇妙な二人組が練り歩いている。そんな報告があったのは、それからすぐの事だった。
 その者達が空港へと向かっている。高飛びだ。瞬時にそう思った。

――

 屋上まで行き、長さを計算。ヒモを括りつけ、飛ぶ。カバンからは、にとりのお手製ハンマーが伸びている。張り詰める糸。二人は、糸の先から糸に縛られ、糸の長さだけ円運動を始める。
 窓ガラスを盛大に割り、二人は要人の居る部屋へと飛び込んだ。
 「武器を捨てろお前達!」「少しでも変な動きを見せたら、この人の首が飛ぶわよ!」二人が、叫んだ。アリスが、瞬時に糸を要人の首に当てる。
 電撃。そう表すのが相応しい。一瞬の出来事。周囲の者になす術は無かった。拳銃が、下に転がっていく。
 「お前達は、何者なんだ」要人が口を開く。「必殺、仕事人よ」アリスが訳の分からない事を口走った。

 護衛に当たっていた人間達(SPでは無いのだと思う)を部屋の外に追い出し、拳銃を拾い集める。五丁ほど拾って、後は部屋の隅に置いておいた。
 要人の名は、Yと言った。Yはまた、例によって例のごとく、好きな名前を入れて欲しい。便宜上の名前である。かくして二人はYを手中に収めた。そのYをどうやって交渉カードに使うか、それが問題だった。
 窓から、顔を出してみる。建物の下はもう封鎖され始めていた。もうすぐ、狙撃班とやらも来るのであろう。窓に、布を使って簡易のカーテンを取り付ける。
 まず、何故こんな状況になっているのか。それすらも知らない事に二人は気付いた。ただ、自分達にとって不本意な事があり、それに抵抗したらこうなってしまったのである。
 ミサイル発射の疑惑がかかっている。そうYから伝えられた時、にとりは頭を抱えてうずくまり、アリスはほっぺたをつねった。痛かった。夢ではない。

 アメリカに辿り着くまでには、幾つもの障害がある。まず今のように人の問題。そして距離の問題。帰る時には、魔理沙をアメリカ政府から奪うような形になるのだろうから、それ以上に大変だ。
 下手にこのYを使おうとすれば、まず二人は射殺される。そう、Yがこぼした。恐ろしい事だった。流石の妖怪も、あんな速度で飛来する鉛玉を受ければただでは済まない。行動を誤ったか。そんな思いがよぎる。だが後には退けない。
 本来ならば使いたくは無かった、最後の切り札を提示する事にした。本当は、魔理沙は人知れず連れ去られ、ミサイルの発射も何かの誤作動でした、で終わらせるのが良かった。しかし、最早そうも言っていられない。
 「私達はミサイルを発射していない。でも、アメリカに落ちたと言う女の子、その子とは面識が有るわ」ともすれば幻想郷の存在を知られる事になりかねない、諸刃の剣。危険な賭けだった。Yが目を見開く。本当か。聞いてくる。
 「ええ、本当よ。だからちょっと、今は寝させて頂戴」そう言って、アリスは目を閉じた。既に時刻は夜の二時。二人とも、心身ともに疲れきっていた。



 ~飛べ、英国まで~

 電話、と言う便利な物が有る。少し音質は劣化するが、離れた場所に居る相手と即時の連絡が出来る優れものだ。それが、霧雨魔理沙に渡された。何事か、事態が飲み込めぬまま魔理沙は受話器を耳に当てる。

「……魔理沙だ」

 「あ、魔理沙! 無事だったのね!」「おいアリス、私にも話させてよ!」
 受話器の向こうから聞こえるのは、懐かしい声。変質なんて、関係ない。話し方からなにから、全て友の、それだった。
 「アリス……?」声が震える。「にとりも居るよ!」「ああもう、分かったから、黙ってなさいよ!」受話器の向こうからは、元気な声が聞こえてくる。
 異国の地で一人、寂しかったと言うのもある。しかし、こんな所まで来た自分を探しに来てくれた。それが魔理沙には嬉しかった。
 「うえぇ、お前らぁ……!」自然、魔理沙は泣いていた。勝手に涙が出ていた。
 「ちょ、魔理沙、泣いてるの!?」「何ぃ! 何で魔理沙泣いてるんだ、おい、アリス、どけよ!」「ありがどおぉぉ……!!」
 ああ、美しき哉友情。しかし騙されてはいけない。こいつらは火事場泥棒を平気でするような奴らである。感涙しているが、この時の魔理沙はまだそれを知らない。

 かくして、二人は飛行機で運ばれ、一路アメリカへと向かう事となる。荷物には、決して触らせないと言う条件もつけた。破格の待遇なのは、やはり両国ともこの問題を早く解決してしまいたいと言う思いがあるからなのだろう。
 ちなみに、二人とも飛行機は始めてである。発進のとき、機体が動いている感覚。離陸時の、背中にかかるG。そして、眼下に広がる海!
 大興奮である。アリスが「機内食はミートプリーズ」などと言っている。にとりもそれに習おうかと思ったが、どうせならと思い「きゅうりありますか?」と聞いてみた。なかった。
 代わりにサラダが出された。にとりは「あのシャキシャキ感が良いのに……」と文句を言いながらレタスを頬張っていた。一応それなりにシャキシャキしていた。

 空港を出るとそこはもうUSA、自由の国アメリカ。アリスがまず驚いたのが、自分と同じような容姿の人間がたくさん居る事だった。ずっと幻想郷の景色に慣れていたので、まさか一面日本人が居ない場所は中々新鮮な物があるのである。
 にとりは、怯えだしていた。確かに、殆ど捕獲されたのと同じような状況である。恐怖を抱いてもおかしくはない。
 と、思ったら、外の世界へ出てきた興奮で忘れていた対人恐怖症が表へ出てきただけのようだった。「あ、アリス、私の傍を離れないでくれよ」辺りをきょろきょろ見回して、ビクビクしている。挙動不審である。
 アメリカ政府の人間に身柄を引き渡され、車に乗る。多分、高級な車である。光り方が違う。英語で何かを言われた。しかしアリスは英語が話せない。魔法使いなのでラテン語なら読めるし喋れるが、英語で書かれた魔道書と言うのは、まず無いのだった。ちなみに母国語は魔界語である。
 米国の地は、日本とはまた違った趣が感じられた。なんと言うか、そう、色が違うのだ。建物の色や、車の色。そして、空の色も違う。これは、気候風土の関係なのだろうか。それとも、人の持つパワーの違いなのだろうか。考えは、尽きなかった。にとりも、興味を取り戻している。
 困ったことに、アリスは何度も英語で話しかけられていた。その度に自分は英語を話せない事を説明するのだが、またその度に「Oh...シンジラレマセーン」とでも言いたげな顔をして去られて行くのだ。良いじゃないか、こっちの公用語は日本語なんだから。


 魔理沙との再会。SP三人と、通訳が同じ部屋に居る。
 にとりが、率先して魔理沙に抱きつく。アリスは先手を取られた形となった。結局最後まで電話を渡さなかった事が原因と見られる。
 女三人寄れば姦しいとあるように、近況を喋り続ける三人。長い。あまりにも長いので、暫く喋っていた所で通訳が割って入った。
 「君達は、日本国政府と関係が有るのか」要約すると、こんな事を聞かれた。有ると言えば嘘になるが、無いと言える証拠も無い。
 しかし、例えば、某国のテロリスト(何か野蛮な人達、とでも覚えておけば良い)と間違えられでもしたら、それこそ厄介であった。
 そこでアリスが一計を案じる。いきなり、魔理沙とラテン語で会話をし始めたのだ。にとりは、ただおろおろとしている。魔理沙も、少々驚いたようだが会話についていく。ラテン語の分かる人間は、この場には居ない。

 「実は、私達宇宙人なんです」おもむろに、アリスがそんな事を言った。魔理沙は、うんうんと頷いている。にとりは、まだおろおろしている。
 それは、どう言う意味だと、通訳が聞いてくる。そのままの意味よと、アリスが答える。そして、水を持ってこさせ、おもむろににとりへとぶっかけた。
 「うおおっ、何をするアリス!」驚くにとりに構いもせず、アリスがにとりの髪を指差す。現れる水色の髪。「OH My GOD...」三人ともこれだけは聞き取れた。

 そこからの人々の慌て具合は、それはもう大変なものだった。あのミサイルは!? 何故日本に居たのですか!? 妙に敬語調になる。そんな質問にも、適当な事を並べ立てて返すアリス。
 思いつくままに言っているので途中何箇所か食い違いが発生していたが、その辺りはにとりと魔理沙がフォローした。
 最終的に、こんな話になった。「日本の山奥に我々の宇宙船が墜落してしまった。母星へ帰るために燃料の調整をしていたら、暴発してしまった。他意はない。ゴメンネ」
 なんとも、荒唐無稽な話である。でも、宇宙人なら仕方が無い。良く分からない物については、何も語る事ができないのであるからして。あとは勢いのまま、人間達に反論などできないのであった。
 そうして、細かい所はうやむやのままに一行はVIP待遇として迎えられたのだった。


 ~ 大 脱 走 ~

 三人は、建物内の客室に通された。二人部屋と、一人部屋。どう分けるかで、それなりに揉めた。ジャンケンの結果、アリスが一人部屋になった。
 「え、ああ、床に寝るジャンケンだったわよね。それじゃ仕方ないわ、ベッドは二人に譲ってあげる」そんな事を言って、カバンの中から寝袋を取り出した。「お前そんな物まで入れてたのか」にとりが言った。
 就寝。異国の地の夜に、その明るさに、三人は何を思っているのであろうか。再開を喜びながらも未だ前途は多難であり。とかく休息を得ようと、こうして、魔理沙が幻想郷から発射されてから二日目の幕が閉じた。





 ぴいよぴいよ ちちち かさかさかさ







 ザザザザッ




 草木も眠る丑三つ時、部屋の外から何か物音がする。
 最初に、それに気付いたのはにとりだった。元々、耳は良い方である。不安になったので、魔理沙をつついて起こし、聞く。魔理沙は、まだ半分寝ぼけている。
 音が、だんだん大きくなっていく。もう、耳を澄まさなくても、何か音がしているのは聞こえるようになっていた。この音は何だ。アリスも起こそうとした所、既にアリスは目を開いていた。

「魔理沙、起きてる?」「ああ、起きてるぜ」「これ、さ、何の音だと思う?」「その辺りはにとりに聞いてくれ、私はまだいまいち頭が働かん」

 言いながら、魔理沙は着替えを済ませ、帽子を被る。アリスも、少し遅れて同様にした。にとりは、まだ耳をそばだてている。
 「うう、ん。まだよくわからないよ」耳をすませながら、にとり。魔理沙が、少し身体を動かしながら言う。「おいにとり、一つ、その辺りの人生経験が豊富な私が教えてやる」「なーにが豊富よ」とはアリス。「水を差すなよアリス。いいかにとり、こう言った時の勘は大切にしなければいけない。こう言った時の勘は――」
 その時、扉が開かれ、何人かの人間が雪崩込んで来た。強固そうな鎧に身を包み、手には巨大な銃を持って居る。にとりとアリスは、あまりの事に状況が理解できない。銃口が、向けられる。
 不意に、その中の二人が倒れた。また一人、今度は銃を破壊される。人間達が、どよめく。
 「――こう言った時の勘は、当たるんだよ。おいアリス、にとり、逃げるぞ、荷物を取れ。マスタースパークで一気に突破する!」


 建物の一部が、爆発する。地上六階位の場所だろうか。そこから、三つの影が飛び出す。
 「うわああっ、今週のスーパーにとりメカァァーっ!」にとりの絶叫と共にカバンから骨組みが飛び出し、巨大な落下傘が形作られる。
 「おいにとり、私達飛べるんじゃないのか?」「馬鹿、飛んでる所なんて見られたらそれこそ一大事だろうが!」「もう今更な気はするけどねえ」
 街の光がまぶしかった。後ろから銃弾が飛んで来ないのを見ると、どうやら街に被害を出すのを避けているらしい。下では、これまた銃を持った人間達が、上手く隠してはいるが、こちらを追跡している。
 「やだ、スカートの中見えちゃうじゃない」「それこそ今更な気がするがな。それに、暗いからどうせ見えんよ」
 ふぃー、ふぃー、と叫ぶ声が聞こえる(これは、フリーズであると思われる。良くある、威嚇の音声だ)。アリスが、落下地点へ向けて煙幕を投げ込む。
 良く訓練された人間達だった。相手が見えないのにめくらめっぽうに撃つ事は、そのまま同士討ちの危険性を孕んでいる。だがそれでも、突進されたら分が悪い。うまく軸をずらしながら煙幕の中に降り立った三人は、そのまま路地へと駆け抜けて行った。

 厳戒態勢である。そこかしこからサイレンのけたたましい音が聞こえ、空にはヘリが飛んでいる。
 「逃げるには、自転車が良いと聞いたわ」とアリス。「お前何言ってんだ」とにとり。「車が欲しいな」と魔理沙。
 車を奪う事になった。手順は簡単、運転手を殴って放り出し、ドアを閉め、アクセルを踏む。これだけである。なお、右下には車種が出る。
 実行人には、アリスが選ばれた。以下一部始終。

 道路に出て、道行く車に手を振るアリス。愛想はバリバリ。笑顔も忘れない。
 何事かと車を止める運転手。統計的におじさんであろうと思われたのだが、見事におじさんだった。哀れ運転手、その花は毒の花である。
 窓を開け、何かを聞いてくる運転手。言葉は分からないので、アリスはただ上目遣いに見つめているだけである。この時、少し眼を潤ませておくのも忘れない。アリスは、演技派だった。
 そしてここで種明かし! 風のように躍り出た魔理沙とにとりの二人が、おっさんに銃を突きつける。これは、日本でアリスが拾っておいた物である。
 そうしておっさんはすごすごと車から出て行き、三人は無事、車を手に入れたのだった。

 運転は、アリスがする事になった。三人の中では一番器用である。
 椅子の前に付いている、この丸い物で舵を切るというのは何と無く分かっていた。何度か運転している所を見ていたし、後ろに舵取り専門が居る様子も無かった。
 ただ、動力の使い方がわからない。外から見ている限りでは、ただ舵を取ったら動いてる様にしかとれなかったのだ。これにはおっさんも苦笑い。自分を追い出しておいて、中々その場から動かない愛車を、じっと見つめている。
 と言うかこれ、そろそろ発見されても良いんじゃないか、そう考え始めた所で、いきなり車が急発進した。にとりが、頭を打つ。他の車にぶつかりそうになり、アリスが慌ててハンドル(つまり舵)を切った。
 「おい、アリス! なんだってんだよ!」たまらずにとりが文句を言う。「うわ、わ、分かったわ、これがそうなんだ。なるほど良くできてる」にとりの苦情にも耳を貸さず、アリスはずっと前を見ている。
 少しばかりそうやって居た所で、アリスが運転に慣れてきた。本人曰く、微細な力加減が出来るのなら難しくは無いとのこと。そして時を同じくして、三人の乗った車が、捕捉された。そりゃあ、余程奇妙な動きをしていたのだろうし、見付かって当たり前である。

 車を使っての、追いかけっこが始まった。これを、外の世界ではカー・チェイスと呼ぶ。カーが車で、チェイスが追いかけると言う意味だ。カーチェイスの本場USA、アメリカでは、常に何処かしらでカーチェイスが行なわれていると言う。
 追いかけてくる車は三台。そして、空にはヘリコプター。バイクも、見えないが数台追ってきている物と思われる。
 とにかく、走った。もとより地理など欠片も分からない場所での事である。精々が、郊外に出て撒いてしまうか何か飛行場を見つけて飛行機を奪い取ってしまうかしかなかった。それも、太平洋を横断できる程のものだ。まこと、絶体絶命の境地とはこのようなものを指すのであろう。
 しかし、そこは百戦錬磨の少女達(特に一名)。相手が発砲できない事を利用して、随分とスレスレのカーチェイスを行なう。
 「おいにとり、何か良い発明品は無いか?」後ろの車を見ながら、魔理沙がたずねる。「もう殆ど使い切っちゃったよ。あるとすれば、この髪の色変えちゃうぞスプレーだけだ」「おお、そりゃ良いな。おいアリス、追手の車につけてくれ」
 そして魔理沙は、窓から身を乗り出すとスプレーを吹きかけて追手の車の視界を潰してしまった。使い終わった缶は、他の車に投げつけてリサイクル。なんとも鮮やかな手並みであった。ものの数秒。数秒で、バイクと車を一台ずつ行動不能にした。流石の魔理沙と言った所である。

 そして一時間。粘りに粘ったカーチェイスも、そろそろ限界が見え始めてくる。建物が、まばらになって来たのだ。古今、カーチェイスは途中で追われている者が事故を起こして終了する物である。では、もし事故を起こさなかったら? 精神的動揺による運転ミスが無かったとしたら?
 ヘリが、徐々に高度を落としてきた。上空、高い所に居た時は良く見えなかったが、近づいてみると形がおかしい。機体の下部に一つ、機銃が付いているのが見えた。
 「ねえ魔理沙、あれ……」アリスが、気付いたようだ。「ははは、こりゃ困ったな。奴ら、どうしても私達を始末したいみたいだぜ」「なんか、あの銃大きいよ間理沙ぁ」「騒ぐなにとり。でも、不味いかな。あんなの食らったら、私らミンチだ。か弱い少女の散り様としては、いや過ぎる」
 そうこう言っている内にも、ヘリは高度を落とし続けている。辺りはもう人家なども殆ど無く、真っ直ぐに道が続いているだけだ。発砲に、なんの不具合も無い。
 「ねえにとり、何か良い道具無いの!?」アリスが、悲鳴を上げる。「そう言うアリスこそ、何か色々カバンに詰めてたじゃないか!」にとりも、半分自棄になっている。「私は運転に忙しいのよ!」アリスが叫んだ。
 魔理沙は、考える。自分のマスタースパークを使えば、あのヘリを撃墜する事は出来るだろう。しかし、撃てたとしても後一度だけである。それ以上は、材料が足りない。果たして今、使ってしまって良い物なのだろうか? もう一度ヘリに狙われたら、今度こそ助からないのではないか?

 「アリス、にとり、車を捨てよう。あのヘリを乗っ取る」
 勘と経験が導く、英断であった。魔理沙が窓から屋根の上へと登っていく。にとりは、カバンが通らないのでドアを開けて出た。アリスが、アクセルを固定する。
 「魔理沙、どうするの!?」アクセルを固定しながら、アリスがたずねる。「にとり、お前たしか腕伸びたよな?」魔理沙がたずねる。「……ひゅい!?」まさか自分に振られるとは思ってなかったにとりが、驚きの声を上げる。
 アリスが、屋根に登ってきた。「いいか、にとり。私達は宇宙人って事になってる。だから、腕が伸びても誰も気にしない」「いやいやいや、私が言いたいのはそう言う事ではなくてですね」「いいから、行け! 撃たれてからじゃ遅いんだぞ!」
 ヘリまでの目測は、数百メートルくらいだろう。相対速度は、それほど速くない。三人が、飛んだ。同時ににとりの腕が伸びる。狙いは、ヘリの脚。届けと、願った。あと少し足りない。魔理沙が、後方へ向かってマスタースパークを撃つ。三人の身体が持ち上がる。手が、届く。届いた。
 ヘリの乗員が、銃を向けてくる。しかし、所詮は自機狙い。そのうえ風に煽られて照準も定まらないと来ている。たとえ宙吊りの様な状態だろうと、彼女達にとって避ける事は難しくなかった。
 アリスの人形が、銃を叩き落した。その間にも、魔理沙はしゃこしゃこ腕を登っている。中に躍り入って銃を突きつけた時、乗員達は投降した。

 ヘリの中は、狭かった。何と言っても、運転手、乗員、そしてこの三人組と、合わせて五人も乗っているのである。
 「おい、魔理沙ぁ、どこまで飛ぶんだよう」「そんなの分からんよ」「はあ、私はもう疲れたわ」三人が、口々に好き勝手な事を言う。思い思いの言葉を口にする。
 皆、疲労は重かった。十分に寝られなかったし、ヘリの中は狭すぎて座る事も出来ない。それどころか、ほぼ押し競まんじゅうの様な状態である。
 「ああ、私ももう疲れたぜ。まさか、日本がこんなに遠いとは思わなかった。もう今となっちゃ、早く幻想郷に帰りたいよ」魔理沙が、そうこぼした。



 ~ちなみに、本場だと家などはシートで保護されるそうです~

 さて、結論から言うと魔理沙一行は幻想郷へと戻って来る事は出来た。居なくなってから五日後、スペルカードルールの改正が行なわれた直後の事となる。
 彼女達はどうやって、遠い異国アメリカから戻ってきたのだろうか。少々気になる所ではあるが、ここで少し視点を幻想郷に戻す。魔理沙が居ない間、幻想郷では何が起こっていたのか? これもまた、少し大変な事になっていた。
 スペルカードルール改訂の知らせが幻想郷を駆け巡った後、様々な妖怪から異論が出た。例えば吸血鬼とか、花の妖怪とか。いずれも強力な妖怪達ばかりである。彼女らの言い分はこうだ「私達なんて強力過ぎて弾幕ごっこ自体も禁止されちゃうんじゃないのかねえ?」要は文句にかこつけた力自慢である。
 だが、これに収集を付ける役割であるはずの八雲紫が、あろう事か姿を消してしまった。当然、対応の遅さに妖怪達は苛立ってくる。非常時の代役である筈の八雲藍も、結界の修復で疲れ果て眠ってしまっている。
 八雲藍の式である橙が必死で説得に向かうも、そもそもがそのような強力な妖怪達の足元にも及ばない弱小妖怪である。力はおろか、弁舌ですら全く相手にされない。案の定、泣かされる所か本当に適当にあしらわれて戻ってきた。
 そして、起こるべくして異変は起こる。数多の妖怪達が協力して、幻想郷各地で巻き起こった異変。その名も「赤果異変」である。
 赤果。聞こえは良いが、詰まる所トマトの事である。どこから仕入れたのか大量のトマトを、強力な妖怪達がそこらにぶちまけて行く様は、何と言うか、壮絶な物があった。里の子供は泣く者と喜ぶ者、綺麗に分かれた。
 当然、異変解決の際の弾幕ごっこにも、トマトが使われる。心の中で「妖怪差別はんたーい!」などと叫びながらトマトを投げつける。そこには、妙な改正などしたからこんな妙な事になるんだぞ、と言う意思表示が込められていた様にも思う。
 また、これは少々恐ろしい考えだが、潰れたトマトを血に見立てて「要求を呑まなければ実際にこの景色を作ってやる」と言う徹底抗戦の構えだったのかもしれない。まあ、トマトを投げている時の彼女達の顔は非常に楽しそうだったので、そんな事も無いだろうが。

 人里は、わずか一日でトマトまみれとなった。里の賢者殿も奮戦してくれたようだが、敵わず敗走した。色は青から赤に変わっていた。
 夜には、広場で炊き出しも行なわれた。豊富に有るトマトを使っての、トマト料理である。ミネストローネとか、パスタとか。幻想郷にはあまり馴染みの無い食べ物だったので、それなりに賑わったようだ。
 それにしても、後片付けは大変そうだった。幻想郷の家屋は殆どが木造である。つまり、染みる。一応そう言った事を防ぐ処理はしてあるものの、これだけの量、どこから染み込んでいてもおかしくは無い。
 異変は、まだ解決されて居なかった。どうも、博麗の巫女様が不調で、既に何度もトマトまみれになって撃墜されているのだ。炊き出しにはちゃっかり来ていた。「ちょっとトマト分けてくんない?」相手の妖怪にそんな事を言っていたのが聞こえた。



 ~ガラスのニューヨーク~

 魔理沙達は、いま、ニューヨークに居た。本当にニューヨークなのかどうかは定かでは無い。だが、アメリカで知っている地名などこの位しか無かった。なので、今居る都市をニューヨーク(暫定)と呼ぶ事にした。
 その中の、本当に一角、本屋の倉庫で、魔理沙達は潜伏していた。地図を見るためである。幾ら英語が読めないし話せないとは言え、一応幻想郷にも英語はいくらか流入している。簡単な単語や、アルファベットを判別する程度の事はできた。
 「あ、あったあった、空港の場所はこれね」「ううーん? で、これはどうやって行けば良いんだぜ?」にとりは黙々とアイテムの修理を進めている。「歩けば良いんじゃないの? なんなら、また車でも奪う?」「いやあ、流石にそれは勘弁願いたいな……」
 彼女達がどうやってここに来る事になったのか。ヘリを奪った後、三人は適当に飛行をしたのち乗員を解放。自らはそのままヘリに乗りまた暫く飛行した後、おもむろにそれを墜落させた。当然、爆発。そして炎上。その隙に紛れて、姿を隠したのである。
 地図を見て、なんとなく東の方へ行けば良いのは分かった。空港が有る町の名前も。ただ、この町の呼称は、ニューヨーク(仮)である。それは変わらない。
 服屋にも忍び込み、いくらか拝借する。流石に、元の格好のままでは目立って仕方が無かったからだ。光学迷彩マントで移動するのにも限度がある。そろそろ、充電も切れ掛かっていた。
 コーディネートは勿論アリス。乙女の嗜みである、らしい。逃亡中の身だと言うのにきゃいきゃい騒いでしまったお陰で、何度か見付かりかけた。その度にマントで姿を隠していたが、多分あの倉庫は近日中に怪談話が持ち上がると思う。
 そうして一段落付いた頃には、もう三人ともいっぱしのニューヨーカーになっていた。ちなみに、にとりの髪色は「髪が痛んじゃうけど仕方ないよね白髪染め」でブロンドに変色していた。なんと言うか、別人である。一番面影を残していない。髪型も変わっていた。
 でかいカバンをキャリーバッグに偽装し、ひたすら東へと進む一行。途中、何度か男の人に声をかけられた。それが果たしてナンパだったのか私服警官による職務質問だったのかは分からない。愛想笑いをして、走って逃げた。
 「なあアリス、これって歩いて辿り着ける距離なのか? アメリカって広いって言うぜ?」「大丈夫よ、下に縮尺書いてあったし、道を間違えなければ夜には着くわ」「そんな事より私はお腹が空いたよ」各々が好きに喋る。
 ひたすらおしゃべりをしながら歩く少女達。特にアリスなどは都会派を自称しているだけあって少しテンションも高い。歩くのも、先陣を切って歩く。「そう言えば、マイアミにはブロードウェイが有るのよ」アリスがまた何か訳の分からない事を口走った。

 さて、ではこの辺りで「アメリカ合衆国」と言う国についておさらいしてみよう。
 資料によると「人口も国土も日本の数倍あり、自由を標榜する開拓者達の国」らしい。治安が悪いと言うイメージもあるがそれは過去の事で、実際は場所によってかなりのバラつきがある。
 しかしそれでも、夜は夜なのである。女の子が夜道を歩いていて襲われないのは幾ら都会といえども有り得ない。夜道で襲われる女の子と言うのは、全世界共通の風物詩なのである。悲しい事に。
 もちろんそれは幻想郷でも例外ではない。今現在においても、妖怪の男が人間の女を、人間の男が妖怪の女を「兵兵お姉ちゃんお茶竹刀」(最近流行のギャグである。誤字ではない)などと誘うのは最早日常茶飯事。流石に私は誘われた事は無いが、夜の四番通りと言えば、中々その筋では有名であった。
 とにかく、女性の夜歩きは危険なのである。

 ぶおんぶおん。
 道を歩く魔理沙達の横を、これ見よがしに飾り立て、聞こえよがしにエンジンをふかしたバイクが数台、並走してくる。街の、ごろつきどもである。
 曰く、「あまり格好良いと思えるような人は居なかった」らしい。多分文化圏の違いもあるのだと思う。幻想郷でも、こういったごろつきの親分と言うのは意外と人気があるものだ。親分は、だが。
 「おい魔理沙、この人達さっきからなんなんだよぅ」にとりは怯えている。元々威圧するために改造されたバイクである。こんな反応をされれば、改造者冥利に尽きると言うものだろう。
 対して他の二人は、一方が「もう面倒臭いから全員ピチュらせちゃおっかな」と考えもう一方が「私も中々捨てた物じゃない」と考えていた。どっちがどっちだかは、諸君らの判断にお任せする。
 「おいおいねーちゃん、俺達の事無視してんじゃねーぞ? あぁん!?」意訳である。多分こんなような事を言ってきている様に思われる。夜道で襲われる女の子が全世界共通なように、ごろつきどもの突っかかり方もまた、全世界共通なのである。
 ここで力技に出ないのが、淑女の秘訣。果たしてこの三人、「どうせなら付いて来られる所まで付いて来させようぜ」作戦に変更したのである。かの合気道では、その最終奥義に「相手と友達になってしまう」などがあると言う。決して事を荒立てず、攻撃に移るのは最後の手段。まさに、異文化コミュニケーションの境地であった。

 空港まで辿り着いた時、三人はごろつきどものバイクに乗せて貰っていた。いわゆる2ケツと言う奴である。果たしてあぶれ者同士何か通じる物があったのか、それともただ単に色に迷ったのかは定かでは無いが、別れる際には熱いハグをしあったと言う。これに色などと持ち出すのは野暮であろう。
 思えば、長い道のりであった。光学迷彩マントはまだ生きている。あとは、中に忍び込んで適当な飛行機に乗り込むだけである。安心と共に、名残惜しさが芽生えてきた。
 本当に、色々な事があったものである。自販機でコーヒーを買い、三人はそれぞれアメリカに思いをはせた。「さよならハリウッド」アリスが言った。お前さっきまでニューヨークって言ってなかったか。


 ~紫の炎~

 もう戻って来れないのではないか、諦めかけていた。太平洋の長さは、絶望的だった。しかし、三人は戻ってきた。この、日本へと。後は結界の抜け穴を通り、幻想郷へ帰るだけである。細かい場所は良く分からなかったが、近くまで行けば二人のどちらかが道を思い出すはずだった。
 懐かしの日本であるが、そうゆっくりもしていられない。既にアメリカ側から情報が回されている可能性は有るし、にとりとアリスは顔が割れている。お陰で、飛行機は貨物室に忍び込まざるを得なかった。それなりに寝心地は良かったが。
 しかし、日本。日本である。公用語は? そう、日本語。文字が読めると言う事が、こんなにも心強いだなんて。三人は、改めて言葉の大切さに感動した。
 行きはそれこそ右も左も分からなかったが、それに加えて前と後ろと上と下が分からない様な場所に居るとやはり違う物である。何かもう、ここならば根性で何でも出来る気がする。と言うか、人に聞ける。
 魔理沙はどうせなら日本の観光もしたいと言っていたが、勿論却下された。理由は前述の通り。ならせめて、電車と言う物に乗ってみたいと言い出した。
 電車。決まった道しか走る事は出来ないものの、その速さと輸送力は群を抜いて高い。いわゆる、トロッコの超豪華版である。鉄道の、改良版である。
 実はアリスとにとりは、行きで電車を使っていなかった。簡単な事である、意味が分からなかった。え、お金必要なの。この路線図ってやつどう見れば良いの。挙げ出せばキリが無い。
 なので行きは、タクシーを拾って空港まで来た。「おっちゃん、空港までお願い」この一言だけでバッチリ国外線の出る空港まで行ってくれるのだから、おっちゃんも凄い物である。
 今、彼女達は「駅員さんに聞く」と言う事を覚えた。恥、外聞、気にしてなどは居られない。「ははは、外国人の女の子が旅行にでも来たのかな?」当たらずとも遠からずである。なんたってこっちは、住民票を持っていない。

 初めての電車は、それはもう面白い物だった。身体が浮き上がる感覚などは飛行機に劣る物の、とにかく景色が移り変わる。三人して、ずっと窓に張り付いては「あれはなんだ」「これはなんだ」と話していた。人の目? そんなものは知らない。
 ついに目的の駅まで降りた時、にとりは「おお、ここだここだ! 覚えてるよ!」と言い、アリスはきょろきょろと辺りを見回した。
 折角なので、お土産を買う事にした。そこらの店で売っている、安いお菓子を大量にである。でかい買い物袋と、これまたでかいカバンを二つもって山奥に入っていく外人三人。もし環境保全組合等に見付かっていれば、間違いなく呼び止められたのは想像に難くない。
 起伏に富む山の中を、ほいほいと進んでいく少女が三人。全員、それなりに辺鄙な場所に住んでいるので、慣れた物であった。

 いくらか進んでいると、ふいに、後ろの方から銃声が聞こえた。やはり、最初に気付いたのはにとりだった。すぐに、他の二人も気付く。立ち止まって、耳を済ませてみる。何度となく聞いた音である。間違いない。
 すぐに、銃声は騒がしくなった。遅れて、爆発音。絶え間なく続いている。何が起きているのか。早くこの場から立ち去った方が良いのではないか。そう思って三人が歩き出した瞬間、憤怒の形相をした八雲紫が、目の前に立っていた。
 「あなた達……」目は見開かれ、こめかみには青筋が浮かび、口元は凄惨なまでに固く結ばれている。にとりは、泡を吹いて気絶した。アリスは、「あ、スプラッターだわ」死を覚悟した。魔理沙は、無言で土産を差し出した。
 永遠にも思える長い沈黙。銃声は、未だ鳴り続けている。汗が、滴り落ちた。誰の物かは、わからない。もしかしたら、全員が汗を噴き出していたのかも知れない。誰もそれに気付かなかっただけで。
 「いいわ、もう。行きなさい貴女達……」ふいに、八雲紫が顔に手を当てた。かと思うと、いきなり三人の足元にスキマが展開。三人は何処へとも無く飛ばされてしまうのだった。



 ~唸れ栄光のトマトスパーク~

 ひゅー、すとん。
 三人が出てきたのは、里の広場だった。それも炊き出し中の。一堂の目が、三人に集まる。
 「ま、魔理沙……。あなた、何処に行ってたの?」霊夢が問う。「ああ、まあ、色々あってな。ところで、何だこの惨状は。凄まじくトマト臭いんだが」魔理沙が返す。「異変よ」霊夢は、神妙な面持ちで言った。
 「異変、か。そうか、それは大変だな。すぐにでも解決しなきゃならん。しかし私はもう疲れた。私はもう帰るぞ、解決は明日からだ。おい、アリス、にとりを運んでやってくれ。私は荷物を運ぶ」
 そう言って、魔理沙はさっさとその場を後にした。「あ、そうだ霊夢。アメリカ土産だ」そう言って、何かを投げて寄こす。ポテトチップス。日本語だった。

 翌日、魔理沙が異変解決に加わった。オプションはアリスとにとり。共に、火事場泥棒をした事がバレての参戦と窺える。
 霊夢もまたかつてない技のキレを見せ、何体かの妖怪はその姿に「う、美しい……ハッ!?」などと言いながら倒されていった。随分余裕だ。
 この赤果異変、敵を倒すとPアイテムの代わりにTアイテムと言う物が出て来る。そう、皆まで言う必要は無いだろう。TOMATOの事である。Tを稼ぎ、TPを溜める事により、大技が撃てるようになる。TPはグレイズによっても増加する。
 激闘の末首謀者の一角、レミリア・T・スカーレットを倒した霊夢であったが、度重なる疲労により六面道中で撃墜。魔理沙に後を託すのみとなった。
 「魔理沙……後は頼んだわよ……」「任せておけ霊夢。わたしが、こんなふざけた異変は終わらせてやるからな!」ふざけた異変。ぐうの音も出ないほどに全くその通りである。

 視界が開ける。一面に広がる向日葵、いや、トマトの木。彼方に見える、トマトプラント。太陽の畑、その中央に、奴は居た。
 「へえ、まさか貴女がここまで来るとはね、霧雨魔理沙。私はてっきり霊夢が来ると思ってたのだけれど」「ぬかしてろ泣き虫ゆうかりん。私に勝てる見込みが無いからって、そんな口を利く者じゃないぜ」
 一触即発。前口上である。魔理沙の口上がいやに攻撃的なのは、多分アメリカ帰りだからであろう。それでも、風見幽香相手にここまで言えるのは、流石と言うほか無かった。
 トマトを一つ、もぎ取る。「あらあら、随分な事を言うようになったわね。でもそんな口の利き方、品が無いわよ?」「うっせーメス豚。行動自体に品が無いお前に言われたくないね」
 考えるな、感じるんだ。言葉は伝わらなくても、その奥底で、アメリカ流の暴言を学んだのだろう。隣でアリスが目を見開いて驚いている。にとりが、「わ、わたしゃ知らんぞ。知らんからな」などと呟いている。
 手で弄んでいたトマトが、潰れた。「貴女の頭も、こうしてあげるわ……!」「上等だぁ、かかってこい!」戦いの火蓋が、切って落とされた。

 幽香が、大きく振りかぶって、投げる。何を、トマトを。一投目、難なくかわす。二投目、グレイズするも、余裕はある。三投目、途中で、大きく軌道を変えて魔理沙の元へと迫ってきた!
 「うおおっ、カーブだと!?」なんとかかわすも、その額には冷や汗が流れ出ていた。「へえ、あれを避けるだなんてやるじゃない」幽香は、未だ余裕を見せている。
 「へっ、勝負はこれからだぜ……!」そう言って、魔理沙が急接近をかける。壮絶な空中戦が、幕を開けた。
 魔理沙のオプションは二種類。アリスと、にとりである。アリスはトマトに糸を括りつけた「トマト人形」でトマトを操り(ぶん回し)、にとりはトマトを圧搾した物を発射する「トマトガン」を使用する。当たるとトマトまみれになる。
 ちなみに、霊夢にオプションは付いていない。それどころか、ショットも無い。ただ弾を避け相手に近づいて、口の中にトマトをねじ込むだけである。レミリアとの勝負は、この異様な迫力に逃げ続けるレミリアを如何にして捕捉するか、の戦いであった。

 「ハァ、ハァ」「ハァ、ハァ」両者ともに、体力、気力の限界までトマトを投げ続けたが、一向に勝負は決しない。幽香が、ふっと距離をとる。
 「ふ、ふふっ、魔理沙、中々楽しかったわ。でも、そろそろ終わりにしましょう。今の貴女に、この技を受けきれるかしらね?」幽香が、手に持っていた日傘を突き出す。先端に、魔力がたまって行く。
 「くらいなさい、これが元祖マスタースパークよ!」直後、吹き上がる赤い奔流。それは、ごうと唸り声を上げて、また、びしゃびしゃと水しぶきを上げて、間理沙目がけて迫ってきた。
 「ふん、教えてやるよ。私のコピーは、既にオリジナルを超えているって事を!」身をよじって急旋回。真っ赤な壁が、帽子を弾き飛ばす。しかし、身体は落ちていない。ミニ八卦炉も、その手の中にある。

 「マスタアアァァァァァ!!!!スパアアァァァァァクッッ!!!」

 力の限り叫ぶ。真っ赤な濁流が、しかし先のそれを大きく上回る濁流が、幽香を押し流す。そしてそのまま前にある物全てをなぎ倒し、背後のトマトプラントを貫いた。爆発四散するトマトプラント。辺りにもうトマトの木は一本も無い。異変は、解決されたのだ。
 「ふう、疲れたぜ」汗を拭う魔理沙。「いやー、良かった。本当良かったわね魔理沙」アリスが言う「そうそう、良かった良かった。だから、良かったついでに私達の事もそろそろ開放してくれると良いんだけどなあ」とにとり。
 魔理沙は、うーんと唸った後、それはもう百万ドルの、とびっきりの笑顔で、「だーめっ」と言った。魔理沙がここまで可愛く出来るなんて、反則だ。後にそうにとりは語った。あれが本物のお嬢様のぶりっ子か。アリスは感嘆した。
 その後、異変に関わった者が総出で幻想郷の掃除をした。隅々まで綺麗にしないと、トマトが腐ったりした場合また大変な事になる。妖怪達の必死の努力の結果、日が暮れる頃には、掃除も終わっていた。
 また、炊き出しが行なわれた。ああ、一仕事終えた後のトマトジュースは美味いなあ。そんな声が、そこかしこから聞こえる。人々に、笑顔が戻った。
 夜が更けた頃、そのまま宴会になった。つまみは勿論、トマト料理である。なんだもう、使っても使っても無くならないのだ、トマトが。それでも、どうにか工夫を凝らし、飽きの来ないトマト料理を楽しめたのは調理班の功績だろう。
 楽しい夜は更けていった。だが、誰もが待った八雲紫は、ついぞ現れなかった。



 ~終章~

 これが、赤果異変と、霧雨魔理沙失踪事件の真相となる。
 若者の読書離れ、そう言った物への対抗としてなるべく親しみやすく書いてみたのだが、如何だっただろうか。少なくとも私は、まあ、それなりに楽しめた。
 この異変の発端となった八雲紫であるが、数日後にふらっと姿を現したかと思うと、ルールの改訂を取りやめにしてまた何処かへ行ってしまった。彼女の式の八雲藍もまた、「紫様もとてもお疲れなのです。どうか休ませて上げてください」と言い残し、何処かへ行ってしまった。
 この事件、謎な部分がかなりある。一つは、前述の通り八雲紫の件。そして、一番大きいのが、「魔理沙一行の外の世界への露出が大きすぎる」と言う事だ。
 私は、彼女達から話を聞いている最中、卒倒しかけた。姿を見られるだけならともかく、各地で騒ぎを乱発している。少なくとも二つの国で、その存在を認知されてしまっているのだ。
 極めつけは、結界の近くで聞いたと言う銃声。何か、大きな問題の前触れなのではないだろうか。そう考えると、不安で不安で、夜も眠れない。
 しかし、彼女達を決して責める事はできない。あのまま救出が遅れていれば、魔理沙はまず人として生きる事は許されなかった。彼女達の一友人として、私にはこれ以上彼女達を責める事は出来ないのだ。
 どうか何事も起こらない事を願って、ここに筆をおく。


 著 稗田阿求
協力順不同 敬称略)

霧雨魔理沙 (最後の最後で強い奴。ミサイル発射の原因は自分でも良く分からない)
アリス・マーガトロイド (非常時に強い奴。都会の情報を集めて都会派だと言い張っている)
河城にとり (平常時に強い奴。俺の嫁)
東風谷早苗 (被害者。取材の時は、悪口雑言を並べ立て八雲紫を罵倒した)
レミリア・スカーレット (異変の首謀者その1。その機動力でトマトを一番ばら撒いた)
風見幽香 (異変の首謀者その2。トマトの生産を行なった)


魔理沙達が話したバラバラの情報を、阿求が繋げ合わせたのがこの作品です。決して真実ではありません。
彼女達は都合の悪い所はぼやかし、ここぞと思う所は誇張します。そしてそれを取捨選択し、阿求は書き連ねます。
隠しキャラは阿求です。隠しキャラってなんだ。でもなんか、思いついちゃったんだから仕方ない。

ゆかりんは、なんだったんでしょうね?
ただ言えるのは、この作品の中で起こった問題は、全て解決したと言う事です。何も禍根は残しませんでした。


前作が元々ある話に当て嵌めていくような形だったので、今回は最初から好き勝手に書いてみました。もし設定のブレがありましたら、すいません、そう言うもんなんだと思っちゃってください。
あ、いや、阿求執筆なんだから、阿求です。全部阿求って奴の仕業なんだ。


それではどうも、お読みいただきありがとうございました。
ごまポン
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コメント



0.830簡易評価
3.90gutch削除
だめだ!理解できねぇw
4.無評価名前が無い程度の能力削除
>守屋神社
守矢神社
5.90名前が無い程度の能力削除
何か知らんがアリスかっこいいな。でも英語くらい喋れそうな気がする。
「アンクル・サムの『米語』は下品ね」とか皮肉言いながらばりばりのクイーンズで。
6.80奇声を発する程度の能力削除
>甲高い奇声を上げて、
ピクッ
何だコレww
8.100名前が無い程度の能力削除
壊れギャグっぷりというか、勢いが最初から最後まで減速しないでぶっ飛んだままだったんで笑いまくりでした。
10.100名前が無い程度の能力削除
ニヤニヤが止まらない
14.90名前が無い程度の能力削除
困った時は「私宇宙人です。」って言えば万事解決なんだ!
15.80鈍狐削除
勢いと荒唐無稽に意味をつけたのは面白かったです。
26.100名前が無い程度の能力削除
わけのわからぬハイスピード感に終始していて素晴らしい。
取り敢えずあなたが魔理沙とにとりを愛してるのは分かった。 アリス・・・?
32.100名前が無い程度の能力削除
紫は大変だなあ。もう宇宙人の線で通すしか無いじゃないか。